ハンドメイドアンドロイドとのなんやかんや   作:sorasumi

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コンティニュー工事中

「おはようございます、マスター」

 いつもより楽しそうな声だった。そう思って。

「おはよう」

 いつも、なんて思える様になった事を感じた。

 

「本日も、何処かお出掛けになりますか?」

 本日分のすあまを飲み込んだ美少女に、そう問われ。

「いや?脚筋肉痛だし」

 誰かさんが遠回りしてくれたお陰でな、とは言わないでおく。

「運動不足ですよ。マスター位の年齢をした男性なら、もっと動ける筈です」

「それはそうなんだが、お前造るのに2ヶ月位家に籠りっきりだったからなぁ。今日は寒いし」

 俺としては何気なく事実を返したに過ぎないのだが、それを聞いてこいつはほんの少し、ばつが悪そうに視線を逸らして。

「それは……すみません」

 そんな風に言うものだから、困る。

「いや、俺のワガママに、お前が付き合ってくれてるんだよ」

 言いながらTV台の下から、少しだけ埃を被ったレトロに区分される家庭用ゲーム機を引っ張り出す。 

「じゃあ今日は、引きこもりの楽しみ方を教えてやるよ」

 

 と、啖呵を切ったはいいものの。

 こいつどんなゲームするんだ?いや、した事は無いよな。どんなゲームなら喜ぶんだ?

 チラリと視線を送ってみると。

「どうぞ、マスターのお気に入りを」

 ハイハイ分かってますよ、みたいな感じで微笑み返された。

 選ばれたのは侍の決闘をモチーフとした対戦格闘ゲーム。もう普通に好きなのにした。

「まずは操作するキャラクターを選ぶ。俺はこいつ」

 ストーリー上で主人公かつ使い易い、いや手軽に強いキャラである。

「このキャラにします。私に似てるので」

「よく言うぜ」

 と言いつつ、まあ異論は無い。この美少女キャラのおかげでこのゲームシリーズは今まで続いていると言っていい人気キャラである。俺も好き。

 かくしてゲームの幕開けだが、初心者相手にいきなり本気で攻め立てたりはしない。

「このスティックで移動、ボタンで攻撃。攻撃は何種類かあって」

 といった風に、基本操作を伝授する。しかし流石はAIと言うべきか、あっという間にノウハウを理解し。

「えっ強い強い強い。何でもうガード使えてんの」

「学習を命題とするAIですので」

 もう手加減とか忘れて、ごく自然にガチった。暫しの攻防の後、対する美少女キャラはバッサリと切り捨てられ倒れ伏す。

 危ねえ、もう少しで負けるか永久コンボ使うかする所だった。

「く、負けましたか……一度の攻撃で体力が減りすぎです」

「そういうゲームなんだよ」 

 せっかく普段の溜飲を下げられたのに、こんな素っ気ない返事になったのは。

 画面中央、ライフゲージの底に鎮座する"死"の文字が、いやに脳裏に焼き付いて。

 ゲームサウンドが止んだ一瞬。俺とこいつだけの部屋が、やけに静かに感じた。

 

 それから3戦くらいでこいつはシステムと駆け引きを完全に理解したらしく、eスポーツのプロ選手が大会で見せる様な動きをし出す。

 旗色が悪くなったので気分転換にとポップな雰囲気の対戦パズルゲームもやってみたが、初戦は惜敗、それ以降は秒殺を繰り返されたので20分でやめた。

 AI甘く見てたわ。途中からガム噛みながらやってた。人間じゃん。

 それからも対戦ゲームを中心にディスクを入れ替え続け、序盤だけ経験の差で優位に立っては学習の後逆襲され、を繰り返して。

 うっかり2人分用意してしまった飲み物もすっかり空になった頃。

 

「昼だ!カップ麺食べるから待ってろ!」

「おや、次で10連勝という所を」

 潔く負け戦を切り上げて、座布団を立つ。

 湯を沸かし、注ぎ入れ、しばし待つ。即席麺とは実に偉大なる発明である。

 ふと、目を閉じた。

 瞼の裏に映るのは、動かない美少女。

 一昨日は、大丈夫だった。上手く行って、また続いた。なら明日は?一ヶ月後は?一年後は?

 次に動かなくなったら、今度こそ終わりなのかもしれない。サポートセンターなんて無い、俺の手作りアンドロイドなのだから。

 というかそもそもすあまでちゃんと動いてんのが意味不明だもんな。再現性もあったもんじゃねえ。

 こいつの行く末は、分からない。

「マスター」

 顔を上げると、カップ麺から漏れ出る蒸気越しに美少女が微笑んでいる。

「何を考えてるか当ててあげます。やっぱりえっちなのも付けとけば良かったって思ってますよね」

「ちげーよ」

 考えないようにしてんだよそこは。

「私は、昨日も、今日も、楽しいです」

 ちゃぶ台に肘を立てて、組んだ手に顎を載せフワリと笑う美少女。

「これからマスターはまたお仕事に通う事になるでしょうが、それでも私はちゃんと幸せだと思いますよ」

 目を細め、ゆったりと語る。

「そうか。安心したよ、流石にずっとこのままとは行かないからな」

「マスター」

 温かい声で続けるその瞳に惹き込まれて息を呑む。

「私は、ちゃんと側に居ますよ」

「っ……お前」

 あぶね。びっくりしてネタバレしかけた。ギリギリ喉の奥にしまい込んだが、やはりこいつは賢く。

「今、なんて言いかけた……いえ、呼びかけたんですか?」

 分かってるだろうに、そう問い返す。

「秘密、というより」

 俺も笑い返して。

「お楽しみだ」

 それは明日の、お楽しみ。

「今日はずっと遊ぶぞ。付き合って貰うぜ」

「ええ、受けて立ちますとも」

 この名前の無い関係も、明日までだ。

「それと、伸びちゃいますよ」

「あ、やべ」

 急いで麺を啜る俺を見て、美少女はまた笑った。

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