超浮かれポンチAIライバー月見ヤチヨは匂わせ配信を辞められない 作:Radrabbit
超かぐや姫!世界の日本神話。天照の横とかに喋るウミウシの神とか、古来からの伝統に色々追加されてそうで私、気になります。
というか歴史的にヤチヨが皇室や政府なんかと繋がりもってそうだけど、いろかぐ引っ越しシーンの業者が実は公安だったりとか、彩葉のボロアパートには政府関係者しか住んでないとかもありえそうでちょっとわくわくしますよね。
『ヤオヨロー!神々のみんな元気?早速だけど、ヤチヨがこの度ハピエン厨に進化したことをお知らせするね』
いつもと同じように行われるヤチヨの雑談配信。雪崩の如く上から下へ流れていくコメントは何度見ても眩暈がしそうだ。
高速で流れるコメントの内容を一つ一つ順に全部読むのはめちゃくちゃ面倒だし頭が痛く・・・はならなくなったけど、ヤチヨはずっとこんなの読んでて疲れないのだろうか。
『語らねばなるまい・・・そう、あれは今から36万・・・いや、1万6800秒前のことだったかも』
磯ババ・・・なんでもないです
計算したら四日前か四時間前のどっちかじゃねぇか
お婆ちゃんボケちゃったの?
『みんなには言えないけど〜、言えないんだけど〜!!すっごくすーっごく良いことがあったの!それがヤッチョとっても嬉しくってね』
脳が破壊されりゅ・・・
AIに恋人とな?
まずどうやってAIと付き合うんだよ
やめろよヤチヨ・・・みんなに俺たちのことバレちゃうだろ!(照
↑寝言は寝てタヒね
『やだやだも〜!みんなそんなのじゃないってば〜。ちょっと早とちりしすぎじゃないかな?えへっ』
ペロっ、これは恋の味!
↑死んでよ〜
少しは表情隠せ
結局何があったのよ・・・?
えへ顔可愛い・・・けど、普段の配信より四割増しで声のトーンが高いし、浮ついた様子を隠す気が全く感じられない。
これはつまり───。
「アホみたいに匂わせしとる・・・」
端的に言ってヤチヨが超絶浮かれポンチになっていた。AIライバーの名が泣く程に機嫌の良さが誤魔化せていない。
いやアレ隠してる風でみんなに聞いて欲しいだけか。彼氏が出来たばっかりの頃の真実みたいな浮かれか、た・・・。
───瞬間、酒寄彩葉の脳内に流れ出した、
『聞いて聞いて二人とも!私めっちゃ良いことあったんだ〜♫』
『えなに。ブランドの化粧品買ってもらえたとか?』
『ぶぶー』
『この前の大食いレポが万バズしたとか?』
『ざんねーん。違いまーす』
『なんだろ、芦花わかる?』
『さぁ・・・彼氏できたとか?』
『せいかーい!よくわかったね芦花!』
『へぇ、良かったね・・・そういえば芦花は彼氏とか作らないの?』
『今はいいかなーって。ほら、炎上とか怖いし』
彼氏なんて今まで考えもしたことなかったな。でも少し意外だ。
真実は美味しい食べ物しか興味ないと思ってたから、年相応にそういうのにちゃんと関心があったとは。
『今度ここのカフェにデート行くんだ~。行ったことないとこだから楽しみ~♪』
『そ、そっか。楽しんできてね』
『しょうがないねー、なら私達は二人寂しく集まるとしますか』
心の底から幸せそうにあどけなく笑う真実の顔がとても眩しくて、いつか私もあんな風になれるのだろうかとふと考えてしまった。
ここは素直に祝福している芦花を見習うべきなのに、真実が私の世界から居なくなってしまうのではないか、なんて身勝手な思考が頭に浮かぶ。
『彩葉も恋人とか探してみたら?彩葉なら引く手あまたでしょ~』
『いや~・・・ちょっとそこまでの余裕はないかなー』
『一緒にいて心が安らげる人が、彩葉にも見つかるといいね』
そう言って私を見つめる芦花の瞳は優しさに満ち溢れていて、それがちゃんと真実を祝うことのできない私の心の狭さを浮き彫りにされているように感じてしまった。
・・・芦花も、いつかは恋人を作って私から離れていくのかな。
───ヤチヨに彼、氏・・・?付き合って三年目くらいで結婚して、式の友人代表挨拶に呼ばれて・・・。
・・・私に向けてくれたあの天使のような可愛い笑顔を、誰とも知らない男に向け・・・ぉあ、やばい、マジで無理、キツイ、しぬ・・・。
「な、なんとかして真相を確かめねば・・・!」
「え?ちょっと待って彩葉。配信じゃなくて普通に聞いてくれれば──」
壊れたブリキみたいにキーボードへ指を叩きつける私を、慌てたように止めようとするヤチヨ。
だが手元のタブレットから聞こえてくるヤチヨの静止の声が届く前に、私は震える指でコメントを打ってしまった。
!?
