超能力者がボディーガードとして働く話   作:goldMg

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超能力者が生まれ落ちた!

 

 人生は不思議だ。

 トラックに撥ねられたら女神様に会えるらしい。

 女神っつっても俺が想像していたような白い布に身を包んだエロティックなのじゃなかったけど。

 そこは芝生の生えたレース場で、ケモ耳や尻尾が生えてる彼女はウマ何とかを見守ってる女神を名乗っていた。

 女神ってどういう定義? って聞いてみれば、職業が女神なんだそうだ。

 自称でいいなら俺も神様やってみようかな。

 

 なんで俺を呼んだのか聞いてみるも、別に呼ばれていないことが判明。

 そもそも馬以外が来るのがおかしいらしい。

 馬がなんやねん。

 しかも男だからとかなんとか言って緊張しているように見受けられる。

 そんな事されたらすごくムラムラするんだが。

 ただでさえ可愛いのに。

 

 よくよく聞いてみると、外の世界で馬が死ぬと魂がこの世界に引き寄せられて、ランダムに妊婦の腹に入り込むらしい。

 女の子であれば95%がウマ娘なるものになって、男の子であればトレーナーなるものになる確率が高いとか。

 

 女の子はほぼ確定なのに男の子は確率なのは時代に反しているのでは? 

 …………ああ、女の子は身体的特徴が出るけど男の子は脳みそなのね。

 その特徴っつーのは──あなたのお耳みたいな? 

 ……おお! 

 おおおお! 

 すごくワクワクしてきた! 

 ケモ耳娘がこの世界にはいっぱいいるんだな! 

 ──いや、死んでるじゃん俺!? 

 

 大ショックで芝生に寝転んで、一つのことに気づいた。

 芝生が凄まじいレベルで手入れされていた。

 丁寧に、丹念に、アメリカの親父みたいな執念を感じる。

 高さも太さも完璧だ。

 世界の始まりからそこにあったとでも言うかのように完全性を保った芝生が波打って、風を視覚化させていた。

 

「美しい、でしょう?」

 

 彼女の問いかけに、首を縦に振らざるを得なかった。

 人工的な美しさの筈だ。

 そもそも芝生のコンセプトがそうなのだから、当たり前の真実だ。

 それなのにどこまでも自然的で、女神様は嬉しそうに微笑んでいる。

 彼女が手ずから手入れをしているそうだ。

 彼女の内面の美しさと外面の美しさが完全に一致していることが理解できた。

 …………照れないでほしい、こっちも恥ずかしくなるから。

 

 ──ウマ娘は走ることが大好き? 

 それってマラソンランナーみたいな感じ? 

 ……全然違うんだ。

 DNAと魂に刻まれた闘争本能が彼女らをレースに駆り立てる……月光蝶ってこと? 

 ああ、いやなんでもないです。

 走ることが大好──あ、ウマってそういうことか! 

 ──ああっ!! 

 こ、これ競馬か!? 

 

「クスクス、気付くの遅いですね」

 

 ここって競馬のレース場だ! 

 競馬に興味ないから全然気づかなかった! 

 外観とかはなんとなく分かってたけど、中から見る機会なんて無いしな! 

 あ、ごめんなさい。

 ウマ娘の女神様に失礼なことを。

 …………確かに悪意はなかったけど、それでも本当にごめんなさい。

 

 でもそうか…………あれ? えっ、このレース場を走るってことはウマ娘って実は5割くらいウマだったりするの? 

 ケンタウロス的な…………ケンタウロスをご存知でない!? 

 ケンタウロスってのは馬の下半身に人間の上半身で──いや、笑いどころじゃないんだけど。

 そんなおかしな生物が存在するわけがないって……女神様なんてトンチキな存在に言われたら終わりだよ! 

 ちょっ、怒らないで……

 

 なんだっけ……そうそうウマ娘だ。

 まさかこのド広いレース場を人間が走るわけないよね? 

 ……ウマ娘は走る? 

 えーと……ウマ娘ってのはアナタみたいな身体のサイズ? 

 みんな3mくらいあるとか……ちょっ、そんな頬っぺたを膨らませないで! 

 天罰はやめて! 

 

 ウマ娘はウマ耳とウマ尻尾がついているだけの普通の女の子達だそうだ。

 冷笑していいか? 

 魂レベルで競走本能が仕組まれてるのに普通はおかしいでしょ。

 ……そういう世界だから普通なの! って言われてもなあ。

 俺の世界はそうじゃないし。

 そもそもディープインパクトしか知らないから、馬がどうこうって話はあんまり分からない。

 ディープインパクト来てる? 亡くなったのかも知らないけど。

 あ、そもそも知らないんだ。

 魂レベルがあまりに強く元の世界と結びついているとコチラに流れてこないこともある──へえ〜。

 

 そういえば、なんで1人なの? 

 アナタがウマ娘の神様なら他の神様とかも……あんまり聞かない方がいい感じだ。

 

「う……で、でもほら! 今は2人──ですよっ!」

 

 おおー……

 

「……なんですか?」

 

 すごく青春を感じた。

 片方は女神様で片方はトラックで轢かれた男(笑)だけど。

 というか俺はいつまでここにいるんだろう……トラックに轢かれた瞬間、右手が吹っ飛んでいくところまでは見えたので間違いなくミンチになって死んでる筈だ。

 めっちゃ痛かったマジで。

 女神様ならなんかそこらへ──へぇあああああ!? 

