この章は、『人間合格の章』でオリ主と椎名ひよりがもし、中学時代に出会わず、高度育成高等学校で出会っていたらというIfルートです。
オリ主が椎名ひよりに中学時代に出会わなかった結果、怪物になりかけていた可能性の話。(まだ怪物になってない)地獄を味わっています。取り敢えず、死にかけてます。
この章は基本シリアス。ヤンデレ風味。でも、最後には純愛に生かせる予定です。。
最後にこの章は何でも許せる人向けです。この章では、不可思議現象が起きます。後、大体椎名ひより視点で物語が進みます。今回はオリ主視点ですが。
時系列的には一年生編の体育祭が始まる数週間前の出来事になります。この章は。
PS.オリ主イジメ楽しい(黒笑み)
第0話『届かない悲鳴』
高度育成高等学校の学生食堂。そこにある日突然、一人の「偶像」が現れた。
名前は、天道真希。
長く艶やかな漆黒の髪を無造作に後ろで束ねたその少年は、息を呑むほどに美しかった。
雪のように白く滑らかな肌。伏せられた長い睫毛が落とす繊細な影。男と女の境界線を曖昧にするような、中性的で完成された顔立ち。純白の割烹着を纏い、厨房に立つその姿は、まるで古の絵画から抜け出してきた「大和撫子」そのものであり、血の通った人間というよりは、狂気的なまでに精巧な芸術品のようだった。
彼が厨房に現れた瞬間から、むさ苦しいはずの学食は異様な熱気に包まれていた。
誰もが彼に目を奪われ、その一挙手一投足に魅了される。
だが、彼らは誰も知らない。
その美しき偶像が立っている場所が、文字通りの『地獄』の中心であるということを。
【天道真希 視点】
ジュゥゥゥッ、と豚肉の脂が弾ける音がする。
醤油と生姜が焦げる香ばしい匂い。ミリ秒単位で変化していくタンパク質の熱変性。食材たちは一切の嘘をつかず、純粋な物理法則に則って最適な答えへと変化していく。
この調理の過程だけが、俺にとって唯一息ができる「ノイズのない世界」だ。
だが――カウンターの向こう側に広がるのは、煮え滾るような阿鼻叫喚の地獄だった。
「ねえ、あの一年生すごくない!? 顔もめっちゃ綺麗なんだけど!」
「生姜焼き定食、信じられないくらい美味いぞ……料亭かよ」
「あいつ、Cクラスらしいぜ。ちょっと後で声かけてみようぜ。色々使えそうだし」
称賛、好奇心、劣情、そして打算。
何百人という生徒たちが俺に向ける無数の感情が、視線、声のトーン、呼吸の乱れ、毛細血管の拡張といった微細な生体データとなって、容赦なく俺の網膜と鼓膜を突き破ってくる。
冬山の遭難でリミッターが完全に壊れ果てた俺の『超統合的共感覚器官(ISP能力)』は、空間を埋め尽くす何百万という悪意や欲望の破片を、一滴残らず強制受信していた。
「ァ……ッ」
脳髄の奥底に、真っ赤に焼けた鉄の楔を打ち込まれ、ハンマーで滅多打ちにされているような激痛。頭蓋骨の中で脳漿が沸騰し、思考のシナプスが硫酸で焼かれるような絶望的な苦痛。
本来であれば、人間はこれほどの痛みと情報過負荷(オーバーフロー)を受ければ、脳の防衛本能が働いて即座にブラックアウト(気絶)するか、最悪の場合はショック死する。それが生物としての正しい限界だ。
だが、俺は死なない。狂うことすらできない。
天道家という呪われた血脈が生み出した俺の肉体は、この異常な演算能力を稼働させるために、先天的に極太の神経と異常なまでに頑丈な血管系を備えた「生体スーパーコンピューター」として設計されていた。
絶え間ない激痛のストレスで致死量のアドレナリンが分泌されても、心臓は破綻することなく力強く拍動し続ける。脳が焼き切れそうになれば、超高効率な代謝システムが強制的に血液を循環させ、莫大なカロリーを消費して物理的に脳を冷却してしまう。
