ハリー・ポッターと深紅の覇者   作:筋肉神

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実はロンって結構好きなキャラなのです

それと、私事ですがこの小説の第一話を投稿してから本日(2026/6/17)でちょうど一カ月を迎えました!

これからも可能な限り更新頻度を落とさず、自分の書きたいものを書いていく予定です。完全な自己満足作品ではありますが、皆様これからも楽しんで読んで頂けると幸いです!


第37話 ロン・ウィーズリー

 静寂。互いの軍勢が睨み合うように、白と黒の駒が向かい合う。それはさながら開戦間近の戦場のようだ。

 

 ロンは迷いの無い表情で、ナイトの上から盤面全体を見渡した。

 

「白が先手だ」

 

 そう呟いた直後、白のポーンが一体前進する。

 

「来た……」

 

 ロンが小さく息を吐く。

 

「ロン、大丈夫?」

 

「うん、大丈夫」

 

 ハリーが不安そうに声をかけるが、ロンは盤面から目を離さず短く答えた。

 

「ポーン、E4」

 

 黒のポーンが前進する。それに応じるように白の駒も動き、ロンも迷わず指示を出して駒を動かす。

 

 盤外からその様子を見つめているセラフィーナは、静かに腕を組む。

 

「これは、思ったよりかなり厄介な戦いだな」

 

「そうなのですか?」

 

「うむ。チェスに限らず、勝負事では相手が取るに足らない雑魚でない限り必ずと言っていいほど心理戦が絡んでくる」

 

 リオラは静かに頷く。

 

「そうですね。相手の目線の動き、呼吸、表情など全て有益な情報となり得ます」

 

「だが、このチェスで相手の心理は読めない」

 

「……そういうことですか」

 

「駒の動きから相手の狙いを読むことはできる。だが相手の表情や仕草が分からない勝負というのは、想像以上に厄介なはずだ」

 

 リオラは心なしか不安そうにロンを見る。彼女にとってロンの印象はかなり薄い。少なくとも、これまで特筆すべき才能を目にしたことは無かった。

 

「それでもあいつは迷わないな」

 

 セラフィーナが盤面を見ながら呟く。

 

「え?」

 

「普通なら考える時間が必要だが、あいつは違う。相手が動けば間髪入れず指示を飛ばして駒を動かしている」

 

 リオラも視線を向ける。

 

「確かに……」

 

「中々できることではない。普段の言動から侮っていたが……どうやら評価を改める必要があるな」

 

「……そうですね」

 

 その言葉に、リオラは静かに微笑みながら頷いた。

 

 そして盤上では、最初の激突が起こる。

 

 白のポーンが黒のポーンを打ち砕いた。轟音が響き、石片が飛び散る。巨大な駒が粉々に砕け散った。

 

「うわっ!」

 

「キャッ!?」

 

 ハリーとハーマイオニーが思わず声を上げる。しかし、普段なら一番臆病であるはずのロンは一切声を上げない。

 

「気にするな。チェスじゃ当たり前だよ」

 

 そして次の指示を出す。その口調には一切の迷いが無く、まるで何十手も先まで見えているかのようだ。

 

  白のクイーンが斜めに滑るように前進する。それを見た瞬間、ロンは即座に声を飛ばした。

 

「ハリー、ビショップをE5へ!」

 

「分かった!」

 

 ハリーの乗るビショップが盤上を滑るように移動する。

 

 直後、白のナイトが飛び出した。

 

「ナイトが来る!」

 

 ハーマイオニーが声を上げる。だがロンは慌てない。

 

「ルーク、D1!」

 

「えっ?今?」

 

「いいから!」

 

 ハーマイオニーが指示通りに動く。

 

 次の瞬間、白のナイトが黒のポーンを打ち砕いた。轟音と共に石の破片が飛び散る。

 

「ひっ……!」

 

 ハーマイオニーが息を呑む。

 

 しかしロンは盤面から目を離さない。

 

「想定通りだ」

 

「想定通り?」

 

 ハリーが振り返る。

 

「あのナイトは囮だ。本命はクイーン」

 

 そう言った直後だった。

 

 白のクイーンが一直線に前へ出る。

 

 だが、その進路には既にハーマイオニーのルークがいた。

 

 白のクイーンは動きを止める。

 

「止まった……?」

 

「ロンが先に読んでたのよ」

 

 ハーマイオニーが驚いたように呟く。しかしロンは当然のように頷いた。

 

「相手が人間なら別だけど、チェスの定石はそう簡単に変わらない」

 

 そして再び指示を飛ばす。

 

「ナイト、F6」

 

