君の輝きと共に   作:スイレン765

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全5話構成で、2話・1話・2話の3日間に分けて投稿予定です。


日常

 

 

 

 カーテンの開く音と共に光がまぶたを通り抜け、目に差し込んでくる。眩しい。

 

「あら、目が覚めてしまいましたか?」

 

 きれいなやさしい声だ。

 口にしながらベッドの端に腰をかけ、こちらを見つめる。目と目が合う。吸い込まれる。

 

「あぁ、おはよう」

 

 僕は寝転んだまま彼女の腰に抱きついた。

 あったかい。あんしんする。

 このままの心地よさがずっと続いてくれたらいいのに。

 

 彼女は何も言わず僕の頭を撫でながら、そのままでいてくれた。

 

 ある程度彼女の全てを堪能したのち、僕は抱きつくのをやめた。起きる準備をしないと。

 

「……もういいんですか?まだ時間は有りますよ」

 

 そりゃあそうしていたいのは山々だが、そういうわけにもいかない。生きないといけない。

 区切りをつけないと流れのまま落ちていってしまう。

 

「美鈴は今日学校だろう。流石に遅刻させる訳にはいかないから」

 

「ふふ、分かりました。じゃあご飯の準備をしましょうか」

 

 美鈴がキッチンで準備している間に、僕は着替えや歯磨きなどの朝支度をする。朝の日差しを浴びつつの支度は思ったより時間がかかる。気力も湧かないまま慣性に従って動いていた。

 朝食まではまだ少し時間がかかりそうだ。

 僕は椅子に座り、時間を潰すことにした。朝のぼんやりとした夢の中のような時の中で揺蕩う。日差しの熱が体を暖め、少しずつ少しずつ明瞭な世界へと誘う。

 

「ご飯、出来ましたよ」

 

 味噌汁、ご飯、そして焼き魚の匂い。

 いつも通りの朝食の匂い。

 一人暮らしで居間には低いテーブルしかない。

 だからいつもフローリングに敷いたカーペットに座りご飯を食べる。

 僕と美鈴は小さいテーブルに朝食を運び、向かい合って座った。

 

「「いただきます」」

 

「どうでしょうか、今日のご飯は?」

 

「うん、美味しい。いつもありがとう、本当に」

 

「……いいんですよ。私が好きでやっていることですから」

 

「でもありがたいよ」

 

 多くが色褪せた世界で生きるのは案外苦しい。

 食事でさえ食べようと思えなくなってしまった。

 それでも生きているとお腹が空く。お腹が空くのは辛い。それは当然のことだ。

 だからありがたい、本当に。

 

 美鈴の学園での話やちょっとしたニュースについてなど、取り留めのない会話をしながら食事をする。それで時間はすぐに過ぎていった。

 

「「ごちそうさまでした」」

 

 ご飯を食べ終え、片付けを行う。

 もうすぐ美鈴が出なければいけない時間だ。

 

「それじゃあ、また夜に」

 

「ええ、行ってきます」

 

 別れの挨拶に抱擁を交わし、見送る。

 いつも終わってしまうと呆気なさを感じる。

 少しずつ体から熱が奪われていく。

 別れた瞬間は美鈴が居た記憶が鮮明に残っていても、すぐに現実感がなくなってしまうようだ。

 

 

 一人、そう一人になる。

 

 いつも通りの一人に。

 

 

 スマホを触る。

 ソシャゲのデイリー。

 小説の更新確認。

 Youtubeの新着動画。

 

 すぐにやることが尽きてしまう。

 ベッドに倒れ込んだ。

 

 暇だなぁ。苦しいなぁ。

 

 スマホで時間を確認する。

 まだ10時だ。

 

 散歩に行ってもいいが、どうせ昼ご飯を食べに行く。

 その時の方が面倒くさくないだろう。

 いつも通りだ。

 

 あぁ、長い。永遠かのようだ。

 そう思っても時間は過ぎない。

 

 そんなことを考えていると、美鈴から写真が送られてきた。

 レッスン終わりだろうか。

 同級生たちと並び、汗を浮かべながら笑っている。

 僕を気にかけてくれているのだろう。

 

 少し心が暖かくなるような気がする。

 

 もし美鈴が居なかったら、僕の生活はどうなっていただろう。

 

 少し体が冷える。

 

 

 冬の夕暮れを思い出した。

 

 美鈴と出会った日を。

 

 そして、それでも崩れてしまった僕の過去を。

 

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