 

「ど、どうしたんですか!?」

 

 なんか虹色の球体が空からぁぁぁぁああ!? 

 ……う、うおおあああ!? 

 いっぱい来るぞおお!? 

 

「……おや、もうそんな時間ですか」

 

 どんな時間だああああ!? 

 

「丑三つ時です」

 

 あれやっぱり妖怪なのか!? 

 怪物なのか!? 

 モンスターなのかあああ!? 

 

「いいえ、あれは魂です」

 

 タマシイダァァァァァアアアア‼︎

 ……え? 魂? 

 それってつまり──ああ、そういうことか。

 もしかしなくても、あれは馬の魂? 

 馬の魂じゃなくてウマソウル? いや、それで上手いこと言ったみたいな顔されても……どこ行くねーん。

 

 馬の魂もといウマソウルはレース場には来ないで四方八方に散ってしまった。

 やっぱここって現実なんじゃないの? 

 だってあれが妊婦の中にいる子供に宿るんでしょ? 

 ……現実と重なったもう一つの世界だから魂が見えるし物体や植物も存在するけど、生きている動物はいない? 

 か、完全に理解したわ、うん。

 

 …………うん。

 

 いい感じに俺も消えるのかなって思ってたら全然消えなくて気まずいし、女神様も困った顔をし始めた。

 こんなことが初めてでどうしていいか分からないらしい。

 俺の方がもっと分からない。

 超常現象真っ只中で、しかもこの美しい芝生の上で超絶美人と2人きりが確定している。

 俺が猿だったら襲ってるぞコレ。

 

 ──と思ったらなんか光り始めたああああああ!? 

 

「あわわわ……!」

 

 か、体が光の粒子に…………俺、消えっから! 

 

「余裕ですね!?」

 

 この場面でコレ言わないやつは何やらせてもダメ。

 ……俺、どうなるんだろう。

 マジで消えるのかな。

 そんな感じするわ。

 元の世界に戻ったところでミンチだし……まあ、ただ死ぬんじゃなくて、一瞬でも楽しいことが出来たから良いか! 

 ──ありがとう女神様! 

 ウマ娘とかよく分かんなかったけど、良い競走ができると良いな! 

 出来るならレースってやつを見てみたかった! 

 それに、俺がもう少し競馬に詳しい人間だったら良かったのに……ごめんな! 

 

「……あ……ああ……待ってください……行かないで…………ダ、ダメええ!!」

 

 んぐええ!! 

 ……なにこれ!? 綱!? 

 

「んぎぎぎぎ! お、おもぃぃぃぃ……!」

 

 何してんの!? 

 というか粒子をどうやって綱で!? 

 ……女神パワー!? 

 今日出会ってから一番女神様らしいな! 

 すごい! 拮抗してるぞ! もうちょっと頑張ればそっちに──ん? ……なんか上からの引力と女神パワーの引力の拮抗でベクトルがずれていってるんだけど……競馬場の外に身体が流れて──コレどうなるの? 

 

 え? 何? 

 ……遠すぎて声が聞こえないな。

 ──うおおおおおお!? 

 競馬場の外に出た部分が消えたああああああ! 

 ……ひゃ、ひゃばい! 消えてく! 

 なんか粒子的な消え方じゃなくてスパッと消えりゅ! 

 助けてずいほー! 

 ずいほおおおおお! 

 

「私、ズイホーなんて名前じゃないですよ!? あっ──」

 

 

 ──────

 

 

 この物語は謎の世界に関わることになった1人の男の、数奇な運命を追う冒険譚である。

 

 ──というのは冗談で、俺はトラックに轢かれた。

 確実にミンチになった。

 当然死ぬだろう。

 生命→肉塊というルートを辿って、石仮面でも被らない限りは蘇らないような悍ましい最期を遂げた筈だ。

 

 だけど不思議なことが起こった。

 どうやら俺は、まだ肉塊になる運命じゃなかったらしい。

 亡くなった競走馬の魂──ウマソウルが辿り着く世界にやってきてしまった。

 ウマ娘──俺たちの世界の競走馬と同じ名前を持った不思議な獣人が存在する世界だ。

 

 流石にあのミンチから元の体に戻るなんて奇跡は起きなかったけど──その代わり、俺もウマソウルみたいな感じで赤ん坊に宿った。

 また学生生活やるのきち〜wとか思ってだけど、それとは関係ない不思議なことも。

 

 ──なんと超能力が使えるようになった。

 火球を放ち、氷を噴き、念動力は天候をすら支配し、振り上げた拳は大岩を砕く。

 完全に女神様のせいですどうしてくれんだ本当にありがとうございます。

 

 超能力を使えるせいもあってか、なかなか刺激的な日々だ。

 幼馴染2人にはこの超能力を明かしていて、時折力を使うところを見せたりしてあげている。

 幼馴染はウマ娘と女の子だけど、超能力関連では特に女の子から懐かれている。

 やはり超能力は幼心を掴んで離さない。

 綺麗な部分ばかり見せているのもあるかも。

 

 ちなみに脚も速い。

 もはや大地を踏み砕くほどの脚力なので、ウマ娘の幼馴染にすら負けない。

 負ける余地がない。

 すまんな超能力でズルしてるみたいで。

 普通の男の子だったらこんな風にはならなかったんだろうけど……あ、かっこいいからいい? 

