ハリー・ポッターと深紅の覇者   作:筋肉神

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百味ビーンズは美味しくなかった…


第5話 ホグワーツ特急

 蒸気を噴き上げるホグワーツ特急の車内は、既にかなり賑わっていた。笑い声、梟の鳴き声、トランクを押し込む音。新入生らしき子供達が緊張と興奮の入り混じった顔で通路を歩いていく。

 

「お嬢様、無人のコンパートメントを見つけました」

 

「6人掛けか。よし、そこに座るか」

 

 リオラが扉を開けてセラフィーナとオーロラがコンパートメントに入る。6人掛けだけあって2人と一匹だとかなり広く感じる空間である。

 

「良い席が空いていたものだな。運が良い」

 

「はい。お嬢様、お荷物はどうされますか?」

 

「構わんよ。それほど大荷物でもないからな」

 

 小さめのトランクを足元に置き、膝の上にオーロラを乗せて優しく撫でる。リオラはセラフィーナの隣に座って本を開く。

 

 コンコン。

 静かなノック音が響く。

 

「入ってもいいか?」

 

 扉の向こうに立っていたのは、ドラコ・マルフォイだった。その後ろには大柄な2人の少年が立っている。

 

「構わんぞ。ちょうどあと3人分席が空いているからな」

 

 セラフィーナがそう答えると、ドラコは扉を開けて中へ入る。だが部屋へ足を踏み入れた瞬間、その視線は自然とオーロラへ向いた。

 

「……」

 

 オーロラはドラコの視線など気にも留めず、黄金に近い金白色の長毛を揺らしながら膝の上でゆっくりと深紅の瞳を細める。

 

「相変わらず凄いな、その猫……」

 

「猫ではなく猫型の魔法生物だ。レガリア・アウルムと言ってな?個体数、知性、戦闘力、魔力。全てがドラゴンに匹敵するとまで言われている。もっとも、まだ子供だから伝承ほどの力は無いがな」

 

「ど、ドラゴンに匹敵……?」

 

 ドラコはオーロラから目を離せない。ダイアゴン横丁でも感じていたが、近くで見ると異様な威圧感がある。それがドラゴンに匹敵する力を持つと言われた今、冷や汗が大量に噴き出る感覚がドラコ達を襲っている。

 

 だがオーロラ本人は退屈そうに欠伸をしている。

 

「座らないのか?」

 

「あ、あぁ……」

 

 コンパートメントに入ろうとするが足が動かない。オーロラから威嚇されている訳ではないし、そもそもオーロラはドラコ達の存在を特に気にしていない。しかし、そこにいるだけで放たれている威圧感と先程の話。ドラコは震える足を何とか押さえながら取り繕う。

 

「……やっぱり別の所に座るよ。クラッブとゴイルが大きいから狭くなってしまうだろうしね」

 

 そう言って扉を閉め、逃げるように通路を歩いていく。

 

「なんだ臆病だな。見たかリオラ、奴ら威嚇もしていないオーロラに気圧されて逃げて行ったぞ」

 

「お嬢様、普通の11歳の少年少女なら正常な反応ですよ」

 

「ふむ、そうなのか……」

 

 列車が大きく揺れる。

 

 その時、通路側から騒がしい声が聞こえてきた。

 

「空いてる席ない!?」

 

「だから言っただろ、もっと早く探せって!」

 

 そしてノック音の後に扉が遠慮がちに開く。

 

「えっと……ごめん、ここ空いてる?」

 

 扉の隙間から顔を覗かせたのは、黒髪に丸眼鏡の少年。そしてその隣には赤毛の少年が立っていた。

 セラフィーナは2人を一瞥する。先程キングズ・クロス駅で見たハリー・ポッターと、ウィーズリー家の中の1人だった。

 

「構わん。好きに座れ」

 

「助かったぁ……」

 

 赤毛の少年が心底安心したように息を吐く。どうやらかなりの数のコンパートメントを回ってきたらしい。

 

 2人が中に入った直後。

 

「うわっ!?」

 

 オーロラが視界に入った赤毛の少年が肩を跳ねさせた。

 

「な、なんだそれ……」

 

「オーロラだ。私はオーラと愛称で呼ぶがな」

 

「いや名前じゃなくて!」

 

 思わず叫ぶ赤毛の少年。その隣でハリーは目を丸くしながらオーロラを見つめていた。

 

「……綺麗だね」

 

 ぽつり、と。

 自然に漏れたその言葉に、セラフィーナの深紅の瞳が僅かに細まる。

 

 恐怖ではない。

 

 驚愕でもない。

 

 純粋な感嘆。

 

 それは今まで周囲の魔法族がオーロラへ向けてきた如何なる感情とも異なっていた。

 

「貴様、面白いなハリー・ポッター」

 

「え、名前……」

 

「ふん、赤子でもなければ貴様を知らん者はいないだろう」

 

 心当たりは沢山ある。確かに自分が魔法族だと知って以来、どんな人でも魔法族でさえあれば自分の名前を知っていた。まるでスターにでもなったかのように、皆が自分に会えた事を喜んでいた。

 

 しかし──

 

「しかし有名人というのも大変だな。私はまだ自分が目立つのは自覚している分マシだが、赤子の頃の幸運を偉業と称えられ騒がれるのは複雑だろう」

 

「えっ……」

 

 ハリーは目を丸くする。この短い期間に沢山の人と会ってきたが、こんな風に同じような目線で喋ってくれる人は初めてだったのだ。

 

「えっと、その……あ、その猫、触っても大丈夫?」

 

 ハリーはほんの少し顔を赤くし、セラフィーナからオーロラに目線を移して話を逸らした。

 

「ククッ……触って良いかどうかは本人に聞いたらいい」

 

「本人……?」

 

「この子は猫に見えるが魔法生物だ。知能も高く人間の言葉を理解しているのだよロン・ウィーズリー」

 

 赤毛の少年、ロンもハリー同様目を丸くする。

 

「え、僕の名前も!?」

 

「キングズ・クロス駅であれだけ騒いでいたら誰でも分かる。それにウィーズリー家は特徴的で分かりやすいと父から聞いていたからな」

 

「うっ……なんか複雑」

 

「取り敢えず座れ。折角コンパートメントに入れたのに立ったままホグワーツまで行く気か?」

 

 その言葉で2人は慌てて席に座る。

 

「そそっかしい奴らだな」

 

 その言葉に嫌味は無く、寧ろ愉快なものを見たと純粋に楽しんでいる。

 

 その直後、コンパートメントの扉が勢い良く開かれる。

 

「ねえ!ネビルのヒキガエル見なかった!?」




ネビル、ペットは大事にね
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