サンタクロースをいつまでも信じているほど間抜けではなかったが、無償の愛を届ける存在というものは間違いなく誰しもが目指すべき存在だと僕は思う。
とは言えサンタなどという財力無限で無から有を生成できるトンデモ人間はこの世にいないわけで、それは同時に世界には現実以外のものは何もないことを幼少期の自分に証明しているようだった。
宇宙人、未来人、超能力者、異世界人etc...出会いたくないと言えばそれは嘘になる。彼ら彼女らと話をしてみたいしあわよくば物語の世界に行ってみたい!と思うのは人間誰しもが持っている普遍的な願いのはずだ。だが僕は知らなかったのだ。味の濃いジャンクフードもメインキャラが死ぬ鬱展開もたまにやってくるスパイスだから丁度いいのだ。つまりそう__
「ねぇ、それ本気でバレてないと思ってる?あー、今のは本気と書いてマジって読m」
「テメェは!?スパイダーマン!!」
Thwip!!
「お、やっとこっち見てくれた。もう黙っちゃったけど」
スパイダーマン。それが
△▼△
否が応でも朝はやってくるもので、それはたとえスーパーパワーを持っていようが変わりない事実だ。未だまどろみも取れていないが早く登校するとしよう。展開が遅いと読者諸兄姉に悪いからね。
何と言っても今日は入学式だ。新生活に無条件で期待を抱けない僕からしてみればそれは人生の億劫なものの一つだ。だってみんな考えてみてくれ。これまで培ってきた先生や友人からの信頼や関係値を崩す必要があるんだぜ?
ま、ここで文句言っても仕方がないのでまだ見ぬクラスメイトの事を考えながら足早に向かうことにしよう。
さて、初日から登校を共にできる友人はおらず暇なので僕のこと...というかみんなが気になってるであろう僕の能力について紹介しよう。スパイダーマンという名前から分かる通り、簡潔な答え方は”蜘蛛”だ。壁に張り付いたり腕から___本当の蜘蛛ならおかしな話だけどね_____糸を出したりできる。あと自分に危機が迫ってるとき、それを感じ取れる能力も合ったり、なぜか身体能力が人並外れたり。最初は怖くてたまらなかったさ。ふとシャーペンが指から離れないと思ってよくみたら大量の小さな毛みたいなのが生えてたんだからね。その後は電気男や砂男、黒い宇宙生命体なんかと戯れる...なんてことはもちろんなく町中のチンピラを糸で巻き付けたり猫探しを手伝ったりしてたら気づいたら高校に入学する年令になってたってわけさ。
と、そんな自分語りを終えたところでもう到着したようだ。
だだっ広い体育館での入学式を苦痛に感じながら、僕は一つの大きな感覚に襲われていた。そう、感覚。違和感とかムズムズとかに言い換えてもOkayだ。町中の不良少年を相手取る際も感じる時があるそれだが、今感じてるのはその比じゃない。象とアリの方がまだ比較対象として成立しているレベルだ。これが意味してることはただ一つ。この学校、下手したら同級生に台風の目がいるってこと。...憂鬱だ。
まだ見ぬ存在に恐怖を覚えながら向かうは教室。僕が配属された1年5組へ向かう道すがら、僕はわかってしまった。先ほど感じた台風の目、そいつは僕とクラスメイトだってことを。何せ背後にいる女生徒に僕の感覚がとんでもない危険信号を発してるもんだからね。感ありってとこだ。担任の教師の発言内容を気にする間もなくこの先の学校生活に思いを馳せていると、どうやら自己紹介が始まったらしい。
クラスメイトの多種多様な自己紹介を軽く流していると、すぐに僕の番が回ってきた。事前に準備してきたわけでもないが、名前と出身中学、あと軽く趣味を言って終わらせた。当たり障りのないようにしたと言っても良い。そんな僕のお手本に近い自己紹介を聞いたにも関わらず背後のいかにも私不機嫌ですって顔をしてる彼女は
「東中出身、涼宮ハルヒ」
変わった名前だな。漢字だとどう書くのだろう。などと思ったのもつかの間
「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」
今思えば、このときの僕は居酒屋で一芸として披露できる程度にはアホ面を晒していたに違いない。だってそうだろ。クール系女子かと思ったらまさかまさかの電波系だ。ブラック・ダリアすら見惚れるような顔、プロモデルにも劣らないスタイル、快活でクラスの端まで響く声。役者でもやれば国民的どころかメジャーデビューすら果たせそうな彼女。だが電波だ。
これが最近のトレンドなの?
どうやらそうではないらしい。全員クエスチョンマークでも浮かんでたらぴったりな顔をして戸惑ってる。教師が次の生徒を指名するまで、まる教室の時間が止まっているような感覚に陥っていた。
かくして、僕と彼女含めその他いくらかの特徴的な人たちとの日常系非日常が始まるのであった。