ヒトの強さを無礼るなよ ─ウマ娘プリティーダービー─ 作:嵐牛
「この度は本当にご迷惑を・・・・・・!!」
「ちょ、エルは大丈夫デス! 頭を上げるデース!」
「しかしあなたの怪我はまだ・・・・・・!」
「全然ヘッチャラ! ルチャドーラは頑丈デス!」
出会い頭でいきなり両手を床に着こうとしたグラスワンダーを慌てて止めるエルコンドルパサー。
確かに包帯や自然治癒促進のパッドをあちこちに処置されている彼女はどう見ても無事には見えないが、彼女自身がもう何も気にしていないのも事実である。
それでも頭を下げようとするグラスワンダーを宥めて落ち着かせ、ようやく二人は話し合う事が出来た。
「とにかく、今回の事はしっかり反省して下さい。みんな暴走してましたけど、武器を振り回すのはホント洒落になってないデス。私も不甲斐ない限りですが、あの人じゃなかったら止めてもらえませんでした」
「・・・・・・返す言葉もありません」
「分かってるならヨシ! ・・・・・・それで、トレーナーさんと話は出来ましたか?」
「はい。契約は続行、『これからは今まで以上に厳しく鍛える』と、これ以上ない慈悲の沙汰を頂きました・・・・・・それから、トレーナーさんの奥様とお話しする機会も」
「ケ!!??」
予想外の修羅場に困惑するエルコンドルパサー。
この流れでトレーナーの妻が出てきたというのもそうだが、彼女と話す事など今回の事件について、いやグラスワンダーが彼に対して行った暴挙について以外に何もない。
返り討ちにされたとはいえ思慕が行き過ぎて凶行に走ったともなれば、本人が良くてもその伴侶の怒りは計り知れない。
目を伏せたグラスワンダーの口元が晴れない悔恨で歪むが、その内容はエルコンドルパサーにも、そして当時のグラスワンダーにとっても全く予想していないものだった。
「人間の女性でした。『気の済むまで秋波を送ればいい。その程度で転ぶような惚れさせ方はしていないから』と・・・・・・。本当に浅はかでした。あそこまで強い女性を相手に、力で彼を奪い取ろうなどと」
「・・・・・・あー、それはちょっと敵わないデスね・・・・・・。で、グラスはこれからどうするんデス? 契約解除にならずに済んだとはいえ、流石に大人しくしておいた方がいいと思いますけど」
「そうですね〜。『才があると聞いたので門下生としては歓迎する』とのお言葉も頂いたので、せっかく奥様からの許可も降りた事ですし、まずは入門する所から仕切り直そうかと〜」
「・・・・・・本っ当タフな女デース」
反省も後悔もある。だが、それはそれ。
いつも通り頬に手を当てて微笑む『怪物』に、エルコンドルパサーは呆れたように目を細めた。