ちゃんと軍人教育受けてるジィッドくん   作:ぶーく・ぶくぶく

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星団歴3060年
瓦礫の王都だった


/*/ 星団暦3060年 旧王都ベイジ 王宮中央棟 黒騎士団区画外縁 /*/

 

 

 

 ベイジは、もう「瓦礫の王都」ではなかった。

 

 完全な復興には、まだ遠い。

 

 だが、王宮中央棟は軍政中枢として安定し、旧AP騎士団格納庫は黒騎士団、国家騎士団、銀月騎士団を受け入れる巨大な基地になっていた。

 

 王宮前広場には、本設の石畳が戻った。

 

 王宮前通りには街灯が並び、銀行街も機能し、ベイジ臨時証券取引所は「臨時」の看板を掲げたまま毎日怒号を吐いている。

 

 南区の下水基幹線も、ようやく主要区画まで届き始めていた。

 

 建築土木は相変わらず好景気。

 

 運送業、飲食、小売り、石材、煉瓦、配管、工具、簡易発電機、冷蔵庫修理、ボルサ製民生品販売。

 

 街はまだ傷だらけだが、傷だらけのまま稼いでいた。

 

 ジィッド・マトリア少将は、王宮中央棟の廊下を歩きながら、窓の外を見た。

 

「十五年前は、ここは王宮というより瓦礫だった」

 

 ノエルが帳面を抱えて続く。

 

「十年前は、王宮と旧AP騎士団格納庫だけが先に戻って、市街が追いついていませんでした」

 

 ラドが苦笑する。

 

「五年前は、銀行と証券取引所と冷蔵庫屋が王都の顔みたいになってましたね」

 

「嫌な王都だ」

 

 ジィッドは低く返した。

 

 ニナリスが静かに言う。

 

「機能しています」

 

「機能しているから余計に嫌なんだ」

 

 王宮の一角。

 

 黒騎士団区画。

 

 その扉の前で、ジィッドは足を止めた。

 

 扉は美しく磨かれている。

 

 黒騎士団の紋章。

 

 王宮区画の警備印。

 

 ファティマ調整室への立入制限。

 

 騎士宿舎。

 

 整備記録室。

 

 衣装管理室。

 

 医療連絡室。

 

 そして、黒騎士団所属ファティマたちの生活管理区画。

 

 この区画だけ、空気が違った。

 

 塵がない。

 

 足音が吸われる。

 

 照明の角度まで計算されている。

 

 扉の開閉音も、廊下の花瓶の位置も、壁面の布の折り目も、妙に正確だった。

 

 ラドが小声で言う。

 

「……ここだけ王宮っぽいですね」

 

 ノエルが頷いた。

 

「他の区画は、まだ工事現場の匂いが残っているのに」

 

 ニナリスが説明する。

 

「黒騎士団区画の内部管理は、主にファティマが行っています。清掃、衣装、記録、調整室、騎士の予定、整備連絡、物資残量、食事時刻、睡眠管理。精度は高いです」

 

 ジィッドは嫌そうに言った。

 

「だから怖いんだよ。完璧すぎる」

 

 扉が開いた。

 

 黒騎士団の騎士が出てくる。

 

 その後ろに、黒騎士団所属のファティマが一人、静かに控えていた。

 

 彼女はジィッドたちに深く礼をする。

 

「マトリア少将。黒騎士団区画、現在異常ありません。デコーズ隊長は第三応接室におられます」

 

 ジィッドは少し頷いた。

 

「ご苦労」

 

 ファティマはさらに礼をして、半歩下がった。

 

 その動きは、綺麗だった。

 

 だが、綺麗すぎた。

 

 ジィッドは、その横に立つ黒騎士団の騎士へ視線を向ける。

 

「外部との連絡は、お前が?」

 

「はい。区画外の人間との折衝、物資受領、工事申請、人員調整は騎士側が行っています」

 

「ファティマにやらせないんだな」

 

 黒騎士団の騎士は、当然のように頷いた。

 

「やらせません。ファティマは人間の命令に逆らえません。外部業者、管理官、職人、臨時雇い、人間職員と直接交渉させるのは危険です」

 

