悪魔ミメシス・メンダーキウンクルムの人間擬態手術   作:辛いのはまぁまぁ好き

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妖怪と悪魔

 

朝目が覚めたら、自分以外の誰かになっていたりしないだろうか、なんてことを、夜の布団の中で思ったことのある人間は多いはずだ。楽しいだけじゃない人生のどこかで、醜く愚かで無能な自分ではない、美しく賢く優秀な誰かに成り代わりたいと願うのは、必然とすら言えるだろう。

だけど、実はそういうことを願うのは、人間だけの特権ではないのだ。たぶん、生きとし生けるもの全てが、頭のどこかで、自分じゃないナニカに擬態することを望んでいる。

 

例えばそう、妖怪とかね。

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲

 

山奥にある、半ば崩れ落ちた山小屋の中に、一匹の妖怪がいた。熊のような巨大な四足歩行の妖怪。ただ、その体表を覆うのは、獣じみた硬い毛ではなくて、脂ぎっていて、ぶよぶよとした、醜く肥大化した無毛の皮膚だ。

そんな異形の妖怪の眼下の床に、とある本が開いて置かれている。開かれたページには、『ミメシス・メンダーキウンクルム』という文字列が記されていた。

 

「お願いします。お願いします。偽装にして虚無なる牽強付会の悪魔……ミメシス・メンダーキウンクルムよ。我が悲鳴が僅かでもその耳に届いたのならば、どうか、どうか、我の前に姿を現したまえ」

 

一生懸命覚えた人語で、その妖怪の少女(その妖怪は、まだまだ幼く、性別も雌なのだから、『少女』という呼称で何の問題もないだろう)は、呪詞を紡いだ。

すると、開かれたページに描かれた幾何学模様から、黒い煙が立ち昇る。

 

「やった……成功だ」

 

妖怪の少女がポツリと呟く。

そして、部屋中に満ちた黒い煙はやがて、本の真上に収束して人型を(かたど)った。

 

「ケラケラケラ、大体、100年ぶりの顕現ですか?科学が発展して、悪魔なんてものを呼ぶ人間はいなくなるかと思っていましたが、存外そんなことはなかっ…………あぁ、なるほど、今回の主人は、妖怪ですか」

 

煙の人型は、やがて肥満体型のピエロに成って、饒舌に言葉を吐いた。

 

「ケラケラ、一応確認しますけれど、ワタシを呼んだのは、アナタですね」

「そうです、ボクがあなたを呼びました」

「ケラケラ、なぜですか?悪魔を呼び出すなんて愚行を、どうしてわざわざ?」

 

自分の行いを、愚かだと評価された。しかし、少女はとっくの昔に、そんなことは開き直っている。愚行を……禁忌を犯してでも叶えたい願いが、少女にはあるのだ。そして少女は、その願いを、縋るようにピエロに語った。

 

「ボクは、人間になりたいんです」

 

妖怪の少女は、人間に憧れていた。家族とか、友人とか、恋人とか、そういう、自分以外の存在と深く結びつける人間達が、少女の瞳には酷く美しいものとして映るのである。

山の中の林に隠れて、こっそりと覗き見たその眩しい人間達の中に、少女は自分も混ざりたいと思ったけれど、ふと目線を下げて、自分の姿を見れば、そんなことが不可能なのはすぐに分かった。

 

「ボクの姿は醜いです。どう頑張っても、人間のフリをすることは出来ません」

 

そう語る少女の体躯は大きい。体重1000kgを超える人間なんているだろうか?そうじゃないにしても、少女は四足歩行の妖怪だ。直立二足歩行という形態に進化したことを誇りにしている人類とは、やはり相容れない。

また、少女はその体臭も凄まじい。彼女のぶくぶくの皮膚からは、常に強烈な腐臭が漂っている。並の人間ならば、彼女に近寄れば、たちまち凄まじい不快感に襲われて嘔吐するはずだ。

 

そんな少女は、例え幾重に布を被って、消臭剤の風呂に浸かろうとも、とてもとても人間には見えない。

 