精神はとうの昔に限界を超え、悲鳴を上げて千切れかけているというのに。この呪われた、頑丈すぎる肉体が決して自死を許さず、クリアな意識のまま、永遠に地獄の激痛を味わわせ続けるのだ。
(……どうして、こんなことになったんだ)
血を吐くような思いで内心毒づきながら、俺は完璧な弧を描く微笑みを唇に貼り付け、定食をトレイに乗せて次の生徒へと差し出す。
「お待たせいたしました。午後からも授業がありますので、消化に良いものをおまけしておきましたよ。頑張ってくださいね」
相手を刺激しない最適な微笑み。自尊心を満たす声のトーン。
それは、相手から発せられる潜在的悪意を無力化するための防衛術(大和撫子モード)。
だが、その笑顔の裏側で、俺の脳は勝手に恐るべき演算を続けている。
『目の前の男の頸動脈を、この菜箸でどうやって正確に穿ち抜くか』
『右の女の眼球を潰し、いかにして素早く息の根を止めるか』
冬山のヒグマの暴威によって「すべての悪意=自分を殺す捕食者」と誤認してしまった脳は、俺に向かってくるあらゆる感情を致死の脅威と見なし、後顧の憂いを断つための殺害パターンを毎秒何百通りも弾き出している。
下手に意識の糸を緩めれば、防衛本能のままに目の前の人間を惨殺しかねない。俺は、その狂気の衝動を理性の鎖で必死に押さえ込みながら、甘い声で接客を続けていた。
俺がこの高度育成高等学校に来た理由は、実家である天道家のドス黒い権力闘争から逃れるためだった。外の世界から完全に隔離されたこの学校なら、しがらみから解放され、静かに三年間のモブ生活を送れると思っていた。
だが、その淡い期待は、入学初日のホームルームで呆気なく粉砕された。
『この学校は実力主義です。君たちには十万ポイントが支給されます』
担任の坂上先生がそう告げた時、クラスの連中は歓喜に沸いた。
しかし、俺のISP能力は、その場の狂騒とは全く異質の『冷たく鋭いノイズ』を正確に拾い上げていた。
歓喜する生徒たちを見つめる坂上先生の瞳の奥にあった、微細な嘲笑と冷酷な眼差し。すれ違った上級生たちが一年生に向けていた、憐憫と優越感の混じった視線。購買部に不自然に置かれた無料の生活用品。校内の至る所に設置された無数の監視カメラ。
それらの状況証拠を脳が無意識に統合演算し、導き出された答えは一つだった。
――この学校は、生徒同士を競わせる実力主義の箱庭だ。最初の十万ポイントは、単なるフェイク(評価期間)に過ぎない。
クラス間競争が本格化すれば、間違いなく嫉妬、足の引っ張り合い、裏切りといった人間の最も醜い感情が泥沼のように渦巻くことになる。
そんな悪意の嵐のド真ん中に立たされれば、今度こそ俺の理性は完全に焼き切れて、すべてを敵と見なして惨殺する『怪物』に戻ってしまう。
生きるか死ぬかの防衛本能が、俺に絶対的な最適解を命じた。
『全力で存在を隠蔽しろ』と。
それからの学生生活、俺は己の能力のすべてを「無害な一般生徒(モブ)」に擬態することだけに注ぎ込んだ。
テストの点数は目立たない平均点をキープし、授業中の発言は一切しない。
何より細心の注意を払ったのは、Cクラスの支配者である龍園翔の目を欺くことだった。彼の野生の勘と鋭い観察眼は脅威だが、彼が警戒するのは「反抗する者」と「裏で暗躍する者」だけだ。ISP能力を逆算し、龍園の意識に一ミリも引っかからない『退屈で、無能で、無害な生徒A』のパラメーターを完璧に演じ切った。