いろ何某さん!?
ヤチヨガチ恋勢さんチっすチッす
コラボライブ最高だった!!またやってくれ。必要だろ
もっかいヘイベイビーして♡
『い、いろは!?急にどうしたの!?』
「や、やばばばばば・・・!アカウント切り替え忘れた!!」
気が付いた時には後の祭り。
コメント欄が目で追いつかないほど高速で流れ始め、もはや収拾不可能な事態へ変わる。
コラボライブ中にちょくちょくヤチヨにメロついてたのホンマおもろい。なんでそれで可愛いの??
やめやめろ!いろ何某さんは今現在進行形で脳破壊されてんやぞ!!
少しは名前隠す努力をしろAI
「ま、まずいよ彩葉!なんとか誤魔化さないと!」
「おわわわわわ・・・そ、そうだよね。取り敢えず謝らなきゃ」
草
言えたじゃねぇか
草草の草ァ!!
いろP、お前もNTR派にならないか?
ヤチヨ、お前がこのガチ恋モンスターを生んだんだぞ、なんとかして差し上げろ
「彩葉ー!?落ち着いて!?ヤッチョの一番は彩葉だよ!!いろはーー!?」
『彩葉彩葉!大丈夫だから!!ヤチヨに彼氏とかいないから!!後でちゃんと説明するから一旦落ち着いて!・・・あっ』
「脳がッ!震えるっ・・・!!」
ヤチヨとヤチヨのミックスサンド。さながら高級店でお出しされるお高いデザートのような蕩ける甘さ。
かぐやに駄々捏ねられて高いスイーツを食べに行ったあの日の情景が目に浮かぶ。もちろんそれを参考にかぐやが自分で作ったスイーツの方が美味しかったけど。
そんなイヤホンとタブレットから二重に響くヤチヨの声で、私の魂は完全にキマっていた。
後で説明?ふーん・・・
俺たちには言えないのに、いろPには言えるんだ?
アンタらそういう仲かよっ!
(配信の最)後(の方)で、かもしれないだろ!
これガチな感じ?ネタにした方がええんか?
次のコラボライブの匂わせ説
コメント欄はますます加速する。
電子の歌姫、誰しもに平等な筈のAIが見せた特定個人へのリアクション。
いつものおふざけなのか、それとも本当に何かがあるのか。
真相のわからない謎が好奇心を呼び、あれやそれやと各々が好き放題に邪推を重ねていく。
そうして混沌と化していくコメント欄を尻目に、私は完全に放心して固まっていた。
「ほへぁおわわわ・・・おわった」
「終わってないよー!?彩葉!気を確かに持って!」
『い、いーまのは・・・そう!鋭い神々もいたね!なんとなんと、大絶賛好評につきいろPとのコラボライブ、第二回も開催決定!いぇいいぇい!!』
滝汗エフェクト流れてんぞ
妙だな・・・
斬首を待つ罪人のように配信を眺めていた私に、第二回コラボライブのお知らせが届───なんて?
「ご、ごみん・・・つい咄嗟にやっちった・・・」
「いや私がミスっちゃったのが原因だし、ヤチヨは悪くないよ」
せっかくならかぐやと三人のライブ観たいけど、できないの?
かぐやからヤチヨに乗り換えってことですか?ありえないでしょ
初めからヤチヨ目的だったってこと?かぐやちゃんの気持ち考えなよ
このアカウントはBANされました
まさかかぐやの卒業までヤチヨの仕込みなの?
