小さな光は父親の大きな背中に憧れていた。数多に広がる宇宙を守護する宇宙警備隊、その筆頭教官でありウルトラ兄弟No.6の称号を持つウルトラマンタロウ。そんな大き過ぎる背中を追い続けた小さな光はやがて成長し、光の国を旅立ち、仲間を得た。光の勇者と名乗るようになった光の名はタイガ。ウルトラマンタイガ。ウルトラマンタロウの息子だ。
「父さん!俺、U-40とO-50で仲間になった戦士とチームを作ったんです。チーム名はトライスクワッドに決めました!」
「タイガ。仲間を、友を大切にしなさい」
タイガはタロウに常日頃そう言われ続けてきた。だがタイガはその理由を今の今まで聞かされたことがなかった。きっと何かしらあったのだろうと察して聞くのを躊躇ってもいた。
「父さんはもしや・・・」
だがその日は思い切ってタロウに理由を尋ねてみた。するとタロウは若かりし頃に失った親友を思い出した。
「あれは地球での任務を終えて光の国に帰還して少し経った頃だった。私の親友、トレギアは別時空から干渉してきた黄金の戦士の誘いに負けてしまい、別時空へと去ってしまった。今では別次元への移動も珍しくはなくなったが、今もなお時間軸も絡めた時空の移動は不可能。今トレギアが何処の世界でどの時間軸にいるのかも知る術はない。私はトレギアを守る事が出来なかった事を今なお悔いている」
タロウの親友トレギアは別時空から干渉してきたアブソリューティアンの戦士、アブソリュートタルタロスの誘いに同調してしまい、この時空を去ってしまった。あれから長い月日が流れたがタロウは今も親友を守れなかった事を悔いていたのだ。
「おっと、しんみりとさせてしまったな。タイガ達トライスクワッドは今後どうするつもりなんだ?」
「まずは修業の一環として父さんたちが守った次元とは異なるマルチバースの地球に行ってみようと考えています。今その地球は不自然に怪獣がいなくなる謎の現象が多発しているので調査も兼ねてですけど」
「ふむ、くれぐれも無茶はするなよ」
こうしてタイガはトライスクワッドの仲間と共に地球へと向かっていく。そしてタイガたちトライスクワッドは怪獣消失の犯人。そのアジトへと突入して犯人と対面した。
「ようやく見つけたぞ!Dr.アビス!」
「よもやウルトラマンがこの宇宙まで出向いてくるとは」
Dr.アビスと呼ばれた謎の男はトライスクワッドがアジトまで来たというのにそれ程驚いてはいなかった。
「せっかくだ。ウルトラマンでも装置が機能するか試してみるとしよう」
「光の勇者!タイガ!」
「力の賢者!タイタス!」
「風の覇者!フーマ!」
「「「我ら!トライスクワッド!」」」
名乗りを上げたトライスクワッドはアビスの計画を打ち破るため、目の前の装置を破壊しようとした矢先、アビスは装置を起動した。すると装置から放たれた光線がトライスクワッドに浴びせられる。
「なんだこれ?身体がッ・・・砕けそうだッ」
「これはかつて光の国にいたトレギアという科学者が開発したアストラル粒子転換システムを再現、応用した変換装置だ」
トレギア。その名前にタイガは思考を巡らせてしまう。
「つまりこの光線は私達をアストラル粒子に変換しようとしている訳か」
「なら変換されちまう前に装置をぶっ壊すぞ!」
タイタスとフーマは完全にエネルギーに変換される前に装置を破壊しようとすると、白いロボットが2人を襲った。
「何だこのロボットは!?」
「見た目は白いがこの独特のフォルムはまさか!」
「詮索はそこまでだ」
「「うわぁぁぁっ!?」」
タイタスが白いロボットが何なのかを告げようとするや否や、アビスは装置の出力を上げてタイタスとフーマはアストラル粒子に変換され、人間の手に収まるアクセサリーにされてしまった。
「タイタス!?フーマ!?このッ!!」
タイタスとフーマがアクセサリーにされた事に動揺したタイガは怒りに身を任せて白いロボットに光線を放つも、白いロボットは4つに分離してタイガの攻撃を回避する。
「ぐっ!?うわっ!?」
4機は再度合体すると人型からドラゴンのようなフォルムの形態となり、それは口部から強力な火炎攻撃でタイガを襲う。その攻撃に耐えかねたタイガは膝をついてしまうと、とうとうタイガもアストラル粒子にされてしまいアクセサリーにされてしまったのだった。
「ウルトラマンのアストラル粒子化に成功。これなら計画を次の段階に・・・む?」
『ウルトラ念力!』
アビスが次の計画の算段を考えつつもタイガ達のアクセサリーを回収しようとすると、その姿でも意識のあったタイガ達はウルトラ念力で自分達アクセサリーを飛ばし敵のアジトから脱出した。
