ハリー・ポッターと深紅の覇者   作:筋肉神

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今日も暑かったですね。そろそろ日中に執筆する時はエアコンフル稼働させてないと、パソコンが熱くなっちゃう。


第29話 無謀な三人組

 図書館の奥にある薄暗い席。普段から人気がなく、人の少ないこの場所は、今はセラフィーナ達が陣取っていることで半ば貸し切りのような状態になっていた。高い本棚に囲まれた空間は静寂に包まれ、遠くから時折ページを捲る音だけが聞こえてくる。

 

 セラフィーナとリオラはハリー達三人と向かい合うように座っていた。オーロラは話題に興味が無いのか、窓辺の日向で丸くなり、気持ち良さそうに尻尾を揺らしている。

 

「それで?」

 

 セラフィーナは頬杖をつきながら三人を見た。

 

「ニコラス・フラメルとは何者か、分かったのか?」

 

 その言葉を聞き、ハーマイオニーは抱えていた本を机の上へ置いた。

 

 長い時間をかけて図書館中の本を漁り続けた成果を、ようやく誰かに説明できる。その達成感が彼女の表情にはっきりと滲んでいる。

 

「ニコラス・フラメルは十四世紀初頭に生まれたフランスの魔法使いなの。それと、世界で唯一『賢者の石』の創造に成功した錬金術師よ」

 

 その説明に、セラフィーナの眉が僅かに上がった。隣のリオラも驚いたように目を瞬かせる。

 

「十四世紀初頭だと?」

 

 セラフィーナは思わず聞き返した。

 

「馬鹿な。何歳だと言う気だ」

 

「……少なくとも六百歳は超えているのでは?」

 

 リオラが小さく呟く。

 

 魔法界には長寿の魔法使いも存在する。しかし六百年という数字は流石に常識の範疇を超えていた。

 

 ハーマイオニーは力強く頷く。

 

「それが賢者の石の力らしいの。命の水を生み出し、あらゆる金属を純金に変えるという伝説の石よ」

 

 一度言葉を区切り、さらに続ける。

 

「その命の水を飲めば、不老不死になると言われているわ」

 

 その場に短い沈黙が落ちた。

 

 不老不死。古今東西、どれほどの人間が望み、どれほどの人間が追い求めてきた願望であることか。それを実現する石が実在する。しかも黄金まで生み出せるというのだから、その価値は計り知れない。

 

 セラフィーナは背筋を伸ばし、胸の前で腕を組んだ。

 

「なるほどな」

 

 紅い瞳が僅かに細められる。

 

「それで、その賢者の石が四階の立入禁止区域にあると?」

 

 セラフィーナの問いに、ハリー達三人は顔を見合わせた。

 

 確証がある訳ではない。だが、これまで集めた情報を繋ぎ合わせれば、その結論に辿り着くのは自然だった。

 

「確証は無いけど、可能性は高いと思うわ」

 

 最初に答えたのはハーマイオニーだった。

 

「フラッフィーが守ってるんだ」

 

 続いてハリーが口を開く。

 

「フラッフィー?」

 

 聞き慣れない名前にセラフィーナが首を傾げる。

 

「ハグリッドが飼ってる三頭犬だよ」

 

 ロンが答えた。

 

「僕達、一度あいつに食べられそうになったんだ」

 

「食べられそうに?」

 

 リオラが怪訝そうな顔をする。

 

 ハリー達は一瞬顔を見合わせる。どうやら全てを説明するつもりは無いらしい。

 

「……色々あったんだよ」

 

 ロンが曖昧に誤魔化す。

 

「ただ、その時に見たんだ。フラッフィーが床にある落とし戸みたいなものを守ってた」

 

「落とし戸?」

 

 セラフィーナが僅かに眉を動かす。

 

「うん。三頭犬が立っていた場所の真下にあったんだ」

 

「……なるほど」

 

 セラフィーナは小さく頷く。

 

「確かに、それなら賢者の石があの場所にあると考えるのは自然だな」

 

