E.G.S日本支部。千葉郊外に存在する地球の守護を目的としたチームの本部はフランスに置かれている。空戦部隊や陸戦部隊、白兵戦部隊等の様々な部隊があり、裏方の支援部隊も含めると人種や外星人問わず700人近くが日本支部に所属している。
『なるほど。つまりは地球を守っている組織にヒロユキは所属してるってことか』
「ざっくりと言えばそうなるね」
捕まえたマフィア達から事情聴取をしている間、時間ができたヒロユキはタイガにE.G.S日本支部の説明をしながらクリムが保護されている部屋へと歩いていた。
「入るね」
「ヒロユキさん。昨日ぶり」
「早速で悪いけど、君の事をもう少し詳しく教えてもらうね」
「うん」
「まず、そうだな。タイガとは何処で出会ったの?」
「マフィアに追われていた時だったから詳しい場所は覚えていないけど、怪獣娘だからかタイガの声が聞こえた。だからタイガを拾えた。そのすぐ後にマフィアに捕まっちゃった」
怪獣娘。この地球で数十件ほど確認されている怪獣の魂とその力を宿して生まれてくる少女達の総称だ。怪獣娘は感情の昂りで怪獣の力を行使できる姿へと変身するのだが、マフィア達はその力を恐れて、力を封じる手錠でクリムの力を封じていたようだ。
「10年ぐらい前までは怪獣娘による特殊部隊。GIRLSってのが日本にあったんだけど、7年前ぐらいを境に新しい怪獣娘の誕生が確認されなくなったから部隊が凍結。事実上解散になったんだ」
『怪獣娘によるチームか。クリムから怪獣娘の話は聞いていたけど、そういうのもあったんだな』
「そのせいで怪獣娘を保護する団体がいなくなって彼女達の安全が保障しきれなくなって、クリムのようにGIRLSに所属してなかった少女の中には人身売買されてしまう人がいるとは噂で聞いた事があったんだ。本当に助けられて良かったよ」
「あの、このあと私はどうなるの?」
クリムは早くして両親を亡くした孤児。14歳までは孤児院にいたようだが、怪獣娘の力に覚醒した15歳から18歳の今に至るまでは逃亡生活だったようだ。
「その事なんだけどさ、しばらくはE.G.Sの預かりっていうカタチでいいかな?君の宿している邪神魔獣グリムドは僕らのデータベースにない未知の怪獣なんだ。また攫われたりする可能性があるなら、僕らの管理化にいてくれた方が助かるって話なんだけど。どうかな?」
「私に居場所をくれるってこと?」
両親が亡くなってから長らく居場所がなかったクリムは管理という形とはいえ、自分に居場所を与えてくれるということに喜びを感じていた。
「近いうちに正式な君の部屋を用意してもらうから、それまではこの部屋で我慢してて」
「うん。ありがとうヒロユキ」
ヒロユキはクリムとの会話を終えると司令室に足を運ぶ。
「隊長。彼女に例の件を伝えてきました」
「ご苦労様。彼女、どんな様子だった?」
「居場所ができたと安心した様子でした」
E.G.S日本支部の隊長、佐伯カナにクリムの様子を伝えたヒロユキはデスクの椅子に腰をかけると人間型高性能アンドロイドのピリカが過去のデータベースだけでなく、様々な文献や資料までも調べた結果をカナに報告してくる。
「ピリカ。そっちはどうだった?」
「ダメです。この地球はおろか、この宇宙でグリムドっていう怪獣の記録はありません」
怪獣娘に宿る怪獣の魂は必ずしもその宇宙で命を落とした怪獣達という訳では無い。死した怪獣達の魂は皆、M78ワールドの怪獣墓場という場所に辿り着き、何処かの地球で生まれ変わるという説もあり、邪神魔獣グリムドがこの宇宙で観測された記録がなくともおかしくはないのだ。
「ピリカはクリムちゃんの身元を保証するためのE.G.S登録カードを作成。ヒロユキは午後からの巡回の前にお昼をとってきて」
「りょ〜か〜い」
「それじゃ僕は食堂に」
基地内の食堂に来たヒロユキは唐揚げ定食を注文し、食べ始める。
「唐揚げを食べてると昔友達になったカラアゲを思い出すな〜」
『カラアゲ?地球人の名前にしてはなんというか、変な感じだな』
