授業、研究、美鈴
日々は大体この3つの要素で回っていた。
くるくるくるくるめぐる日々。
美鈴と出会ったことは間違いなく人生での奇跡だったが、巡る日々の中でどこか擦り減っていく自分もいた。
いや、気づいてはいたんだ。
押し込めていただけで。
それは破裂と表現するべきなのか。
陳腐だけれども、糸が切れたという表現が適切だろうか。
きっかけはなんだったのだろう。
就活が始まり、人生の終わりを意識したことか。
あるいは、誘われて行った美鈴のライブで、眩しいほどの輝きを見せつけられたことか。
分からない。
ただ、結果として僕は学校に行けなくなった。
思い返すと結構壊れていたような気がする。
最初は研究室の机に座っても何にも手がつかない、といったくらいだった。ただ、結構自由ではあったので、まだ何もしないで帰ることはできた。
やがて学校に行くと、涙が零れ落ちるようになった。
休みを挟みつつ研究室に行き、でも何もできないまま別の場所へ逃げ込んでいた。
それでも、美鈴と会う時は酷い姿を見せずに済んでいたと思う。
でも気づいたのだ。
自分は無理なのだと、誰かを頼るしかないと。
そこで美鈴に電話をかけたのは、やっぱり救って欲しかったのかもしれない。もしくは頼り切ってしまっていたのか。
両親にかけるか迷ったけれど、学校に行かせてくれていたのにこうなったのが申し訳なかった。だから、僕は両親でなく美鈴を選んだ。
気づけば、涙を流しながらベンチに体を預け、美鈴に電話をかけていた。
「やぁ……美鈴かな?」
「ええ……どうしましたか?」
僕のいつもと違った様子に少し困惑が混じる。
「申し訳ないけど、ちょっと時間あるかな……
少し話したくて」
「……大丈夫ですよ」
どういった風に話せばいいのか分からなかったから、いつも通りを装った。
もちろんいつも通りでなんてなかったけれど。
「うーん……ちょっと言い辛いんだけど、学校に行けなくなっちゃって」
「ええと……それは……」
電話越しに息を呑む音がした。
「ごめん……ただ聞いて欲しくて。困らせちゃってるのは分かってるんだけど……」
「裕人さんは……
いえ、ひとまず家に帰りませんか?
私もすぐに向かいます。
待っていてください……」
「うん」
そう言って電話は終わった。
泣いていることは伝わっていただろう。
鼻水も出っ放しで、声も鼻声になっていた。
気を遣わせてしまった。
ひとまず帰ろう。選択が正しかったかは分からないけれど。
僕は家に帰って美鈴を待つことにした。
家について少し待つと、インターホンが鳴った。
美鈴が来たのだ。
ドアを開けて美鈴を迎え入れる。
急いで来てくれたのか少し息が上がっていた。
「ごめんね、急に……
あと、ありがとう」
「いえ……」
そのまま居間まで歩き、カーペットの上に座る。
美鈴は少し緊張したような面持ちでいる。
正直何を話せばいいのか、何から話せばいいのか。
そもそも話しても良いのだろうか。
でも、選択は終わっている。
それに、美鈴を大事な人と思うのなら共有しても良いのかもしれない。
僕のこれまでの日々を。
積み重なった憂鬱を。