 ノエルが表情を引き締めた。

 

「命令権限の悪用ですか」

 

「ええ。意図的でなくとも危険です。“これを少し動かしてくれ”“記録を見せてくれ”“奥へ案内してくれ”。人間側が軽く言っただけでも、ファティマは逆らえない場合がある」

 

 ニナリスが静かに補足した。

 

「そのため、ファティマ管理区画は外部窓口を人間騎士が担当するのが合理的です」

 

 ジィッドは頷いた。

 

「つまり、内部はファティマが完璧に回す。だが、外との境界は騎士が立つ」

 

「はい」

 

「面倒だな」

 

「必要です」

 

「必要で殴るな」

 

 区画内へ入ると、廊下の奥で人間のメイドたちが働いていた。

 

 ただし、数が少ない。

 

 広い王宮区画に対して、明らかに足りない。

 

 彼女たちはファティマの指示を受けながら、衣装管理、客室整備、食器の確認、寝具の運搬をしている。

 

 だが、その動きは緊張していた。

 

 王宮のメイドというより、軍事機密施設の職員だった。

 

 ラドが小声で聞く。

 

「人間のメイド、少ないですね」

 

 黒騎士団の騎士が苦い顔をした。

 

「増やしたいのですが、審査が通りません」

 

「審査?」

 

 ノエルが顔を上げる。

 

 騎士は指を折って説明した。

 

「身元。旧所属。家族関係。借金。外部勢力との接触。薬物歴。賭博歴。過去の雇用先。ファティマへの接触規定理解。命令権限を持たないことの誓約。黒豹照会。憲兵照会。医療検査」

 

 ジィッドは額を押さえた。

 

「そりゃ通らん」

 

「はい。王宮勤め希望者は多いのですが、実際に黒騎士団区画へ入れる者は少ないです」

 

「ファティマと仕事をするからか」

 

「はい。普通の王宮メイドでは駄目です。彼女たちに命令してはいけない。軽口で奥へ入ろうとしてはいけない。勝手に衣装や記録に触れてはいけない。騎士不在時に頼み事をしてはいけない。すべて叩き込む必要があります」

 

 ラドが呻いた。

 

「メイドというより防諜職員ですね」

 

「実質そうです」

 

 ニナリスが淡々と言う。

 

「ファティマ区画の人間職員は、補助労働者であると同時に防諜上のリスク管理対象です」

 

 ジィッドが苦い顔で言う。

 

「人が足りないわけだ」

 

「はい」

 

 廊下の先で、一人の若いメイドが食器台を運ぼうとしていた。

 

 その横にいたファティマが、すっと手を伸ばす。

 

「重量過多です。こちらで持ちます」

 

 メイドが慌てて首を振った。

 

「いえ、規定で、私が持ちます。ファティマ様へ不要な労務依頼をしてはならない、と」

 

「私は問題ありません」

 

「私が問題になります」

 

 ファティマは一瞬だけ沈黙した。

 

 それから静かに手を引いた。

 

「了解しました」

 

 メイドは汗をかきながら食器台を押していく。

 

 ラドが小さく笑った。

 

「大変だな、あれ」

 

 ジィッドは真顔で言った。

 

「大変だが正しい。ああやって境界を覚えてもらわないと、すぐ事故る」

 

 ノエルが頷いた。

 

「王宮の復旧が進むほど、人間の仕事も高度化しますね」

 

「王宮が戻るってのは、ただ壁を直すことじゃないからな」

 

 ジィッドは黒騎士団区画を見渡した。

 

 ファティマが管理する内側。

 

 騎士が守る外側。

 

 その境界で、少数の人間メイドが緊張しながら働いている。

 

 それは華やかな王宮生活ではない。

 

 だが、復興したベイジの現実だった。

 

 

 

/*/ 王宮第三応接室 /*/

 

 

 

 デコーズ・ワイズメルは、椅子に足を組んで座っていた。

 

 相変わらず態度が大きい。

 

 だが、周囲の部屋は整っている。

 