 

 脚の速さの重要度の意識で言えばウマ娘>>男の子>>女の子みたいな感じなので、走る所に関してだけは幼馴染のウマ娘の方が熱が強い。

 とんでもなくキラキラした瞳で見られている。

 他のみんなには内緒だぞ? って言えば2人とも嬉しそうにゆびきりげんまんだ。

 

 ──俺はあの時、確かに女神様に言った。

 消える前にせめてウマ娘のレースってやつを見てみたかったって。

 

 だから見たさ。

 ウマ娘達は煌びやかな衣装に身を包み、蹄鉄を靴裏に打ち込んで、汗と血と涙を弾けさせながらゴールを目指していた。

 闘争本能の赴くままというだけじゃない。

 その裏には血の滲む努力があり、各々の想いがあり、各々の夢があり──その果てがアレだ。

 熱かった。

 あそこには熱が詰まっていた。

 

 幼馴染達は言う。

 俺がレースで圧勝しているところを見てみたいと。

 だけど、それは違う。

 俺が男だからとかじゃない。

 これはそういう事のために使うものじゃないからだ。

 それに、あんなに健気な女の子達の努力を踏みにじって悦に入るほど俺は拗らせていない。

 

 だから彼女──オールウィンドに伝えた。

 

 ウィンドの走りが見たい。

 他の誰でもなく、キミがレースをしているところが見たいんだ。

 レース場で衣装を着て、勝って、ライブをしているところを見せてほしい。

 

 そうしたら耳をツンと高く上げ、尻尾をブンブンと振りながら何度も頷いたかと思えば、ピョンピョンと跳ねながら宣言してくれた。

 

「私! 絶対にヒーくんより速くなる! それで最高のウマ娘になって、最強のウマ娘になる! ぜーったい見ててね!」

 

 もう1人の幼馴染──葉月(ハヅキ)にも伝えた。

 

 彼女を支えてあげてほしい。

 最強最高のウマ娘には最高のトレーナーが必要で、それは誰でもないハヅキじゃないとできない。

 目がよくて、常に彼女を見ているハヅキじゃなきゃ出来ないんだ。

 本をよく読んでいるのも知ってるから。

 

「──わ、私! 絶対トレーナーになる! それでウィンドのことを世界最強のウマ娘にするんだ!」

 

 笑顔が眩しかった。

 2人とも夢を疑う事を知らなかった。

 どこまでも真っ直ぐに見つめ返してきて、絶対にゴールに辿り着くと心からの気持ちが伝わってきた。

 

 ハヅキはオレの2個下、ウィンドはハヅキの3個下だから、頭さえ鍛えればトレーナーとして彼女を導くことは出来るだろう。

 飛び級制度が普通にある世界だし。

 

 まあそれはあくまで小学生時代の夏休みの一幕で、他の時間はハヅキを持ち上げてヒコーキの体勢をとらせ、ウィンドの速度に合わせながら河川敷を走り回ったりしていた。

 シンプル楽しいの時間だ。

 ハヅキはめっぽう頭が良くて、普通に中学校の勉強までし始めた。

 ウィンドも嬉しそうにそれを見ている。

 そしてハヅキの様子に待ちきれなくなったのか、トレーニングもどきを始めた。

 

 付き合うのはもっぱらオレだ。

 海まで連れて行って海岸ダッシュしたり、熊が出る山の中を走ったり。

 自分の実力が知りたいというので試しに測ってみると、1000のタイムが既に中学生──ジュニア級? くらい出ている。

 地元のリトルリーグでも負けなしだ。

 多分俺と走り回っているせいだと思う。

 

 タイムが出るという事は身体が成長しているということ。

 身体が成長しているのに栄養が足りないと良くないので農家に凸した。

 幼馴染のウマ娘が──という事情を話した上で畑作を1から100まで手伝い、お駄賃としてニンジン数箱をもらって幼馴染宅に届けた。

 幼馴染一家には当然オレの事はバレていて、うまく付き合っている。

 

 超能力なんて使えるから、時たまウマ娘すら超えたナニカとして畏怖混じりの目を向けられることもある。

 変な組織から勧誘を受けることもしょっちゅうだ。

 まあオレを解体研究してもただの肉しか出てこないだろうし、遺伝子を混ぜようとして先ほどまで話していた人間が肉塊になるのは経験済みだからやめて欲しい。

 ちなみに両親はオレのことを利用しようと躍起になっていたけど、そんなことさせるわけもなく発狂して蒸発した。

 血を抜かれたのも何回あるかね。

 

 蒸発(それ)が不気味と言うのもあるんだろうな、ご近所様からは複雑な視線をよく向けられる。

 

 でもオレは問題なく生活できるので特に文句はない。

 家だと集中できないからってやってくる未来のトレーナーにご飯を作ったり、お腹空いた〜ってやってくる未来の三冠ウマ娘にご飯を作ったりと幸せな毎日だ。

 

 多分、というか間違いなくハヅキの魂にもウマソウルが混じっているのだろう。

 競b──レースに出場しているウマ娘の脚をじっくり観察してニヤニヤしたかと思えば、そんなところをウィンドに見られて大慌てで言い繕ったり。

 あるいはウィンドの顔が微妙に赤いだけでインフルエンザだと突き止めたり。

 オレはわかるけど、普通の人間の筈のお前はなんでわかるんだよって事が良くある。

 

 ──そんな所に目をつけられたのか、2人が誘拐されかけた。

 

