仮面ライダージオウ×ディケイド in 僕のヒーローアカデミア 作:生成AIに書かせています
窓の外から差し込む、あまりにも平穏な午後の陽光が、かえって不気味だった。
警視庁公安部の一室。重苦しい沈黙を破ったのは、何十枚もの書類を机に叩きつけた塚内直正刑事の、酷く疲弊した声だった。
「――結論から言おう、オールマイト。いや、根津校長。あの少年、常盤門矢(ときわ かどや)に関する情報は、この世界のあらゆるデータベースに『存在しない』。偽造戸籍の線も洗ったが、そもそも彼の指紋、DNA、網膜パターンに至るまで、過去に一度も登録された形跡がないんだ。まるで、数週間前にこの世界に突如として『生えてきた』かのようにね」
その言葉を聞きながら、ソファーに深く腰掛けた男――痩せこけた本来の姿(トゥルーフォーム)の八木俊典は、痛々しく包帯が巻かれた自身の脇腹をそっと押さえた。彼の脳裏には、USJの地獄のような惨状の中で、時間を操るヴィランの怪異を冷酷に踏みつぶし、青い稲妻となって戦場を支配したあの「銀と青の戦士」の姿が焼き付いて離れない。
「個性の複合……というレベルではないんだよ、塚内くん。彼は私の前で、完全に『異なる二つの肉体と能力』を使い分けた。一つは赤い光の刻印を操る鋼の戦士。もう一つは、空間そのものを切り裂く稲妻の戦士。そして何より、あの場にいた時間を歪める謎の少年が、彼を『世界の破壊者』と呼んでいた」
「世界の破壊者、ねえ……。随分と大層な二つ名じゃないか。だが、実際のところ彼がいなければ相澤くんも1年の生徒たちも全滅していた。それは紛れもない事実だ」
ソファーの背もたれからひょっこりと顔を出したのは、雄英高校の校長である根津だった。その賢しげな瞳には、恐怖よりもむしろ、未知の数式を前にした学者のような、底知れない知的好奇心がギラギラと輝いている。
「彼の行動原理は『ヒーロー』のそれではありません。かと言って『ヴィラン』の悪意とも違う。ただそこにある歴史を冷徹に観察し、邪魔なノイズを排除しているような……そう、まるで『通りすがり』の旅人のような不遜さです。オールマイト、彼が雄英にとどまる限り、私たちは彼という爆弾を抱え続けなければならない」
「……だが、彼を排除すれば、それこそ何が起こるか分からない。彼は言っていたんだ。『世界を壊すのも、再生するのも俺の役割だ』と。あの眼差しは、ただのハッタリをかます少年のそれではない。すべてを見通した『魔王』の眼差しだった」
八木俊典は拳を強く握りしめた。ワン・フォー・オールという絶対的な光を持つ彼ですら、常盤門矢という暗黒の深淵の前では、己の無力さを思い知らされるようだった。
同じ頃、雄英高校1年A組の教室は、別の意味での熱気に包まれていた。
「――静粛に! ホームルームが始まる時間だ! 速やかに席に着き、背筋を伸ばしたまえッ!」
学級委員長である飯田天哉が、ロボットのようなカクカクとした動作で両腕を激しく振り回し、クラスメイトたちに大声で指示を出していた。だが、その声はいつもよりどこか上ずっており、必死に「完璧な委員長」を演じようとする焦燥感が透けて見えていた。
「飯田くん、そんなに気張らなくても、みんなもう席に着いてるよ……」
緑谷出久が苦笑しながら声をかけるが、飯田の眼鏡の奥の瞳は、どこか遠くを見つめたままだった。
飯田は焦っていた。USJの襲撃事件の際、彼はただプロヒーローを呼びに走ることしかできなかった。最前線で両腕を破壊されながら戦った相澤先生。命を賭して生徒を守ったオールマイト。そして――圧倒的な暴力でヴィランの首魁を文字通り粉砕した、常盤門矢。
