ヒトの強さを無礼るなよ ─ウマ娘プリティーダービー─ 作:嵐牛
去原流は消えゆく流派だ。
流派の当主である養父からはそう聞かされた。
かつてトレセン学園との協働で再び名が知れ門下生が増えた時期もあったが、それは返り咲きと呼ぶにはあまりにも短い期間だったという。
古流らしい不親切な教え、ウマ娘を斃すという目的故の要求の高さと鍛錬の厳しさ。
そして何より、もはや時代錯誤なその目的や在り方を今まで変化させないまま掲げ続けてきた頑固さ。
自分は受け継いできたこの剣を誇りに思っているがやはり時代には抗えん、と─────わざわざ孤児院から引き取ってその時代錯誤を血反吐を吐いても叩き込んだ
そして血の繋がりがない事すら忘れるような鍛錬漬けの年月の末、養父から免許皆伝と同時に二つの事を言い渡された。
一つは養父の
もう一つは「トレセンへ行け」という
お前の修めた剣を然るべき場で役立てろ、と。
どういう欺瞞だと思った。
ウマ娘を守るべき立場でウマ娘を斃すための剣を振るえなど矛盾もいいところじゃないかと。
だけど今なら分かる。
この現代にも武器を握らねば立ち行かなくなった者がいる事。刃でしか切り拓けない未来を望んでしまった者がいる事。
そしてそんな者の手を掴んで引き戻せるのは、同じ覚悟で刃を握れる者だけだという事。
彼女の思慕には応えられない。
しかし破滅に身を投げる未来は必ずや斬り捨ててみせよう。
捨てられた自分と家族の温もりを再び繋ぎ合わせてくれた、父から継いだこの剣で。
◆
人間は脆い。
ウマ娘が相手でなくとも分かりきった事実だ。
刀で斬られてもヒトは死ぬ。槍で突かれてもヒトは死ぬ。槌で殴られても銃で撃たれても、何なら殴られてもヒトは死ぬ。それが戦乱の時代に得た教訓。
だから去原流はヒトを『見る』。全身の形から見て取れる重心の位置、四肢の末端の微かな動き、表に殆ど現れない意識の揺らぎに至るまで。
極限の集中から零れ落ちる一雫の無意識に彼は斬り込むのだ。
それこそ死合いの場であれば、相手が斬られた事にも気付かないまま絶命する刹那の間隙に。
「うっ!?」
こつん、と額に鞘尻が当てられる。
反撃しようとした時には既に間合いにいない。
そんな事をもう何度繰り返したか。
十数回目の『仕切り直し』の後、距離を大きく取ってグラスワンダーは短く息を整える。
────彼の動きが捉えられない。
理由は分かってきていた。
力と意識の抜き方を極めたトレーナーは的確に自分の意識の隙間を突いてくるが、得物の違いによる間合いの有利は変わらずこちらにあるはず。にも関わらず再三に渡って接近を許しているという事は、自分がやるべきなのは───!!