「人間ではないよ。今思えばたぶん怪獣の幼体だったんだと思う。僕が10歳ぐらいの頃に河原にいたのを発見して、見た目が唐揚げっぽかったからそう名付けたんだ。半年ぐらい河原でご飯をあげたり、遊んだりしてたんだけど、ある日を境に忽然と姿を見せなくなったんだ。今にして思えばあの時期から地球では怪獣が生息地からいなくなる事件が起き始めてたんだと思う」
『10年前からアビスが活動してたんだな』
昨日出会ったばかりのヒロユキに余計な心配はかけまいとタイガはまだアビスの件は話していなかった。だが流石に話すべきだろうとタイガはヒロユキに何故自分達が地球に来たのか、何故アクセサリーの姿なのかを打ち明けようとしたタイミングで事件発生のアラートが基地内に鳴り響いた。
『東京都F地区に怪獣出現を確認しました』
ピリカのアナウンスに反応したヒロユキは急ぎ食事を終えて司令室へと戻る。そこにはピリカやホマレだけでなくクリムもそこに来ていた。
「データ照合完了。出現した赤い怪獣は双頭怪獣パンドンです」
赤い2つ頭の怪獣、双頭怪獣パンドンの出現を確認したピリカは基地内にアナウンスでその事を通達する。
「念のために確認したいんだけど、クリムちゃん。怪獣娘としての力の暴走をしたかしら?」
「してない、です。」
「このタイミングでの怪獣の出現。まるで誰かが裏で手を引いているみたいね。・・・とはいえまずは被害を最小限にするのが再優先!空戦部隊、出撃よ!」
クリムに形式上の確認をしたカナはパンドンの出現に第三者の関与を疑うも、まずは怪獣の対処を優先するべく空戦部隊を出撃させる。
「隊長、大丈夫なんですか?空戦部隊の連中、いくら毎日訓練してるとはいえ実戦は初めての奴らが多いですよ」
「怪獣の復活にクリムちゃんという怪獣娘の登場。さらにはこの地球でウルトラマンと呼ばれる光の巨人まで現われた。地球は間違いなくアンバランスゾーンになり始めたわ。おそらく怪獣復活は今後も続く。実戦経験がないから戦えませんじゃダメなの」
ホマレはこれまで7年もの間、怪獣が出撃していなかったため、空戦部隊の実戦経験がない事を心配する。もちろんカナもその事を考えた上で、実戦経験を積ませるためにも出撃させたようだ。
「ヒロユキとホマレも現場に向かって。まだ避難しきれていない人達の避難誘導をお願い」
「「了解!」」
ヒロユキとホマレも現場に急行し、人々の避難誘導を開始する。その途中、パンドンとヒロユキの目が合い、パンドンはピョンピョンと飛び跳ねながら両手を振り出した。
『なぁヒロユキ。あの怪獣、ヒロユキに反応してないか?』
「あの揚げ物みたいな身体。まさかあのパンドンは・・・っ!!」
パンドンがかつて友達になったカラアゲかもしれない。そう考えたヒロユキはすぐさま通信機でカナに報告を入れた。
「隊長。攻撃は待ってください。あの怪獣、僕を見て反応していました。それにあの揚げ物みたいな見た目、昔友達になった怪獣とそっくりなんです」
『ヒロユキがよく遊んでいたって話していたカラアゲの事?・・・分かったわ。まずはヒロユキが大人しくさせられるかチャレンジして。それが無理だと判断したら空戦部隊による麻酔弾の行使。駆除は最終手段の方向でいくわよ』
「ありがとうございます!」
E.G.Sは必ずしも怪獣や外星人を駆除・撲滅する組織ではない。外星人を地球の法で裁く事もあれば、怪獣の保護をする場合もある。怪獣や外星人の退治は最終手段なのだ。
『とはいえどうするんだ?』
「カラアゲは手で渦を作るようにぐるぐるとさせると、それを目で追って、目を回していた。それをやってみる」
ヒロユキはパンドンことカラアゲの癖を思い出し、行動をしてみる。
「カラアゲ〜!」
パンドンはヒロユキの声に反応すると、その手の動きを見て目を回し、立てなくなったようでその場に座り込む。
「よし!隊長!このまま保護を・・・ん?」
このままパンドンの保護を頼もうとするヒロユキだったが、突如として現われた白いロボットの登場で事態は急変した。
「せっかく指輪にした怪獣を元通りにしてあげたのに、大した記録も残せないまま保護されるなんて駄目だよ」
ヒロユキがパンドンを保護しようと奮闘しているのを観測したアビスはそんな記録は残す気はないとモヤモヤしていると、そんな彼のもとに金髪褐色の少年がやってきた。