飯田の視線が、教室の最後列、窓際の席へと向かう。
そこには、いつもと変わらず、授業など端から興味がないと言わんばかりに、首から下げたマゼンタ色の二眼レフカメラのレンズを磨いている門矢の姿があった。
彼の周りだけ、世界の空気の密度が違うかのような錯覚を覚える。あの圧倒的な「強さ」と「格」。それに引き換え、自分は、高名なヒーロー一家である飯田家の人間でありながら、クラスの危機に何もできなかった。インゲニウムという偉大な兄の背中が、今の飯田にはあまりにも遠く、霞んで見えていた。
「ガララッ」
不快な音を立てて、教室の扉が開いた。
現れたのは、全身を白い包帯でミイラ男のようにぐるぐる巻きにした相澤消太だった。
「せ、先生!? もう動いて大丈夫なんですか! 怪我は……?」
上鳴電気の叫び声を、相澤は包帯の隙間から覗く鋭い眼光一発で黙らせた。
「俺の安否はどうでもいい。それより、戦いはまだ終わっちゃいない。お前たちには、これからさらに大きな門を潜ってもらう」
クラス全体に緊張が走る。またヴィランの襲撃か、それとも新たな訓練か。出久が身を硬くする中、相澤は淡々とその言葉を告げた。
「――雄英体育祭が迫っている」
「超、学校的行事
キタアアアア!!!」
切島鋭児郎や芦戸三奈が歓声を上げる。かつてのオリンピックに代わり、今や日本中、いや世界中が熱狂するビッグイベント。プロヒーローたちへの最大のプレゼンの場だ。
「ヴィランの襲撃直後に体育祭なんて、大丈夫なんですか……?」
出久の真っ当な疑問に、相澤は小さく首を振った。
「あえて開催することで、雄英の危機管理体制が盤石であることを世間に示す。これが雄英だ。当然、プロのスカウトも総出で見に来る。お前たちにとっても、将来がかかった大舞台だ。……心してかかれ。以上だ」
ホームルームが終わり、教室内は一気に体育祭の話題で持ちきりになった。爆豪勝己は「全員ブッ殺して俺が1位だ」といつも通りの狂犬ぶりを発揮し、轟焦凍はただ静かに己の左手を見つめて闘志を燃やしている。
そんな中、飯田天哉は一人、無言で荷物をまとめると、逃げるようにして教室を後にした。
「飯田くん……?」
出久がその背中を心配そうに見つめる。その出久の横を、門矢がカメラをポケットに仕舞いながら、あくびを噛み殺して通り過ぎていった。
「おい、緑谷」
「は、はい! 常盤くん!」
出久は思わず直立不動になる。
「あいつの『写真』、ピントが完全にボケてやがる。生真面目すぎるレンズは、光を急に取り込むと簡単に焼き切れるぞ」
門矢はそれだけ言い残すと、やはり自分のペースで歩き去った。出久には、その言葉の意味がすぐには理解できなかった。
日の傾きかけた雄英高校の裏手、演習場の片隅。
飯田天哉は、自身の脚にあるエンジンから激しい排気音を響かせ、猛烈な速度でダッシュを繰り返していた。
「遅い……! まだ遅い! これでは、常盤くんの足元にも及ばない……! 兄さんの名に恥じぬヒーローになるなど、夢のまた夢だ……!」
往復ダッシュの衝撃でコンクリートが削れ、靴底が摩擦熱で焦げた臭いを放つ。だが、いくら身体を痛めつけても、胸の奥にある「無力感」という泥のような感情は消えてくれなかった。
「ふふ……随分と熱心ね。でも、そんなに自分を追い詰めても、人間の『個性』なんて限界が決まっているわよ?」
突如として響いた、鈴を転がすような、しかしゾッとするほど冷ややかな女性の声。
飯田が急ブレーキをかけ、メガネの位置を直しながら振り返ると、そこには、時代錯誤なほど美しい、しかしどこか人間離れした雰囲気を纏った少女が立っていた。
