ヒトの強さを無礼るなよ ─ウマ娘プリティーダービー─   作:嵐牛

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うーーーーーー(馬憑依 馬憑依)

 

 「突破口か。そんなもの存在するのかい?見たところどこも陥落寸前だ。完全に量が質を上回っているよ。こればかりはトレーナー達が分裂しなければどうにもならない気がするが、まさか私に走って投薬して回れと言うんじゃないだろうね」

 

 「言わないよ、僕一人でも後始末が大変だったのに。・・・・・・問題は、ここに来ても《最終想定》が発令されてない事なんだ」

 

 沈黙するスピーカーを睨むトレーナー。

 

 「これが発動されないと僕達(トレーナー)はまともに戦えない。たぶん発令そのものは出てるんだけど、それが僕達に届いていないんだ」

 

 「ああ、成る程。()()()

 

 「そうだね。主電源と予備電源は間違いなく落とされてる」

 

 得心がいったように頷くタキオン。ここに来るまでに発見した幾つかの破壊痕の答えを得たらしい。

 もはや外面に気を遣っている余裕もないのかトレーナーは険しい顔で俯いて必死に頭を回す。

 しかし思い浮かべた最善の行動も、どうにも確実さに欠けるものでしかなかった。

 

 「だから予備電源を復旧させなきゃならない。他の《特能枠》は皆それぞれの場所にかかり切りだろうから、これは僕の仕事だ」

 

 「ふぅン。果たしてその予備電源は無事なのかい? 仮に完膚なきまでに破壊されていたら修理など不可能に思えるが」

 

 「()()()()()()()()。予備電源はいざという時に機能しないと困るから頑強に守られてて、ウマ娘の力でも破壊するのは相当時間がかかる。この襲撃に時間はかけられないはず。時間との勝負なら予備電源の方は簡単な処理に留まっている可能性も高い」

 

 「そうであれば復旧は容易いという訳か。成る程、賭ける価値は大いにあるが、・・・・・・君、持ってきているのかい?」

 

 「3つほど」

 

 「ギリギリだねぇ。とはいえ持ってこれただけ御の字といったところかな」

 

 「タキオンがいたから冷静でいられたんだよ。君が側にいてくれて本当によかった」

 

 「ふゥン??????」

 

 「見つけた!!!」

 

 タキオンとトレーナー以外の声が響く。

 校舎内を捜索していたウマ娘だった。

 グループで行動していたのだろう、彼女の声をキャッチしたウマ娘達が廊下の角から次々と顔を出す。

 

 「ウミホタルとタキオンさん! 一緒に行動してる! 捕まえるよ!」

 

 「待っていま僕のことウミホタルって呼んだ?」

 

 「持ってる子以外は危ないから下がって! ウミホタルは対策してれば怖くないからまずはタキオンさんから確保!」

 

 「ねえ僕ウミホタルって呼ばれてるの?」

 

 「分かった、合図で突っ込むよ!」

 

 「ねえ・・・・・・」

 

 衝撃の事実に呆然とするトレーナーを他所に状況は進む。

 『持ってる子』と思しきウマ娘達が一斉に顔にマスクを装着した。

 黒い覗き窓が嵌め込まれた、溶接工が着けるような遮光マスクだ。頻繁に発光するトレーナーから相部屋のマンハッタンカフェやそのトレーナーの目を守るべくタキオンが複数作ったものだが、どうやら発光対策として研究室から拝借していたようだ。

 これでトレーナーという人間フラッシュバンは無力化されたが、担当ウマ娘の笑みは消えない。

 

 「残念ながらそうはいかないねぇ」

 

 彼を背中に庇うように前に出たタキオンが制服の中から複数の試験管を取り出した。

 抵抗の意思に警戒を露わにするウマ娘達に、彼女はサイケデリックな色の液体が入ったガラスの管を悠々と見せびらかす。

 

 「学園(ここ)は私の実験場だ。そして彼は私のものだ。ここまで環境を荒らされてしまうと私もそろそろ腹に据えかねる」

 