↑陰謀論やめろ。かぐやのインタビュー見てねぇのか
過激なコメントが目立ち出した。
ツクヨミのモデレーターAIとヤチヨが即座に削除を続けるのものの、母数そのものが多すぎて一瞬浮上して消えていく不自然な空白がヤチヨの配信を蝕んでいく。
「彩葉、今日のご飯は何食べたい?ヤチヨ評判の良いお店知ってるんだ〜。せっかくだから外食しようよ☆」
「大丈夫、こんなの屁でもない」
正当性と理論で綿密に組まれた母のお説教の数々を思えば、この程度の感情丸出しコメントなんて痛くも痒くも無い。
私にとって耐え難いことはヤチヨが・・・かぐやが苦しい思いをすることだけだ。
今の彼女はきっと、自分が溢した失言で私が責められているのを気にしている。それなら・・・うん、あれだ。自分の口じゃなくて文字で書く分幾らかマシ。
「今修正作業してるから、ちょ〜っとだけ待っててね?燃え広がる前に誘導すればマダガスカル、でございましてよ〜」
「いいの、私から説明するから」
「ほぇ?」
キーボードに乗せた指が、まるで重力が増したように重く深く感じる。ふと、ヤチヨカップの開催直後にかぐやが
あの時のかぐやは緊張なんてこれっぽっちもしてなかっただろうし、世界を前にして宣言することの重さもとんと理解していなかったけど。
「すー・・・・・・はー・・・・・・」
一度深呼吸して文面を入力、そしてエンターキーに指を添える。
心臓の脈拍がバクバクと加速していき、小指の先が少し痙攣してくる。これやっちゃったらもう後戻りできないけれど・・・まぁ、
何年、何十年、たとえそれよりずっと時間が掛かったとしても、絶対にまたかぐや達とライブします〆かぐやいろPチャンネル
何言ってんだってのはわかってます。でも本気です。私が信じられないのなら、ヤチヨを信じてください〆かぐやいろPチャンネル
「『彩葉・・・』」
元々ヤチヨにはもう一度パンケーキを食べられるハッピーエンドに辿り着くまで、思いつく限りのことは付き合ってもらう予定だったのだ。
その途上でツクヨミユーザーから反発や疑念の声が上がるのは当然のこと。かぐやに触れる話題なら尚更だ。
三人でコラボライブをしたあの夢のような一時、ヤチヨは見たことがないほど嬉しそうにしていた。
八千年乞い願っていたあの景色を見るために、長い永い時間をかけて彼女はツクヨミを作り出したのだ。であるならば、私の一生を懸けるのは
他人からの横槍や炎上騒ぎなんかで足を引っ張られている暇なんて無い。
でもごめんなさい。もう何も譲らないって決めたから、ヤチヨが心の底から笑えるようになる世界になるまで、私は進み続けます〆かぐやいろPチャンネル
目的地は前人未到。
月の技術に深く携わっていたヤチヨですら不可能だった夢物語を、現実まで
その野望のためには他の人達に遠慮なんてしていられない。悪いがガチ恋勢の皆々様には焼け野原になってもらう。そもそもは
あとヤチヨのことを変な目で見るのやめてください。
以上で終わります。長文と連投失礼しました〆かぐやいろPチャンネル
「『い、いろはぁ・・・♡』」
ヤチヨガチ恋勢とお気持ちコメントすら比較にならない弩級の長文プラス連投。
これが一般ユーザーなら間違いなくコメント削除からのアカウント凍結かBAN処理が見えてくるラインだ。
「・・・こ、これでもし延焼したらどうしよ・・・」
ぎゅっと目を瞑って暫しコメント欄が新しく流れるのを待った。
これで少しはヤチヨへの非難が減ってくれればと願いながら薄らと目を開けて、更新されであろうコメントを恐る恐る視界に入れる。
いやもう負けたわ。世界中に向けてこんな告白できる奴に勝てねぇよ
ツクヨミの真ん中で愛を叫ぶ女
どうやら俺たちはお呼びじゃなかったようだな・・・
明日のtukuyomiニュース!トップ案件だよこんなの
勘違いしてるみたいだから言っておくけど、こっちが敗北者だから
困った、ちょっと勝てない・・・
「な、なんかどエライことになっとる・・・」
「わぁー、こんなにコメントが加速したのヤッチョ初めて〜」
「いや、なんか、もう、ごめん・・・」
ドン引きである。
いや多分配信でドン引きされてるのは私なんだけど。
自分でやっておいてアレだけどなんだコイツ、化け物ってレベルじゃないぞ。ツクヨミが生み出した現代の怪物じゃないのよ。
『んふ、えへ・・・えへへぇ、いろはぁ♡』
なんてこった!今すぐサーバーをメンテナンスしないと!
AIライバーにクソデカ感情ぶつける天才少女とかもうフィクションの領域だろ
これが現代のお伽話・・・つまり、Ex-otogibanashiか!
『平凡な私が電子の歌姫の寵愛を?施しなら結構です!〜天才音楽少女は愛されたい〜』
ツクヨミライターになろうやめてね
「ヤチヨ?なんか配信のヤチヨバグってない?」
「えへへへ、ちょっと喜びの感情パラメーターがキャパぶち抜いちゃって、ヤチヨスマイルが止められないんだなも・・・きゅう」
「ウワーめちゃくちゃ笑顔!かわいい!」
じゃなくて!
配信の方をしゃきっとしてもらいたいというか、え?嬉し過ぎて気絶しそう?
そろそろツクヨミの演算処理に影響が出そうな感じ?
「ヤチヨ!しっかりしてヤチヨ!意識を落とさないで!!私のことわかる!?!?」
「あ、いろはママだぁ・・・ミルクぅ・・・」
「ヤチヨ?私のことなんだと思ってるの??」
この後めちゃくちゃメンテナンスした。
匂わせ配信(全てを焼き尽くすいろPの意)