俺は誰の視界にも入らない幽霊になった。他のクラスはおろか、同じCクラスのクラスメイトですら、俺の名前と顔を一致させられる者は殆どいなかったはずだ。他人に興味を持つ余裕などなく、俺はただ自分の激痛を抑え込むことだけで必死だった。(だから、俺と同じように息を潜めているような他者の存在に気づく余裕など、あるはずもなかった)
そうやって、図書室の片隅で本を読むことだけを唯一の安らぎとして、ひっそりと生き延びるはずだったのに。
運命とは、どこまでも理不尽で残酷だ。
最初の特別試験である無人島試験。その次の船上特別試験を、幽霊のように目立たず無事に乗り越え、夏休みが明ける、二学期が始まる二日前のこと。
『学食のメイン調理師が倒れた。天道、キミが特例で調理師免許を持っていることは把握している。緊急事態だ、厨房に入ってくれ』
学校側からの、有無を言わさぬ要請。
断れば、学校運営層というさらに巨大で厄介なノイズに目をつけられる。断るという選択肢は、最初から存在しなかった。
実家で課される数多の習い事に辟易し、自分の能力と相性が良かったからこそ、少しでも家から離れる口実として、不本意ながら実家の権力と実力を使って特例で勝ち取った調理師免許の資格。
使い道などないはずだったその資格が、まさかこんな形で俺に牙を剥く事になるなんて。
そして今。
幽霊だったはずの俺は、純白の割烹着を着せられ、全校生徒の視線を一身に浴びるスポットライトのど真ん中に引きずり出されている。
自分の容姿が見目麗しいことなど、とうの昔に自覚している。中学時代、女子はもちろん男子にも女と間違われて幾度も告白された記憶は、もはや吐き気を催すほどの嫌悪感しかない。
容姿と料理の腕前という、隠しきれない異質さが完全に露呈してしまった。
「ありがとう! また絶対来るね!」
女生徒が顔を真っ赤にして去っていくのを見送りながら、俺は制服の下で冷たい汗を滝のように流していた。
痛い。うるさい。他人の好意も欲望も、今はすべてが脳を削る凶器でしかない。
誰か。助けてくれ……。
正直、自主退学を何度も決意した。だが、この学校を出れば、今度こそ実家に縛られてしまう。
中学時代は当主に復帰した祖父のお陰で、実家の干渉を最低限に抑えられた。それでも、限界がある。だからこそ、この学校を選んだ筈だったのに。
まさか、自分から権謀術数が渦巻く箱庭に飛び込んでしまったなんて……。
何でこんな時だけ、この力は真価を発揮してくれないのか。
ああ、感情のない、文字だけの世界。
悪意も計算も存在しない、あの静寂の図書室へ逃げたい。
絶え間なく押し寄せる人波と、内側から頭蓋を砕く激痛の中で。俺は千切れそうな理性を必死に宥めながら、ひたすらに放課後の鐘が鳴るのを待ちわびていた。
誰も気づかない。誰も救えない。
笑顔の裏側で叫び続ける俺の悲鳴は、今日も誰にも届かない。
今回出てきたこの作品の用語まとめ。説明が下手なので、AIを使用してます。
【用語解説】超統合的共感覚器官(ISP能力)
■ 基本概要
先天的に備わった、脳の規格外の並列処理能力。
初期段階においては「周囲の環境からあらゆる情報を無意識に受信・演算し、常に状況に対する最適解(的確な答え)を導き出す」という純粋な情報処理能力として機能していた。
■ 感情検知への進化(心理学との結合)
天道家の英才教育において「人心掌握術」のための心理学知識を獲得した瞬間、能力が劇的な進化を遂げる。
相手の「眼球の微細な動き」「声音や声色のわずかな変化」「筋肉の微小な収縮」、さらには「本人すら気付いていない完全無意識の挙動」といったミクロの生体データを自動で演算し、他者の感情(悪意、好意、欲望、疲労など)をほぼ完全に検知・可視化できるようになった。
■ 暴走と機能不全(冬山のトラウマ)
