教室を開け、担任と思わしき人物が教壇へと上がる。
「まずは入学おめでとうございます。Cクラスを担任することになった坂上数馬です。この学校では、基本的《・・・・》にクラス替えはなく3年間私が勤めることとなります。これからよろしくお願いします。」
基本的に……か、まるで例外があった場合はクラス替えができる、と言っているようなものだが。
俺が思案している内に坂上先生はこの学校についてのルールが載った資料をいつの間にか配っていた。俺は資料を手に取り目を通す。
「入学前にも説明をしたと思いますが、今一度この場で確認してもらいます」
そのルールブックにはいくつかの点が載っている。
・この学校では敷地内で暮らすこと。
・そのため外部と連絡が一切できない点。
・ただし、その反面施設は揃っていること。
入学する前から伝達されていたので特に思うところはないが、いざ説明されてるとあまり実感がないな。
「今から配る学生証、それを使うことで施設の利用や、商品の購入などができます。ただし、ポイントを使うことになるので使い過ぎは程々に。このポイントがある限り、学校の敷地内にあるものならばなんでも購入することができます」
なんでも、という言葉に周囲はざわつく。俺自身も正直面食らっていた。
なんでも、か。なら自分のテストの点数とか買えるのか?と疑問に思った。買えるなら勉強とか控えめでよくなるんだが。
学力はあまり高い方とは言えず、特に数学においては頑張っても65と正直勉強していないときは赤点ギリギリだった。
おそらくなんでもと書いていることから買えはするのだろうが、値段はとてつもないだろう。そう考えた俺は次の説明を待つことにした。
「ポイントの振り込みについてですが、ポイントは毎月一日に自動的に振り込まれます。支給額については生徒全員に10万ポイントが支給されるようになっているはずです。一ポイントが一円単位だということをお忘れなく」
「じゅ、十万……?」
これまであまり反応を見せなかった生徒たちがざわつく。かく言う俺もあまり現実実がなかった。
一ヶ月10万ポイントだとして学年がだいだい150。詳しい数字は知らないが、少なくとも一年で一億は行くだろう。
確かにこの学校にはそれなりの知名度はあると思っているが……いくらなんでも一施設にかけるお金じゃないだろうし、何か裏がありそうだ。
「ポイント支給額が多いと思った人もいるかもしれませが、入学したあなたたちにはそれだけの価値がある、ということです。ポイントは卒業後に回収することになっているので貯めても意味はありませんし、持ち越すことも当然できません」
いろいろ考えてみたものの、高校生にしては大金である10万ポイントを貰って気が緩んだこと、考えるにしてもキリがないと思った俺はとりあえず入学式が終わってからでいいと思い、その後は聞くことに徹した。
「大まかな説明を終えましたが、何か質問はありますか?」
「何もないようなら……『おい、坂上』
「先生に対して質問する前の態度ではないと思いますが……」
ーーーー来月振り込まれるポイントはいくらだ
その言葉に教室は静まり、思わず俺は視線を向ける。
「残念ながら現時点では答えられないきまり、となっています」
「はっ。それが聞けりゃ十分だ」
質問した張本人問答で答えが見えたのか、もう聞くことはないと態度で見せた。
その後は特に質問はなく、入学式が一時間後にあるので早めに行くようにとのニュアンスでひとまずは解散となった。
「入学式まで結構時間があるな……」そう思った俺は関わりたくないが、今ではなく先を見据えていた奴のことが気になり、入学式に行くのを装い少し遠目に付いていくことにした。
数分立つとそいつはトイレに向かい、まるで誘われているようだったが特段気にすることなく俺はついていく。
俺がつけていたことを分かっていたのか、正面から堂々と俺を見る。
「チッ……誰かと思えばさっきのやつか」
「さっき?よく分からんが……あの質問、どういう意味だ?」
「あ?要件があるならとっといえ」
「さっきのポイントの話、違和感を持っていたのは他の生徒には多少はいた様子だった。だがお前の質問、あれは間違いなく確信がある言い方だった」
そういうと赤髪の男はニヤリと笑う。
「結局何がいいてぇんだ?」
「単刀直入に言う、お前はこの学校についてどう考えている?」
俺がそう言うとさっきよりも笑いを強めたが目は笑っておらず、お前はどこまで気づいている?と視線だけで問答しているようだった。
「おもしれぇ、ただの気のせいかとも思ったが……間違いなく俺に対して明確に向けられた視線のようだな」
「さっき目が合ったことを言いたいんだろうが……確かに明確に向けたことを事実だ。だが、それ以上でもそれ以下でもない。ただ外見に対して感想を抱いただけだ」
「……それは違ぇな」
「何が言いたい」
明らかに確信を持っている言い方に、少し動揺する。
「どういう意味だ?」
「はっきり言ってやるよ。ありゃ間違いなく同類を見る目だったぜ?」
「……なんのことだ」
「お前がしらばっくれるようならこの話は平行線だ。お前はこの学校についてどう思っているか、か?」
「きな臭え匂いがするとでも言っておけば満足か?」
やはり関わるべきじゃなかったな。
「結果じゃない。俺はただ結論が知りたいだけだ」
「これ以上はめんどくせぇし、お望み通りに答えてやるよ」
「普通に考えて毎月10万ポイント、んなもんまともな学校ならまずありえねぇ。どう考えても裏があると考えるのが普通だろ。最初から10万ポイントということ自体がブラフか、もしくは条件次第で変動するーーそんなところだろ」
見た目とは裏腹に、随分鋭いようだ。
「それに、お前も教室にあったアレを見てんだろ?」
「監視カメラのことか?」
「あぁ。アレが評価基準なら辻褄は合う。ポイントが俺たちの行動で変化する、とかな」
こいつはどこまで先を見えていると疑問に思ったが、聞きたいことは十分に聞けたので話を終わろうとする。
しかし、隣に立ったところで呼び留められる。
「待てよ。まだ話は終わってねぇ」
「そろそろてめぇの考えを言うべきじゃねぇのか?俺に聞きに来たのは自分の仮説を一押ししたいからだろ?」
「俺はただ気になっただけだ。それに俺の考えを聞いてお前に何の得がある」
「自分だけ聞いて逃げる気か?」
「なら、一つ貸しをしておく。これでいいだろ」
「それこそいくらでも言葉にできるが……まぁいい、今はそれでいいとしといてやるよ」
そう言うともう必要性がなくなったのか、俺の横を乱暴に通って抜けようとする前に、そういえば聞いていないことがあったな、と思い呼び留めることにした。
「そういや、名前を聞いてなかったな」
勝手にあとで確認しておけ。と大回しに無視して行くと思っていたが、少し止まる。
「龍園だ」
といって予想外の行動に驚いたが、それに合わせ俺も名前を名乗ろうとしたが興味がないのか過ぎ去っていった。
龍園、か。不快でもあったが……まぁ間違ってはいない
「まともな奴じゃなかったが、他よりマシか」
同類……か、あいつが言った意味とは違うだろうが妙に心に引っ掛かるな。
「不自然なほど、頭に残る男だった……」
予定が詰まったので先にあげときます