「どうかボクに、人間のような、細く小さい、二本足で立てる身体を与えてください」

 

せめて言葉だけでもと、必死に覚えた日本語で少女は願いを吐き出す。

 

「ケラケラ、いいですよ。全身メイクは、このミメシス・メンダーキウンクルムの十八番。アナタを、スレンダーな美少女に整形してあげましょう」

 

ピエロがそう言うと、少女は笑うように唇で弧を描いて、身を乗り出した。だが、そんな少女を制するように、彼女の眼前にピエロの手が置かれる。

 

「ケラケラ、落ち着いてください。確かにワタシは、アナタの擬態手術に全力を尽くしますが、だからと言って、いや、だからこそ、一朝一夕ではいきません。淑女達の化粧よろしく、一日しか維持しないモノならばまだしも、アナタが望むのは、一生涯続く変装でしょう?」

 

まさにコレみたいな、とでも言うように、ピエロは自分の顔に塗られた厚い白い絵の具を指さしながら話す。

 

「毎朝ワタシがアナタに化粧を施すなら、水で流したら簡単に落ちてしまうようなその場しのぎでも大丈夫でしょうが、こんな悪魔と、死ぬまで一緒にいるのはいやでしょう?」

「いや……そんなことは」

「ケラケラ、嘘は言わなくて良いのです。悪魔は、あらゆる生き物から無条件で嫌われるように出来ているのですから」

 

妖怪の少女からすれば、ピエロは自分の願いを叶えようとしてくれている存在で、嫌う理由なんてない。だが、ピエロの言う通り、少女はなぜか、薄っすらとした、無理矢理貼り付けられたような不快感を、ピエロに感じていた。

 

「一生はがれない擬態手術。それを成すには、3つの条件が必要です」

「条件……対価ですか?」

 

悪魔は、願いを叶える代わりに、契約者の大切なナニカを奪うのだと言う。自分は一体、何を奪われるのだろうか、と、少し緊張した面持ちで尋ねた少女を、ピエロは軽く笑った。

 

「ケラケラ、対価なんていりませんよ。ワタシは、そういうのは求めないタイプの悪魔なんです」

 

ピエロ曰く、悪魔にも派閥があるようだった。相手の身体も魂も全て絞り尽くすタイプと、現世に呼び出してくれた契約者に感謝を示し、一切の対価を請求せずに契約者の願いを叶えるタイプ。両極端な二つの派閥の内、ピエロは後者に属しているらしい。

まぁ、所詮は悪魔の言うことなので、それが嘘でない保証はどこにもないのだが。

 

「ワタシの言う条件は、本当に捻りなく、単純に、アナタに施す人間擬態手術に必要なモノですよ」

 

ピエロは、右手の人差し指を立てて、妖怪の少女の目の前に置いた。

 

「まず一つ目。それは、強靭な精神力です。自分とは本来異なる生き物のフリを一生し続ける。これは、無理矢理自分の本能をへし折るような、悪辣な拷問とすら言えることができますからね。今アナタがいくら人間になりたくても、数年数十年と人間として暮らし続けた先に、妖怪に戻りたいと思う時が来るかもしれません」

「……」

 

それを否定することは、妖怪の少女には出来なかった。そりゃあそうだ。未来への不安は、どんな時でも無くならない。

 

「せっかく願いを叶えた後に、結局、あの時にあんなことを願わなければよかった、なんて後悔されるのは、ワタシとしても本意ではありません。自分が助けた人には、ずっと笑顔でいて欲しいですから」

 

悪魔らしからぬことを、ピエロは言う。

 

「後悔しないためには、どんな時でも、自分は幸せだと、自分自信をダマせる精神力が必要です。だからひとまず、アナタの心の強さがどれほどのものか、確かめさせてもらいます」

 

ピエロが、妖怪の少女の眼下を指差す。するとそこに、ポンッ、という軽快な音と共に、透明な液体の入った、銀色の皿が現れた。

 