「アクセサリーの状態でも意識がある事例は怪獣達で確認済みだったが、あの状態で簡易なものとはいえ技を使えるのは新たな発見だ。記録しておこう」
アクセサリーに逃げられても、あの状態では大した事など出来ないと考えているのかアビスは今起こされた事の記録をするのを優先し、タイガ達のアクセサリーを追跡しようとはしなかった。
タイガ達がアクセサリーにされてからこの地球で7年の月日が流れた。7年前までは地球のいたるところで観測、被害をもたらしていた怪獣も今では一切の姿を見せず、外星人による侵略行為も時代遅れとなった現代。地球人や外星人は皆手と手を取り合い・・・とまではいかないものの、平穏に近い日々が続いていた。
「こちら工藤。まもなく現着します」
そんな地球で外星人が起こす犯罪や万が一にも怪獣が出現した場合に対処する組織があった。その組織の名はE.G.S。Earth.Guardian.Squadの略称であり、青い隊員服に身を包んだ青年の名は工藤ヒロユキ。E.G.S日本支部に所属する隊員の1人だ。
「ホマレ先輩。現場はどうなってますか?」
「やっと来たか。見てみろ」
専用車両で現場に到着した彼は先に別の専用車両で現着していた先輩隊員の枕野ホマレと合流する。するとホマレは親指で建物の室内を確認するよう指差すと、そこには外星人2人と取引をしているマフィアのボス。さらにはそのマフィアの構成員6人の姿があった。
「下っ端に吐かせた通り、この場所この時間で取引が始まったところだ」
「だけど本当に地球人のマフィアが『宇宙を混沌にするもの』なんて危険なのを手に入れたんでしょうか?」
捕まえたマフィア構成員によれば取引されるものは『宇宙を混沌にするもの』と言うだけで詳しい内容は分からなかった。故にマフィアといえど1地球人がそれを手に入れたという情報は信じきれなかった。
「俺も信じてはねぇよ。だけどあのマグマ星人とマーキンド星人は闇取引のスジじゃ有名な奴らだ。この場で確保できるチャンスってんなら俺らも乗っかるべきだろ」
取引に来ている外星人はサーベル暴君の別名もあるマグマ星人と宇宙商人のマーキンド星人。いずれも宇宙裏オークションで有名なバイヤーコンビだ。この2人を捕らえられる絶好のチャンスだと語るホマレは専用のレーザーガンを構えると上からの突入合図を待つ。
「コイツが例のブツだ」
構成員が突き出したのは泥だらけの服にボサボサの長い髪をした1人の少女だった。
「女の子?助けないと!」
「おい待てバカっ!ああもう!しゃあねぇな!」
何故女の子が捕まっているのかと訝しみながらも、彼女を助けようとヒロユキが勝手に突入していく。
「E.G.Sだ!大人しくしろ!」
「ヒロユキ!お前はその娘を安全なところに避難させろ!俺はコイツらの身柄を拘束する!」
「1人でこの人数は大丈夫ですか?」
「伊達にお前より場数を踏んでねぇよ」
ホマレがマグマ星人達を1人で相手に立ち回っている間に、ヒロユキは少女へと駆け寄り、レーザーガンで手錠を破壊する。
「さぁ、逃げるよ!」
「は、はい!」
たった1人で外星人も含めた数人をボコボコにしているホマレに背を向けてヒロユキは少女を連れてその場を離脱する。
「とりあえずこれだけ離れたら大丈夫かな。僕はE.G.S隊員の工藤ヒロユキ。君の名前は?」
「し、神童クリム、です」
神童クリム。そう名乗った少女にヒロユキはどうしてマフィア達に捕まっていたのかを尋ねようとすると、クリムの身体から紫色のオーラが溢れ出す。クリムはそれを抑え込もうと必死に抗っていると、ホマレがマグマ星人達を相手に奮闘していた建物が突如として倒壊。そこから赤い鎧に覆われた悪鬼のような怪獣。最凶獣ヘルベロスが現われた。
「ホマレ先輩!?」
「心配すんな!無事だ!」
ヒロユキがホマレを心配して叫ぶと、既にホマレはマフィア達を引っ捕らえて脱出していた。
「マグマ星人が変な指輪を出したと思ったら、指輪がいきなり怪獣になったんだ。だけど怪獣になるのはマグマ星人も想定外だったみたいで誰よりも先に逃げやがった」
「とりあえず、無事で何よりです」
「怪獣が解放された。きっと私のせいだ」
指輪が怪獣になった話を聞いて動揺しているクリム。きっと彼女には何かあると判断したヒロユキとホマレは言葉を交わさぬまま頷き合うとレーザーガンを構える。
「ヒロユキ。戦闘機部隊の到着まで足止めするぞ!アイツを市街地に近づけるな!」
「了解!」
ヒロユキとホマレはレーザーガンでヘルベロスを攻撃するも、そもそもレーザーガンの出力が対人・対星人用に設計されているため、あまりヘルベロスにダメージを与えてはいなかった。
