ハリー・ポッターと深紅の覇者   作:筋肉神

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体調治りました!


第26話 謎の人物

 ある日の昼食後。自由時間を利用してセラフィーナとリオラは図書館に来ていた。それぞれが静かに本を読み、オーロラは陽光の差し込む窓辺で気持ち良さそうに日向ぼっこをしている。

 

「なあ、リオラ」

 

「はい」

 

 リオラは読んでいた本に栞を挟み、顔を上げた。

 

「私は先程、信じられないものを見た」

 

 リオラが小さく首を傾げる。

 

「何を見たのですか?」

 

 窓辺のオーロラも片目だけを開き、興味深そうにセラフィーナへ視線を向けた。

 

「ポッターとウィーズリーがいた」

 

「はい」

 

「この図書館に……だ」

 

 数秒の沈黙。リオラにしては珍しく反応が遅れた。

 

「……それは確かに珍しいですね」

 

「そうだろう?ポッターだけならまだしも、ウィーズリーは図書館で読書などという柄ではないだろう」

 

 セラフィーナは紅い瞳を細め、僅かに口元を緩めた。

 

「何か調べ物でもしているのだろうか」

 

「かもしれませんね。グレンジャーならともかく、あの二人だけで図書館というのは少々想像し難いですが」

 

「奴等が自主的に図書館で調べ物か……何やらトラブルの予感がするな」

 

 ニヤリと口角を吊り上げ、セラフィーナは立ち上がった。

 

「お嬢様?」

 

「確認しに行く」

 

 リオラが止める間もなく、セラフィーナはオーロラを伴って書架の間を歩き始めた。図書館の奥へ進むと、程なくして見覚えのある黒髪と赤毛が視界に入る。

 

 二人は一冊の分厚い本を机の上に広げ、何やら真剣な表情で頁を捲っていた。

 

「貴様等、いつから読書が趣味になったんだ?」

 

「あ、アウレリウス……」

 

 二人は一瞬目を逸らすが、ロンはすぐにセラフィーナに向き直る。

 

「うるさいな……僕等だって読書ぐらいするよ」

 

「ほう、一冊の本を二人でか?随分と仲の良いことだ」

 

「うっ……そ、それは……」

 

 セラフィーナは二人の様子を見て、ますます口角を吊り上げた。

 

「怪しいな」

 

「あ、怪しくない!」

 

 ロンが即座に反論する。

 

「なら何を読んでいる?」

 

「答えられないのか?」

 

「うっ……」

 

 ロンは再び言葉に詰まる。隣のハリーも露骨に視線を逸らしていた。

 

「なるほど。何か隠しているのは確定のようだな」

 

 セラフィーナは満足そうに頷く。

 

「だから違うって!」

 

「安心しろ。私は他人の秘密を暴いて言い触らすような趣味は無い」

 

 そう言いながら、机の上に広げてある分厚い本に視線を落とす。

 

「だが、面白そうな話には興味がある」

 

 ハリーが小さく溜め息をつき、諦めたように口を開いた。

 

「……実は、四階の廊下のことで少し調べてるんだ」

 

 ロンが慌ててハリーの横腹を肘で突いたが、もう遅かった。

 

「四階の廊下……あの立入禁止区域のことか」

 

 その時、後ろから鋭い声が飛んできた。

 

「アウレリウス!」

 

 振り返ると、そこにはハーマイオニーが腕に何冊もの本を抱えて立っていた。彼女はセラフィーナを見て眉をひそめ、すぐにハリーとロンに詰め寄った。

 

「二人とも、何を話してるの?私達三人の秘密だって言ったじゃない!」

 

 ロンが肩をすくめる。

 

「だって、こいつがしつこくて……」

 

 セラフィーナはハーマイオニーの登場にも動じず、むしろ楽し気だった。

 

「グレンジャーも一緒だったのか。道理でこの二人が図書館にいたはずだ」

 

 紅い瞳を愉快そうに細め、近くの椅子に座る。

 

「実は私も四階の立入禁止区域は気になっていてな、先日そこに近付いてマクゴナガル教授に追い払われたばかりなんだ」

 

 ハリー、ロン、ハーマイオニーが同時に目を見開く。

 

「何をしに行ったの?」

 

