ハリー・ポッターと深紅の覇者   作:筋肉神

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今日は自由時間が多いから余裕をもって書けますよ!!


第20話 決闘の誇り

 決闘騒動の翌朝。昨夜の騒動を経てもなお、ハリーとロンが退学になっていないという事実に、ドラコは心底納得がいっていなかった。

 

 大広間のスリザリン長テーブル。豪華な朝食が並ぶ中、ドラコは苛立たしげにソーセージを突き刺している。

 

「あり得ない……フィルチに見つかったはずなのに……」

 

 彼はハリー達を罠に嵌め、退学か大幅減点を狙っていた。だが結果は全くの期待外れだった。

 

 そして何より──

 

「マルフォイ」

 

 低く、冷え切った声が響いた。

 

 ドラコの背筋が凍りつく。ゆっくり振り向けば、そこにいたのは不機嫌そのもののセラフィーナだった。普段なら山盛りの朝食を平らげる彼女が、今日は殆ど手をつけていない。ただ静かに、紅い瞳でドラコを射抜いていた。

 

 その威圧感に、周囲のスリザリン生達まで会話を止めていた。

 

「き、君……どうしたんだよ、そんな怖い顔して」

 

 ドラコが引き攣った笑みを浮かべながら尋ねる。

 

「貴様、決闘をダシにポッター達を陥れようとしたらしいな」

 

「だ、だってあいつら調子に乗ってたし……少しくらい痛い目を見ても──」

 

「黙れ」

 

 短い一言で、ドラコの言葉を断ち切る。セラフィーナの声は低く、冷たい怒気が満ちていた。

 

「決闘という伝統ある神聖な行いを、貴様は穢した。それが純血名家のやることか、恥を知れ」

 

 ドラコの肩がビクリと震えた。クラッブとゴイルでさえ縮こまり、上級生達も息を潜めて成り行きを見守っている。

 

 セラフィーナは椅子に深く腰掛けたまま、冷ややかに続けた。

 

「誤解のないよう言っておくが、私はポッターがどうなろうと知ったことではない。だが……」

 

 紅い瞳が細められる。

 

「決闘を口にしておきながら、自分で呼び出して密告するなど下劣にも程がある。私は貴様のその精神性に腹を立てているのだマルフォイ」

 

 ドラコは俯くことしかできず、セラフィーナは容赦なく続ける。

 

「戦う気が無いなら、最初から決闘などと軽々しく口にするな」

 

 彼女は小さく鼻で笑った。笑みは冷たく、嘲りに満ちている。

 

「そんな汚い手でポッターを追い落として、貴様は勝ったと胸を張れるのか?周囲がそれを認めるとでも?」

 

 長い沈黙が落ちた。純血主義者の多いスリザリンにおいて『決闘の誇りを穢した』という指摘は想像以上に重かった。周囲の上級生の何人かが、小さく頷いている。

 

 ドラコは俯いたまま、蚊の鳴くような声で呟いた。

 

「……悪かったよ」

 

 セラフィーナはしばらくドラコを睨み付けていたが、やがて興味を失ったように視線を外した。

 

「謝る相手が違うだろう」

 

 そう言い捨てて、ようやく朝食に手を伸ばす。張り詰めていた空気が緩み、周囲が安堵の息を漏らした。

 

 リオラが小さく苦笑しながら口を開く。

 

「お嬢様、案外お節介なのですね」

 

「うるさい。黙って食え、リオラ」

 

 セラフィーナはそう答えながらも、口元にわずかな笑みを浮かべていた。

 

 朝食後の呪文学の授業は、いつものように賑やかだった。フリットウィックが教壇の上に立って、甲高い声で指示を飛ばしている。

 

「では、今日は物を浮かせる練習をしましょう!二人一組になって、しっかり『ウィンガーディアム・レヴィオーサ』と発音してください!」

 

 教室中が羽根を浮かべようとする呪文を発する声で溢れる。ハーマイオニーは既に成功させて得意気な顔をし、ハリーとロンは苦戦しているようだ。

 

「基礎の基礎だな」

 

 セラフィーナが杖を優雅に、軽く振っただけで机の上に置かれていた羽根がふわりと浮かび上がった。しかも他の生徒よりも明らかに高く、安定している。

 

「む、無言呪文……!アウレリウス嬢!貴女は一年生で無言呪文が使えるのですか!?」

 

 フリットウィックは教壇の上で飛び跳ねるほど大興奮している。それもそのはず、通常無言呪文は6年生で習うものであり、一年生が使うなど普通は考えられないからだ。

 

「物を浮かす程度なら……ですがね。これ以上の高度な応用は、まだ不可能ですよ」

 

「何を言いますか!素晴らしい、動きも安定感も完璧です!一年生でここまでできる生徒は滅多にいませんよ!」

 

 周囲の生徒達がざわつき、一部の者たちは感心したような視線を送っている。ハーマイオニーは驚いたように目を見開き、その後で悔しそうに唇を結んだ。

 

 セラフィーナはそんな視線など気にも留めず、浮かべた羽根を優雅に操りながら、空いている手でオーロラの頭を優しく撫でる。

 

「退屈そうだな、オーラ」

 

 その様子を見ていたロンが、負けじと勢い良く杖を振る。

 

「ウィンガーディアム・レヴィオサー!」

 

 だがその瞬間、羽根ではなく机の端がガタンと跳ね上がる。

 

「うわっ!?」

 

 ロンが慌てて机を押さえ、周囲から笑い声が上がった。

 

「違うわロン。レヴィオーサよ。貴方、レヴィオサーになってる」

 

 ハーマイオニーが呆れたように指摘する。

 

「杖もただ振るんじゃなくて、ちゃんと手首を使わないと──」

 

「分かってるよ!いちいち偉そうに言うなよ!」

 

 ロンがムッとした顔で言い返し、教室の空気が少し気まずくなった。ハーマイオニーは傷付いたように表情を曇らせ、顔を背けた。

 

「……私はただ、教えてあげようとしただけなのに」

 

 セラフィーナはそのやり取りを見ながら、ふっと小さく笑った。

 

「若いな」

 

「お嬢様も同い年です」

 

 リオラが即座に突っ込む。その間にも、ロンはまだぶつぶつと文句を言っていた。

 

「いつも知ったかぶりばかりなんだよ……」

 

 ハリーは苦笑しながらも、どこか気まずそうにハーマイオニーの背中を見ていた。




皆悪い子じゃないんだけどねぇ
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