仮面ライダージオウ×ディケイド in 僕のヒーローアカデミア   作:生成AIに書かせています

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第4話:激突、USJの悪夢

対人戦闘訓練の熱狂が冷めやらぬ翌日、1年A組では極めて日常的、かつ彼らにとっては重大なイベントが行われていた。学級委員長選挙。結果として、マスコミの不法侵入によるパニックを理路整然と収めた飯田天哉がその座に就き、クラスは一つのまとまりを見せ始めていた。

 緑谷出久は、その飯田の姿にヒーローとしての器を見出し、自ら委員長の座を譲った。そんな彼らの青臭くも眩しいやり取りを、常盤門矢は教室の最後列から、相変わらずピントの合わない二眼レフカメラのファインダー越しに、ただ静かに眺めていた。

 そして、そのさらに翌日。彼らは「プロの現場」へと引きずり出されることになる。

 

「――今日の基本訓練は、俺とオールマイト、そしてもう一人の3人体制で見る」

 

教壇に立った相澤消太が、寝不足の目をさらに細めながら、いつも通りの気怠い、しかし有無を言わせぬ口調で告げた。

「何をするんですか、先生!」

 切島鋭児郎の質問に、相澤はポケットから一枚のカードを取り出して提示する。そこには『RESCUE(救助)』の文字が躍っていた。

「災害、水難、何でもござれだ。屋内対人戦闘訓練とはわけが違う。……レスキュー訓練を行う」

 

その言葉に、教室の空気が色めき立った。ヒーローの本質とは、戦うことだけではない。命を救うこと。それこそが、彼らが目指す頂点の本質だった。

「個性が個性を呼ぶ社会だ。今回は私服、コスチュームどちらでも構わないが、遠出になる。バスに乗るからな。準備を始めろ、合理的にな」

 

生徒たちがそれぞれ更衣室へと向かう中、門矢は席を立ち、黒いライダースジャケットの裾を軽く直した。ポケットの奥には、クウガ、アギト、龍騎――三つの歴史が静かに収まっている。

「(レスキュー、か。……だが、あの時計の秒針が、さっきから酷く不穏なテンポで跳ねてやがる。ただの訓練で終わるわけがなさそうだ)」

 門矢の網膜の裏側で、文字盤のない時計たちが、まるで何かの警告のように小さく、激しく振動していた。

 


 

雄英高校の敷地を出発したバスの中は、賑やかな修学旅行のようだった。

「私思った事をなんでも言っちゃうの緑谷ちゃん、梅雨ちゃんと呼んで」

 出久の隣に座った蛙吹梅雨が、大きな瞳で彼を見つめた。

「緑谷ちゃん、あなたの個性……オールマイトに似てるわね」

「ふぇっ!? あ、あ、あ、あの、そ、そうかな!? ボクのはその、ええと、身体強化系だから、似てるように見えるだけで……!」

 出久は文字通り、滝のような汗を流しながら両手を激しく振って否定した。ワン・フォー・オールの秘密がバレるわけにはいかないという、オタク特有の過剰な防衛本能が働いている。

 

そんな出久の様子を、少し離れた席から爆豪勝己が忌々しげに睨みつけていた。だが、爆豪の視線は、すぐにその隣で腕を組んで目を閉じている門矢へと移った。

「おい、常盤」

「……なんだよ、爆弾魔。バスの中くらい静かにしてろ。酔うだろ」

 門矢は目を開けず、低い声で返した。

 

「てめえのあの『鏡に入る』クソ個性……あれから色々調べたが、あんな前例、過去のヒーローの記録にゃどこにも載ってねえ。掴みどころのねえ変身といい、てめえ、本当は何を隠し持ってやがる」

 爆豪の言葉に、バスの中が一瞬静まり返った。クラスメイトたちも、戦闘訓練での門矢の「完全に煙のように姿を消した動き」には強い疑問と関心を抱いていたからだ。

 

「隠してなどいないさ。何度も言っているだろう」

 門矢はゆっくりと目を明けると、窓の外を流れる景色を眺めた。

「俺は、ただ通りすがっているだけだ。お前たちの『個性』という狭い鳥籠の枠に、俺の歴史を当てはめるなと言っている」

「あァ!? またそれかよ、てめえ……! ぶっ殺すぞ!」

 爆豪がシートを蹴り上げんばかりに身を乗り出すが、すかさず上鳴電気や切島が「まあまあ、爆豪落ち着けって!」「常盤の言葉は相変わらず中二病っぽくてカッケーけどな!」となだめに入った。