「怪獣、解放し始めたんだ」
「おや、シズムくん。帰ってきてたんですね」
「怪獣の気配を感じてね。だけどあの怪獣、人に懐いていて本来の在り方を見失っている。怪獣はもっと自由であるべきなのに」
シズムと呼ばれた少年はパンドンに残念なものを見るような視線を向けると、その目を赤く輝かせる。
「怪獣を正すのも怪獣使い。アクセスコード。ダイナゼノンリライブ」
赤い光に包まれたシズムは白いロボットに、ダイナゼノンリライブへとその姿を変えてパンドンの前に現れたのだった。
「なんだあの白いロボット?」
『アイツは、あの時の!』
突如として現われたダイナゼノンリライブにタイガは怒りを見せる。するとダイナゼノンリライブはパンドンの頭を掴んで電流のようなものを与えた。
「カラアゲ!?」
電流を受けたパンドンは理性を失ったかのように暴れ出し、待機していた空戦部隊もパンドンに攻撃を開始する。
「タイガ。あの白いロボット、何か知ってるのか?」
『俺がアクセサリーの姿になる事件の時に遭遇したロボットだ。あいつのせいでタイタスとフーマが、俺の仲間がやられた』
「・・・行こうタイガ」
【カモン!】
「光の勇者!タイガ!」
静かな怒りをみせたヒロユキは左手で掴んだアクセサリーをタイガスパークを装備している右手に持ち替えて、それを空へと掲げる。
「バディ、ゴー!!」
【ウルトラマンタイガ!】
ウルトラマンタイガへと変身したヒロユキは空戦部隊の戦闘機と交戦中のパンドンの前に現われると、まずはパンドンの火炎放射から戦闘機を守った。
「落ち着くんだカラアゲ!」
『たぶんあのロボットのさっきの電流で怪獣の本能が刺激されたんだと思う。俺にはヒーリング技はないから治まるのを待つしか出来そうにない』
「待つって言っても君になっていられるのは三分間だけなのに」
『最悪気絶させればいいはずだ。というより問題なのはあのロボットだ。あいつを何とかしないとまたカラアゲが暴走させられる』
「そうだね」
タイガは半球タイプのバリアでパンドンを閉じ込めるとダイナゼノンリライブに対して戦う構えを取る。
『まぁ、ウルトラマンなら怪獣を倒すか、こっちと戦うかがセオリーだよね』
自分と戦うことも想定していたと言った様子のダイナゼノンリライブは両足からミサイルを放ちながらタイガに殴りかかる。パンドンへのバリアにリソースを割いていたタイガはバリアを展開できないままガードのみをするも、そのパワーに押し負けて背中から倒れ込んでしまう。
『ただのロボット扱いされるのも癪だから名乗っておくよ。これはダイナゼノンリライブ。れっきとした怪獣さ』
タイガを踏みつけながら名乗ったダイナゼノンリライブ。するとタイガはバリアを貼り続ける余裕がなくなってしまい、パンドンはバリアを破ると理性を取り戻したのか、パンドンはダイナゼノンリライブを攻撃しだした。
『見境無く攻撃するのは怪獣らしくていいとは思うけど、挑む相手が悪かったね』
ダイナゼノンリライブは全身からビームやミサイルを発射して圧倒的弾幕をパンドンへと浴びせた。その弾幕を受けたパンドンは爆発して、その命の灯火を消してしまうと、タイガに変身しているヒロユキは怒りで拳を強く握る。
「よくもカラアゲを!」
『怪獣には怪獣らしい自由が必要なんだ。怪獣との共存もまた自由な在り方だけど、飼い慣らされる生き方に自由はない。そうなるぐらいなら、自由なうちに終わらせてあげるのが僕の役目だ』
「そんな身勝手があるか!」
『ストリウム!ブラスター!!』
ヒロユキの意思でタイガは必殺の光線をダイナゼノンリライブへと放つも、両手から展開されたビームの刃、ダイナセイバーに光線は斬られてしまう。
『今日は君達と戦う気はないよ。それじゃ』
戦う気はないことを伝えたダイナゼノンリライブは煙幕と言わんばかりにタイガにミサイルを放ち、タイガが爆炎を払い除けた時にはダイナゼノンリライブの姿はその場から消えていた。
「カラアゲ・・・」
ヒロユキはパンドンを助けられなかった悲しみが残され、タイガは時間ギリギリまでただ立ち尽くしていた。
次回「どんぶらこ」