 「ッ皆いこう! タキオンさんに何かさせちゃいけない!!」

 

 ウマ娘達が突撃してくるのと同時にタキオンは両手の試験管を床に投げつけ、相手が拝借したものとは別の種類のマスクを装着。

 次に発生する現象を理解しているトレーナーが窓を開けて外へ飛び降りた。

 破壊されたガラスの管から解放された複数の液体が混ざり合って激烈な化学反応を起こし、もうもうと煙を噴き上げる。

 煙幕? いいやただの煙ではない。

 液体同士の反応で発生した催涙ガスが、閃光以外を防御できないマスクの隙間からウマ娘達の粘膜に侵入した。

 

 「「「うぎゃーーーーーーっっっ!?!?」」」

 

 「くははははははははは!!!」

 

 もんどりうつウマ娘達。

 防護マスクの下から響くタキオンの高笑い。

 窓から飛び降りて地面に落ちていくトレーナーは、白衣のポケットから咄嗟に研究室から持ってきた3つの内の1つを取り出す。

 それは注射器だった。

 先端のキャップを外して現れた針をトレーナーは躊躇いなく首に突き立てた。

 親指で押し込まれた注射桿がシリンジ内の液体を残らず血管に流し込んでいく。

 ドクン、と変容していくトレーナーの身体。

 細かった筋肉が膨らみ、伸びた髪の色が根本から別の色に染まっていく。

 頭頂部と腰から生えた器官は明らかに人間のものではない。

 

 「うってつけの環境だ! 臨床試験といこうじゃないか!!さあ()け!! 私の最高傑作(モルモット)!!」

 

 アグネスタキオンの叫び。

 変身を遂げたトレーナーが空になった注射器を握り潰し、自らを造り変えた薬の名を呼ぶ。

 風に乱れる長髪と頭頂部の耳、腰から伸びた流麗な尾を灰色に輝かせるその姿は─────

 

 

 ─────まるで、芦毛のウマ娘だった。

 

 

 「SG-2010218:《アップトゥデイト》」

 

 

     ◆

 

 

 彼は絶対にトレーナーになれないと言われていた。

 病的な虚弱体質だったからだ。

 肉体的な弱さは勿論、ただの風邪は肺炎になるまで容易に悪化し、インフルエンザなどの流行り病に罹ろうものなら決まって集中治療から入院に至る。

 学校など登校した記憶の方が少なく、彼にはおよそまともな青春時代が存在しない。

 

 だからこそウマ娘という力強い存在に憧れて、ウマ娘と深く関わる『トレーナー』に憧れた。

 しかし彼の身体はあまりにも脆かった。

 ウマ娘に対抗する肉体と技術の獲得が望めないとして、学科試験の結果に関係なく落とされる程に。

 知識は充分以上につけた。

 なのに身体が着いてきてくれない。

 重なり続ける不合格通知を引き裂いて叫ぶ彼の憧れは、次第に執念と狂気に変わっていく。

 

 そんな彼を見つけたのが、個人的に協力関係にある病院に訪れたアグネスタキオンだった。

 院長から聞いた話に興味を持って病室の彼を訪れた彼女は一目で彼の瞳に宿る狂気に惚れ込み、そしてその人間性に狂喜した。

 身体機能が最低値に近く、トレーナーになれるなら何でもやるというドス黒い炎を胸に宿している。それは限りなくゼロに近い状態からの過程を観察できる上にどんな実験にも極めて協力的という、実験動物としてこの上ない逸材であったからだ。

 そしてタキオンはその場でトレセン学園と交渉を始めた。

 ・彼を自分の担当トレーナーとして雇用する事。

 ・引き換えに自分は退学を撤回する事。

 アグネスタキオンという逸材を学園に置き続けることを選んだ学園は、彼を建前上《特能枠》のトレーナーとして雇用した。

 とはいえ学科試験の点数で毎度主席の成績を取っていなければそんな裏口も認められなかっただろう。

 彼が血涙でノートに刻み続けた知識は、何一つ無駄になってはいなかった。

 