 

「うちのクラスはまだ日が浅いのに、もう糞泥の煮凝りみたいな性格だと知知されてる爆豪くんの歩み寄り、すごいね」

「何だてめえ髪型変形させてブッ殺すぞコラァ!!」

 そんな賑やかな喧嘩を、相澤はフロントシートからミラー越しに一瞥し、「……騒ぐな。もう着くぞ」と一言で制した。

 


 

バスが到着したのは、山の斜面に建造された、想像を絶する広さの巨大ドーム――総合難破災害演習場、通称『USJ(ウソの災害や事故ルーム)』だった。

「水難、土砂、火災、暴風……! あらゆる事故や災害を想定して、私が私設した演習場です! その名も、USJ!!」

 出迎えてくれたのは、宇宙服のようなモコモコとしたコスチュームに身を包んだ、スペースヒーロー・13号だった。その姿を見た出久は「わあぁぁ! 13号だ! レスキューの現場で多大な功績を上げている、ボクの大好きな……!」と、いつものオタク知識を早口で全開にさせていた。

 

13号は生徒たちを前に、その穏やかな声で、しかし極めて重要な話を始めた。

「皆さんの個性は、非常に強力で、素晴らしいものです。しかし、一歩間違えれば、簡単に人を殺めてしまう『凶器』にもなり得る。それを自覚してください。この授業は、皆さんの個性を『人を救うため』にどう使うかを学ぶ、ターニングポイントとなります」

 

その真摯な言葉に、出久をはじめとする生徒たちは表情を引き締めた。

 だが、その講話の最中、門矢の耳に、明確な『歪みの音』が届いた。

 

 ――チク、タク、チク、タク……

 

「13号、オールマイトは? ここで待ち合わせる筈だが」

 13号が相澤に近づき、小声で囁いた。

「先輩…それが…… 通勤時に制限ギリギリまで活動してしまったみたいで…… 今は仮眠室で休んでいます」

「不合理の極みだな……。まあ、己の体を案じての事なら仕方ない。始めよう」

 相澤が振り返り、生徒たちに指示を出そうとした、まさにその瞬間だった。

 

ビシィィ、と空間がきしむ音がした。

 ドームの中央、噴水のある広場の空間が、まるでインクを溢ぼしたように「ぐにゃり」と黒く染まり、そこから禍々しい紫色の霧が渦を巻いて広がり始めた。

「……!?」

 相澤の髪が一瞬にして逆立ち、鋭い視線が中央広場へと注がれる。

 

「一歩も動くな……! あれは訓練用のギミックじゃない」

 相澤の低い、威嚇するような声に、生徒たちの動きが凍りついた。

「え……? 何、あれ……」

 出久が目を見開く。黒い霧の渦の中心から、無数の「異形」たちが姿を現していた。衣服を乱し、武器を手にし、プロヒーローへの明確な『敵意』をその目に宿した人間たちの集団。

 そしてその中心、全身に複数の「切り離された人間の手」を纏った、死んだ魚のような目をした痩せ型の男――死柄木弔が、不気味に首を掻きむしりながら歩み出てきた。

 

「13号、生徒を守れ。……本物の敵(ヴィラン)だ」

 相澤がゴーグルを装着し、首の捕縛布を両手で構えた。

 

「う、嘘だろ……? 雄英の結界はどうなってんだよ!」

「先生、侵入センサーは!?」

 クラスメイトたちが混乱に陥る中、死柄木はドームの天井を見上げ、カサカサとした声で呟いた。

「イレイザー・ヘッド、13号……。カリキュラムに拠れば、ここにオールマイトがいるはずなんだけどな。何でいないんだ? ……まあいいや。子供たちをバラバラに殺していけば、あいつ(平和の象徴)も少しは怒って出てくるかな?」

 

その言葉に含まれた、圧倒的な、底なしの『殺意』。出久は足が震え、息をすることすら忘れていた。これがプロの戦う「本物の悪」の世界。

 