「ケラケラ、皿の中に入っているその液体、なんだと思います?」

「水……ですか?」

「そう見えるでしょう?でも、実はそうじゃないんです。それは、とっっっってもつなく苦いジュースです。それが飲めたら、アナタには人間擬態手術を受けてもダイジョブな精神力があると判断します。飲めなかったら、精神力を強化する修行をしましょう」

「……」

 

妖怪の少女は、少しもやっとした気分を味わっていた。なぜなら、自分は人間になりたくて必死なのに、ピエロは苦いジュースがどうだとかふざけたことを言っているからだ。だが、自分の願いを叶えてくれるというピエロに文句を言って、顰蹙(ひんしゅく)を買うのは避けたい。少女は大人しく、差し出されたジュースを飲むことにした。

 

そんな少女を横目に、ピエロは小屋の扉に向かって歩いていく。そして、少女に悟られないようにこっそりと、自らの使い魔であるヘビを、扉の横にある割れた壺の中に隠した。

 

「それじゃあ、ワタシは100年ぶりのシャバを楽しんできますよ。ワタシが帰ってくるまでに、全部飲みきっておいてくださいね」

 

ピエロは突然そう言うと、少女が制止する暇もなく小屋を出て行く。

一刻も早く人間になりたいというのに、ピエロは悠長に行動するので、少女はじれったかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲

 

ピエロにとって100年ぶりである日本は、意外と彼の心を躍らせた。科学技術は想像以上に進歩していたし、何より、飢えて死ぬような人間がいないのが非常に素晴らしい。

そして、エネルギー枯渇とか、温暖化とか、人口減少とか、そういう、暗い未来しか見えないのも、ピエロの趣味に酷く合っていた。現実から目をそらしている人間が一番美しいというのが、ピエロの持論なのだ。

 

「……」

 

目を瞑り続けているあの民衆を自らの手で絶望に突き落とせないのは残念だが、それも仕方ない。派手なことをして天使達に目をつけられたくはない。悪魔と言えども死にたくはないのだ。

 

幸い、今回の契約者はアタリのようだし、それで満足するとしよう。

 

そんなことを思いながら、ピエロは山中を歩いていた。街を見て、妖怪の少女のいる山小屋に帰る途中だ。少女に宿題を出してでていってから、大体3時間が経っている。

 

「……」

 

ふとピエロが空を見ると、夕日が傾いていた。近くにある川の水に橙色の光が反射して輝いている。ピエロが立ち止まってその光を見ていると、突如、ピエロの視界が白に染まった。

それを成したのは、純白の天使の羽だった。

 

「久しぶり。100年ぶりかな、ミメシスくん」

 

どこからともなく現れた天使は、親しげにピエロに声をかける。

天使とピエロは、1000年前からの知り合いなのだ。まぁ、ピエロは正直あまり天使のことが好きではないのだが……

 

「……ワタシも運がないですねぇ。まさか、アナタが守護天使を務めている領域に呼ばれてしまうとは」

「ほぇ?どうして私がここの担当だと思ったの?」

「いやだって、そうじゃないとワタシの存在に気づけないでしょう?」

 

現界してから、ピエロはほとんど何の力も使っていない。強いて言うなら、あの苦いジュースを作ったことぐらいだ。それなのにピエロの存在に気づけたのは、ここら一帯が天使の縄張りだったということなのだろう。

 

なんてことをピエロは考えていたのだが、それとは反対に、天使は「私は本来はここの担当じゃないよ」と言った。

 

「私は本来はローマ担当だよ。ただ、3時間くらい前にキミの気配をビビッと感じたからね。急いでローマに代理を立てて、その後に、ここら一帯の本当の担当とも話をつけて、ここの臨時担当になったんだ」

 

朗らかな笑顔でそう言う天使を見て、ピエロは大きなため息をつく。というか、ドン引きした。ローマから、日本にいるピエロの存在に気づくというのは、地球の裏側で吹いた突風を察知するのと同じことだというのに、この天使は……

 

「……」

 