本来であれば、周囲に無数の悪意や敵意が渦巻いていても、「自分に向けられたものか否か(指向性)」を識別・フィルタリングできていたため、日常生活に支障はなかった。
しかし、11歳の時に経験した冬山での遭難と、エゾヒグマの圧倒的な暴威・絶望に直面したことで、脳の生存本能が暴走。自他の境界線と情報フィルターが完全に崩壊してしまう。
結果として、空間に存在するすべての悪意・敵意を「自分に向けられた致死の脅威」と脳が誤認するようになり、四六時中、防衛のための『迎撃演算(大和撫子モード等による無害化対応)』を過剰に繰り返すシステム・エラーを引き起こした。これにより、平時でも頭をハンマーで殴られるような激しい頭痛に苛まれることとなる。
■ 情報統制と周囲の誤認
能力の真実、およびそれに伴う激しい頭痛の事実を知っているのは、絶対的聖域である「椎名ひより(人間合格の章)」と、天道家の「祖父」のみである。
本人はこの事実を徹底して秘匿しており、周囲の登場人物(綾小路、龍園、坂柳など)からは、「異常なまでに鋭い洞察力と観察眼を持った天才」として完全に勘違い(すれ違い)されている。
■ 平和的応用(料理への転用)
対人における過剰な防衛演算とは全く別の、幸せな形で駆動している側面。
食材という「悪意を持たない対象」に対し、能力をフルリソースで投入。「具材のミクロな鮮度」「出汁の微細な濁りや温度変化」「火入れのミリ秒単位のズレ」といった環境データを無意識に総受信し、味覚の最適解を自動演算する。
これにより、専門的な修行や教えを一切受けることなく、独学で「高級料亭レベルの絶品」を再現・創出することが可能となっている。
【クラス間競争の仕組みに気づいたロジック】
予知能力ではなく、「異常すぎる現状認識能力」による必然の帰結。
理由: 天道 真希の『ISP能力』は未来を見るわけではありません。第0話で描かれている通り、「教師の微細な嘲笑」「上級生の優越感」「カメラの配置」「無料の配給」という、平時なら見逃してしまうような「現在進行形の情報(ノイズ)」を一つ残らず強制受信し、矛盾なくパズルを組み上げてしまった。結果として、「この学校は競争社会(地獄)である」という答えが、初日の段階で脳内に強制出力されてしまった。能力が暴走状態(常時フル稼働)だからこそ、誰よりも早く、そして正確にこの学校のシステムの残酷さに気づいてしまったというロジック。
【天道 真希が味わっている頭痛の正体と危険度】
疼痛の質:群発頭痛(自殺頭痛)以上の過負荷
「頭をハンマーで殴られるような痛み」という表現は、医学的には「群発頭痛(Cluster Headache)」の症状に酷似している。群発頭痛は「自殺頭痛」とも呼ばれ、経験者が「脳をえぐり出されるような痛み」「ドリルで突き刺されるような痛み」と表現する、人類が経験しうる最も激しい痛みの一つ。
真希の場合、これが「暴走」によって**常時、四六時中**発生しているという点が絶望的。通常、このクラスの痛みは薬物投与や酸素吸入なしには継続できない。これを自力で耐え続けているということは、彼の脳は常に過剰な神経活動による炎症と、血管の異常収縮・拡張を繰り返しており、慢性的な脳浮腫(脳の腫れ)を引き起こしてもおかしくない極限状態にあると言える。
最後にこの章を作った理由。『人間合格の章』のオリ主は能力の暴走状態をある意味克服しているから、強すぎて出せない(ガチ)
だから、中学時代の椎名ひよりとのイベントを潰して最大のデバフを背負わせた(死にかけ)。
3年生編4巻である意味失恋しちゃったから、自己満で書き始めたのもある。