「相澤先生! 一人で戦うなんて無茶です! あんな数、個性を消したところで限界が……!」

 出久が叫ぶが、相澤は振り返りもしない。

「ヒーローは、一つしか引き出しを持ってないわけじゃない。……13号、任せたぞ!」

 相澤は地を蹴り、単身で数十人のヴィランが蠢く中央広場へと真っ直ぐに飛び込んでいった。

 

「さあ、皆さん! こちらへ! 急いで避難を!」

 13号が生徒たちを誘導し、ドームのゲートへと走らせる。しかし、彼らの目の前の空間が、突如として巨大な黒い霧によって遮断された。

「はじめまして。私たちはヴィラン連合。不躾ながら、今回、平和の象徴・オールマイトに死んでいただくために、こうして雄英高校の敷地内へと侵入させていただきました」

 霧の中から現れたのは、金属の首輪を嵌めた、バーテンダーのような佇まいのヴィラン――黒霧だった。

 

「私の役割は、皆さんを散り散りに分断し、我が方の同胞たちになぶり殺しにしてもらうことです!」

 黒霧がその個性を広げ、生徒たちを包み込もうとした、その時。

 

「――おいおい、随分と安っぽいゲームのシナリオだな」

 

人だかりの後方から、退屈そうな、しかし酷く冷徹な声が響いた。

 常盤門矢。彼は両手をジャケットのポケットに入れたまま、黒霧の目の前へと、恐れを知らぬ足取りで歩み出していた。

「常盤くん!? ダメだ、下がって!」

 出久が叫ぶが、門矢は足を止めない。

 

「お前たちのやっていることは、ただの『記号の破壊』だ。オールマイトを殺せばシステムが壊れると思っている。……浅はかだな。本当の破壊ってやつは、もっと、世界の根底をひっくり返すものだ」

 門矢の腰の前に、両手を構える。マゼンタ色の融合ドライバーが、重厚な駆動音と共に実体化した。

 

「何ですか、その力は……。あなたのデータは、我が方のリストにはありませんね」

 黒霧が不穏に霧を揺らす。

 

「知らなくて当然さ。俺は――通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」

 

門矢はポケットから、三枚目の『龍騎』のカードを取り出し、流れるような動作でドライバーへと装填した。

 

『KAMEN RIDE―― RYUKI!』

 

*キィィィィン……*という金属音がドーム内に響き渡る。

 マゼンタ色のカードの残像が門矢の肉体を通り抜けた瞬間、赤い龍の甲冑を纏った鏡の戦士――仮面ライダー龍騎が、生徒たちの前にその姿を現した。

「な、何なんだよあいつのあの姿……! 毎回変わってんじゃねえか!」

 爆豪が目を見開く中、龍騎(門矢)は黒霧の本体、その金属の首輪に向けて、右ストレートを叩き込んだ。

 

「無駄です。私の身体はワープゲート――」

 黒霧が霧を展開して龍騎の拳を別の空間へと受け流そうとした、その瞬間だった。

 

――チク、タク、チク、タク……

 

世界から完全に音が消え去った。

 広がろうとしていた黒霧の紫の霧は空中で完全に固定され、13号の動く指先も、出久の怯えた表情も、すべてが灰色の静止画となった。

「……やれやれ。相変わらず、タイムジャッカーのタイミングの良さには頭が下がるな」

 龍騎は変身を解除し、元の門矢の姿に戻ると、誰も動かない静寂の空間の中で振り返った。

 

「見つかっちゃった。今回の舞台は、随分と派手で面白そうだね、門矢」

 ドームの階段の上から、青い異国風のコートを羽織った少年――タイムジャッカーのウールが、楽しそうに笑いながら歩いてきた。彼の背後には、死柄木たちが連れてきた、脳が剥き出しになった巨躯の怪物――『脳無』が一匹、時間の静止を免れた状態で、不気味に佇んでいた。

 

「ウール。お前たち、ヴィラン連合と手を組んだのか」

 門矢は首のカメラを弄りながら、冷ややかに問う。

「手を組んだっていうか、ちょっと利用させてもらってるだけさ。あの『平和の象徴』ってやつ、この世界の正しい歴史の邪魔だからね。だから、この怪物(脳無)に、新しい王の歴史を植え付けてあげたんだ」