どうやら、目の前の天使の常軌を逸したストーカー癖、そしてそれを支える桁外れた情報収集能力は、100年経っても相変わらずのようだった。いやまぁ、900年間治らなかった癖が治らないのは、当たり前と言えば当たり前の話なのかもしれないが……

 

「そこまでしてワタシに会いに来てくれるなんて、血管が浮かび上がるくらいに嬉しいですよ。それじゃあサヨナラ」

 

雑に会話を切って、ピエロは天使と別れようとする。

 

「え〜〜」

 

つれないピエロに対して天使は不満気な声を上げるが、ピエロは全く意に介さずに、妖怪の少女のいる山小屋に歩を進める。そして天使も、そんなピエロを無理矢理引き留めるようなことはしない。一応、まがりなりにも天使である彼女は、人が本当に嫌がるようなことはしないのだ。

 

「……」

 

黙って、天使は懐かしむように遠ざかっていくピエロの背中を見つめる。すると突然、ピエロは天使の方に振り返って口を開いた。

 

「一応確認しますけど、ワタシのいなかった100年の内で、神法が変わったりしてませんよね?」

「うん。全然」

 

天使の言葉を聞いて、ピエロは笑った。

 

悪魔を呼び出した罪人に、どんな残虐なことをしようとも、それは罪にはならない。例え悪魔に魂を食われようとしていても、その罪人を助ける権利を天使は持たない。

 

そんな、なんとも悪魔に好都合なルールは、依然として機能しているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲

 

ピエロが、妖怪の少女に飲みなさいと命じた銀色の皿に入った液体。ピエロはそれを苦いジュースだと少女に言ったが、実のところ、それは全くのウソだ。あの液体の正体は、ただの何の変哲もない水でしかない。

それじゃあ、あの少女がその水を飲んで味も匂いも感じないのかと言えば、そうではない。

ピエロは、水ではなく少女の脳に手品を仕掛けたのだ。魔法をかけたのだ。あの水を飲んだら、少女の想像する最大級の苦味の1000倍の感覚に襲われるようになる魔法を。

 

ただの味覚も、行き過ぎれば痛みにすら勝る。少女は、強烈な苦味に耐えきれず飲んだ水を吐き出すだろう。それを見て、ピエロはこう言うのだ。「あらら残念。それを飲むことにも耐えられないような弱い心では、ワタシの人間擬態手術を施すことはできませんね」と。

 

あぁ楽しみだ。そう言われた時、少女はどんな顔をするのだろうか。人間になるという願いの成就まで後一歩というところで、頼みの綱のピエロから梯子を外された時に少女の頬に流れるであろう涙を、悪魔(ピエロ)(すす)りたい。

 

「ケラケラケラ」

 

ピエロは笑いながら山中を歩く。そして時間というモノは、楽しいことを考えていると驚くほどあっという間に過ぎるもので、気がつくと、ピエロのすぐ目の前に、少女のいる山小屋の扉があった。

 

ぐったりとした妖怪の少女。吐かれた水による床の染み。口にされず残された銀の皿の水。そして、それを見て嘲笑うピエロ。

 

それが、数十秒後の山小屋内におけるピエロの理想のシチュエーションであり、願望抜きでの未来予測図でもある。

 

だが、ピエロが扉を開けた先にあった光景は、ピエロの期待と予想を裏切るモノだった。

 

「あ……ようやく帰ってきた」

 

少し疲労感を見せながらも、ピエロが思っていたよりも数倍は元気な感じで、妖怪の少女は3時間も彼女を放置していたピエロに反応した。

 

「……」

 

ピエロは目を丸くして、山小屋の中をキョロキョロと見回す。

 

どこにも、水が吐かれた後がない。3時間もいなかったのだから、乾いただけだろと思うかもしれないが、あの水はピエロが魔法で生み出したモノであるから、彼の魔力が溶け込んでいるので、例え吐かれた水が蒸発したのだとしても、床には魔力の痕跡が残るはずだ。だが、その痕跡は小屋内のどこにもない、唯一、少女の体内以外は。

 

