ハリー・ポッターと深紅の覇者   作:筋肉神

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今回少し短めです


第17話 シーカー

 マクゴナガルに連れられ、ハリーは石造りの冷たい廊下を半ば引きずられるように歩いていた。胃のあたりが重く痛む。頭の中では最悪の展開ばかりがぐるぐる回っていた。

 

 まだ入学して間もないというのに、飛行訓練で先生の指示を無視して無断飛行。しかも危険な急降下までするなんて……。ロンやハーマイオニーの顔が浮かんで、ハリーはますます気分が沈んだ。

 

 マクゴナガルは一言も発しない。怒鳴るでもなく、小言を言う訳でもない。背筋を伸ばしたまま、淡々と歩を進める。その無言の威圧感が、逆にハリーを追い詰めていた。

 

 やがて彼女はある扉の前で足を止め、勢い良く扉を開けた。

 

「ウッド、いますね?」

 

 部屋の中にいた大柄な五年生の少年が、驚いたように振り返った。オリバー・ウッド。グリフィンドールのクィディッチチームのキャプテンだ。

 

「先生?」

 

 マクゴナガルはハリーの肩をぐっと掴み、興奮を隠しきれない様子で言った。

 

「見つけましたよ、ウッド。とんでもない才能を!」

 

「……は?」

 

 ハリーが間の抜けた声を上げた。

 

 ウッドはハリーを上から下までじっくりと観察し、首を傾げた。

 

「この……一年生がですか?」

 

「えぇ、一年生です!地面すれすれで落下する思い出し玉を掴み取ったんですよ!あの反応速度、あの胆力……チャーリー・ウィーズリー以来の逸材です!」

 

 ウッドの目がみるみる見開かれていく。

 

「本当ですか!?」

 

「私は嘘を言いません。クィディッチに関連することなら特にです」

 

 ハリーはまだ状況が飲み込めず、ぽかんとしていた。

 

「あの……先生、僕、退学になるんじゃないんですか?」

 

 一瞬の静寂の後、マクゴナガルは呆れたように眉を寄せた。

 

「退学?誰がそんなことを言いましたか?」

 

「で、でも……先生の命令を無視して勝手に飛んだから……」

 

「確かに規則違反です。フーチ先生には、後で私から話を通しておきます」

 

 マクゴナガルは口元を僅かに緩める。

 

「けれど、あなたの才能を見逃す方がよほど愚かな判断です」

 

 その言葉に、ハリーは目を瞬かせた。次の瞬間、ウッドが勢いよくハリーの両肩を掴んだ。

 

「ポッター!君、シーカーをやる気はあるか!?」

 

「シ……シーカー?」

 

「クィディッチだよ!一番重要なポジションだ!金色のスニッチを捕まえて試合を決める。それに必要なのは優れた反射神経と飛行センス……まさに君みたいな才能だ!」

 

 ウッドの声は興奮で熱を帯びていた。

 

 ハリーは圧倒されながらも、胸の奥で何かが熱くなっていくのを感じていた。

 

「僕が……クィディッチの選手に?」

 

 マクゴナガルが満足気に頷いた。

 

「正式な手続きは私が進めておきます。一年生のシーカーは百年以上いなかったけれど……今回は特例ですね」

 

 ハリーの心臓が、大きく高鳴った。

 

 

 一方その頃、芝生の上ではまだハリー・ポッターの話題で持ちきりだった。グリフィンドールの生徒達は興奮を隠せずに笑い合い、スリザリンの生徒達は苦々しい表情を浮かべていた。

 

「チッ……なんでポッターばかり」

 

 ドラコが舌打ちをする。そのすぐ傍で、セラフィーナは足を組んで優雅に芝生の上に座り、膝の上にオーロラを乗せてゆっくりと頭を撫でていた。

 

「随分と苛立っているな、マルフォイ」

 

「当然だろ!」

 

 腹を立てたドラコが声を荒げる。

 

「……ふん、でもいいんだ。どうせ今のでポッターは厳罰だ。退学になるんじゃないかな」

 

「どうかな。スネイプ教授ならともかく、ポッターを連れて行ったのはマクゴナガル教授だ。無断飛行の罰を与える為に連れて行ったのなら、貴様も連れて行かれるのが道理だろうよ」

 

 ドラコの表情が固まる。確かに、マクゴナガルは寮贔屓をしない教授として有名だ。そんな彼女が、同じ無断飛行をした二人の内一人だけにしか罰を与えないとは考え難い。

 

「そんな訳ないだろ……ポッターが退学にならないなんて……」

 

「もし退学なら既に荷物をまとめて出ていく頃だろうな」

 

 セラフィーナはオーロラを乗せたまま、芝生に寝転がるように空を見上げる。

 

「マクゴナガル教授は実利を重んじるタイプに見えた。それに、クィディッチ狂いとして有名だ。ポッターにただ罰を与えて終わるとは思えん」

 

「……何が言いたいんだ?」

 

 ドラコが苛立たしげに眉をひそめる。それを見てセラフィーナは小さく笑う。

 

「恐らくポッターは拾われたのだろうよ」

 

「拾われた?」

 

「才能をな」

 

 その時だった。遠くの廊下から、ハリーがマクゴナガルと共に戻って来る姿が見えた。ハリーの顔に絶望の色は無い。少なくとも、退学を言い渡された人間の顔には見えなかった。

 

 どこか呆然としながらも、隠しきれない高揚がその顔に浮かんでいた。

 

 ロンが真っ先に駆け出す。

 

「ハリー!どのぐらい減点された!?まさか退学じゃないよな!?」

 

 ハリーはまだ現実感の無い顔のまま口を開く。

 

「僕……クィディッチチームに入るらしい」

 

 一瞬の静寂。

 

 次の瞬間、グリフィンドール側から驚愕と歓喜が混ざった大歓声が上がった。




箒で空を飛ぶのは憧れですよね。股とか痛そうだけど
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