 ウールが無邪気に笑いながら、懐から歪んだ赤と銀の時計――『アナザーファイズウォッチ』を取り出した。

 

「さあ、555(ファイズ)の歴史を始めよう」

 ウールがそのボタンを押す。

 

『FAIZ……!』

 

不気味な電子音が響き、ウールはそのウォッチを、脳無の巨大な胸へと突き立てた。

「ギ、ガ、ガガガガガガァァァッ!!」

 ただでさえオールマイトに対抗するために作られた怪物の肉体が、アナザーライダーの闇の力によって、さらに禍々しく肥大化していく。

 皮膚には赤い光を放つフォトンストリーム(流動エネルギーの経路)が血管のように浮かび上がり、頭部はファイズのシールドを模しながらも、サメのような鋭い牙を持つ醜悪な怪人――『アナザーファイズ』へと変貌を遂げた。

 

「オオオオオオオッ!!」

 アナザーファイズ(脳無)の咆哮一発で、周囲に静止していたドームの空気がガラスのように粉々に砕け散る。

「パワーとスピードの塊に、ファイズのエネルギーシステム、か。随分と贅沢な魔造人間を作ったもんだ」

 門矢は一歩も引かず、ポケットから未だ真っ白な四枚目のカードを取り出した。その白紙の表面が、アナザーファイズの放つ「赤い光(フォトン血液)」の熱量に呼応するように、微かに明滅し始めている。

 

「これなら、君のその変身も粉々に砕けるよ。やっておしまい!」

 ウールの合図と共に、アナザーファイズが爆発的な踏み込みで突進してきた。その速度は、肉眼では捉えきれない、まさに『アクセルフォーム』並みの超高速。コンクリートの床が一瞬にして粉砕され、怪人の巨大な拳が門矢の鼻先に迫る。

 

「スピード勝負なら、こっちにも相応の歴史がある」

 門矢は融合ドライバーの前に、その白紙のカードを掲げた。

 カードの表面に、黄色い大きな複眼と、メカニカルな銀の装甲を持つ戦士の姿が定着していく。

仮面ライダーファイズ。

 

「お前たちの作った偽物の歴史、ここで俺が――完全消去(コンプリート)してやる」

 

門矢は新たに目覚めたファイズのカードを、ドライバーへと力強く装填した。

 

『KAMEN RIDE―― FAIZ!』

 

*『Complete……』*という、重厚な機械音声が空間に響き渡る。

 門矢の全身に、黄色いフォトンストリームの光のラインが駆け巡り、次の瞬間、メカニカルな赤い複眼を持つ銀と黒の戦士――仮面ライダーファイズへと変身を完了した。

 

アナザーファイズの拳が、ファイズの胸甲へと激しく叩き込まれた。

 ドガァァァァンッ!!!

 肉体と金属がぶつかり合う、鼓膜を破らんばかりの衝撃音。しかし、ファイズ(門矢)はその衝撃を、わずか一歩後退するだけで完全に殺しきっていた。ファイズの基礎スペックと、ジオウの魔王の強度が融合したその肉体は、脳無の怪力すら正面から受け止める。

 

「ギガッ!? なぜ、潰れない……!」

 アナザーファイズのサメのような口から、驚愕の声が漏れる。

 

「俺の歴史の重さは、そんなチャチな改造手術じゃ測れないんだよ」

 ファイズは右手を無造作に振り下ろし、怪人の腕をパキィンと叩き落とすと、そのまま流れるような動作で腰の『ファイズポインター』を起動し、右脚へと装着した。

ベルトのサイドを叩き、ドライバーのファイズ側のシステムを完全に解放する。

 

『READY……』

 

「ハッ!」

 ファイズは地を蹴り、大きく後方へと跳躍した。アナザーファイズがそれを見上げ、再び超高速の突進を仕掛けようとするが、それよりも早く、ファイズの右脚から放たれた赤い光の円錐――『ポインティングマーカー』が、怪人の肉体を完全にロックオンし、その動きを空間ごと縛り付けた。

 

「ガッ!? 身体が、動かない……!」

「これで終わりだ」

 ファイズ(門矢)は空中で静かに右脚を突き出し、その赤い光の円錐の中心目がけて、急降下の必殺キック――『クリムゾンスマッシュ』を叩き込んだ。

 

――タァァァッ!!!

