今回、初投稿であり記念すべき第一作品目は仮面ライダーWの二次創作です!
前々から、「一番目だし、どんなもの書こうかなー」と悩んでいたところ、プレバンからT2ガイアメモリセットの発売を機に創作意欲が掻き立てられ、勢いのあまり書きました!(笑)
初めての投稿なうえ、初めての執筆のため読み辛いところはあると思いますが楽しんで頂けたら幸いです!
更新ペースは仕事や意欲の兼ね合いもあり、この作品に限らず、今後の投稿も含めかなり遅めにはなると思いますが、何卒よろしくお願いします!
さて、軽い前書きはこの辺にして……。
それでは、「第一話『J』の目覚め/『C』との邂逅」本編スタートです!
今日も異常なし。
何度目かも分からないその言葉が彼の頭に浮かぶ。街の捜索はルーティンワークの一環だが、最早なんの意味もないと同時に考え始めている。そんなことを思い浮かべ、右手に持っている緑色の
――あれから、5年が経った。今でも鮮明に覚えている。
「はぁ……」
彼の口からため息が漏れる。だが、今は悲観に走っている場合じゃない、と頭を軽く振って切り替える。
「さて、今日は何かあればいいんだけど……」
気だるげに呟きながら街を再び歩いていく。
彼の目に最初に入ってきたのは、青い空だった。雲ひとつない綺麗な空。少し目を動かすと空に向かって建物が高く、長く伸びているのが見えた。満遍なく広がっているであろう青空は、建物の壁によって細い一直線の天井になっている。
「うっ……」
次第に意識がハッキリしていき、首を動かして辺りを見渡すと自分の体の下には廃材が寄せ集まってクッションのようになっていた。そこに彼は横たわる、正確には沈みこんでいるような状態で乗っかっていることに気づく。
体を動かし、手足を動かしてもがき、廃材のクッションから抜け出す。そのままふらふらと立ち上がり、軽く服に着いた砂埃を軽く払って再度辺りを見渡す。周りの様子を見るに、自分がいる場所はどこかの路地裏。地面にはゴミや廃材が置かれていて、見たところ何年も放置されているような感じだ。
「ここは……どこだ……」
一先ず、路地裏から出ようと目の前の出口へ少しふらつきながら向かう。目の前に段々と光が広がっていき、手で隠しながら路地裏を抜け出す。そうして飛び込んできたのは――。
「あっ……」
ビル群や住宅街、公園などが見える街並み。それだけなら普通の街だ。彼が見て驚いたものは、もっと別のものだ。
町の中心にそびえ立つ巨大な建造物。塔のように見えるそれはどの建物よりも高く、天を衝く勢いで存在感を放っている。塔の先端からは覆いかぶさるように放射線状の何かを伸ばし、その先には巨大な壁が建ち並んでおり、まるでこの街から何人たりとも出さんするように街全体を囲んでいた。
「なんだ、アレ……。この町は、一体……」
その光景はここがただの街ではないことを証拠づけており、醸し出す異様な雰囲気に唖然とする中、突如として襲い来る頭痛に頭を抑える。同時に、自身の中で大切なものを失ったような空虚感が湧きあがってくる。
それが何かは分からない。しかし、今はそんな事よりもやるべき事がある。まだおぼつかない足取りで歩き始め人を探すことにし、まずはここが何処なのかを聞き出す。その後のことについては、考える余裕はなかった。
「どうなってる……なんで……」
軽く一時間が経っただろうか。青年の中には最初にあった期待とは裏腹に焦りや恐怖が湧きあがっていた。
ここは街だ。少しでも歩けば人にすれ違うことだってあるはずだ。必ず人に出会うはずだ。そんなの当たり前のはずだ。何度も何度も自分に言い聞かせ、そう信じて街を駆け抜けていく。
しかし、結果は彼を裏切る。
「なんで、
誰もいない。その言葉通り、行く先々で人の姿を見かけない。それどころか、動物の1匹も見つかっていないのだ。
「くそ……!なあ、誰かいないのか!」
大声で呼びかけるが、誰も応えない。いや、応える者がいないというのか正しいだろう。何処に行っても、何処へ駆けても、人はいない。そんな現実が彼を酷く打ちのめす。
虚しく足跡と声だけが響き、次第に走り疲れて止まってしまう。
――一体、この街に何が起こってるんだ……!
