ハリー・ポッターと深紅の覇者   作:筋肉神

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第45話 戦いの終わり

「……新たな殺人」

 

 ダンブルドアの言葉を小さく繰り返す。そして短く息を吐く。

 

「なるほど……話が合わない訳だ。つまり校長は、この戦いを殺し合いではなく殺人者から身を守る為の防衛線と解釈していると?」

 

 その言葉にダンブルドアは小さく頷く。

 

「そうじゃ」

 

「……気に入らない」

 

 小さく呟く。その声には明確な怒りが込められていた。

 

「校長、貴方の言葉には説得力がある。校長と生徒という立場、大人と子供、そして一般的な倫理観……全ての観点から見て正しいのは貴方で、私は間違っているのでしょう」

 

「セラフィーナ、それは──」

 

「だが!」

 

 ダンブルドアの言葉はセラフィーナの叫びに遮られる。

 

「貴方にそんな事をいう権利は無い」

 

 ハリーが息を呑み、マクゴナガルの表情が険しくなる。

 

「敵の罠にまんまと嵌まり、生徒が命懸けの死闘を繰り広げた後に駆け付けた無能の分際で教師面をするな!その上更に勝負に水を差すという……侮辱するのも大概にしろ!!」

 

 怒り、殺気、憎悪。セラフィーナの心の底からの叫びが部屋全体に反響する。

 

「ミス・アウレリウス!」

 

 マクゴナガルが思わず声を上げる。スネイプも眉をひそめてセラフィーナを睨む。

 

「……口が過ぎるな。言葉を慎め小娘」

 

「言葉を慎め?クィレルの暗躍を止められず、まんまとこんな場所にまで侵入された無能が教師面して偉そうにほざくな!!」

 

「貴様……」

 

 スネイプが杖を強く握り締める。

 

「待つのじゃセブルス」

 

 ダンブルドアはスネイプを手で制する。

 

「君の怒りはもっともじゃセラフィーナ。ワシが間に合わなんだのも、そのせいで君達生徒を危険な目に遭わせてしまったのも事実じゃ」

 

 その声はいつも通り穏やかではあったが、言葉の端々に後悔が滲んでいる。

 

「ワシがもっと早く動いておれば君達を危険な目に遭わせることも、クィリナスをこんな姿にさせることも、ヴォルデモートを逃がすこともなかったかもしれん」

 

 静かに、そして悲しみを宿した瞳をセラフィーナに向けながら続ける。

 

「後悔しておるよ。ワシはいつも最良の結果を望み、その度に後悔しておる。……それを何十年も繰り返してきた。無能と呼ばれても仕方ないのかもしれんのう」

 

「アルバス!そのようなことは……!」

 

「よいのじゃ、ミネルバ」

 

 怒りに染まる深紅の瞳と、悲しみを宿した蒼い瞳が交差する。

 

「じゃからのう、ここでみすみす君を殺人者にして新たな後悔を増やしたくはないんじゃよセラフィーナ」

 

「……後悔、か」

 

 セラフィーナは小さく呟く。その瞳に宿る怒りは未だ消えない。

 

「随分と便利な言葉だ。全てが終わった後なら、誰でも口にできる。その上同情を引いて相手の精神を揺さぶるのに最適だ」

 

 その言葉にリオラが一歩前に出る。

 

「お嬢様、それは違います」

 

「……リオラ?」

 

「お嬢様。私はお嬢様がクィレルを殺すことに賛成も反対もしません」

 

 ハリーが驚きで目を見開く。

 

「貴女が殺すと決めたのなら、それが正しいのでしょう。ですが今の発言は使用人として、幼い頃から共にいる者として看過できません」

 

「……今の発言?」

 

「はい。貴女は今校長の後悔を便利な言葉、そして同情を引いて相手の精神を揺さぶるのに最適と切り捨てました。お嬢様らしくありません」

 

 いつものように淡々とした口調。しかしその表情は心なしか悲しそうだった。

 

