ハリー・ポッターと深紅の覇者   作:筋肉神

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気付けばもう30話!?



第30話 視野

「だが、私はそういう無謀は嫌いではないぞ」

 

 獰猛な笑みを浮かべるセラフィーナに、ハリー達は何とも言えない表情を浮かべる。

 

「もっとも、だからと言って貴様等の推測に同調する訳ではないがな」

 

「え?」

 

 ハリーが目を瞬かせる。セラフィーナは椅子にもたれたまま腕を組んだ。

 

「まず貴様等はスネイプ教授を疑っているが、根拠が弱い」

 

「なんでだよ。一番怪しいじゃないか」

 

 ロンが即座に反論する。しかしセラフィーナは落ち着いて話を続ける。

 

「まず一つ。クィディッチの際にポッターを妨害した件だが、これに関してはだから何だとしか言いようがない」

 

「え?」

 

「当然だろう。賢者の石を求めることと、ポッターの妨害をすることに何の繋がりがある?」

 

 ロンは何か言おうとして口を閉ざして俯く。

 

「……それは、きっと色々調べまわっている僕が邪魔だったんだ」

 

「馬鹿か貴様は。クィディッチがあったのは、まだ貴様等がニコラス・フラメルの名しか知らん時だろう。賢者の石という存在に辿り着いてすらいない者が何の邪魔になる」

 

 ハリーの反論もセラフィーナは即座に否定する。

 

「それなら、脚の怪我はどうなの?」

 

 言葉に詰まり俯いてしまったロンとハリーの代わりに、ハーマイオニーが口を開く。

 

「貴様等は傷だけ見れば、それがどんな存在によって付けられた傷かが分かるのか?それは素晴らしい才能だな」

 

 三人が揃って言葉に詰まる。

 

「犬に噛まれた傷のように見えた」

 

 セラフィーナは指を一本立てた。

 

「それだけだろう?」

 

「でも──」

 

「仮に犬に噛まれた傷だったとしても、それがフラッフィーだという証拠は無い」

 

 冷静に言葉を重ねる。

 

「まあ、貴様等グリフィンドール生から見たらスネイプ教授が好ましくない人間に見えるのも理解できる。特にポッターは魔法薬学の授業で目の敵にされているからな」

 

 その言葉に三人は意外そうな表情で顔を上げる。

 

「だが、それとこれとは別問題だ。貴様等は今、嫌いな人間だから怪しいと決めつけ、視野が狭くなっている」

 

「……確かに、そうかもしれないわ」

 

「おいハーマイオニー!」

 

 ハーマイオニーの言葉に、セラフィーナはニヤリと笑う。

 

「流石だなグレンジャー。やはり貴様は聡明だ」

 

「……褒めてるのよね?」

 

「無論だ」

 

 腕を組んだまま頷く。

 

「貴様等は嫌いな人間を懲らしめたくて調べ回っているのか?違うだろう。賢者の石を守るためだったはずだ。ならば個人的な感情のみで動くべきではない」

 

 三人は顔を見合わせる。その表情は三者三様だが、少なくとも今までのスネイプが石を狙っているという決めつけは薄れてきている。

 

「じゃあ、君はスネイプじゃないと思うの?」

 

 ハリーが尋ねる。セラフィーナは少し考えた後、小さく肩を竦めた。

 

「それは知らん」

 

「は?」

 

 ロンが間の抜けた声を出す。

 

「私はあくまでも、貴様等の推測の不自然さを指摘しただけだ。スネイプ教授が石を狙っているとも、狙っていないとも言っていない」

 

「……じゃあ、どうすればいいんだよ」

 

 ロンが不満そうに言う。

 

「貴様等の行動を責めている訳ではない。ただ、推測と事実を混同するなと言っている」

 

「推測と事実?」

 

 ハーマイオニーがその言葉に反応する。

 

「あぁ、そうだ」

 

 セラフィーナは指を立てながら整理を始めた。

 

「まず事実その一。ニコラス・フラメルは実在する」

 

 一つ目の指を立てる。

 

「事実その二。四階の立入禁止区域にはフラッフィーという三頭犬がおり、その下に落とし戸がある」

 

 二本目。

 

「事実その三。クィディッチ中にポッターの箒が暴走した」

 

 三本目。

 

「そして事実その四。スネイプ教授は脚を怪我していた」

 

 四本目を立てる。

 

「ここまでは問題ない」

 

 三人は黙って頷いた。少なくとも、それらは自分達が実際に見聞きした事実だ。

 

「では推測は何だ?」

 

 今度は左手の指を立てる。

 

「賢者の石は落とし戸の下にある」

 

「スネイプ教授が石を狙っている」

 

「箒を暴走させたのもスネイプ教授」

 

「スネイプ教授の脚の怪我はフラッフィーによるもの」

 

 一つずつ挙げていく。

 

「これ等は全て推測だ。ちなみに賢者の石が実在するか否かについては一旦脇に置く。実在しないのであれば、そもそもこの議論自体が成立せんからな」

 

「お嬢様、それは賢者の石が実在しなかった場合面白いことが一つ減るから事実であってほしいというお嬢様の個人的な願望では?」

 

「うるさいぞリオラ」

 

 ハリー達は揃って黙り込んだ。反論しようにも、言葉が出てこない。

 

「……じゃあ、僕達は間違っているの?」

 

 しばらく沈黙が流れた後、ハリーが口を開く。その声には僅かな悔しさが滲んでいた。

 

「そうは言っていない」

 

 しかし、セラフィーナは即座に首を横に振る。

 

「先程も言っただろう?視野が狭くなっていると。一度スネイプ教授への悪感情を忘れ、他の可能性にも目を向けてみろと言っている」

 

「他の……可能性」

 

「そうだグレンジャー。感情、特に怒りや恨みは視野を狭め思考が単純化する」

 

 セラフィーナは組んでいた腕を解き、机の上に肘を置いた。

 

「敵を見つけたと思い込めば楽だからな。全てをそいつのせいにできる」

 

 三人は黙って話を聞いている。

 

「だが、現実はそう単純ではない」

 

 紅い瞳が静かに細められる。

 

「仮にスネイプ教授が石を狙っていたとしても、そうではないとしてもだ。貴様等がスネイプ憎しで勝手に結論を決めてしまえば、本当に重要な情報を見落とす可能性がある」

 

 ハーマイオニーがゆっくりと頷く。

 

「……犯人捜しより先にするべき事があるってことね」

 

「その通りだグレンジャー」

 

 セラフィーナはニヤリと笑って立ち上がる。

 

「さて、休暇明け早々に随分と面白い話が聞けたものだ」

 

「ちょっと待ってアウレリウス」

 

 満足そうに立ち去ろうとするセラフィーナを、ハリーが呼び止める。

 

「なんだ?」

 

「そこまで色々考えられるならさ、君も僕達と一緒に調べてよ」

 

「そうだよ。君が調べたら早いじゃん!」

 

 ハリーとロンの言葉にハーマイオニーが口を挟もうとするが、セラフィーナが手で制する。

 

「それはお断りだ」

 

「どうして?」

 

「私はただ面白いから貴様等の話を聞き、気になった部分を指摘しているだけだ。個人的には賢者の石がどうなろうと興味は無いのでな」

 

 それだけ言って踵を返し、オーロラとリオラを引き連れて図書館から出ていく。後には呆然とするハリーとロン、そして手で額を押さえるハーマイオニーだけが残された。




30話でこの辺ってのは物語の進行としては遅いよなぁ……でもまあ、文字数少ないからね!

文字数が少なくて、ストレス無くサクサク読める作品を目指しています!
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