ハリー・ポッターと深紅の覇者   作:筋肉神

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ギリギリ今日中に書けた!


第9話 組み分け帽子

 大広間に静寂が広がる。先程まで新入生達へ向けられていたざわめきは、マクゴナガルが椅子の上へ古びた帽子を置いた瞬間に自然と収まっていた。

 

 ボロボロに擦り切れた、継ぎ接ぎだらけの古い帽子。

 

「……あれで組み分けを?」

 

 ハーマイオニーが困惑したように呟く。

 

「もっとこう……凄い魔法とか使うのかと思ってた」

 

「あぁ、私もそう思っていた。まさか帽子とはな」

 

 その時。ピクリと帽子が動いた。

 

「うわっ!?」

 

 新入生の誰かが驚きの声を上げる。

 

 次の瞬間、帽子の裂け目が口のように開き──歌い始めた。

 

 組み分け帽子の歌声が大広間へ響く。創設者達の理念、四つの寮の特徴。そしてホグワーツの歴史。

 一年生達は静まり返ってその歌を聞いていた。ハリーは目を丸くし、ハーマイオニーは真剣な顔で歌詞を聞き取ろうとしている。

 

 一方、セラフィーナは静かに帽子を見つめていた。

 

「ほう、意思を持つ魔法道具か」

 

「随分と高度な魔法ですね、お嬢様」

 

「あぁ、恐らく相当古い魔法だろうな」

 

 やがて歌が終わる。組み分け帽子は再び沈黙し、まるでただの古い帽子へ戻ったかのように動かなくなる。そしてマクゴナガルが羊皮紙を広げた。

 

「これからABC順に名前を呼びます。呼ばれた者は前に出て組み分け帽子を被ってください」

 

 一年生達の緊張が高まる。ロンがゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「やばい……めちゃくちゃ緊張してきた」

 

「どの寮になるんだろう……」

 

 ハリーも少し青い顔をしている。ハーマイオニーなどは落ち着かない様子でローブを整えていた。

 

「ちゃんと評価されるかしら……」

 

「安心しろグレンジャー。努力できる人間を見抜けぬなら、あんな物は価値の無い古臭いだけの帽子だ」

 

「随分と言うわね……」

 

 だがその言葉に、ハーマイオニーの表情から少しだけ緊張が消える。

 

 そしてマクゴナガルが最初の名前を読み上げた。

 

「ハンナ・アボット!」

 

 緊張した面持ちの少女が前へ出る。椅子に座り、組み分け帽子を被せられた直後。

 

「ハッフルパフ!」

 

 帽子が叫ぶ。右側のテーブルから歓声と拍手が上がった。

 

 その後も次々と名前が呼ばれていく。寮が決まる度に各テーブルから拍手が起こる。ハリーはその様子を見ながら落ち着かない様子で手を握っていた。

 

「ねえ……もしどこにも選ばれなかったらどうなるんだろう」

 

「流石にそんなことはないと思うぞポッター」

 

「でも変な寮に入れられたらどうしよう……」

 

「変な寮とは何だ」

 

 セラフィーナが少し呆れたように言う。

 

「どの寮にも誇るべき伝統があるとさっきの歌にもあっただろう?なら入った場所で頂点を目指せばいい。寮とはあくまでも土台だ。伝統を尊重しつつ己の成長の踏み台とすればいい」

 

「……セラフィーナって、なんか時々凄い事を当たり前みたいに言うよね」

 

「当然の事を言ったまでだ」

 

 その時。

 

「セラフィーナ・ヴァレリア・アウレリウス!」

 

 ざわめきの質が明らかに変わる。

 

「あのアウレリウス?」

 

「決闘貴族の……?」

 

 セラフィーナが歩くと大広間が静まり返った。

 

 ただ歩いているだけ。

 

 それだけなのに、まるで玉座へ向かう王族のような空気がある。一年生達は呆然と見つめ、上級生達ですら自然と声を失っていた。

 

 赤い長髪、鋭い紅の瞳に圧倒的な存在感。

 

 そして、隣を歩くレガリア・アウルム。

 

 教師席では、何人かの教授が無意識に表情を引き締めていた。

 

「レジナルドの娘か」

 

 スネイプの黒い瞳が細くなる。脳裏を過るのは、ホグワーツ時代のレジナルド・アウレリウス。決闘場を半壊させ、喧嘩と流血沙汰の絶えなかった問題児。だが誰より強かった男。

 

 同時に、イゾルデ・アウレリウスも脳裏を過る。教授を真正面から魔法理論で論破し、減点されても微塵も怯まなかった天才。

 

 その二人が、今目の前の少女へ重なる。

 

 そしてセラフィーナが椅子へ座る。

 

 組分け帽子がゆっくり被せられた。

 

「……ほう」

 

 その一言だけを発して帽子は沈黙した。

 

 組分け帽子は、セラフィーナの精神へ触れ――圧倒されていた。

 

「これは……」

 

 帽子の声。

 

 その声音には、明確な驚きが混じっている。

 

「なんという自負、なんという渇望」

 

 帽子は次々と精神を読み取っていく。力への執着、己を極める意志。そして強者であろうとする覚悟。

 

 そして――

 

 『自分は特別である』という絶対的確信。

 

 それは虚勢ではない。疑いすら無い。その精神に触れた帽子が僅かに震える。

 

「危険じゃな」

 

 低い呟き。

 

「極めて強く、極めて危うい」

 

 更に奥へ触れる。

 

 好戦性と残虐性。敵への容赦の無さ。十一歳とは思えぬほど鮮烈な、『戦う者』の精神。帽子は低く笑った。

 

「おぉ……これはこれは」

 

 大広間では、生徒達が固唾を飲んで見守っている。

 

「野心、誇り、力への飢え、そして勝者の精神。スリザリンは大いに歓迎するだろう」

 

 更に言葉を続ける。

 

「お主、所属へ執着しておらんな」

 

 寮の伝統を軽視している訳ではない。だがそれが己そのものではないと理解している。

 

「力を求め、知識も求める。誇りと勇気があり勝利への執念もある」

 

 実に珍しい。どの寮にも適正がある。

 

 レイブンクローなら、飽くなき探究者になるだろう。

 

 ハッフルパフなら、優しき賢者になるだろう。

 

 グリフィンドールなら、誰より猛々しい獅子になる。

 

 スリザリンなら、間違いなく頂点へ登る。

 

 だが――帽子はふと、セラフィーナの精神の根幹を見る。そこにあったのは、血統でも権威でもない。ただひたすらに、『強者であれ』という思想。

 

 組み分け帽子が、愉快そうに笑った。

 

「実に面白い……スリザリン!!」




明日は多分無理。忙しいのです
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