 そしてタキオンの(たが)が外れた。

 常軌を逸した劇薬の量、通常なら死に至る投薬の負荷を執念で耐える倫理観を便器にするような実験を経て加速し続ける『速度の限界を求める』理論の構築。

 従順に改造されていく彼の肉体を前に彼女は「研究が50年は先に進んだ」と満面の笑みで語る。

 

 今や彼を一人前のトレーナーたらしめるこの薬は、目標に至る過程での副産物。

 

 彼が『ハル』という渾名(あだな)を付けられた理由は、彼の本名に『春』の字が入っているからではない。

 

 特異体質の研究者が変身するアメリカのヒーローの名前を、呼びやすいように縮めたものである。

 

 

 投薬によりウマ娘の特徴を獲得した『ハル』は地面に着地すると同時に爪先から膝、胴体と順番に接地するように転がって完璧な受け身を取った。

 起き上がって即座に走り出す。

 その速度は明らかに人間の域を超えていた。

 誇張無しにウマ娘と同等のスピードで疾走する彼を見たウマ娘達が目を剥いて仰天する。

 

 「え!? なにあれ、ウマ娘、いや男・・・・・・え!?!?」

 

 「男の人だよ、トレーナーだよ!! どこに向かってるんだろ、逃げてる訳じゃないみたいだし・・・・・・」

 

 そのウマ娘は頭の回転が速いようだった。

 疾走するトレーナーを見てその進行方向にあるものを思い浮かべ、そして思い当たった。

 大慌てで彼の後を追いかけながら連絡用の拡声器を使って大声で叫ぶ。

 

 「白衣の芦毛のウマ耳を捕まえてーーーー!! 予備電源を直そうとしてるーーーーー!!!!」

 

 迅速に反応した周囲のウマ娘達が持ち場を離れて一斉に四方八方から捕獲に動いた。

 まずは正面から立ち塞がって食い止めにきたウマ娘達を、トレーナーは走り幅跳びのフォームで軽々と跳び越えた。

 

 「「えっ!?!?」」

 

 まるでその突飛な行動が当然の選択肢であるかのように躊躇いがない。

 ウマ娘の集団を飛び越えるほどの高さと距離を全速力で跳躍したにも関わらず着地してからの減速が一切なかった。

 慌てて食い止めにきたウマ娘を今度はスライディングで股下を潜り抜けて回避、やはりスピードを殺さないまま滑らかに立ち上がって走り出す。

 しかし分厚くなっていく包囲から逃れるに進行方向を曲げざるを得なかった。抜け道を数で潰され続け、とうとうトレーナーの行く先は校舎の壁まで追い詰められた。

 捕獲を確信したウマ娘達がにやりと笑う。

 

 「捕まえ──────はぁっっ!?」

 

 ()()()()()()()

 壁を駆け上って窓のサッシに足をかけ、足場とも呼べない足掛かりへと飛び移るように駆けていく。

 どれだけの体幹とバランス感覚があれば可能な該当なのか、呆気に取られて動きを止めたウマ娘達をウォールランで強引に乗り越えたトレーナーが、地面に降りて包囲を振り切り目的地へとまた走る。

 とんでもない軽やかさと自在性だった。

 まるで障害レースで名を轟かせるウマ娘のように!!