「……あ、ヘビだ」

 

壺から出て、床を這うヘビを見て、少女は呟く。彼女は知らないが、それはピエロが監視用に残しておいた使い魔だ。

 

「ケラケラ、あ、このヘビ、毒を持っている種類ですよぉ。危ない危ない殺さなきゃ」

 

わざとらしく言いながら、ピエロは身をくねらせるヘビの頭を足で潰した。そして、手品……魔法を使って、それが記録していた映像を回収する。

 

「ふむふむ……へぇ」

 

超倍速で、ピエロがいなかった3時間の小屋内の映像が、彼の脳内で再生される。そこには、少女が小屋の外に出る姿も、銀の皿に入った水を捨てたり吐いたりするところも映っていない。少女は、確かに、水を全て飲み干していた。彼女の思う、苦味の最大値。その1000倍の苦味を感じるようにされていた魔法の水を、一滴残らず。

 

「ケラケラケラ」

 

誤解していた、舐めていた。

 

ピエロは、少女を弱い妖怪だと思っていたのだ。孤独であることに耐えきれないバケモノ失格の存在で、故に高度な群れを成す人間に憧れているのだと。

 

というか、そもそも強いも弱いもないのだ。どんな屈強な精神の持ち主でも、1000倍の感覚には耐えられない。我慢するとかそういう次元でなく、身体が、本能が、それを避ける。

 

ピエロの持ちかけた、水を飲め、という条件は、達成されるつもりで作られていない。ピエロが、契約者を陥れるために作った、悪辣な罠だ。トリックだ。それを、少女は正攻法で打ち破った。

 

そんなの、きっと、狂気以外の何物でもない。少女の、人間になりたいという願う思いの強さは、既に正気の域を脱している。

 

「ピエロさん」

 

埒外の狂気をその身に宿しているとは思えないように、少女はピエロに言葉をかけた。

3時間ほったらかしにされた不満も、もう口の中を侵し続ける苦味に有耶無耶にされている。

 

「なんですか?主人(マスター)

「いや……第一の条件はクリアってことでいいんですよね?」

「もちろん!!」

「それじゃあ、早速二つ目に進みましょうよ」

「しかし……」

 

ちらっと、ピエロは小屋の窓から外を見た。真っ暗闇の森の葉は、所々が月光に照らされている。

 

「もうこんな時間ですし、続きは明日でいいのでは?」

「いやいやいや、善は急げ、ですよ。それに、ボクの身体は睡眠を必要としませんし。まぁ、娯楽としてはすることも出来ますけど、そもそも別に、寝ることはあんまり好きじゃありませんしね」

 

寝ようとすると、嫌なことばかり考えちゃいますから、なんて、人間染みたことを妖怪の少女は言う。

 

「ピエロさんも似たような感じでしょ?」

「……そうですね。いや、でもワタシは、寝る前でもポジティブですよ。ワタシはピエロ……道化なんでね。ネガティブなことは考えないんです」

 

ピエロは、自分の口の端を指で押して、わざとらしい歪んだ笑みを作る。

 

「まぁ、それじゃあなんにせよ、二つ目に進みましょうか」

 

ピエロは、少女への認識を、おもちゃから、弄ぶべき主人に格上げした。彼女のことを、ある程度見上げたのだ。だが、だからと言って、いや、だからこそ、人間擬態手術を施す条件を軟化するつもりはない。

二つ目の条件は、一つ目の苦いジュース以上に、達成困難で理不尽なものにするつもりだ。

 

ケラケラケラと、心底楽しそうに笑いながら、ピエロは少女に言葉を放つ。

 

 

 

主人(マスター)、アナタには、自分自身を殺して貰います」

 

人間擬態手術の準備は、まだまだ終わらない。

 

 

 




最初は、苦いジュースじゃなくて辛いジュースにしようとしてたんですけど、どうやら、辛いっていう感覚は味じゃなくて痛みなんですね。

それでふと思ったんですけど、辛いのが好きな人っていうのは、つまりはドMってことになっちゃうんですかね?
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