話を終えて、顔を上げ、美鈴に対し向き直る。
ほぼほぼ赤裸々に語ってしまった。困らせてはいるのかもしれない。いや、困らせてはいるだろう。少し不安を覚える。
それでも、最後まで真剣に聞いてくれたことが嬉しかった。
美鈴は眉を下げ、少しの間考え込んでいた。
やがて小さく息を吐き、決意したように顔を上げる。
膝立ちになり、僕の方へ寄ってきて、そのまま僕の頭を抱き寄せた。
温度が伝わる。
鼓動が近くなる。
「……話して下さり、ありがとうございます」
静かな声だった。
「私……私は、近しい人に安らかな日々を送って欲しい。
苦しいまま居てほしくなんかありません」
腕に僅かに力がこもる。
「そして……私のことだけを見て欲しい。
私なしでは生きられないようにしたいんです」
その言葉は僕に向けられたものというより、美鈴自身から溢れ出たもののように思えた。
美鈴は少し腕を緩め、僕たちは見つめ合う。
そこには確かに、静かに燃える熱があった。
「私、裕人さんの太陽になってみせます」
「絶対に諦めません」
美鈴はそう宣言した。
瞳から声から腕から熱が僕の全身へと流れ込む。
温かくも痛みを伴うような感覚だった。
僕に太陽は現れるのだろうか。
それでも……信じたいと思った。
涙が零れる。美鈴も泣いていた。
あぁ、どうしてこんなに美しいのだろう。
僕も、いつか輝けるのだろうか。
美鈴のような熱を持てるだろうか。
もう、絶望なんてしたくなかった。
僕らはそのまま抱きしめ合いながら、泣き続けた。
ずっとずっと。
想いを晴らすように。
希望へと触れるように。
泣き声だけが部屋に残り、やがて消えていく。
その熱の後には、不思議なほど静かな時間があった。
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そうして、僕と秦谷美鈴のお話はひとまずの終わりを迎えた。
だが、何かが劇的に変わったわけではない。
変わったことといえば、美鈴が毎日のように家に来るようになったことくらいだ。
食事や掃除などを行い、ただ一緒にいる。
そうした時間が増えた。
美鈴は変わらず進み続けている。
美鈴自身のために、そしておそらく約束を果たすために、進み続ける。
僕は、その歩みに何も返せない。
何かを返そうと思っても、形は見当たらない。
空っぽなままだ。
どうしようもないことばかりだった。
苦しみも消えていない。
一度無くなった気力は、簡単には戻らない。
それでも、美鈴が傍に居てくれる。
諦めないでいてくれる。
僕はもう少しだけ、生きてみようと思った。