「畜生!こんな所にいたらすぐ死んじまう!」
「ズラかるぞお前ら!」
このままでは巻き添えで命を落とす。そう考えたマフィア達はこの場からなんとか逃げようともがいていると、ビルの瓦礫がマフィア達の頭上に降り注ぐ。
「チッ!手間かけさせやがる!」
ホマレは瓦礫からマフィア達を庇い頭を強打。そのまま意識を失ってしまうと、マフィア達も瓦礫の下になってしまう。
「ホマレ先輩!?」
『ヒロユキ。工藤ヒロユキ』
ホマレを心配し、叫ぶヒロユキは何処からか自分を呼ぶ声に気づく。
「今の声は?」
「彼の声が聞こえたの?」
紫のオーラをなんとか鎮めたクリムは声の主の事を知っているようだ。
「ねぇタイガ。この人なの?」
『あぁ、きっとそうだ』
声の主、タイガがクリムの問いに答えると、クリムはタイガのアクセサリーをヒロユキに差し出してくる。
「これを。貴方に」
言われるがままヒロユキが右手でアクセサリーを掴むと、ヒロユキの右腕に黒いガントレット型のアイテム。タイガスパークが装着された。
「な、なんだこれ?」
『ヒロユキ。これから俺はお前で、お前は俺だ』
「え?えっ!?き、君は?」
『俺はタイガ。ウルトラマンタイガ。ヒロユキ、お前の心に強い光を感じた。俺の光とお前の光であの怪獣を倒そう。お前の力が必要なんだ』
「よく分からないけど、君と一緒ならあの怪獣を倒せるんだね」
『あぁ、俺とお前のバディなら!』
「バディ。うん。なら一緒にいこう」
『アクセサリーを右手で掴んだまま空に掲げろ。そうすればお前の光で俺が解放される』
「バディ、ゴー!!」
【ウルトラマンタイガ!】
ヒロユキがアクセサリーを空に掲げると、ヒロユキは光に包まれてウルトラマンタイガへと変身を遂げた。
「タァァッ!!」
タイガは変身が完了するとほぼ同時に空中で身体を捻らせ回転し、父譲りの回転キックであるスワローキックをヘルベロスへと叩き込む。
「あれはまさか、ウルトラマンか」
「まさかこの地球に現われるとは」
マグマ星人とマーキンド星人はタイガを見上げて、その登場に驚いた反応をしていると謎多き男であるアビスも別の場所で反応する。
「よもや人間に宿る光と一体化してアストラル粒子となっている身体を再び光に戻すとは。面白いものを見せてくれる」
予想外の行動で再びウルトラマンとしての光に戻ったタイガを見て記録を取り出すアビス。それに気づかないままタイガはヘルベロスに追撃の連続パンチを浴びせていた。
「ダダダダダッ!」
ヘルベロスもただ一方的にやられているわけではなく、鋭い刃が付いた尻尾であるブレードテイルを振るい反撃してくる。その攻撃を後ろに飛び下がる事で回避したタイガに背中のトゲから矢のような光弾の雨を放つヘルエッジサンダーで追撃を仕掛けてきた。
「スワローバレット!」
ヘルエッジサンダーに対してタイガは腕を十字にクロスさせて連続で光弾を放つスワローバレットで応戦。すべてを撃ち落とすとそこにヘルベロスは火球を放つ。
「ハァァ!」
右手のチョップで火球を両断したタイガは胸のカラータイマーが点滅を始めた。ウルトラマンは地球上では三分間しか活動できない。その活動限界が迫ってきたのだ。
「ストリウム!ブラスター!!」
腕をT字に構えて必殺光線のストリウムブラスターを放ち、ヘルベロスに命中する。その威力に耐えられなかったヘルベロスは爆発すると、その撃破を確認したタイガは空へと飛び去っていった。
『どうだヒロユキ!これが俺の力だ!』
光の巨人から元の姿に戻ったヒロユキに半透明かつ人間サイズのタイガが自慢げに語りかける。
「さっきまで僕が君になっていたんだよね?なんか実感がないな」
『ちなみにこの状態だと普通の人間には見えないし、俺の声も聞こえないから安心しろよ』
「ということはあの娘はやっぱり普通じゃないってことだよね」
タイガの声が聞こえていて、封印されていた怪獣を呼び覚ました疑惑のあるクリムを普通の人間ではないのかもしれないと考えたヒロユキは心配して彼女のもとに戻る。すると無事に救助班にホマレやマフィア構成員も救助されていてまずは一安心しつつも、ヒロユキはクリムに声をかけた。
「そろそろ君の事を教えてもらえないかな?」
「私は神童クリム。怪獣の魂を宿して生まれた怪獣娘。私の宿す怪獣の力は世界に混沌をもたらす邪神魔獣、グリムド」
これがヒロユキがウルトラマンタイガと、そして邪神魔獣グリムドの魂を宿す怪獣娘である神童クリムとの出会いの日だった。
次回「かいじゅうむすめとはがねのりゅう」