 厳密には誘拐されて、車で運ばれている最中だった。

 オレに脅しをかけようとしたんだと思う。

 流石にオレがいないところで捕まるのは防げない。

 しかもちょうどラーメン屋に並んでいる最中だ。

 5時間並んだので抜けるのは涙を流さずにはいられなかった。

 

「おにいぢゃぁぁん!」

 

「ごわがっだよおお!」

 

 ──泣き喚く2人を抱きしめつつ、とっ捕まえた奴らは警察に引き渡した。

 

「またか……お前も災難だな」

 

 何度もお世話になっているので向こうも慣れたものだ。

 名前は確か──堂島とか言ったかな。

 超能力にも動じない胆力の持ち主だ。

 

 2人はちゃんと家まで届けた。

 それぞれ親御さんが飛び出してきて感動の再会、うちの親にも垢を煎じて飲ませたいね。

 あっ、親いないんだった(笑)。

 ……いや、冗談だって……あぁ泣かないで、ごめんごめん。

 

 中学校に上がると、自然と小学生とは時間や居る場所が合わなくなる。

 それでもウィンドやハヅキはウチに来るので、なんだかんだで会う時間の減少は極端じゃなかった。

 ──かと思えばウィンドが引っ越すことになった。

 お別れ会では超能力で空にウマ娘のレースのプロジェクションマッピングを行い、警察がすっ飛んできたのも良い思い出だ。

 

「ヒーぐぅぅぅん! おねえぢゃあああん!」

 

「ウィンド……きっとまた会えるよ! だから待ってて! 私、絶対トレーナーになるからさ!」

 

 ウィンドがいなくなると、ハヅキは益々勉強に力を入れるようになった。

 中学に上がる段階で高校二年生までの勉強を終え、むしろ俺が教えられる立場になりつつ、トレーナー街道まっしぐらだ。

 

「ヒビキ君はトレーナーやらないの?」

 

 ハヅキ、昔はヒー君とかお兄ちゃんって呼んでくれたのに最近はヒビキ君呼びなんだよな……悲しいよな……これが成長なのかな……

 ちなみに俺はトレーナーになれるほど頭が良くない。

 トレーナーになるには東大合格かそれ以上の知能が必要だ。

 無理っしょ(笑)。

 単純な能力的にはなれると信じたいけど、トレーナーになるための資格を手に入れるために必要な知識を得るために大学に入学するための努力をする気力が湧いてこない。

 

「ヒビキ君なら簡単になれると思うんだけど……」

 

 ハヅキみたいな天才しかいない空間で俺が耐えられるわけないじゃん(真顔)。

 そもそもオレ、どっちかというと文系だし。

 

「体育会系でしょ!?」

 

 

 ──────

 

 

 オレが高校3年生になるとハヅキは大学に飛び級で入学した。

 高校を一個丸々飛ばしちゃうのはちょっと不安もあるけど、そこは俺もサポートする。

 トレセン学園でトレーナーとして働く為の資格を手に入れるまでもう少しだな。

 URAとかいう機関の試験に受からないといけないらしいから。

 

 ちなみにオレの進路は決まっている。

 それは勿論、ボディーガードだ。

 文句無しに最強のオレがボディーガード以外の職業に就く意味が分からない。

 トレーナーは人間がやるべきだ。

 

 というわけで進路表には書いたんだけど、何回か進路相談室に呼び出されている。

 進学実績がそんなに欲しいか。

 まあ実際のところはハヅキの幼馴染だから期待されているだけだ。

 ハヅキが天才すぎたせいだな。

 まったく……可愛いやつめ☆

 あ、はい、すみません書き直します。

 

 家に帰ると、シーンとして静かだ。

 前はハヅキが来たけど、ハヅキは大学進学を機に一人暮らしを始めてしまった。

 友達を呼べば良いじゃんと思うじゃん。

 オレ、ハヅキとウィンド以外に友達いないんだよね。

 寝ぼけて学校の壁吹き飛ばしたのが良くなかったんだと思う。

 

『やほー』

 

 可哀想なオレのために、今年もウィンドがハッピーバースデーの歌を歌ってくれた。

 ビデオ通話だ。

 

『ハッピーバースデーディーアトゥーユー……ハッピーバースデーヒーくーん! いぇーい! …………お姉ちゃん、頑張ってる?』

 

 そうだな。

 ハヅキ(アイツ)なら必ずやり遂げる。

 

「なんで地方トレセン(ここ)にいるの!?」

 

 ウィンドは地方トレセンに入学した。

 今年は一年目ということもあり控え目だけど、既に模擬レースとかちょっとしたレースに出て勝っている。

 そしてオレはその全てを見た。

 なんで今この場にいるのかと問われたら、ウィンドのレースを見せて欲しいと頼んだのはオレだからだ。

 今日もレースがあった。

 勉強……? 

 ボディーガードが何故勉強を……? 