 ハーマイオニーも同意するように頷いた。

 

「もちろん確証は無いわ。でも、今ある情報を繋げるとそれが一番筋が通るの」

 

「ふむ」

 

 セラフィーナは腕を組んだまま椅子の背にもたれた。

 

「では次の疑問だな」

 

 三人が同時に顔を上げる。

 

「賢者の石がそこにあるとして、それが貴様等と何の関係がある?」

 

「え?」

 

「当然の疑問だろう。そんな伝説の石が学校にあるというのは驚くべきことだが、何故貴様等がそんな物に関わろうとする?どう考えても不自然だ」

 

 ハリー達は再び顔を見合わせた。先程までの説明とは違い、ここから先は自分達の推測になるからだ。

 

 最初に口を開いたのはハリーだった。

 

「……誰かが賢者の石を狙ってるかもしれないんだ」

 

「誰か、か」

 

 セラフィーナは静かに復唱する。

 

「不老不死と金をもたらす石だ。狙う者の一人や二人いて当然だろう」

 

 ハリーは小さく頷いた。

 

「うん。だから心配なんだ」

 

「ほう?」

 

「もし誰かが賢者の石を盗もうとしているなら、止めないといけない」

 

 その言葉にセラフィーナは僅かに眉を上げ、リオラも静かにハリーを見る。

 

「その誰か、に心当たりはあるのですか?」

 

 ハリー達は再び顔を見合わせた。そして今度はロンが口を開く。

 

「僕達は……スネイプだと思ってる」

 

 その名前が出た瞬間、セラフィーナの表情から僅かに笑みが消える。

 

「スネイプ教授?」

 

「あぁ」

 

 ハリーは真剣な顔で頷いた。

 

「クィディッチの試合の日、僕の箒が急に暴走したんだ」

 

「あぁ、そういえば暴走していたな」

 

「ハーマイオニーが見たんだ。スネイプが僕を見ながら何か呪文を唱えてた」

 

 ハーマイオニーも強く頷く。

 

「ずっとよ。試合の間ずっと」

 

 セラフィーナは何も言わない。ただ黙って続きを促した。

 

「それだけじゃない」

 

 今度はロンが言う。

 

「ハロウィンの頃、スネイプが脚を怪我してたんだ」

 

「怪我?」

 

「犬に噛まれたみたいな傷だった」

 

 ハリーが続ける。

 

「フラッフィーが守ってる場所に忍び込もうとして噛まれたんじゃないかって思ったんだ」

 

 話を聞き終えたセラフィーナは、しばらく何も言わなかった。やがて椅子にもたれたまま口を開く。

 

「なるほどな……お前達の考えは分かった。だが、一つ分からんことがある」

 

「分からないこと?」

 

 セラフィーナはゆっくりとハリー、ロン、ハーマイオニーの目を順番に見てから口を開く。

 

「仮に貴様等の推測が正しくてスネイプ教授が石を狙っていたとしよう。それで、何故貴様等が止めるのだ?」

 

 三人が同時に言葉を詰まらせる。

 

「まさか三人で力を合わせればスネイプ教授を止められるとでも思っているのか?自分達を過大評価しているのか、スネイプ教授を過小評価しているのか知らんが無謀としか言えんぞ」

 

「そ、それは……」

 

 三人の視線が泳ぐ。誰もまともな反論ができないでいる。

 

 それでも、誰一人として『やめる』とは言わなかった。ハリーは唇を引き結び、ロンは居心地悪そうに視線を逸らす。ハーマイオニーでさえ黙り込んでいる。

 

 だが、その表情から諦める気配は感じられない。

 

「……その無謀さは愚かだ。身の程を弁えぬ愚か者は早死にするぞ」

 

 セラフィーナの紅い瞳が細められ、口角が吊り上がり獰猛な笑みを浮かべる。

 

「だが、私はそういう無謀は嫌いではないぞ」




色んな作品に出てくる賢者の石。個人的にはハリポタの賢者の石って割と上位の性能してると思ってます
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