「なに、散歩していたら偶然近くまで行ってしまっただけだ」

 

 その言葉に、三人は揃って疑いの目を向けた。

 

「お嬢様、私はその件について知らないのですが」

 

「お前はその時、一人で図書館に行っていたからな」

 

 リオラは数秒沈黙し、思い出したように口を開く。

 

「あの時ですか」

 

「うむ。それで、貴様等はいったいどんな面白いことに首を突っ込もうとしているんだ?」

 

 セラフィーナの紅い瞳が、再び三人を捉える。

 

「な、何もないぞ!」

 

 慌てるロンを見て、ハーマイオニーは額を押さえる。

 

「既にポッターが四階の廊下について調べていると吐いた後だ。それは通らんぞウィーズリー」

 

 ハーマイオニーは深く溜め息をついた。

 

「……もうここまで知られたら仕方ないわね」

 

 その言葉に、ロンが慌てて顔を向ける。

 

「お、おいハーマイオニー!」

 

「どうせ隠し切れないわ。少なくとも、この人相手には」

 

 ハーマイオニーは諦めたように肩を落とした。

 

「私達、ニコラス・フラメルという人について調べているの」

 

「ニコラス・フラメル?」

 

 セラフィーナは眉を上げる。腕を組み、考え込むように無言になる。

 

「その名前、昔母から聞いた気がするが……あまり興味のない話題だったから忘れてしまったな」

 

「私は聞いたことがありません」

 

「そう、貴女達でも知らないのね」

 

 ハーマイオニーは抱えていた本を机の上に置いた。

 

「私達も何日も調べているんだけど、全然見付からないの」

 

「図書館中の本を漁ってるんだ」

 

 ハリーが疲れたように言う。

 

「近代魔法史、著名魔法使い列伝、現代魔法界人物録……思い付く限り探したけど駄目だったの」

 

 ハーマイオニーは悔しそうに唇を噛んだ。

 

「名前だけは分かっているのに、その人物が何者なのか全然分からないの」

 

 セラフィーナは机の上に積まれた本に視線を落とす。確かに、人物を調べるなら間違ってはいない選択だ。

 

 だが──

 

「リオラ」

 

「はい」

 

 名前を呼ばれたリオラは、静かに一歩前に出る。

 

「お前ならどう探す?」

 

「人物録に載っていないのであれば、人物以外から探すのが定石でしょうか」

 

「人物以外?」

 

 ハーマイオニーがその言葉に食い付く。

 

「例えば魔法薬学、錬金術、古代魔法学などですかね」

 

「どういうこと?」

 

「その人物については知りませんが、恐らく一般人ではないでしょう。何らかの功績を残している可能性があるので、人物そのものではなく関わった分野から辿るのです」

 

 ハーマイオニーの目が僅かに見開かれる。

 

「残した功績から辿る……そうよ!名前で探して見つからないなら、他の調べ方をするべきだったんだわ!私ったら、なんで気が付かなかったのかしら!」

 

「あくまでも可能性の話ですがね。名前しか分からない以上、どんな分野に関わっていたかも不明ですので」

 

 ロンが不安そうな表情になる。

 

「それじゃまた最初からじゃないか」

 

「無論、それで見るかるという保証は無い」

 

 セラフィーナが即答した。

 

「だが、今のやり方よりは建設的だろう」

 

「……確かにそうだね」

 

 ハリーも納得したように頷く。セラフィーナは満足そうに腕を組み、立ち上がった。

 

「なら私は行く」

 

「え?」

 

 三人が同時に顔を上げる。

 

「もういいの?」

 

「十分だ」

 

 セラフィーナは踵を返して歩き出した。オーロラとリオラもその後ろに続く。

 

「進展があれば教えろ」

 

「……どうして?」

 

 ロンが怪訝な顔をする。

 

「面白そうだからだ」

 

 それだけ言い残し、セラフィーナは振り返らず図書館から出ていく。

 

 残された三人は、ようやく何か分かるかもしれないという希望と、何か分かったらまたセラフィーナが嗅ぎ付けてくるだろうという悩みの種の板挟みになり複雑な表情をしていた。




だんだん文字数多くなってる気がする。

多い方がいいのか、短い方がいいのか……
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