白い衣服に身を包み、冷徹な笑みを浮かべる少女――タイムジャッカーのオーラ。
「誰だ君は!? ここは関係者以外立ち入り禁止の演習場だ! 速やかに退去したまえ!」
飯田がいつもの調子で警告する。だが、オーラは全く動じることなく、その細い指先で、紫色の怪しい光を放つ時計型のデバイス――ウォッチを弄んでいた。
「私はオーラ。
ねえ、飯田天哉。あなた、今の自分が情けなくて仕方がないんでしょう? 偉大な兄を超えたい、完璧な規律の体現者でありたい……。でも、あなたのその小さなエンジンじゃ、世界を壊すあの『悪魔』には絶対に追いつけない」
「悪魔……? 何のことを言っている! 僕はヒーローとして、己の未熟さを鍛錬で補っているだけだ!」
「強がりはいいわ。あなたのその『歪み』、私たちが新しい王を仕立て上げるのに、最高のスパイスになりそう」
オーラが妖しく微笑み、手の中のウォッチのスイッチを押した。
『AGITO!』
禍々しい電子音が響くと同時に、飯田の周囲の空間がガチリと完全に「停止」した。飛び散った砂埃も、飯田の脚から上がる煙も、世界のすべてが静止する。動けるのは、オーラと、そして恐怖に目を見開いたまま固まっている飯田の意識だけだった。
「あなたに、人間の枠を超えた『真の王』の歴史をあげる」
オーラが飯田の胸元へと歩み寄り、その冷たい指先で、怪しく輝くアナザーウォッチを彼の心臓へと突き刺した。
「が、あ、ああああああああああああああッ!!!!」
静止した世界の中で、飯田の絶叫だけが響き渡った。
彼の肉体が、急速に変貌していく。脚のエンジンが異常な膨張を見せ、衣服を突き破って、生物の筋肉と金属が融合したようなおぞましい器官へと変化していく。
頭部からは、アギトのそれによく似た、しかし禍々しく歪んだ黄金の角が二本、天に向かって生え出た。全身を覆うのは、漆黒の皮膚と、胸部に刻まれた歪んだ紋章。
――アナザーアギト。
規律の塊であった飯田天哉の肉体に、生物の進化の極致たる「目覚めし力」の負の歴史が強制的に注ぎ込まれた瞬間だった。
「あ、ガ……ア、アアア……ッ!」
時間が再び動き出した瞬間、アナザーアギトと化した飯田は、理性を完全に失った咆哮を上げ、周囲のコンクリートをその凄まじい脚力で爆破するようにして跳躍した。
「ふふ、いい感じ。さあ、その力で、世界の歪みをさらに広げてちょうだい」
オーラが満足げに微笑み、空間の裂け目へと消えていく。
暴走するアナザーアギトは、演習場の防壁を紙細工のように突き破り、雄英の敷地内へと突き進んだ。その圧倒的な破壊音に気づき、最初に現場へと駆けつけたのは、居残りで自主トレをしていた出久と爆豪だった。
「な、何だあいつは……!? 新しいヴィラン……!? いや、あの脚の形状は、まさか……飯田くん!?」
出久が目を見開く。怪物のような姿に変貌していても、その動きの端々に、飯田天哉の「直線の走法」の面影が残っていた。
「ハンッ! 何が委員長だ、すっかり化け物になっちまいやがって! だったら俺が容赦なく爆破して引導を渡してやるよ!」
爆豪が両手から激しい爆煙を上げ、アナザーアギト目がけて一直線に飛び出した。
「死ねやぁ! 爆速ターボ!!」
至近距離での大爆発がアナザーアギトの胸元で炸裂する。しかし、アナザーアギトはその爆風をものともせず、黒い肉体から放たれる圧倒的な生物的オーラだけで爆音を掻き消した。
「グラァァァッ!」
「なっ……ガハッ!?」
アナザーアギトの、目にも留まらぬ速さの裏拳が爆豪の顔面に直撃する。爆豪の巨体がコンクリートの地面を何十メートルも転がり、激しく吐血した。