そう考えた時だった。
「っ!」
近くで物音が聞こえた。足を止め、視線を向けた先は建物の影になっており、何も見えない真っ暗闇だった。だが、今の彼にとってそんなことはどうでもいい。
「そこに誰かいるのか?」
暗闇に問いかけ、返答を待つ。聞こえてきたのは呻き声とゆっくりと迫る足音。普通であれば警戒するのが人だ。だが、そんなことを考えている暇は彼にはない。混乱と不安で摩耗した思考では危機察知能力は働かず、少しでも安心しようと無意識に動き出してしまう。
段々と声と音が大きくなっていく。
「な、なあ。だいじょう……」
声の正体をしようと一歩踏み出した瞬間、青年の背筋が凍りつく。
そこにいたのは人でも動物でもない。
「ウゥ……!」
「なっ!?ば、ばけもの……!?」
あまりの恐怖に腰を抜かしてしまう。何とか立ち上がろうと足と手を動かすが力が入らない。そんなことなど、怪物にとっては関係ない。見つけた獲物へとゆっくりと迫っていく。
「く、来るな!来るなぁ!」
大声で叫ぶも、効果はない。
すると、怪物の体が光りだし、マグマが身体から跳ねる。同時に周りの温度が上がり、熱を帯びていくのを感じていく。
やばい、その言葉が頭の中に何度も響きわたり、さっきよりも激しく手足を動かし、立たなくとも逃げようと必死になる。
「ウアァァァァァァァァ!」
しかし、怪物が大きく声を上げ、マグマを凝縮して熱線を放った。マグマの温度は一般的に約650~1300度。人が触れようものなら跡形もなく溶かされ、死を迎える。それが今、自分の眼前に迫っているのだ。
もはや逃げる暇はない。自分はここで死ぬんだ、と。半ば諦めかけたその瞬間――。
「グゥ!?」
「うわっ!?」
熱線から守るように彼の周りに突風が吹く。突然の風に、青年は顔を覆い隠して身を守る。いや、風というにはあまりにも強すぎる。巻き起こった風はマグマをかき消し、熱線を放った怪物を吹き飛ばす。それはまるで、台風のようだった。
――何が起きて……。
そう考えたとき、風と共に上空から何かが下りてくる。全身緑色のスーツ、銀色のマフラー、赤い複眼。そして、腰に巻かれた赤い機械仕掛けのベルト。その姿はおよそ人とは思えない。だが、怪物とは違う。そう直感で分かる。
「あ、あの……」
「ハァ……」
声を掛けようとしたとき、ため息が聞こえた。
「何してんの?」
「え?」
「ドーパントを目の前にして変身しないとか、自殺願望でもあるのか?」
――ドーパント?変身?何を、言ってるんだ?
緑人間が次々と話す言葉を理解できず、彼は困惑の表情を思い浮かべる。それを見た緑人間は顎に手を当て、考えるような仕草を打つ。赤い複眼が彼に向けられ、表情は分からないが何処か怪訝な様子だった。
「なに?なんか文句でもあんの?」
「い、いや……」
「何、その顔?『メモリ』と『ドライバー』持ってんだろ?」
次々と出てくる言葉は混乱している彼の頭を余計に混乱させる。
必死に頭の中を整理しようと考えていると、緑人間の背後で爆発が起きる。二人が視線を向けると、先ほど吹き飛ばされた怪物が体中のマグマを滾らせ、こちらを見ている。
「ウゥ……!」
「ひっ……!?」
「あー、そんなに遠くに飛ばせなかったか」
――何を悠長なことを言ってるんだ!?こいつは!
