M-Link:TRUE ENDの外側 作:syu3_syosetsu
M-Linkは壊れたジャンクではなかった。
少なくとも、中に何かがある。その事実だけで、ダルは目を輝かせていた。紅莉栖は呆れ、俺は満足げに頷き、まゆりは机の端に置いた箱へ「M-Linkの箱」と付箋を貼っている。
『さて、スーパーハカーの出番ですな』
『自称だけどな』
『牧瀬氏、そこは乗ってくれてもよくね?』
『乗らない。原本に書き込まない。読み取りイメージを作って、そのコピーで見る』
ダルはM-Linkの内容を吸い出し、検証用のイメージを作成した。通常のファイルシステムではない。だが、無意味な乱数だけでもない。高エントロピーの領域の隙間に、短い英単語が混じっていた。
【M-Link解析ログ】
route
score
event_log
objective
『なんかゲームっぽいな』
ダルが言う。
紅莉栖は腕を組んだ。
『前所有者が作った実験データかもしれない。ジャンク品にそういうものが残っているのは珍しくない』
『じゃあ、前の持ち主が作ったネタゲーか何か?』
『可能性としてはね』
俺は紙ノートに単語を書き写した。電子の海に浮かぶ言葉など、いつ改ざんされるか分からない。紙こそ最後の砦。そう言うと紅莉栖は「比較用としては有効ね」とだけ返した。
ダルはさらに周辺ブロックを掘る。圧縮されているようにも見えるが、一般的な形式ではない。暗号化されている領域の前後に、短いメタデータが残っている。
数十分後、ダルが椅子の背にもたれた。
『一部だけいけるかも』
『何をしたの』
『壊れたテーブルっぽい部分を補正した。ステージ1のメタ情報だけなら読める』
『原本には触ってない?』
『コピーだけ』
『なら続けて』
ダルがキーを叩く。
【M-Link解析ログ】
ARCHIVE STAGE 1 OPENED
class: route simulation
mode: entertainment
objective: route evaluation
event_log: present
沈黙。
最初に笑ったのはダルだった。
『ほら、やっぱゲームじゃん』
紅莉栖も、少しだけ肩の力を抜いた。
『今読める範囲ではそう見える。ルートシミュレーション、評価スコア、イベントログ。ゲームか、ARGか、実験用ログか』
俺は不服だった。
『評価スコアだと? 何を採点しているというのだ』
『ゲームなら普通にあるでしょ』
まゆりが首を傾げる。
『何をよくするための点数なのかな』
その一言に、紅莉栖が画面を見直した。
『現時点では不明。主語がない』
ダルはログを保存した。
『まあ、前の持ち主が作った変な恋愛シミュレーションとかじゃね? ジャンク屋から流れてきたネタデータ』
『その解釈が一番つまらん』
『つまらなくても、あり得る説明から潰す』
解析はそこで終わらなかった。ステージ1の末尾に、まだロックされた領域が残っている。
【M-Link解析ログ】
predicted route block: locked
紅莉栖は少しだけ顔をしかめた。
『予測ルート? ゲーム用語としては自然だけど、少し引っかかる名前ね』