 巨大な黒のナイトが前進する。その姿を見ていたセラフィーナは、僅かに口元を吊り上げた。

 

「なるほど」

 

「お嬢様?」

 

「本当に強いな」

 

 セラフィーナは盤面から目を離さない。

 

「少なくとも私では、あの速度で指揮はできん」

 

「……そこまでですか」

 

「チェスの知識があるだけでは不可能だ。盤面全体を把握し、相手の狙いを読み、自軍の動きを決めている」

 

 紅い瞳がロンを見据える。

 

「あれは明確に積み上げた技術だ」

 

 その後、盤上の戦いは激しさを増していく。

 

 白の駒が砕ける。

 

 黒の駒が砕ける。

 

 轟音と共に石片が飛び散り、その度にハリーとハーマイオニーは身を強張らせた。

 

 だがロンだけは違う。冷静に盤面全体を見渡しながら、次々と指示を飛ばしていく。

 

「ビショップ、G5」

 

「ナイト、E5」

 

 迷いは一切無かった。そして気付けば、白の軍勢は大きく数を減らしていた。

 

「これは、勝っているのか?」

 

 セラフィーナが尋ねる。

 

「恐らく。少なくとも互角以上かと」

 

 リオラが答える。

 

 その時だった。ロンの表情が明確に変わる。彼の視線が盤面の一点で止まり、数秒。そして小さく息を呑んだ。

 

「……あ」

 

 小さな声。しかしその声は妙によく響いた。

 

「どうしたの?」

 

 ハーマイオニーが尋ねる。ロンは盤面を見つめたまま口を開く。

 

「勝ち方が分かった」

 

 その言葉に、ハリーとハーマイオニーの表情が明るくなる。

 

 しかし、続く言葉で凍り付いた。

 

「ただし、誰かが取られる」

 

 沈黙。ロンは静かに白のクイーンを見る。

 

「それは僕だ」

 

「何言ってるんだ!」

 

 ハリーが叫ぶ。

 

「他に方法は無いんだ」

 

 ロンは首を振る。

 

「僕が囮になる。その隙にハリーがキングを取るんだ」

 

 ハーマイオニーが青ざめる。

 

「そんなの駄目よ!」

 

「口を挟むな、グレンジャー」

 

 セラフィーナが口を開く。その声はいつもより低く、有無を言わせぬ迫力がある。

 

「チェスとは言え、これは紛れもなく戦場だ。犠牲無く勝てるとでも思っていたのか?」

 

 声を荒げている訳ではない。しかしその言葉には静かな重みがある。

 

「そ、それは……」

 

「この場においての指揮官はウィーズリーだ。ならばその判断に従う義務がある」

 

「アウレリウス……」

 

 ハリーが振り返る。セラフィーナは盤面から目を離さない。

 

「勝つために必要な犠牲なら受け入れろ」

 

「でも!」

 

「戦場で全員生還など幻想だ」

 

 静かな声だった。だが誰も反論できない。

 

「ウィーズリー」

 

「……なに?」

 

「その手で本当に勝てるのだな?」

 

 ロンは盤面を見る。そして迷わず答えた。

 

「勝てる」

 

 セラフィーナは小さく笑った。

 

「ならやれ」

 

 その一言で空気が決まる。

 

「……ナイト、H3」

 

 黒のナイトが前進する。そして白のクイーンが動き、黒のナイトに向けて巨大な石剣を振り下ろす。

 

 轟音。

 

 ナイトが粉砕される。

 

「ロン!!」

 

 ハリーが叫ぶ。ナイトが砕かれた衝撃でロンは吹き飛ばされ、床へ激しく叩き付けられた。

 

「ロン!」

 

「動くな!」

 

 駆け寄ろうとしたハーマイオニーを、ハリーが制止する。

 

「ゲームはまだ、続いているんだ」

 

 ハリーは黒のビショップを前進させ、白のキングの目前に辿り着く。

 

「チェックメイト」

 

 静寂。そして次の瞬間、白のキングが剣を捨てた。

 

 戦いが終わった後、ハーマイオニーが即座にロンに駆け寄る。

 

「ウィーズリーは生きているか?」

 

「……大丈夫、気を失っているだけみたい」

 

「そうか。素晴らしい戦いだったぞ、ロン・ウィーズリー」

 

 セラフィーナはそれだけ言って扉に向かって歩き出す。

 

「グレンジャーはウィーズリーを介抱していろ」

 

「……分かったわ」

 

「行くぞ、ポッター」

 

 ハリーはロンを見て一瞬だけ迷ったが、意を決して頷く。

 

「うん。終わらせに行こう」




映画版を好きな時に観られる……サブスクって素敵
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