 

「み、見てたの? でも地方だとライブなんて無いよ……知ってると思うけど」

 

 それなら中央に移れば良い。

 中央なら強ウマ娘たちが日夜凌ぎを削り、恵まれた環境で才能を開花させようとしている。

 ウィンドならここで成績を上げて移籍することだって出来る筈だ。

 

「お勉強苦手だし……転校かあ……」

 

 久しぶりにおじさん達にも会いたいし顔出してくるわ。

 

「えっ……じゃあ私も行く!」

 

 久しぶりにウィンドと手を繋いだ。

 まだ小さくて華奢なままだけど、以前よりも熱と力を増している。

 同級生だろうか。

 キャーキャーと後ろから聞こえてきて、ウィンドが手を振り解こうとした。

 しかし、そうは問屋が卸さない。

 いかにウィンドと会いたかったかを熱弁し、しっかりと手を握り直した。

 

「うぅ……変態……」

 

 久しぶりの2人は、少しだけ年月を重ねていた。

 それでも前と変わらぬ笑顔で迎えてくれる。

 

「ヒビキ君、いらっしゃい!」

 

 温かい。

 ウィンドの両親がこの2人で良かった。

 

 一昨日のことだ。

 以前の姿は見る影もなくなった両親が現れて金の無心をしてきた。

 やつれた姿としゃがれた声。

 落ち窪んだ瞳。

 まるで餓鬼じゃないか。

 哀れだった。

 金をくれてやったら大喜びでいなくなった。

 

 ──家に泊まらないかと誘われたのを断って、当て所なくさまよった。

 

 虚しさだけが胸を埋めて気力が湧いてこないんだ。

 ウィンドを見たからか、自然とレース場に来ていた。

 未だに走っている影があって、その子にはウマ耳が生えている。

 ここの地方トレセンは一般レース場を借りて運営しているから、きっとウィンドと同じ学園のウマ娘だろう。

 

『はぁっ! はぁっ! はぁっ! ──うぁっ!?』

 

 ぼんやりと走る姿を見ていた。

 一周すら出来ずに膝に手を当てて崩れ落ちて、それでもまた立ち上がる。

 怪我をしていて、どうしようもなく絶望に打ちひしがれているようだった。

 

『うぅぅぅ……!!』

 

 少女に歩み寄ると、その怪我の程度がより深く見える。

 ハヅキの本を見て一通りの知識はそろえていた。

 だから、苦しんでいる原因が靭帯だと一目で分かった。

 声を掛けると驚いた表情で振り向く。

 困惑と怯えの入り混じったその瞳には、大粒の涙が浮かんでいた。

 

 瞳の淡い桜色──心臓が大きく動いた。

 

 

 ──────

 

 

 オレが高校を卒業すると同時、ハヅキは大学を卒業した。

 一年だ。

 だったの一年であいつはウィンドの目の前まで行きやがった。

 若き天才現ると新聞にも載るくらいだ。

 オレの幼馴染が凄すぎる件について、2時間かけて音声のみで生配信してたらハヅキにバレて猛抗議が入った。

 恥ずかしいからやめろってさ。

 ちなみにURAの試験には今年挑むらしい。

 

「ヒビキ君!? なんでここに!?」

 

 応援に駆け付けた。

 ピンポンを押して待つと、驚きつつも喜んで部屋に迎え入れてくれた。

 一ヶ月ぶり(定期)に顔を見たけど、少し痩せたかもしれない。

 勉強ばっかりしてるからだろう。

 暫く泊まって身の回りの世話をした。

 学校……? 

 だから、ボディーガードになるのになんで勉強が必要なんですか? 

 

 そして試験当日。

 若き天才はガチガチに緊張していた。

 

「だ、だって面接とかもあるんだよ!?」

 

 そんな事はオレの知ったことではないわけで。

 ハヅキのほっぺたを両手で挟んでまっすぐ見つめた。

 

 ずっと見てきた。

 天才なんて都合の良い言葉に負けないくらい、たくさんの努力をしているところを。

 苦しんで、悩んで、それでも夢のために進んできた。

 だからハヅキなら絶対にやれる。

 それに、待ってる奴がいるんだから……迎えに行ってやらないとだろ? 

 

「それはどちらかと言うと──むにゃあああ!」

 

 余計なことを考えだしたのでムニムニと頬を揉み回し、抱きしめる。

 自慢の幼馴染(ハヅキ)が、自慢の幼馴染(オールウィンド)との約束を果たすために頑張ったんだ。

 これくらい、許されるよな? 

 

「……うん」

 

 最後の壁だ。

 簡単にぶっ壊して、中央で待ってるアイツを喜ばしてやれ! 

 

「うん! 行ってくる!」

 

 翌年の春。

 新品のスーツを卸したハヅキは日本ウマ娘トレーニングセンター学園の門前にいた。

 桜吹雪の中、緊張の面持ちが実に似合う。

 

 はい、えへ顔ダブルピース! 

 

「えへっ!」

 

 おばさんとおじさんもハヅキの写真を泣きながら撮っている。

 自慢の娘が更に自慢できるようになったんだから当たり前か。

 

「ほら! 隣隣!」

 

 背中を押されるがまま、何故かオレも隣に並んだ。

 娘の晴れ舞台に娘以外はいらないと思うんですけど。

 なあハヅキ。

 ……いや、キミが良いなら良いけどね? 