緑人間の言葉を内心でツッコむと右手を横に挙げ、勢いよく仰ぐ。すると、二人の周りに風が集まってくる。
「え、え?」
「場所を変える。あいつがいたら話にならない」
「ちょ、ちょっと待っ……!」
そんなことを聞いている暇はない。
そう言っているかのように緑人間は台風を作り上げ、自身だけでなく彼も一緒に浮べて空へ飛び始める。
「うわぁぁぁぁぁぁ!?」
台風はかなりのスピードで巻き上がり、あっという間に二人はその場から消えていった。
二人が台風を乗って数分後。緑人間は手ごろな屋上を見つけ、風を弱めながら着地。
「いって!?」
一方、青年は着地することが出来ず、受け身もとれぬまま床へ落ちる。体に激痛が入るものの、何とかして体を起こし、目の前にいる緑人間を見る。
「……ここなら大丈夫か」
そう言うと、腰に着いた赤い機械を操作し、緑色の何かを引き抜いた。すると、緑人間の姿が一瞬黒くなったかと思えば風に吹かれるように外装のようなものが剝がれていき、正体が露わになる。
そこから現れたのは、人間の青年。白い髪に白いパーカーを羽織った、自分と同じ人間だった。
「おい」
白い青年がこちらを向き、近づいて自身とは反対のような黒い青年を見下ろす。その眼はどこか、蔑みを含んでいた。
「なんで、さっき変身しなかった」
「え……?」
「いや、え?じゃないよ。なんで変身しなかったって聞いてんだけど」
何回聞いても理解できない。もはや、黒い青年の頭はそれでいっぱいだった。先ほど怪物に襲われたときに言われた『変身』という言葉に加え、『メモリ』と『ドライバー』という言葉。見たもの聞いたもの全てが不思議で、理解が追い付かない光景に黒い青年は押しつぶされそうになる。
「へ、変身って……さっきの、緑人間みたいになることか……?」
「はぁ?なんだよ、緑人間って」
白い青年は眉を顰めて屈み、腕を伸ばして黒い青年の懐をまさぐる。
「え、ちょっ、何して……!?」
「うるさい、喋んな……お、あった」
何かを見つけたような声を上げ、腕を引き抜く。その手の中には、黒い長方形の端子がついている物体、つまるところUSBメモリのようなものが収まっていた。しかし、普通のメモリとは違って端子近くにボタンが付いており、その面には何かアルファベットのような文字が描かれていた。
「『J』のメモリ、か。初めてだな。名前は……『ジョーカー』?」
ジョーカー。
言葉の意味は多岐に渡る。その中で最も知られている意味を現すなら――。
「『切り札』のメモリ?なんだこれ」
「ジョーカー……?グッ……!?」
その名を口にした瞬間、黒い青年の頭に激痛が走る。咄嗟に手で押さえ、痛みに耐えようとするがそれは長く続かず、一瞬にして消えた。
――今のは、何だ……?急に頭が……?
「今度は何?具合でも悪いの?」
「い、いや……なんか急に……」
ハァ……、と白い青年はため息を吐き、また屈んで黒い青年の懐をまさぐろうとする。流石に二回目ということもあってか黒い青年は手を払い、立ち上がって距離を取る。
「さっきの怪物はなんだ!?それに、さっきのお前の姿は一体なんだ!?」
「この街は、なんで人がいなんだ!?」
駆け足気味で白い青年に質問する。
人のいない町、怪物、そして謎の緑人間。ありえないことが立て続けに起こったせいか、最早彼の心境は穏やかでない。
「……ハァ」
何度目か分からないため息を吐き、立ち上がって黒い青年を見る。
「さっきの怪物は『ドーパント』。それで、さっきの僕の姿は――」
「『仮面ライダー』だ」
――ドーパント……?仮面、ライダー……?