「・・・・・・正解だ」
刀を構えたトレーナーが薄く笑った。
「やああっ!!」
《鬼砕》の刃が重く鋭く空を斬る。狙いは下段、トレーナーの脚を狙ったのだ。
無論、躱される。しかしその動きはここまでの回避に比べて明らかに動きが大きく、刹那を突く返し技も来ない。自分の狙いが的中した事を確信したグラスはさらに前に踏み込んで薙刀を振るっていく。
「!? カウンターが来ない!?」
「下段に攻撃を集中させて足運びを封じてる! なるほど、これなら一方的に有利を押し付けられる・・・・・・!」
前に出た脚だけではなく、薙刀の長さを活かして両脚を纏めて薙ぎ払う。トレーナーの最たる脅威は気配の無さ、進むも退くも気取られない足運びだが、これを回避するには後ろに大きく下がる他無い。ウマ娘の瞬発力ならそこで生まれた隙に攻撃を差し込める。
そうなれば戦いの趨勢は傾くだろう。
グラスの目論見は正しかった。
反撃もなく退き続けるトレーナーに対して、グラスは猛然と《鬼砕》を振るい続ける。
「どうなさいますか? 今のままでは
一回、また一回と薙刀が振るわれる度にトレーナーの回避が危うくなっている。
そもそもの身体能力に隔絶した種族差があるのだ、たとえ技術があってもただ逃げているだけでは保たないのは道理。
しかし次の瞬間にトレーナーが選んだのは、誰もが予想していない選択肢だった。
「いいだろう。去原流を見せてやる」
反転。低く身を屈めたトレーナーが真っ直ぐにグラスに突っ込んでいった。
「ケッ!? トレーナーさんそれは駄目!!」
エルコンドルパサーが悲鳴を上げる。
逃げるだけではいずれ詰むが、彼が選んだのはそれを更に上回る下策だった。
自ら内側に突っ込んでインパクトを外し、衝撃力の弱い場所を身体で受ける。それ自体はエルも行った事だが、それが出来たのはウマ娘特有の頑強な身体があってこそ。人間がやれば胴体が潰れるだけだ。
そしてトレーナーは躱さなかった。
薙刀の一閃は過たず彼を打ち据え、勢いのままに振り抜かれ─────
「こっちだ・・・・・・」
とん、と背中をつつかれた。
「! ! ? !? !」
目の前からトレーナーが消えた。
かと思えば背後にいた。
泡を食って《鬼砕》を振り回すが、再び姿が掻き消えた次の瞬間には彼はもう背後にいる。
理解できない現象に大きく混乱するグラスだが、遠巻きに見ていた観衆には何が起きたかが見えていた。
しかし理解できたのは極小数。
武術に造詣の深いウマ娘が呆然と口を開けた。
「・・・・・・あの人、
踏み込むことで薙刀の
空中の布を棒で殴ってみれば仕組みの理解は早いか。
人間の体重など屁にも感じないウマ娘が相手だからこそ成立する、去原流の技の一つ。
「《
グラスが薙刀を振るう度にそれを利用してトレーナーは背後に回り込み、鞘で軽く首筋に触れる。
大振りの攻撃は危険だ。《鬼砕》を青眼に構えて刺突と面打ちを中心に打ちかかっていくグラスだが、それはやはりトレーナーの足捌きと無意識への侵入によって返り討ちに遭う結果となった。
ウマ娘の力なら軽く当てただけでも大打撃になる。故に隙が少なく速度にも長けたその戦略はトレーナーに対する戦略として合致していたはずだ。
なのにこうも容易く返し技を貰うのは何故か?
「・・・・・・グラスさん、疲れてる・・・・・・?」
「っ、ふぅ・・・・・・っ!!」
グラスが荒く息を吐く。
得物の運動エネルギーを相手に押し付けられない分、空振りは打ち合いよりも体力を食う。まして彼女の薙刀はウマ娘が振るう事を前提として造られているのだから尚更だ。
加えてここまで自分の力と技が一才通用していないという焦燥が精神面から肉体に負荷を掛けている。
「・・・・・・武道という観点から見た場合・・・・・・、ウマ娘には弱点がある」
「ぅぁぁああああっ!!!」