 

「腕組んで! はい、ニンジン!」

 

「ニンジン!」

 

 結局ピースサインなんだよなあ……

 

「今日から一緒に働けるね!」

 

「ーい────ぁぁん──おねえちゃああああん! ヒーくぅぅぅぅん!」

 

「ウィンド!!!」

 

 オレは中央トレセンでボディーガードとして働くことになった。

 昨今、掛かり気味な担当ウマ娘やストーカーウマ娘、ストーカー、変質者、マッドサイエンティスト等々によってトレーナーが狙われる事件が多発している。

 それを防ぐ意味で10年くらい前からトレセン専属ボディーガードっていう職業が出来た。

 渡りに船なので応募した次第だ。

 

 採用試験にはウマ娘しかいなくてめっちゃ浮いてたけど、全ての種目で蹴散らしたので問題ない。

 それにしても面接に出てきた幼女は何だったんだろう……理事長とか言ってたけど就業出来ないはずだし。

 ハヅキのボディーガードをしに来ましたって言ったら困惑してた。

 隣に控えてるカエルみたいな服装の秘書さんからは、一応全員のボディーガードだから……みたいな事言われた。

 オラ聞いてねっぞ! 

 専属って書いてあったもん! 

 

 冗談だ。

 

 ボディーガード。

 創設したは良いけど条件を越えられるのが実質的にウマ娘しかおらず、ボディーガードになるようなウマ娘達はレースにまともに出た経験も少ないらしい。

 トレーナーと密に接しているうちに走り方を見てもらったりして、気が付けば──なんてことが起きたようだ。

 そこで接触回数を減らすため、個人に対して付けるのではなく全体に──いや何のためのボディーガードなの? 

 

 その点オレはウマ娘じゃないので掛からない。

 ハヅキ一筋だ。

 ウィンドもいるから二筋だけど、とにかくウマ娘ではないので感情制御は容易だ。

 しかも強い。

 それにちゃんとした仕事なので、言われた通りトレーナー達のことはちゃんと守る。

 1週間に10回は不審者を追っ払ってるね。

 

 警護には1人のトレーナーに対して2人程度で付く。

 今日はナリタトップロードを担当しているベテラントレーナーだ。

 多くのウマ娘を指導した名トレーナー。

 外国の研究機関や、いわゆる裏社会の人間からすれば喉から手が出るほど欲しい人材だ。

 警護の相方はダイワレキシントンという名前のウマ娘で、今日が数回目の同行だ。

 キシちゃんと呼んでいる。

 

 キシちゃんは2年先輩で、警護も慣れたもの。

 初対面ではお前のような男がトレーナーを守れるものか! とケツの弱そうな宣言をされた。

 任せて良いならハヅキのところに行きたいんだよなあ。

 ……うん、ハヅキは幼馴染だからね。

 なに? 若き天才が気になっちゃうわけ? 

 仕方ないねえ、語っちゃおうか! 

 …………衝撃? 

 

「ど、どうなっている!」

 

 話してたらいきなり鉛玉を撃ち込まれた。

 まずはボディーガードから潰そうとしたみたいだけど、これウマ娘でも死ぬやつじゃん。

 オレじゃなかったら死んでたべ? 

 

 取り押さえると若い男だった。

 手錠ガチャリ。

 

「……当たってなかったのか?」

 

 普通に当たってる。

 ただ、銃で死ねるほど貧弱じゃないだけだ。

 そんなバカな……とか言われても困る。

 そもそも俺の試験成績って公開されてるんでしょ? 

 

 あ、トレーナーさんは大丈夫でしたか? 

 余波で怪我とかしてないですよね? 

 いやーすみません、いきなり走り出して。

 あのままだと逃げられてたかもしれないんで。

 

「お、おう……耳は……無いか……男だもんな……というか銃って……あ、ありがとうな」

 

 外は危ないですし、念の為に医務室に行きましょう。

 担当の子は俺が連れてきますから。

 まずはご自身のみの安全を。

 

「ありえない……ありえない……ありえない……」

 

 キシちゃんは少し疲れてるようだったので上着を着せて座らせた。

 ニンジンを渡すと動揺が少しおさまったけど、まだ仕事出来るような状態じゃなさそうだ。

 顔が青い。

 トレーナーのボディーガードの筈がウマ娘の体調まで見る羽目になるなんて! 

 

 銃か……これからはもっと厳重に警備しとこっと。

 

「──天晴! お手柄だボディーガードくん!」

 

 凶弾(笑)からトレーナーを守った事で表彰された。

 こんなんで表彰されるんだったらオレの日常が表彰されるべきだろ。

 とはいえ、金一封を貰えるというのはすごい。

 ハヅキとウィンドに何かプレゼントしよう。

 

 先輩ボディーガード達がやるじゃんって肩を叩いてくるかな〜って思ってたけど、全然そんなことはなかった。

 寧ろ生意気な……みたいな視線が増した。

 みんなウマ娘なだけあって顔は良い。

 顔が良いやつらから冷たくされるって、人によってはご褒美なのかもしれないけどオレは全然嬉しくない。

 

 キシちゃんだけは色々とフォローとしてありがとうって言葉をもらえたし、ちょっとだけ仲良くなれた気がする。

 キシちゃん慰めて〜! 

 

「何故私が」

 

 一緒にお仕事した仲じゃん! 

 夕飯奢って! 

 

「図々しさもここまで来るといっそのこと清々しいな!? ──ん? あれは……」

 

 キシちゃんの視線が俺の肩越しに誰かを捉えていた。

 瞳に映った姿は──ハヅキじゃん

 どしたんこんな所で。

 え? この人? 

 この人は先輩のダイワレキシントンさんだ。

 今日一緒に仕事したから、これから夕飯に──え? 約束? 

 ハヅキと夕飯……そうだっけ……あ、そうなのね。

 ──ごめんキシちゃん! なんか俺約束してたらしい! 前世から! 

