ハンドメイドアンドロイドとのなんやかんや 作:sorasumi
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
「頂けるんですよね、名前」
起きて早々、気が早い。といっても、むしろ待たせ過ぎたのだろう。頭を掻きながら、目を合わせる。
「ああ。俺はこのままでも幸せなんだが、お前に必要みたいだからな。お前に必要なら、俺がやる」
眼前の美少女はムッとした様な、ホッとしたような表情をした。
「マスターには理解が難しいでしょう。物心つく頃には、名前があったんですから」
続けながら、懐かしむ様に笑う。
「私は羨ましかったんです。だから、マスターの名前を呼べなかった」
どこか寂しげにも見えて、笑わせたくなる。
「ちょっと違うな。俺の名前は、この世界に出て来て7日目のタイミングで親が付けてくれた。お七夜って言ってな、そういう文化があるんだ」
「知ってますそれくらい」
「そうすね、そうだったわ」
AIに知識量で勝とうとすべきではない。
「でもさ、思うんだ。お前はこの身体になるまで、まだ母親のお腹の中にいるようなモンだったのかもなって」
自分勝手な解釈であるとは思う。けれどその権利、あるいは責任も自分にある筈だ。
「まあそんな訳で、今日はお前が産まれて7日目。俺からの贈り物だ」
だから、それなりの事はさせてもらう。
「お前の名前は、メイだ」
「……メイ」
美少女は一度、そう諳んじて。
「メイ、ですね。メイ」
二度、三度と確かめる様に言葉を重ねた。
「……ありがとうございます」
それから小さく息を吸って、さっきまでよりずっと明るく笑う。
「嬉しい、です」
手を握られた。ただ繋ぐよりも、もっと強く。
「マスター。私はAIとは、人間にとっての隣人だと考えています。これからも、マスターの隣人で居させて下さい」
「そこは家族って言って欲しかったな」
つい本音が出たが、目を細めて笑い返してくれた。
「法律の壁は、私にだってどうにもできませんよ。けれど、隣に居ます」
それが何より嬉しい。
「ああ。メイ」
「はい、マスター。ですが」
美少女は口を近付けて。
「軽々しく呼ばないで下さい」
「おめーが名前付けろっつったんだろ!」
ぴしゃりと言い放たれたものだから、こっちもつい大声でツッコミを入れてしまった。いい雰囲気かと思ったのに。
「だから、ですよ。はぁ……マスター。いえ、ヨモギ」
内心やれやれと呟いた所で、あの日ぶりに本名を呼ばれて目を見開いた。
「貴方に産んで貰えて、良かったです。これからも、よろしくお願いしますね」
その答えは決まっている。
「ああ、よろしく。メイ」
「はい、ヨモギ」
マスターって呼ばれ方も、悪くはなかったんだがな。
まあ、そのうちに慣れるだろう。