「ウマ娘は体重と筋断面積に比べて・・・・・・、発揮できる筋力が異常に大きい。その『不自然』こそが弱点だ・・・・・・」
遮二無二打ちかかるグラスの薙刀を軽く回避しながらトレーナーは教導するように静かな声で言う。
「自分の体重より重いものを振り回せば当然身体は遠心力で大きく引っ張られる。ウマ娘はそれを筋力で誤魔化しているが、その摂理そのものは変わらない。だから姿勢を少し崩してやれば・・・・・・」
《明月》から片手を離したトレーナーは、グラスの刺突を身体をずらして回避しつつ空いた手を《鬼砕》の柄に添える。
そのまま掴んで引っ張った。
ガクンとつんのめったグラスの足を払い、そのまま掴んだ薙刀を捻ってその先にいるグラスを地面に転ばせ、そして鞘尻で喉笛に軽く触れた。
「《
完膚なきまでの制圧。
しかし事も無げに行われた一連の流れに全員が絶句した。
薙刀による刺突、ましてウマ娘の膂力と瞬発力で放たれるそれを正確に掴むという銃弾を払い除けるが如き所業。未来予知じみた洞察力。
────あのグラスワンダーが敵わない。
たじろぐ生徒達の真ん中で、天を仰いで転がる彼女にトレーナーは静かに説いた。
「・・・・・・投降しろ、グラス。お前じゃ俺にはまだ勝てん・・・・・・。俺はこれ以上、お前を『斬る』気は・・・・・・」
「投降?」
バネ仕掛けのようにグラスが飛び起きた。咄嗟に飛び退いたトレーナーに対してグラスは《鬼砕》を振りかぶる。
白旗は掲げない。ならばトレーナーのやる事も変わらない。さっきまでと同じように刹那の間で太刀筋を見切り、刃を当てれば致命となる場所に鞘尻で触れた。
グラスはそれを無視した。
構わず振り回された薙刀に、トレーナーは目を剥いて本気の回避行動を取る。
その一撃では終わらない。
爆ぜるような薙刀の連撃、それを回避するトレーナーの動きにさっきまでの余裕は無く、事実彼の顔からも余裕が消えている。
そしてグラスの進撃に対してまたも大きく踏み込んだ彼は彼女が薙刀を握っているところと同じ所を掴んで巻き込むように引き、重心を崩して薙刀ごと振り回すように投げ転がした。
鞘尻によるチェックメイトの宣言はなく、ただ彼は大きく距離を取る。
────何故か局面が大きく変わった。
その理由に思い至った武芸に造詣の深いウマ娘がハッとして呟いた。
「・・・・・・そっか。
これが抜き身の実戦ならグラスはとっくに物言わぬ塊となって地面に転がっている。
そうなっていないのはトレーナーが刀を鞘に納めたままにしているからであり、そもそもにおいて実戦の剣術は『命中すれば相手を無力化できる』事を前提に編纂された技術。それを承知しているからこそグラスは『斬られる』度に仕切り直していたが、それを無視して得物を振り回されると彼はどうしようもなくなるのだ。
そう───『トレーナー』はウマ娘を傷付ける事など絶対にしないのだから。
「斬る度胸もないくせに・・・・・・随分と上辺だけの言葉を並べますね」
今までの言葉とは違う明確な嫌悪。
立ち上がったグラスがゆらりと《鬼砕》を構えた。
「捨て身を相手に尚も道理で向き合おうなどと。鞘に納めたままの刃は最初から飾りだったようですね」
「・・・・・・落ち着け、グラス。その捨て身が生み出すものなんて何も無い・・・・・・。今ならまだ間に合う、自分の進むべき道を思い出せ・・・・・・」
「ああ、やっぱり。いつだって私の本気をはぐらかして、全てを捨てても返してくるのは毒にも薬にもならない優しさで。綺麗事を取り繕うだけのために全ての力を注いだ人。それが『トレーナー』なのですね」
悔しいような吐き捨てるような、そこに込められた感情の坩堝は彼女本人にしか読み解けまい。
しかしトレーナーにもこれだけは分かった。
彼女は今、自分を心から蔑んでいるのだと。
「私達に本気で向き合おうとしない。傷付けまいと隠れてばかりのあなたの剣は・・・・・・まさに