 

 それでハヅキ、何の用なんだ? 

 前世から約束なんてしてた覚えは流石に無いんだけど…………むくれてどうした。

 ……鼻の下なんか伸ばしてないぞ? 

 そもそも今日初めて顔合わせたし。

 ええ? ウマ耳に目がないくせにって──誤解があるみたいだな。

 俺が見てるのは見た目じゃなくて心の美しさだよ。

 ……冗談じゃなくてね? 

 

 

 ──────

 

 

 見える筈のないもの。

 ウマソウル、それは俺の世界(異世界)の競走馬の魂。

 赤子の肉体に宿り、人の魂と完全に同一化し、そうしてウマ娘やトレーナーとして彼らを世界に刻み込む。

 

 ウマソウルは美しい。

 一人一人、色も大きさも違う輝きを持つそれを初めて見たのは──俺が自身の能力を知覚したのは、従姉妹がきっかけだった。

 この世界での初恋だった。

 綺麗で、優しくて、強いウマ娘だった。

 GⅡのレースにも出たことがあり、勝てる気はしなかったかな、などと言いながらも楽しそうに思い出を語ってくれた。

 彼女の魂の輝きが見たくて、彼女のことが知りたくて、彼女が家に来るとずっと話しかけた。

 

 幸せだった。

 嬉しかった。

 あの桜色の輝きをいつまでも見ていたかった。

 魂と同じ、あの桜色の瞳と見つめ合うだけで時間が矢のように過ぎ去っていた。

 

 だけど両親が俺の体質に気付き、教祖様にさらなる喜捨を行うために使おうとした事で全てが終わりを迎えた。

 

 交通事故だった。

 居眠り運転のトラックに突っ込まれて、彼女は肉片と化した。

 1人で葬式に行き、そして残骸を見た。

 魂は最早どこにもなかった。

 瞳は破裂し、彼女らしさを表すのは棺の上に置かれたストラップのみ。

 彼女の美しい瞳と魂は永遠に失われた。

 

『──これで教祖様もお喜びになる』

 

 だから2人の精神を破壊した。

 拠り所を、建物を、土地を、二度と人が立ち入れないようにした。

 焼き尽くした。

 二度と愚かなことができないように。

 二度と苦しむ誰かが現れないように。

 

 命までは奪わなかったのは、生きて苦しんで欲しかったからだ。

 後悔して欲しかった。

 いつか彼女の墓の前で額を地べたに擦り付け、懺悔の言葉を吐いて欲しかった。

 

 それでもどうやってか精神を立て直し、俺の居場所を嗅ぎつけ、金の無心にやってきた。

 

 役所に侵入し、データベースを完全に破壊することで追跡を不可能にした。

 両親との繋がりを完全に絶った。

 

 トレセンは正に天国だった。

 同僚はウマ娘。

 保護対象のトレーナーもウマソウルを持っているものがほとんど。

 ベンチに腰掛けるだけで、選り取り見取りの華が歩いてくる。

 時折暗く沈んだ魂があるので、祓ってやると忽ち輝き始めるのが気休めになった。

 

 俺はトレーナーじゃないからトレセンの中を好き勝手歩き回れるってわけじゃないけど、ウィンドはそれでも会いに来てくれる。

 美しく風巻くエメラルドグリーン。

 視界の端にチラリと映り込むだけでも──

 

「──あの! ウィンドちゃん達の幼馴染さんですか!? 私、ダンツフレームっていいます!」

 

 話しかけてきたのは、ウィンドと仲良くしてくれている子。

 サイケデリックなピンクの魂を持っている。

 見た目のほんわかした様からはちょっとかけ離れているけど、それこそがウマ娘の面白い所だ。

 

「あの〜? ……あ〜の〜!」

 

 ハヅキとウィンドが幼馴染である事は、新聞にも載っていた。

 未だ20にもならぬ乙女が、幼馴染のウマ娘との約束を果たすために不可能の道をこじ開けた。最高のタッグが今結成される──ってな。

 この子も知ってるんだろうな。

 

「あのー!?」

 

 何をしにきたかと思えば、ただの雑談らしい。

 ハヅキとウィンドの幼馴染だから気になったようだ。

 2人が小さい頃の話が聞きたいと言うので、如何に2人が可愛かったかということを熱弁した。

 お兄ちゃんお兄ちゃんとヒヨコみたいにくっついてきた幼稚園時代。

 ヒーくんヒーくんと目を輝かせていた小学生前半。

 夢を見つけて進み始めた小学生後半。

 

 もちろんダンツフレームも可愛いけど、俺の幼馴染はそれに引けを取らないくらい可愛いのだ。

 目に入れても可愛くない。

 

「2人のことが大好きなんですね!」

 

 どんな苦難があろうと、どれほどの試練が待ち受けていようと、オールウィンドとハヅキなら乗り越える。

 それでも俺は、あの2人と一緒にいたい。

 あの2人を守るためなら何だってする。

 その為に来た。

 

 そう伝えると、この世界の人間らしく大袈裟に反応してくれる。

 

「ふわあああ〜! 素敵です!」

 

 ダンツフレーム(彼女)に夢はあるのだろうか。

 

「はい! 私は……私は日本ダービーで勝ちたいんです!」

 

 日本ダービー。

 最も運に満ちたウマ娘が勝つらしい。

 なんか弱気だ。

 

「あはは、手厳しいですね…………その……少し話しても良いですか?」

 

