M-Link:TRUE ENDの外側   作:syu3_syosetsu

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5話 言葉の魔方陣

俺はノートに、前の開示で出た三つの単語を書き並べていた。

departure_delay。

shared_analysis。

archive_unlock。

その横に、ラボで起きた出来事を小さく書き足す。

紅莉栖はそれを見て、まず眉をひそめた。

『まだ対応づけるには早い』

『俺は対応づけてなどいない』

『横に書いてるでしょ』

M-Linkの断片語は、確かに曖昧だった。departure_delay も shared_analysis も、一般的なシミュレーション用語として処理できる。だからこそ、紅莉栖はそれを俺たちの現実に結びつけることを嫌がった。

だが、偶然かどうかを確かめるには、もう一段階読むしかない。

ダルはまず、昨日と同じやり方で未展開領域を掘った。ヘッダらしき箇所を探し、チェック値を合わせ、壊れたテーブルを補正しようとする。数十分後、彼は椅子の背にもたれた。

『ダメだ。ステージ1みたいな力技じゃ通らん。構造が変わってる』

紅莉栖が画面を覗き込む。

『暗号化というより、前段の解析結果を前提にしている。単純に鍵を探すんじゃなくて、ステージ2で出た分岐候補との対応を見た方がいい』

『対応?』

『同じ単語が別のブロックでどう使われているか。意味じゃなくて、配置と参照関係』

俺は紙ノートを開いた。departure_delay、shared_analysis、archive_unlock。そこに、第1段階で出た route、score、event_log、objective を並べる。

『フゥーハハハ……つまり、言葉の魔方陣を組めというわけだな』

『違う。対応表』

『同じことだ』

『全然違う』

紅莉栖が構造を追い、ダルが抽出範囲を調整し、俺が断片語の対応を紙に並べる。三人の作業は噛み合っているようで、何度も空振りした。候補ブロックは開きかけては閉じ、意味のある文字列になりかけては崩れる。

まゆりは静かに見ていた。ときどきお茶を入れ替え、消しゴムのかすを集め、ラベルの貼られた箱を机の隅へ寄せる。解析の邪魔をしないように、でもラボから離れないように。

最初に突破口を見つけたのは紅莉栖だった。

『橋田、この範囲。前後をもう少し広げて』

『ほい』

『岡部、その対応表の三行目、順番を入れ替えて』

『命令するな。だが従おう』

ダルがキーを叩く。

今度は、画面が止まらなかった。

 

 【M-Link解析ログ】

 ARCHIVE STAGE 3 OPENED

 route fragment: purchaser isolates device

 route fragment: analyst delays departure

 route fragment: observer notices inconsistency

 route fragment: group cohesion increases

 

ダルが息を呑む。

『購買者がデバイスを隔離、解析者が出発を遅らせる、不整合に気づく観測者、集団の結束が上がる……って感じ?』

紅莉栖はすぐには答えなかった。

『まだ一般化できる。前所有者のプロジェクトでも、似た構図は成立する』

俺は画面を見た。

『だが、ここにいる我々にも成立する』

『だから、それをすぐ結論にしない』

声は冷静だった。だが、紅莉栖の否定は少しずつ遅くなっている。

ダルが画面をスクロールする。

 

 【M-Link解析ログ】

 analyst_departure_window: active

 

その一行で、紅莉栖の表情が初めて明確に変わった。

『……橋田、今の周辺ブロックを止めて』

紅莉栖の声は低かった。

ダルがスクロールを戻す。画面の端に、さっきまでは見えていなかった短い行が増えていた。

 

 【M-Link解析ログ】

 context anchors detected:

 MAKISE_KURISU

 OKABE_RINTARO

 

誰もすぐには声を出さなかった。

俺は、鳳凰院凶真の笑いを忘れていた。

紅莉栖は画面を見たまま言う。

『偶然、では片付けにくくなった』

それでも彼女は、まだ断定しなかった。

 

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