沈黙が流れた。
まだ戦いは再開しない。
グラスワンダーはトレーナーの返答を待っているのだ。抱いた愛と同質量の憎しみを、愛しい人はどう受け止めたのか。
彼女の言葉を反芻するように視線を伏せていたトレーナーは、やがて水面のように静かな、しかし確固たる口調で答えを紡ぎ始めた。
「・・・・・・俺達が口にしてきた綺麗事に、一切の誤魔化しはない。納得されていないのも重々承知しているが、大人として、教育者として『トレーナー』は全力でそれを貫かねばならん。お前達は存分に俺達を嫌い、憎んでもいい・・・・・・
──────しかし、だ」
ゾンッッッ!!!!と。
彼の全身から口に出した全ての言葉を撤回するような、引き裂くような殺気が迸る。
「
口から冷気を発しながら、トレーナーは《明月》の鍔と鞘を
鞘が抜けないよう、間違っても何かを傷付けないように施されていた縛り。
淀みなく解かれていく紐はみるみる内に封印を緩め、そしてぱさりと地面な落ちる。
「
きいん、と。
鯉口を切る音が、やけに大きく響いた。
「傷付けられた尊厳はお前の
ずらり────、と。
とうとうトレーナーが《明月》を抜いた。
刀身は幅広く肉厚、刃紋は
しかしどうにも引っ掛かる事がある。
───輝きが曇っているのだ。
刀身に煌めく反射光が鈍い。
彼ほどの剣客が得物の手入れを怠るとは考えにくいがそもそもあの刀、修繕の跡こそあるが柄も鍔も酷くボロボロなのだ。つまりあの刀は彼の流派に代々受け継がれてきた歴史的な代物なのでは───
「ぁ」
武芸に造詣の深いウマ娘が掠れた声を漏らすと同時、同じ事を読み取ったグラスの肌から冷や汗が逆向きに噴き出した。
去原流は南北朝の後に生まれた流派。
もしあの刀、《明月》がその時から受け継がれてきたとするならば。
ボロボロになった柄。
───どれだけ強く握り振るわれ続けたらああなる?
あちこちが欠けた鍔。
───どれだけ敵の攻撃を受け止めたらああなる?
塗装が剥げまくった鞘。
───どれだけ戦いに揉まれたらああなる?
輝きは鈍く刃紋すら薄くなった刃。
一体どれだけの血と脂を吸えば───、
本能が理解した。
あの刀は、呪いだ。
この場にあってはならず、彼の立場が握っていてはならないはずの怨念の塊だ。
しかしてグラスワンダーは笑う。
これこそが彼女が望んだ瞬間。
トレーナーの激情。自分の激情。剥き出しの心を真正面からぶつけ合う魂の共鳴。
ようやく、ようやく、願いが叶う。
「・・・・・・ありがとうございます。これで私も───、
構えは更に低く、薙刀の持つ位置はより石突に近い場所に移動。重心を前に置いて全身を前傾させた姿は真っ直ぐ走って叩き込むと言葉無くして誓いを立てていた。
限界まで捻られた身体から、限界まで力を蓄えた筋繊維から、握り締められた《鬼砕》から、ミシミシと張り詰める音が鳴る。
───本来の目的はトレーナーの捕獲。
潰してしまっては元も子もない。
だからずっと加減していた。
だけどもう関係ない。
彼がどうあっても自分のものにならないのなら、自分の想いだけは全て受け止めてもらう。
命を賭した不退転。グラスワンダーの渾身が解き放たれようとしている。
対するトレーナーはあろう事かその場に膝をついた。
両脚の幅を広く取って跪き、水平に構えた《明月》の
およそ能動的に斬るための構えではないが、これこそが去原流の『骨』だ。
諦めさせるために無理矢理攻め入っていたさっきまでとは違う。力無き者が大物を喰らう『待ち』の本質、後の先の極み。
迸る殺意の一切を身の内に閉じ込めた凪の海のような静寂が、巨大な
「・・・・・・駄目」
震える声で誰かが懇願した。
何だかんだで無難な結末に落ち着くと思った。
だって彼女はトレーナーを捕まえたくて、トレーナーは彼女を無事に鎮めたくて。怪我はするかもしれないけど、それでもまだやっつける範囲で決着すると思っていた。最悪の事態に発展させる理由が無さすぎるから。