 どうやらダンツフレームにはトレーナーがおらず、しっかりとしたトレーニングを受けられていないらしい。

 

 彼女のウマソウルは確かに強い輝きを秘めている。

 だけど秘めているだけじゃダメなのがレースだ。

 レース場で綺羅星の如きオーラを放てるウマソウルの持ち主こそが真の強者。

 1人ではとてもとても。

 

 それでも勝ちたいと言う。

 

「確かに実力ではまだまだみんなに届かないかもしれないけど、運だけなら私にもあるんじゃないかなって思うんです! …………でも、やっぱりトレーナーさんをまずは見つけないとですけどね……あはは……」

 

 勿体無い。

 良い指導者がいれば魂の輝きはさらに増すだろうに。

 

「ごめんなさい! 変な話しちゃいましたね!」

 

 何とも忙しない子だった。

 オッチャホイなる謎の夕食を友達と食べに行くらしい。

 あれ……不審者がいるな。

 とっ捕まえとこう。

 

「お手柄だなボディーガードくん! しかし警察は呼ばないで良い! 今回はこちらで対処しよう!」

 

 警備がザルすぎやしないだろうか。

 なんだったんだ、あの仮面女は。

 ……帰るか。

 

 ボディーガードは、つーか俺はトレーナー寮の一階に寝室がある。

 トレーナーは多くが男性で、ボディーガードは俺以外がウマ娘だ。

 つまりそういうことなので、他のボディーガードは違う場所に寮が設けてある。

 俺はここでも良いと判断されたらしい。

 元の宿は引き払って引っ越してきた。

 ちなみに一階には俺と管理人しか住んでない。

 まあハイパーエリートの皆様と違って俺は地べたに這いつくばってるのがお似合──なんだこの2LDK!? 

 

 トレセンもとい金ジャブ学園では寮すら桁が違った。

 たかがサラリーマンの為にこんな部屋を用意する。

 凄まじい財力だ。

 メジロ家やサトノ家を含め、多数財閥からの寄付金によって賄われているだけあるか。

 流石世界を牽引するメジャースポーツの一角。

 

「やほ」

 

「やあ」

 

 流石トレセン。

 トレーナーは何しても良いらしい。

 いきなりハヅキ&女トレーナーがやってきた。

 目があったからバトルでいいか? 

 

「おお! その闘争心……ウマ娘っぽいね!」

 

 そう捉えられちゃうか。

 しかし俺のどこにウマ娘要素が? 

 

「そうだそうだ! 見たんだよ見たんだよ! 何をって? そりゃあ勿論、あなたがお仕事してるとこ!」

 

 銃弾ぶち込まれたことだろうか。

 あの不審ウマ娘との追いかけっこのことだろうか。

 

「じゅ、銃弾? それは知らないけど……」

 

「ヒビキくん?」

 

 おいふざけんな。

 ブラフかよ。

 ハヅキにバレただろうが! 

 

「いや、勝手に引っかかっただけ……ちがーう! そうじゃなーい! そんな話をしにきたわけじゃなーい!」

 

 人の家で騒がないでほしい。

 水道水で落ち着いてくれないだろうか。

 高置水槽方式だけど、浄水器の性能が良いのでなかなか悪くない味だぞ。

 

「水のこだわりは強い……と」

 

「レイナさん、本題本題!」

 

 レイナ。

 レイナトレーナーと呼べば良いのか。

 

「鶴見レイナだよ!」

 

 鶴見中尉、本題は? 

 

「今なんて!? ノータイムで変なこと言わなかった!?」

 

 本題わい。

 

「私、一応運動生理学とかスポーツデータサイエンスのプロなんだけど……人間がウマ娘に身体的に勝てる例ってものすご〜く少なくてさ! 助けて欲しいんだ!」

 

「レイナさん、今担当してる子がちょっと行き詰まってるらしくて、これまでとは別方面からアプローチしたいんだって」

 

 外れ値過ぎて役に立たないと思うけど、それで良いのだろうか。

 

「いーのいーの!」

 

 夜中にも関わらずやる気十分。

 というか彼女達も俺も昼間は仕事があるので、やるなら夜、今しかないというわけだ。

 彼女達の担当ウマ娘も合わせて5人が集った。

 流石にウマ娘がいないとレース場は使えないとかで、申請書を出して10分で通った。

 おかしいだろ。

 業後の10分で話を進めるな。

 

 ──さあ、征こう。

 

 





◻️◻️  響希:20歳(就職時)
・転生したら超能力者だった件
◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️、◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️。

全てのステータスが9999になる
超能力を使えるようになる

・初恋の人
何故、人は争うのだろう
何故、人は求めるのだろう
何故、人は奪うのだろう
あの日から、1日たりとも後悔しない日はない
もっと超能力を上手く操れるようになっていれば
もっと彼女のことを見ていれば
彼らを◯◯ていれば
彼女に好きだと伝えていれば
思い出すのは、いつだって桜色の瞳だ

『彼女』に似た特徴を見出すと掛かり気味になる

・幼馴染の為なら
オールウィンドと紫水ハヅキのどちらもその場にいない時、やる気が下がる
オールウィンドと紫水ハヅキのどちらかがその場にいる時、やる気が上がる

紫水 葉月:18歳
河川敷で絵本を読んでいた女の子

オールウィンド:15歳
台風の日に河で空を見ていたら流された女の子
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