「かっちゃん! ――ワン・フォー・オール・フルカウル・5%!!」
出久が全身に赤緑の電光を走らせ、アナザーアギトの背後からその腕を掴んで組み伏せようとした。
だが、アナザーアギトの肉体は、触れた瞬間にわかるほど「硬く、そして異常に熱い」。
個性の衝撃をそのまま肉体の進化のエネルギーに変換しているかのように、出久のパワーを強引に撥ね退けた。
「だめだ……ボクの力じゃ、抑え込めない……! 飯田くん、目を覚まして、飯田くん!」
出久の悲痛な叫びも、理性を失った魔獣には届かない。アナザーアギトの口元から、漆黒のエネルギー弾が練り上げられ、出久の至近距離へと放たれようとした、その時。
――コツン、コツン、と。
周囲の爆音や咆哮を完全に無視するような、静かな靴音が近づいてきた。
「だから言ったろ。生真面目すぎるレンズは、光を取り込みすぎて簡単に焼き切れるってな」
夕闇の向こうから歩いてきたのは、常盤門矢だった。
彼はジャケットのポケットに片手を突っ込んだまま、もう片方の手で、マゼンタ色の融合ドライバーを腰の前へと無造作に装着した。
*ガシャコン!*という重厚な金属音が、暴走する演習場に響き渡る。
「常盤、くん……! 飯田くんが、飯田くんが変な時計を埋め込まれて、こんな姿に……!」
出久が地面に這いつくばりながら叫ぶ。
「分かっている。タイムジャッカーのオーラか、あの女も趣味が悪いな。よりによって、一番『目覚め』から遠い男をアギトにしやがった」
門矢の視線が、凶暴な眼光でこちらを睨みつけるアナザーアギトへと向けられる。
「飯田天哉。お前は兄を超えたい、完璧でありたいと願った。
だがな、お前が今溺れているその力は、完璧とは程遠い。人間のために、人間のままで、果てしない闇の力と戦い続けた男の歴史をお前は汚している」
門矢の右指の間に、一枚のカードが挟まれる。
そこには、黄金の角を掲げ、大いなる大地の力を宿した、超越なる光の戦士の姿が描かれていた。
仮面ライダーアギト。
「お前に、本物の『目覚め』ってやつを教えてやる」
門矢はカードをドライバーへと鋭く装填し、その両端を力強く押し込んだ。
『KAMEN RIDE―― AGITO!』
――ザシャァァァァァンッ!!!
門矢の全身が、まばゆいばかりの黄金の光に包まれた。
光が収まった後に現れたのは、漆黒のボディに純白の装甲、そして胸部には太陽の輝きを模したゴールドの紋章を刻んだ戦士――仮面ライダーアギト(グランドフォーム)の姿だった。その佇まいは、荒々しく暴れるアナザーアギトとは対照的に、静謐で、どこか神聖ですらあった。
「また、変わった……! 今度は、神様みたいな、眩しい光の力……!」
出久がその光に目を細めながら、門矢の姿を網膜に焼き付ける。
「グルルルル……!」
アナザーアギト(飯田)は、目の前の「本物」の光に対し、本能的な嫌悪感と恐怖を覚えたのか、地を這うような姿勢から爆発的な速度で突進してきた。その脚力は先ほどの倍以上に跳ね上がっており、通過したコンクリートが次々と爆散していく。
「フッ」
だが、アギト(門矢)は完全にその突進を見切っていた。彼は一歩も動くことなく、独特の中国拳法を思わせる流麗な構えを取り、アナザーアギトの放った猛烈なストレートを、左手の平で受け流した。
――パシィィン!
空間が微かに振動する。どれほどの破壊力を持った一撃だろうと、アギトのオルタフォース(無限の進化の力)の前では、ただの空振りに過ぎない。
「力に振り回されているうちは、ただの出来損ないだ」
アギト(門矢)の鋭いローキックが、アナザーアギトの膝関節へと正確に叩き込まれた。
――ゴキィィン!