 

ズドォォォォォォォンッ!!!

 

ドームの中央、時間が静止した世界の中で、一際まばゆい『赤と黄色のΦの紋章』が、アナザーファイズの巨体を完全に貫通するようにして炸裂した。

 キックの直撃を受けた怪人の全身に、フォトン血液の過負荷による黄色い閃光が駆け巡り、内側からその細胞のすべてを灰化させていく。アナザーファイズ(脳無)は狂ったように痙攣を繰り返した後、光の爆発を起こして、元のただのロボットの残骸へと戻り、砂となってサラサラと崩れ去った。

 

あとに残されたのは、粉々に砕け散った紫色の『アナザーファイズウォッチ』の破片だけだった。

 ウールは、階段の上で呆然とそれを見下ろしていたが、すぐにいつもの不敵な笑みを取り戻した。

「へえ……。脳無の怪力すら一撃で上書きしちゃうんだね。やっぱり君は、この世界を壊す悪魔だ。またね、門矢」

 ウールが身を翻すと、彼の身体は時間の波に溶けるようにして、一瞬で消失した。

 

同時に、門矢の手元。白紙だった四枚目のカードには、完全な『仮面ライダーファイズ』の姿が定着し、その隣で、銀と赤の『ファイズライドウォッチ』が静かに鼓動を始めていた。

 

「これで、四つか」

 門矢は静かに変身を解除すると、再びドライバーを消滅させ、元の位置へと戻った。

 次の瞬間、――*チク、タク……*の音が消え、世界に時間が戻る。

 


 

「――なぶり殺しにしてもらうことです!」

 

黒霧の言葉が途切れた瞬間、彼の背後、中央広場の方から、突如として激しい『爆発の余波』のような風圧が吹き抜けた。

「……!? 何事ですか、中央広場で何が……!」

 黒霧が驚愕して振り返る。そこでは、死柄木弔が、自分たちの「切り札」であったはずの脳無の一匹が、影も形もなく消滅している(門矢が数秒前に完全に灰化させた)ことに気づき、狂ったように自分の首を掻きむしっていた。

 

「いない……! いないぞ、脳無が……! どこへ行った!? バグか!? 誰だ、誰が消したんだ!!」

 死柄木の絶開発がドーム内に響き渡る。

 

「黒霧ッ! 生徒たちを散らせ! 予定変更だ、バグの犯人を探し出せッ!!」

 死柄木の命令を受け、黒霧はハッと我に返ると、その個性を一気に解放した。

「しまっ――!」

 13号が制止しようとするが、黒霧の巨大な霧が、出久や爆豪、そして門矢たちの肉体を一瞬にして飲み込み、ドーム内の各エリアへと強制的に転送していった。

 

――水難エリア。

 激しい水しぶきと共に、出久の身体が巨大な人工湖へと叩き落とされた。

「ぷはっ……!? げほっ、ここは……!」

 出久が必死に水面に顔を出すと、周囲の水の中から、無数の水難系ヴィランたちが、ギラギラとした目を光らせて近づいてくるのが見えた。

「へへ、ガキが落ちてきたぞ!」

「一思いに沈めてやれ!」

 

「緑谷ちゃん、危ないわ!」

 水中で抜群の機動力を誇る蛙吹梅雨が、その長い舌で出久の身体を絡め取り、近くに浮いていた巨大な難破船のデッキへと引き揚げた。そこには、既に転送されていた峰田実が、恐怖で涙と鼻水を流しながらガタガタと震えていた。

「嫌だぁぁ! 死にたくないぃぃ! なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだよぅ!」

 

「落ち着いて、峰田くん! 敵はボクたちの個性を把握してないんだ。だから、この状況を打破する作戦が必ずあるはず……!」

 出久が必死にノートの知識を総動員して思考を巡らせる。しかし、難破船の周囲を囲むヴィランの数は数十人。圧倒的な絶望が、彼らの小さな肩にのしかかる。

 

その時、難破船のコンクリートの床に、一人の男が静かに着地した。

 黒いライダースジャケットのポケットに両手を突っ込んだまま、髪を軽くかき上げる男――常盤門矢だった。

 

「常盤くん!? 君もこのエリアだったんだね!」

 出久が救いを見出したような声を上げる。

 