気怠げに返された言葉に再び頭痛を感じる。聞いたことがないはずなのに、何かを忘れているような感覚が三度も自分に襲い掛かる。
一体、自分に何が起きているのだろうか。漠然とした不安が黒い青年を襲う。
「こんなことも知らないなんて……いや、待てよ……」
ふと、白い青年は考え込む。目の前にいる黒い青年、先ほどから『仮面ライダー』や『ドーパント』、『メモリ』のことを喋ってもまるで初めて聴いたかのような反応。ましてや、この街のことを異様に不気味がっている。それだけでも考えられる要素としては十分だが、確信に至る必要な要素を聞かなければならない。
「……なあ」
「ッ!な、なんだ……」
「お前……『名前は?』」
「え……」
白い青年からの質問に、黒い青年は固まる。普通ならすぐに答えられるはずだ。だが、黒い青年はいっこうに言葉を返さない。それどころか、必死に思い出そうと記憶の奥底を探ろうとする。
「俺は……俺は……!」
しかし……。
「俺は……誰だ?」
その言葉に、白い青年は確信を持った。黒い青年は『記憶喪失』だと。
再び大きなため息が出る。自身の予想通りとなったため息なのか、面倒ごとが増えたため息なのかは本人しか分からない。あるいは、その両方かもしれない。
「本当に、僕の予想は良く当たる……」
ブツブツと聞こえない声で黒い青年の横を素通りし、屋上の柵に背もたれる。
「僕の名前は
「普通の街……だった?」
「5年前にあの塔と壁が突然現れ、ドーパントという怪物たちが跋扈し始めた」
白い青年・白部右は街の中心に立つ塔、街全体を閉じ込めるように囲む一面の壁を忌々しく睨む。
「それと同時に、僕達の元にこのメモリとドライバーが現れた」
懐から赤い機械・ドライバーと先ほど使っていた緑色の、表面に風のようなデザインの『C』の文字が描かれているメモリを見せる。
「僕達、てことは……他にもいるのか?その、メモリとドライバーってやつを使う奴が……」
「いる。ま、何でメモリとドライバーが現れたのかは不明。分かっていることは、そいつらだけがこの街の唯一の人間だってこと」
「そして、その2つを持っている奴ら全員が仮面ライダーに変身できること。この二つだけ」
「唯一の人間……仮面ライダー……」
人間は仮面ライダーと呼ばれる存在のみ。それ以外に人間はおらず、街はドーパントと呼ばれる怪物で埋め尽くされている。であれば、メモリを持つ自分も仮面ライダーなのだろうか。疑問が疑問を呼び、彼の中にある混乱がより一層強くなる。
自分は何者なのか、何故この街にいるのか。
そして、自分の記憶は戻るのだろうか。
言い知れぬ不安は体を巡り、胸の奥にある空虚感は青年を強く苦しめる。
「歓迎するよ」
「ようこそ――『空都市』へ」
この街で何が待ち受けているのか、これから出会うであろう仮面ライダーたちは何をもたらすのか。未だ何もわからない運命に怯える記憶喪失の青年を、風も吹かぬこの街は冷たく受け入れる。
記憶を失った青年は空都市で暮らす仮面ライダー・白部右と出会い、街の正体について聞かされる。行く宛もなく、戸惑いと混乱に苦しむ彼を見かねた右は自身が活動拠点としている場所へ連れて行こうとする。
しかし、その道中、撒いたはずのマグマドーパントの奇襲に受け、右は変身できない状況に陥る。
ドーパントへの恐怖で動けずにいた青年だったが、自分を助けてくれた右を助けるためジョーカーメモリとロストドライバーを使い、仮面ライダージョーカーへと変身する。
次回、メモリーライダー ~空っぽの箱庭~
第二話 『J』の変身/『C』が明かす真実
その真実は、虚ろを蝕む毒となる。