でも、もう駄目だ。
二人とも一線を超えてしまった。
相手を終わらせる覚悟を決めてしまった。
どちらかが死ぬ。
それでいい。
たとえ叶わぬ想いでも、終幕の感覚と命脈を断つ感触だけは永遠にこの手に残り続ける。
ああ、顔も知らない薬指の恋敵よ。貴女が彼と永遠を誓ったならば、最期の瞬間は私が貰おう。
ドン底に堕ちた愛だとしても、罪を引き摺って私は笑う。
「─────いざ!!我が
大地を踏み砕いてグラスは
疾風と化すような速度を乗せて、振り回した得物がしなる程の剛力が襲いかかる。
一撃ではない。連撃。
連撃どころか、もはや暴風。
呑み込めば人体を血と肉の霧に変える暴力の喉奥を前にトレーナーは僅かにも揺らがない。
敵が来るなら、後は斬るだけ。
ただ一つの目的以外を全て削ぎ落とし、己の誇りを貫くその型を彼はこう呼んだ。
「六の太刀。─────《
そして。
からんからんといくつもの軽く硬い音が連続して地面を転がった。
鋭利な断面を晒すそれは数秒前まで薙刀だったもの。《鬼砕》と呼ばれた業物だったもの。
あまりにも有り得ざる結末にグラスワンダーは目を見開いて呼吸を引き攣らせる。
彼女の首筋には、鈍く輝く《明月》の刃が添えられていた。
「・・・・・・え、何?何が起きたの?」
「・・・・・・信じられない。あの人、
武芸に造詣の深いウマ娘が震える声で言った。
「ウマ娘が全力で迫ってくるっていう事は、相対的には自分がウマ娘と同等の速度と力で相手に迫ってるのと同じ。それを利用したの。
地面に膝を着いて攻撃できる面積を減らすことでグラスさんの攻撃を制限して、その上で攻撃の軌道上に刀を置いた。
だから薙刀を斬ったのはグラスさん自身の力」
「な、何それ? つまりえっと、トレーナーさんはグラスさんに全力で薙刀を《明月》に叩き付けさせて薙刀を破壊したの? そんな事が出来るの?」
「
蚕の糸より細い綱渡りみたいな技を、あんな涼しい顔して当然のように・・・・・・!
あの人、
「どう、して・・・・・・」
掠れた声でグラスが問う。
「これだけの技が・・・・・・、ここまでの力の差があると理解していたのなら・・・・・・。どうしてわざわざ、戦いを長引かせるようなことを・・・・・・」
「・・・・・・剣の目的が目的だから、昨今じゃ実戦での研鑽を積む機会が本当に貴重なんだ・・・・・・。身に付けた技術も、虫干しをしなければカビが生えるばかりでな・・・・・・」
嘯くように答えるトレーナー。
随分と業腹な理由だが、これならこれでいいとグラスは思う。
この首筋の刃が押し込んで引かれれば自分の十数年の生は終わる。そうなれば自分は『トレーナー』としての彼の生に深く刻まれる。
そうして最愛の人と生きていく彼の中で生き続けられるのであれば─────・・・・・・
「俺はお前の傷にはなれないし、お前を俺の傷にする訳にはいかない。お前の想いを遂げさせてやれる程、俺は弱くないんだ」
ひどい
泣きそうなくらいに歪んだ笑顔で、最後にグラスワンダーは吐き出した。
心臓部分に当て身を受けたグラスが意識を手放した。
脱力した身体を受け止めて横たえて《明月》を納刀。落とした紐を拾って再び鍔と鞘を
父が自分をトレーナーにした理由。
斃す技を持ちながら守る役目に就かせた理由。
─────理解した。
この剣に新たな道を拓けと云うのだ。
それ即ち、『活人剣』。
技で殺すのではなく、技で生かす道を。
「そこのお前。なかなか良い観察眼を持ってるな・・・・・・剣に対する知識もある。・・・・・・うちの門下生にならないか」
!?と武芸に造詣の深いウマ娘が自分を指差して仰天した。
結局その誘いは丁重に辞退した彼女であったが、後に彼女はこう語る。
あんな剣の鬼みたいな人も、あんな顔して笑うんだ、と。