「やれやれ。水難エリア、か。……生憎だけど、俺は泳ぎは専門外でね」

 門矢は難破船の手すりに寄りかかり、首のカメラを無造作に弄った。

「おい、緑谷。お前、さっきから随分とヒーローらしい顔をしてるじゃないか。目の前の敵に怯えながら、それでも頭を回してる」

 

「え……? あ、あの、ボクはただ、みんなで助かりたいから……!」

 出久が吃る中、水中のヴィランたちが、難破船の船体を激しく揺らし始めた。

「おいおい、上のガキども、のんびり喋ってる暇があるなら、早く降りてこいよ!」

 

「……うるさいな。通りすがりの人間の邪魔をするなと言っているだろう」

 門矢は手元に集まった四枚のカード――クウガ、アギト、龍騎、ファイズを、トランプのように扇状に広げて見せた。

「緑谷。お前がその『人を救う力』を本気で見せるなら、俺がその舞台の悪党どもを、すべて片付けてやる」

 

門矢は融合ドライバーを腰に据え、手に入れたばかりの『ファイズ』のカードをスロットへと滑り込ませた。

 

『KAMEN RIDE―― FAIZ!』

 

メカニカルな銀の戦士――仮面ライダーファイズへと変身した門矢は、そのまま難破船の手すりを越えて、ヴィランたちが蠢く人工湖の『水面』へと、迷いなく飛び降りた。

 

「常盤くん!? 水の中じゃ、その姿は動きが……!」

 出久が悲鳴を上げるが、ファイズ(門矢)は着地する直前、腰のドライバーのスロットからファイズのカードを抜き、逆方向に差し替えた。

ジオウの魔王の歴史が、ファイズのエネルギーを臨界点まで引き上げる。

 

『FINISH TIME―― FAIZ!』

 

ファイズは右脚のファイズポインターを水面へと向け、最大のエネルギーを照射した。

 次の瞬間、人工湖の水面全体に、巨大な『黄色のΦの紋章』が光のグリッドとなって張り巡らされ、水の中にいた数十人のヴィランたちの身体を、空間ごと完全に硬硬直(フリーズ)させた。

 

「な、何だこれは!? 身体が動かん!」

「水が……水が痺れてやがる……!」

 

「――クリムゾンスマッシュ(全体形態)」

 

ファイズが水面に軽く着地した瞬間、そのΦの紋章から放たれた強烈なフォトン流動の衝撃波が、水難エリアのヴィラン数十人を、一瞬にしてまとめて吹き飛ばした。激しい水柱が何本も立ち上がり、ヴィランたちは意識を失って水面へとプカプカと浮かび上がっていく。

 

難破船の上で、出久、梅雨、峰田の3人は、完全に言葉を失ってその光景を眺めていた。

「す、凄すぎるわ……。水難系のヴィランを一瞬で全滅させるなんて……」

 梅雨が呟き、峰田は「神様だ……あの人、神様だぁぁ!」と涙を流して拝んでいた。

 

ファイズ(門矢)は静に変身を解除すると、元の常盤門矢の姿に戻り、首のカメラでその全滅したヴィランたちの光景をカシャリと撮影した。

吐き出されたチェキの写真。そこには、水面に広がる四つの時計の歯車が、美しく、しかし不気味に噛み合っている像が写し出されていた。

 

「さて、緑谷。水難エリアは片付いた。……次は、中央広場のあの『首を掻きむしってる男』のところへ行くぞ。あいつの顔、どうにも写真写りが悪そうだからな」

 

常盤門矢は、驚愕する出久の先頭を歩くようにして、ドームの中心地、本物の戦場へと歩みを進めていった。彼の通る道の先には、歪んだヴィランの悪意も、タイムジャッカーの陰謀も、すべてを破壊し再構築する、最高最善の魔王の未来が確かに拓かれようとしていた。




「中央広場に戻ったら、相澤先生がボロボロになって倒れてた。死柄木とかいう男、自分の思い通りにならないとすぐキレるタチらしい。だけど、そこにようやく現れたぜ、この世界の『平和の象徴』が。……オールマイト、お前のその命がけの正義、俺のカメラにどう映るか、鏡の向こうから見せてみろ」

門矢:
「次回、第5話『平和の象徴と、魔王の眼差し』。……歴史の幕引きは、俺が決める」
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