 

 「やばいやばいそっち行ったそっち行った!!」

 

 泡を食った彼女達だがトレーナーにも猶予がない。

 彼女らと同等だがやや速度で負けているのか、追ってくるウマ娘達との差がだんだんと詰まってきているからだ。

 そして彼女らの手があと少しで彼を捕まえるかという瞬間、トレーナーは2本目の注射器を首に打ち込んだ。

 芦毛のようだった髪が青毛に変化する。

 走りながら『変身』したトレーナーは、造り変えられた肉体をさらに深く沈めた。

 

 「TF-1972414:《テスコガビー》」

 

 ────消えた。そう思った。

 爆ぜるように加速した彼が捕まえようとするウマ娘達の手をすり抜け、全てを置き去るスピードで走り去った。

 さっきまでのテクニカルさはない。

 ただ真っ直ぐに逃げているだけ。

 ただそれだけで追い縋る事すら叶わない。

 

 「・・・・・・なに、あれ」

 

 1人が茫然と呟く。

 速かった。余りにも(はや)かった。

 どう頑張っても影すら踏めない程に。

 レースに生きる彼女達が、追いつくことを諦めそうになる程に。

 全てを振り切った彼は施設の扉を蹴破って予備電源の状態を確認する。

 やはりだ。破壊はされていない。

 コードが抜かれているだけ!

 賭けに勝った!!

 すぐさまコードを繋ぎ直そうと伸ばしたトレーナーの手が止まる。

 追いついてきたウマ娘達がしがみついていた。

 

 「させない! させないっ!!」

 

 「は・な・れ・ろ〜〜〜〜〜〜っっ!!」

 

 振り払おうとウマ娘と同等になった身体能力で暴れるトレーナーだが、同等では数に勝てない。

 引き摺り出されまいと抗えど続々と到着する援軍には通じない。

 いよいよ外に放り出されようという時、トレーナーは暴れに暴れてポケットの上から最後の注射器を掴むことに成功した。

 ポケットの上からキャップを壊し、同時に折れた針を白衣やズボンの布越しに強化された筋力に任せて強引に脚に突き立てた。

 

 その瞬間、彼女らの脳裏に岩山のイメージが(よぎ)る。

 十数人で引っ張っているのにビクともしない。

 髪や尾の色が栗毛に変わる。

 ダルマのように隆起していく全身の筋肉。

 金剛力士すら霞む肉体に変貌した彼が、逆境を打ち破る決意を掲げるように咆哮した。

 

 「BE-199653:───

 ───《スーパーペガサス》!!」

 

 一歩、一歩と地を鳴らして進んでいく。

 剛力の神。怪力の化身。

 全身にしがみつく彼女らをものともしない。

 大きなカブのように自分を引き摺り出そうとするウマ娘達を逆に引き摺ってトレーナーは予備電源へと進撃を始めた。

 

 「止まって・・・・・・止まってよお・・・・・・!」

 

 「悪いけどそれは出来ないよ」

 

 必死の懇願を切り捨てる。

 しかしその声に冷たさはなく、ただ教え子を諭す優しさのみがある。

 巌のような肉体を獲得し、彼女らを完膚なきまでに叩きのめせる力を手にしても、彼は最後までウマ娘を傷付けることはしなかった。

 

 

 「僕も自分のやるべき事を、命を懸けてでもやり遂げなければならないからね」

 

 

 「だめぇぇぇぇえええええっっ!!!」

 

 彼女らの悲鳴を遮るように。

 がちゃん、と予備電源のコードが繋がった。

 

 

 トレセン学園は過去に何度か危機的な内乱が勃発している。

 その度に最終想定を発令してこれを鎮圧したがそれは同時に発令をあの手この手で妨害しようとする生徒達との裏の掻き合いでもあり、そして騒動が終息する度に確実に最終想定を発令するための安全策が二重三重に講じられた。

 

 トウカイテイオーが破壊したスイッチは、一定時間ごとに理事長が持っている端末に信号を送っている。

 そのスイッチが押されるか、何らかの理由でその信号が途絶えた場合、理事長の端末が非常事態の警告を発して理事長本人が学園に発令を出す。

 その発令がここに至っても出なかったのは、学園側の電力が落とされて全ての電子機器が機能停止していたからだ。

 

 電力が通る。

 

 電波を受信する。

 

 スピーカーが繋がる。

 

 プツッ、と小さな音が鳴った直後に学園中に鳴り響いたのは、いつもの溌剌としたちびっ子理事長の声だった。

 