「ガ、ハァッ!?」
アナザーアギトの巨体が強引に崩れ落ちる。アギト(門矢)はそのまま間髪入れずに、重厚な正拳突きをアナザーの胸元へと叩き込んだ。一発、二発、三発。打撃が放たれるたびに、黄金の光の波動がアナザーアギトの肉体を突き抜け、背後の防壁をドカンと粉砕していく。
「クソが……何なんだよあの強さは……! 個性じゃねえ、あれはまるで、戦いそのものの『概念』が変わってやがる……!」
満身創痍の爆豪が、地面に血を吐きながらその圧倒的な格の違いに歯噛みしていた。
「グラァァァァッ! 私は、私はインゲニウムの弟だァァァッ!!」
アナザーアギトの口から、飯田天哉の、悲痛な叫びが混じった声が漏れた。その肉体が、焦燥感と劣等感のエネルギーによってさらに膨れ上がり、全身から黒い電光を放ちながら最後の特攻を仕掛けてくる。
「兄の名前を、自分の弱さの言い訳にするな」
アギト(門矢)の声は、どこまでも冷徹だった。しかし、その足元では、大いなる歴史の歯車が回り始めていた。
アギト(門矢)が静かに腰を落とし、両手を大きく広げる。
その瞬間、彼の頭部の黄金の角――クロスホーンが、ガチリと音を立てて『6本』へと展開した。同時に、彼の足元のコンクリートに、巨大なアギトの光の紋章(シャイニングシグナル)が浮かび上がり、目も眩むほどのゴールドのエネルギーがその右脚へと吸い込まれていく。
「消えろ、偽物の歴史」
アギト(門矢)が地を蹴り、高く跳躍した。
夕闇の空を背景に、黄金の紋章を足元に引き連れた戦士が、一直線に降下してくる。
――ライダーキック。
――ズドガァァァァァァァァンッ!!!!!
演習場全体が、まるで昼間へと戻ったかのような、圧倒的な黄金の爆炎によって埋め尽くされた。
アギト(門矢)の放った必殺のキックが、アナザーアギトの胸の紋章へと完璧に直撃した。
凄まじい光のエネルギーがアナザーの肉体を浄化するように駆け巡り、その背中から、紫色の怪しい光を放つアナザーウォッチが弾き飛ばされ、空中できれいに粉砕された。
爆炎が収まり、黄金の光の粒子が静かに舞い散る中。
そこには、元の雄英高校の制服姿に戻り、コンクリートの上に仰向けになって気を失っている飯田天哉の姿があった。
彼の表情からは、先ほどまでの醜い焦燥感は消え去り、ただ静かな呼吸だけが残されていた。
ザーーーという音と共に光の装甲が消滅し、元の黒いライダースジャケット姿に戻った門矢は、落ちていた飯田のメガネを拾い上げると、彼の胸元へと無造作に放り投げた。
「常盤、くん……」
出久が恐る恐る近づいてくる。門矢は首から下げた二眼レフカメラを構え、気を失った飯田と、その横で呆然としている出久たちの姿を、カシャリと一枚の「記録」に収めた。
「安心しろ、死んじゃいない。……ただ、自分の器の小ささに気づいただけだ」
門矢はカメラをポケットに仕舞うと、振り返ることもせず、薄暗くなった演習場の出口へと向かって歩き出した。
「おい、緑谷」
「な、なに?!」
「体育祭とやら、少しは俺を楽しませてみせろ。お前たちのその『ヒーロー』っていう安っぽい歴史が、どれほどのものか……俺がこの目で、すべて壊して確かめてやる」
その背中を見つめながら、出久はただ、自分の右手の拳を強く握り締めることしかできなかった。
常盤門矢。彼はやはり、この世界を救う味方などではない。自分たちの日常を、歴史を、根底から揺るがす最悪の「魔王」だ。
しかし、その圧倒的な背中に、出久は恐怖と同時に、言い知れぬ「歴史の重み」を感じずにはいられなかった。
雄英体育祭という、ヒーローの卵たちが命を燃やす大舞台が幕を開ける。だがそれは、常盤門矢という「世界の破壊者」が、雄英高校のすべての歴史を文字通り『破壊』し尽くす、壮大なゲームの始まりに過ぎなかったのである。
「ついに始まったな、雄英体育祭。有象無象のクラスの連中が、トップを目指して泥臭く這いずり回っている。障害物競走だか何だか知らないが、地雷原を個性で飛び越えるのがそんなに面白いか?
だが、そのお祭り騒ぎの裏で、今度はスウォルツって奴が不穏な動きを見せてる。どうやら、あの炎を操る不器用な親父(エンデヴァー)と、その息子の歪んだ歴史がお目当てらしいな。
……おい、轟焦凍。お前のその『半分だけの力』じゃ、この男の炎の前には、ただの火遊びに過ぎないぞ」
門矢:
「次回、第7話『炎の系譜、響き合う魂』。……お前の歴史のピントを、俺が合わせてやる」