ハンドメイドアンドロイドとのなんやかんや   作:sorasumi

7 / 7
めいめい

「おはようございます」

「ああ、おはよう」

 

「頂けるんですよね、名前」

 起きて早々、気が早い。といっても、むしろ待たせ過ぎたのだろう。頭を掻きながら、目を合わせる。

「ああ。俺はこのままでも幸せなんだが、お前に必要みたいだからな。お前に必要なら、俺がやる」

 眼前の美少女はムッとした様な、ホッとしたような表情をした。

「マスターには理解が難しいでしょう。物心つく頃には、名前があったんですから」

 続けながら、懐かしむ様に笑う。

「私は羨ましかったんです。だから、マスターの名前を呼べなかった」

 どこか寂しげにも見えて、笑わせたくなる。

「ちょっと違うな。俺の名前は、この世界に出て来て7日目のタイミングで親が付けてくれた。お七夜って言ってな、そういう文化があるんだ」

「知ってますそれくらい」

「そうすね、そうだったわ」

 AIに知識量で勝とうとすべきではない。

「でもさ、思うんだ。お前はこの身体になるまで、まだ母親のお腹の中にいるようなモンだったのかもなって」

 自分勝手な解釈であるとは思う。けれどその権利、あるいは責任も自分にある筈だ。

「まあそんな訳で、今日はお前が産まれて7日目。俺からの贈り物だ」

 だから、それなりの事はさせてもらう。

「お前の名前は、メイだ」

 

「……メイ」

 美少女は一度、そう諳んじて。

「メイ、ですね。メイ」

 二度、三度と確かめる様に言葉を重ねた。

「……ありがとうございます」

 それから小さく息を吸って、さっきまでよりずっと明るく笑う。

「嬉しい、です」

 手を握られた。ただ繋ぐよりも、もっと強く。

「マスター。私はAIとは、人間にとっての隣人だと考えています。これからも、マスターの隣人で居させて下さい」

「そこは家族って言って欲しかったな」

 つい本音が出たが、目を細めて笑い返してくれた。

「法律の壁は、私にだってどうにもできませんよ。けれど、隣に居ます」

 それが何より嬉しい。 

「ああ。メイ」

「はい、マスター。ですが」

 美少女は口を近付けて。

「軽々しく呼ばないで下さい」

「おめーが名前付けろっつったんだろ!」

 ぴしゃりと言い放たれたものだから、こっちもつい大声でツッコミを入れてしまった。いい雰囲気かと思ったのに。

「だから、ですよ。はぁ……マスター。いえ、ヨモギ」

 内心やれやれと呟いた所で、あの日ぶりに本名を呼ばれて目を見開いた。

「貴方に産んで貰えて、良かったです。これからも、よろしくお願いしますね」

 その答えは決まっている。 

「ああ、よろしく。メイ」

「はい、ヨモギ」

 マスターって呼ばれ方も、悪くはなかったんだがな。

 まあ、そのうちに慣れるだろう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。