「そうだね……結局は生きるための欲望や熱が酷く薄いってことなんだと思う」
「そう……だから、流されて流されてここまで来てしまっただけなんだ」
「中学生の頃まではそれでも問題なかったように思う」
「でも、高校生からだったかな。少し辛くなってきたのは」
「なぜかは分からなかったけれど、胸の下辺りに空洞が出来ているように感じることがあった。体の一部なのに、熱が消えていく。体が冷えていく。
意味もなく、生きる意味を考えていた」
「将来について考えるのも大変だった。
自分の将来を思い描いてと言われながらもどうしようもなかった。だって、何もしたいことなんてなかったから。どうでもよかったから。
ただ興味のある無しは多少あったから、それに沿ってどうにか進んでいった」
「それは大学でもあまり変わりはなかったように思える」
「そして四年生になり、研究が始まった。
でも研究は、もしかしたら一番向いていなかったのかもしれない」
「自発的に、熱意の赴くまま、全てを行わなければいけない。それを求められると言うのは、出来ないことを無理矢理やらされるようなものだった」
「……そしてそうした苦しみの他にも問題が出てくるようになった。余暇……もしくは趣味の問題」
「何かしらの人生の目標がなかった僕にとって、趣味が僕のよすがだった。
小説や漫画、ゲーム実況。
他人の感情や熱を感じられる時間が好きだった。
空っぽな自分の内側を、少しだけ埋めてくれる気がしたから」
「でもどこか限界があった。
新しい物語をみつけても、昔より心が動かされなくなっていった」
「好きだったものが、少しずつ色を失っていった」
「慣れてしまったのかもしれない。
満足してしまったのかもしれない。
いつの間にか空洞が僕を支配するようになっていた」
「最近は美鈴が居てくれるから、楽しい余暇を送れていたとは思うけれど」
「それでも終わりが見えてきた。
就活が始まり、仕事が決まりそうになる。決めなければならない。
将来のことは分からないけれど、あまり変わらないんだろうと言う予感があった。無駄な日々が続いてしまうような気がした」
「そして輝きを見た。
誘ってくれた美鈴のライブ。
本当に凄かった。綺麗だった、かっこよかった、輝いていた。
そして何より美鈴の熱を感じた。
僕は満たされていたと思う。
でも、無理なんだ。
熱が失われていく。
冷えていく。
空っぽになる。
それがどうしようもなく……辛かった」
「ごめん、責めるつもりはないんだ。
どうせ限界が来ることだっただろうから。
早めに来て良かったかもしれない。
それに一時的であれ満たされていたことも事実なんだ」
「そういえば……もう一つ。恋愛について。
友人や知人からは、よく結婚がモチベーションになると言うことを聞くんだ。
でも、僕はあまり好きになると言うことが分からなかった。と言うより分からなくなっていった。
両親の関係が微妙な時期があったことや人間関係が苦手だったことが理由かもしれない。
物語や、人から聞けば聞くほど、自分から遠ざかっていく気がした。
性の関係の複雑さに絡め取られていった」
「……僕の顛末はこんなものだと思う。
解決できそうにないことを話すつもりはなかったんだけど……
……多分、美鈴に聞いて欲しかったんだと思う。
ごめん。ありがとう」