ハリー・ポッターと深紅の覇者   作:筋肉神

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一日二度の更新だぁ!

毎回は無理だけど


第31話 友人

 クリスマス休暇が明けて数日。そろそろ休暇中の話題が尽き始めた頃、生徒達の関心は休暇前と同じくセラフィーナに戻っていた。

 

 入学初日に四年生を殴り倒し、ハロウィンでは山トロールを一騎打ちで仕留めたスリザリンの一年生。そんな目立つ存在が話題に上がらないはずがなく、噂好きの生徒達によって所々尾ひれの付いた話が広まり、ホグワーツのそこかしこで語られていた。中には『上級生十人相手に勝った』だの『トロールを一撃で殺した』だのと、明らかに過剰に誇張された話まで混じっている。

 

「見ろよ、アウレリウスだ」

 

「山トロールを倒したんだろ?」

 

「笑いながら殴り続けたらしい」

 

 そこかしこから聞こえる噂話が、廊下を歩くセラフィーナの耳に入る。今や彼女に直接話し掛ける生徒と言えば、ハリー達三人組かドラコぐらいのものだ。

 

 もっとも、当の本人は避けられていることも噂話も特に気にした様子は無い。隣を歩くリオラだけが小さく溜め息を吐いた。

 

「相変わらずですね」

 

「何がだ?」

 

「お嬢様に対する周囲の態度です」

 

 セラフィーナは足を止めることなく肩を竦める。

 

「そんなに気にすることでもないだろう。別に侮辱されている訳でもあるまい」

 

「それは、そうなのですが……」

 

 リオラは曖昧に言葉を濁した。

 

「私は気になります。同年代の友人というものは大切だと、奥様も仰っていましたよ」

 

「友人か。ふむ、マルフォイやポッター達は友人とは違うのか?」

 

「少なくとも、お嬢様がその認識である間は違うと思いますよ」

 

「どういう意味だ?」

 

 リオラは、どう説明したものかと言葉に詰まった。

 

 目の前の主人は、戦闘や魔法の話ならば大抵一度で理解する。母親に似て基本的には頭脳明晰であるし、記憶力もずば抜けて高い。しかし、幼い頃からの過酷な修行とアウレリウス家の実力主義。そして本人の生まれ持った性質が合わさったせいで、こと人間関係に関しては驚くほど無頓着なのだ。

 

「まず友人の定義ですが、これはご存知ですか?」

 

「ふむ、言われてみれば詳しくは知らんな。戦闘や魔法とは特に関係のないことだと思っていたからな、学ぶのを怠っていた」

 

 あまりにも堂々とした返答に、リオラは思わず額に手を当てた。

 

「そこは恥じてください」

 

「何故だ?」

 

「何故でしょうね……」

 

 深い溜め息が漏れる。

 

「友人というのは、互いに親しく交流し、信頼関係を築いた親族以外の相手を指します」

 

「ふむ。ではお前はどうなんだ?専属使用人ではあるが、血のつながりは無いから親族とは言えんだろう」

 

「それは……そうですが、この場合は私を除外して考えてください」

 

「なるほど」

 

 セラフィーナは真面目な顔で頷く。

 

「難しいな」

 

「そこまで難しい話でしょうか……」

 

 リオラが半ば呆れたように呟いた、その時だった。

 

「おやおや」

 

 聞き覚えのない声が前方から聞こえた。二人が視線を向けると、一人の少年が壁にもたれ掛かるように立っていた。オーロラは一目見た後、興味なさそうに大きな欠伸をして視線を外した。

 

 緑と銀のネクタイを締めたスリザリン生。やや長めの金髪を後ろへ流し、整った顔立ちには余裕の笑みが浮かんでいる。セラフィーナやリオラと比べてもかなり背が高いことから、少なくとも同じ一年生ではなさそうだ。

 

「噂のアウレリウス嬢が、まさか友人の作り方で悩んでいるとはね」

 

 少年は肩を竦める。

 

「これは中々貴重な場面を見てしまったね」

 

 セラフィーナは少年を観察する。

 

「貴様は誰だ」

 

 率直な一言。少年の笑みが僅かに引き攣る。

 

「酷いな。私は君のことをよく知っているというのに」

 

「質問に答えろ」

 

「……」

 

 数秒の沈黙。そして少年は小さく溜め息を吐いた。

 

「私は三年生のカシアン・ロズウェル。以後お見知りおきを、セラフィーナ・アウレリウス」

 

 そう言って胸に手を当て、芝居がかった礼をする。

 

「しかし、私を知らないとは驚いたよアウレリウス嬢。聖28一族でこそないが、ロズウェル家は立派な純血の家系なのだから」

 

「そんなことは重要ではない。何か用があって話し掛けたのだろう?」

 

 そのあまりにも素っ気ない返答に、カシアンは一瞬だけ目を丸くしてから苦笑する。

 

「……噂通りだね。遠回しな会話が嫌いらしい」

 

 カシアンは壁から背を離し、セラフィーナの前まで歩いてくる。

 

「単純な興味だよ」

 

「興味?」

 

「あぁ、そうだよ。四年生を素手で叩きのめし、山トロールを一人で殺した一年生……興味を持たない者がいると思うかい?」

 

 セラフィーナは胸の前で腕を組み、納得したように頷く。

 

「なるほどな。確かに私も、私以外にそんな者がいたら興味は持つかもしれんな」

 

 カシアンは一瞬呆けたような顔をした。

 

「噂を否定はしないんだね。噂というものは大抵誇張されるから、半分くらいは嘘だと思っていたよ」

 

「半分は誇張だぞ」

 

「そうなのかい?」

 

「殴り倒した四年生は一人だし、トロールも一撃で殺した訳ではない。私も無傷ではなかったしな」

 

 カシアンは興味深そうに目を細めた。

 

「なるほどね。君は本当に面白いよ、アウレリウス嬢」

 

 満足そうに微笑みながらそう言い、踵を返す。

 

「今日は満足したよ」

 

「もう行くのか?」

 

「用は済んだからね」

 

 カシアンは数歩進んだ後、ふと思い出したように振り返る。

 

「あ、そうだ。一つ忠告を」

 

「なんだ?」

 

「君の噂はまだまだ広がる」

 

 カシアンは意味ありげに笑った。

 

「中には面白く思わない者もいるだろうね。そしてそういう者達が取る手段は、何も正面からの戦闘だけではない」

 

「ほう?」

 

「まあ、その時はその時だね」

 

 そう言って片手を軽く振る。

 

「また会おう、アウレリウス嬢」

 

 そのままカシアンは大広間の方に姿を消していく。セラフィーナは暫くその背中を見送っていた。

 

「変な男だったな」

 

「比較的まともな方だったと思いますよ」

 

「そうか?」

 

「少なくとも、お嬢様よりは」

 

 セラフィーナは納得いかない様子で眉を顰める。そんな主人を見ながら、リオラは小さく笑った。




今回は息抜き回でした
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