ハリー・ポッターと深紅の覇者   作:筋肉神

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箸休め回です


第27話 クリスマス休暇

 十二月も半ばを過ぎ、ホグワーツはすっかりクリスマスムードに包まれていた。

 

 大広間には巨大なクリスマスツリーが幾本も飾られ、天井には魔法で作られた雪が静かに降り続いている。窓の外には一面の銀世界が広がり、生徒達は来たる休暇の話題で持ち切りだった。

 

「今年は母さんがクリスマスプディングを作るってさ」

 

「いいなぁ。うちは叔父さん達も来るんだ」

 

「帰ったら真っ先に箒に乗るつもりだよ」

 

 食事をしながら楽しそうに話す生徒達を眺め、セラフィーナはふと呟いた。

 

「皆随分と浮かれているな」

 

「クリスマス休暇が近いですから」

 

 向かいに座るリオラが答える。

 

「家族や友人と過ごせる貴重な時間です。楽しみにするのも当然でしょう」

 

「ふむ」

 

 セラフィーナはナイフでソーセージを切り分けながら周囲を見回した。

 

 確かに大広間全体が普段よりも賑やかだ。普段は険しい顔をしている上級生達ですら、どこか機嫌が良さそうに見える。

 

「そういえば、母上から手紙が来ていたな」

 

「奥様はなんと?」

 

「父上がクリスマス休暇を取れなかったから、帰省はどちらでも構わないそうだ」

 

「旦那様が?珍しいですね」

 

「うむ。どうやら年末に闇祓いの大規模な戦闘訓練があるらしい」

 

 セラフィーナは肩を竦めた。

 

「母上は愚痴を聞かされたらしい。余程面倒なのだろうな」

 

「旦那様が愚痴を?」

 

「うむ。『クリスマスを潰してまでやる内容じゃねえよ』と一晩中ブツブツ言っていたそうだ」

 

 リオラは思わず苦笑した。

 

 スリザリンの長テーブルでも例外なく、他の寮と同じようにクリスマス休暇の話題で持ちきりだった。

 

「お前、帰省の準備は終わったか?」

 

「まだだよ。今日の授業が終わったら荷造りする」

 

「私なんて、家族から三通も手紙が来たわよ」

 

 セラフィーナは食事を終え、周囲をゆっくりと見回した。

 

「リオラ」

 

「はい」

 

「ホグワーツに入学して初めてのクリスマス休暇だ。私達も帰省しよう」

 

「かしこまりました。では、本日の就寝時間までには荷造りを済ませます」

 

 セラフィーナは軽く頷き、水を一口飲む。帰省すると聞いて、オーロラも耳を立てて喉を鳴らしている。

 

「母上が暇を持て余していることだろうからな」

 

「そうですね。奥様は、あれで結構一人が耐えられない人ですからね」

 

 リオラは即座に同意する。セラフィーナの母、イゾルデは非常に芯が強い女性であり、研究者気質でひとたび何かに没頭すると周りが見えなくなるが、孤独を嫌う性格でもある。

 

「帰ったら何をなさるのですか?」

 

「鍛錬だな。やはり談話室での早朝訓練だと物足りない」

 

「奥様の研究に付き合わされるかもしれませんね」

 

「確かにな。それはあり得そうだ」

 

 二人は顔を見合わせて小さく笑う。窓の外では、魔法ではない本物の雪が静かに降り続いている。

 

 その日の夜。

 

 セラフィーナとリオラは、寮の部屋で帰省の準備を進めていた。

 

「お嬢様、こちらの本はどうなさいますか?」

 

 リオラがベッドの上に積まれた本を見ながら尋ねる。入学以来読み進めていた、魔法史や呪文学の専門書である。

 

「持って帰る」

 

「全てですか?」

 

「全てだ」

 

 あまりにも迷いのない即答に、リオラは思わず額に手を当てる。

 

「流石に量が多過ぎるのでは?」

 

「問題ない。拡張呪文をかけた鞄がある」

 

「奥様のオリジナルですか?」

 

「そうだ。旅行や帰省に便利だろう?」

 

 結局、クリスマス休暇中にそんなに読み切れないということで半分ほどに減らす結論に落ち着いた。

 

 そんな二人を横目に、オーロラは荷物の上で堂々と寝転がって喉を鳴らしている。

 

「おい、お前の寝床ではないぞ」

 

 セラフィーナが抱き上げると、オーロラは不満そうに尻尾を揺らした。そんな様子を見てリオラが小さく笑う。

 

「オーラも帰省が楽しみなんですね」

 

「そうだな。久々に我が家の庭で走り回りたいだろう」

 

 荷造りが一段落した頃。セラフィーナは机に向かい、羊皮紙を広げた。

 

「奥様への返事ですか?」

 

「ああ」

 

 羽根ペンを走らせる。

 

『母上へ。

 

 クリスマス休暇は帰省することにしました。

 

 父上が不在なのは残念ですが、訓練なら仕方ないでしょう。

 

 ホグワーツでの生活は順調で、退屈はしていません。

 

 むしろ面白いことが多過ぎるぐらいです。』

 

 

「面白いこと、ですか」

 

「事実だろう?ここは退屈しない」

 

 動く階段、豪華な料理、興味深い授業、見ていて飽きない学友達。そして、トロールの侵入や四階の立入禁止区域。ハリー達が追っている謎、ニコラス・フラメルという人物。

 

 ホグワーツに入学してから僅か数カ月。それでも、セラフィーナ達が退屈を感じる暇は無かった。

 

「確かに、かなり慌ただしい数カ月でしたね」

 

「あぁ、これからが楽しみだ」

 

 手紙を書き終えたセラフィーナは封を閉じる。

 

 あと数日で帰省する。父は不在、母も恐らく研究室に籠っているだろうが、それでも久しぶりの実家である。

 

 そして数日後。クリスマス休暇が始まり、帰省する生徒達はホグワーツ特急に乗って帰省先へ向かっていった。

 

 一年生達にとって初めてのクリスマス休暇は、驚くほどあっという間に過ぎていった。




賢者の石終わるまであと何話かかるかなぁ
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