「お嬢様は今、勝負に水を差された怒りで意地になっているだけです。私の知っているお嬢様は、敵でもない人間の感情を踏みにじるような発言はしません」

 

「……」

 

「意地になって悪ぶらないでください。どうしても勝負に水を差されるのが嫌なら、アウレリウス家の人間らしく真正面から校長達を突破してみせればいいではありませんか」

 

 オーロラも静かにセラフィーナを見つめる。

 

「……それに、私もオーラもお嬢様が怒りに飲まれる姿を見たくはありません」

 

「……」

 

 沈黙。実際には数秒かもしれないが、まるで永遠にも感じる長く重い沈黙が続いた。

 

 そして──

 

「……はあああぁぁぁ」

 

 怒りと不満を全て吐き出したような、深く長い溜め息。

 

 そしてゆっくりと杖を懐にしまう。

 

「……これで満足ですか、校長」

 

「うむ。ありがとう」

 

 ダンブルドアは穏やかに笑う。

 

「終わった……?」

 

 張り詰めていた空気が緩み、ハリーは全身から力が抜けてその場にへたり込む。

 

 マクゴナガルも安堵の息を漏らしながら杖をしまう。

 

「全く……心臓に悪い生徒ですね。貴女のご両親にも随分苦労させられましたが、今日はそれ以上でした」

 

 一方、スネイプはクィレルの元へ歩み寄る。

 

「ふん、腹部を貫かれてまだ生きているとは。しぶとい男だ」

 

 そんな中、セラフィーナは少しふらつく足取りでダンブルドアに近寄る。

 

「校長、一ついいですか?」

 

「ふむ。何かね?」

 

「私は貴方の『殺すな』という我儘に付き合ったのです。賢者の石を守ったこと、ヴォルデモートを退けたことと併せて当然何かしらの見返りはあるのでしょうね?」

 

 深紅の瞳を細めてニヤリと笑う。

 

 ダンブルドアは一瞬だけ面食らったようにきょとんとした顔をした。

 

 そして──

 

「ほっほっほっ!強かじゃのう。そこはイゾルデに似たようじゃな」

 

 珍しく豪快に笑った。重苦しい空気は完全に消え去り、ハリーも安堵で表情を緩める。

 

「そうじゃのう、確かに今夜君はそれだけの働きをした。相応の見返りを求める権利は十分にある」

 

「では、一つ私の望みを叶えて頂きたい」

 

「ふむ。クィリナスを殺させろという願いでなければよいのじゃがのう」

 

「流石の私もそこまで執念深くはないですよ」

 

 そう言って真っ直ぐにダンブルドアを見る。

 

「では、どんな望みかのう?」

 

「ホグワーツには、使われていない空き部屋が沢山ありますよね?その中の一つを私専用の研究室にさせてください。母と同じく、魔法薬学の研究や独自魔法の研究をしたいので」

 

「研究室、か」

 

 ダンブルドアは少しだけ考え込むように髭を撫でる。

 

「確かに使われておらん部屋はいくつもある。君ほどの才能なら、その願いも理解できる」

 

 少し笑う。

 

「よかろう。ただし条件がある」

 

「条件?」

 

「うむ。まず危険性の高い研究をする時は事前に報告することじゃ。魔法薬学はセブルス、独自魔法はワシにのう。それと道具や材料の持ち込みは認めるが、当然違法な材料は認めん」

 

「妥当ですね」

 

 セラフィーナは軽く頷く。

 

「あぁ、そうじゃ。それからのう、研究に多少の失敗は付き物じゃがくれぐれもホグワーツを吹き飛ばさん程度にのう」

 

「爆発騒ぎを起こしたら百点減点します」

 

 マクゴナガルが厳しく言い放つ。

 

「善処します」

 

「うむ。では契約成立じゃな……クィリナスを医務室に運ぶとしようかのう」




戦闘で丸々3話、思想バトルで丸々3話使ったクィレル戦がようやく終わりました。

書いててとても楽しかったです
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