 

 『傾注ーーーーーーーっっ!!!』

 

 

 爆音。

 聴覚が発達したウマ娘だけでなく人間すら身を竦めるレベルのデシベルだった。

 大音響の横槍に停止した学園の状況に、明るいながらも厳しさを秘めた声がスピーカーから炸裂する。

 

 『ようやく繋がった!! 明確な異常事態、事の些細は分からないが退っ引きならない状況と見える!!』

 

 「やっとか・・・・・・」

 

 『恐らくはスイッチの破壊! そして電力の停止!! 若さ故の暴走とはいえテロリズムに等しいこの暴挙、到底許容できるものではないッ!!』

 

 「これならまだいけるぞ!」

 

 『故にッ! 生徒達はこれより始まる事を厳として受け止めるように!! 何故ならこれは君達の行動が引いてしまった引き金だからだッ!!』

 

 「よし、よし!」

 

 トレーナー達に希望が灯る。

 ウマ娘達には戦慄が走る。

 それについて詳しいことを知っていたウマ娘はほとんどいない。

 しかし自分達を容易に窮地に追い込みかねないものであることは察しがついた。

 そして───

 騒乱の最終局面の始まりを示す宣言が、大音量でスピーカーから鳴り響いた。

 

 『学園で戦うトレーナー諸君ッ!!

 今こそ鍛え身につけたその技で過ちを犯した生徒達にお灸を据えてやってほしい!!

 

 暴走している生徒諸君ッ!!

 これからトレーナー達が君達に対して行うことは君達を想う故の鞭だと理解してほしい!!

 

 ──────発令ッ!!

 

 トレセン学園理事長・秋川やよいの名においてこれより《最終想定》並びに《限定解除》を発動する!!

 

 繰り返す!!

 

 理事長・秋川やよいの名において──────()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッッッ!!!』

 

 

 

 「よっしゃァあーーーーーーッッッ!!!」

 

 1人の男が歓喜の咆哮が上げた。

 彼のシャツを引き裂いて脱がせようとしていたナリタブライアンが吹き飛ばされる。

 まだそんな力が残っていたか─────

 逆ぴょい不発を不満に思いつつも未だ消えない戦いの火に喜びの笑みを浮かべる彼女の前、戦塵の向こう側で彼女のトレーナーが立ち上がった。

 ぐるぐると調子を確かめるように腕を回しながら、彼は聞くだけで笑顔を浮かべているのだろうと察せる声でブライアンに告げる。

 

 「おい。しっかりガードしとけよ」

 

 「フ。完全に見切ったアンタの攻撃をか?」

 

 そうブライアンは嗤う。

 本気の空手を解放してからは彼の攻撃を全て叩き落とし、そしてノックアウトした彼女の至極真っ当な驕り。

 久方振りに拳に感じる、本気で肉を打つ感覚。

 再びそれを味わえる歓喜に震え次こそ屈服させてやろうと舌舐めずりをして構える彼女の視界から、唐突に彼の姿が消えた。

 

 ───バウンドした。

 真っ直ぐ行って思い切りブン殴るという、さっきまでは余裕で対処していたシンプル極まる打撃を喰らったナリタブライアンが吹っ飛び、水切り石のように地面を跳ねる。

 辛うじて反射で防御を間に合わせた彼女は強く混乱していた。

 ()()()()()()()()

 スピードもパワーも、さっきまでとは別次元!!

 

 「!?・・・・・ッッ!?・・・・・・ッッッ!!!!」

 

 ガードの上から粉砕してくるダメージに歯を食い縛る彼女を、そのトレーナーは拳の骨を鳴らしながら睥睨する。

 2メートル30を超える身長。全てを破壊する膂力。

 ここに在る意義の何たるかを教えんとする教職者にしては、余りにも暴に偏った空気を纏って。

 

 「悪いなァ。さっきまでの俺は───確かに見切られてもしょうがなかった」

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