M-Link:TRUE ENDの外側   作:syu3_syosetsu

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4話 我々はすでに盤上にいる

紅莉栖の解析は、ダルのそれとはまるで違っていた。

ダルが鍵穴を探すなら、紅莉栖は扉の材質から疑う。どこが壊れているのか。どこが意図的に隠されているのか。どの断片が偶然で、どの断片が構造なのか。

彼女はM-Linkのコピーを複数作り、エントロピーを測り、ブロックごとの規則性を並べた。

『高エントロピー領域が全部暗号化とは限らない。圧縮、乱数、ノイズ、疑似乱数。まずそこを分ける』

ダルは感心したように画面を見た。

『牧瀬氏、地味にガチ』

『地味にじゃない。普通にガチ』

俺は紙ノートに断片語を書き写していた。

『route、objective、score、event_log……ルート、目的、スコア、イベントログか』

『岡部、意味づけは後。今は構造』

数時間後、紅莉栖は一つの仮説にたどり着いた。

『このログ、単一の時系列じゃない』

『どういうこと?』

『観測済みのイベントらしき領域と、予測候補らしき領域が混ざってる。ゲームのセーブデータなら、実行済みイベントと未到達ルートの両方を持っているような構造』

俺の目が光った。

『未到達ルート……』

『飛びつかない』

紅莉栖はキーを叩いた。

 

 【M-Link解析ログ】

 ARCHIVE STAGE 2 OPENED

 record model: observed_event / predicted_route mixed

 branch candidates: departure_delay / shared_analysis / archive_unlock

 

紅莉栖が、ほんのわずかに反応した。眉が動いた、という程度の変化だったが、俺には見えた。

ダルが画面を覗き込む。

『なにこれ? 日本語で言うと?』

紅莉栖は視線を画面に固定したまま答える。

『観測済みイベントと、予測ルートが混ざっている。分岐候補は、出発延期、共同解析、アーカイブ解放。そう読める』

まゆりが画面を見つめる。

『なんだか、最近のまゆしたちみたいだね』

紅莉栖は即答しなかった。少しだけ間を置いてから、いつもの調子を取り戻す。

『……一般的な変数名としてはあり得る。ゲームでもシミュレーションでも、出発延期なんてよくあるイベント』

『だが、お前は昨日、帰国を延ばした』

『だから何? このデバイスが私の予定を知っている証拠にはならない』

『フゥーハハハ……だが言葉は揃い始めているぞ、助手よ』

『偶然よ』

その声は、否定したいからこそ少しだけ硬かった。

俺は紙ノートに三つの単語を書いた。

departure_delay。

shared_analysis。

archive_unlock。

その横に、ラボで起きた出来事を並べる。

紅莉栖の帰国延期。

四人で解析。

M-Linkの段階開示。

偶然だと切り捨てるには、形が整いすぎていた。

『フゥーハハハ……見えたぞ。これはゲームの分岐などではない』

紅莉栖が振り返る。

俺はノートを突きつけた。

『我々はすでに盤上にいる。M-Linkに記された選択肢を、知らぬ間に踏み始めているのだ!』

 

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