 黒騎士団のファティマたちが管理しているだけあって、王宮内でもこの区画は特に美しい。

 

 机には茶。

 

 菓子。

 

 書類。

 

 整備報告。

 

 来客予定。

 

 すべて、寸分の狂いもなく並んでいる。

 

 デコーズはジィッドを見るなり笑った。

 

「おう、少将。王都らしくなったじゃねえか」

 

「外はまだ下水を掘ってます」

 

「王宮の中は綺麗だぜ」

 

「黒騎士団区画だけです」

 

「それで十分だろ」

 

「十分じゃありません」

 

 ジィッドは椅子に座り、すぐに報告書を出した。

 

「黒騎士団区画の人間職員が足りません」

 

 デコーズは茶を飲みながら言う。

 

「知ってる」

 

「審査が厳しすぎる、という苦情も来ています」

 

「厳しくていい」

 

「そうですね」

 

 ジィッドは即答した。

 

 デコーズが少し目を細める。

 

「珍しく同意が早いな」

 

「ファティマ区画は緩められません。人間に逆らえない存在を、人間だらけの王宮復興現場に置くんです。境界を緩めたら事故る」

 

 デコーズは笑った。

 

「お前、そういうところは分かってるよな」

 

「分かりたくなくても、事故が起これば俺の机に来ます」

 

「結局そこか」

 

「だいたいそこです」

 

 ニナリスが隣で静かに言う。

 

「マスターは境界管理を重視します」

 

「境界を越えた問題ほど面倒だからだ」

 

 デコーズは面白そうにジィッドを見た。

 

「人間メイドを増やすには?」

 

「訓練校を作るしかありません」

 

 ノエルが資料を広げた。

 

「王宮勤務補助員養成課程。期間六ヶ月。身元審査、礼法、清掃、衣装管理、食器、機密保持、ファティマ接触規定、防諜基礎、非常時退避。修了者を王宮各区画へ配属」

 

 デコーズが吹き出した。

 

「メイド学校か」

 

「防諜付きメイド学校です」

 

 ラドが小声で言う。

 

「響きが怖いですね」

 

「怖くていい」

 

 ジィッドは言った。

 

「黒騎士団区画だけじゃない。王宮全体が戻れば、人手はもっと必要になる。だが、昔の王宮使用人をそのまま戻すわけにはいかない。借金持ち、薬物絡み、外部勢力の紐付き、偽装帰還民、全部混ざる」

 

 デコーズがにやりと笑う。

 

「黒豹の仕事だな」

 

「黒豹だけでは足りません。まず制度を作ります」

 

「制度ねえ」

 

「制度にしておかないと、全部個別判断になります。個別判断は腐ります」

 

 デコーズは茶碗を置いた。

 

「王宮でメイド学校。王都らしくなったんだか、軍政臭くなったんだか」

 

「両方です」

 

 ジィッドは嫌そうに答えた。

 

「3060年のベイジは、そういう街です。王宮も戻る。基地も戻る。市場も銀行も証券取引所も戻る。だが、全部に軍政の線が入っている」

 

「綺麗じゃねえな」

 

「綺麗に戻す段階ではありません」

 

「じゃあ、何だ」

 

 ジィッドは少し考えた。

 

「腐らせずに戻す段階です」

 

 デコーズは一瞬黙り、それから笑った。

 

「いいじゃねえか。それ、報告書に書けよ」

 

「使わないでください」

 

「もう覚えた」

 

「最悪だ」

 

 

 

/*/ ベイジ市街 王宮前通り /*/

 

 

 

 王宮前通りは、十年前とは違っていた。

 

 道は舗装され、排水溝が走り、街灯が並ぶ。

 

 だが、整っているのは大通りだけだ。

 

 一本裏へ入れば、まだ工事中の区画がある。

 

 土木足場。

 

 煉瓦。

 

 石材。

 

 配管。

 

 屋根のない家。

 

 建設中の集合住宅。

 

 それでも、人はいる。

 

 王宮勤務を目指す若い女たちが、防諜付き王宮勤務補助員養成課程の募集掲示を見ている。

 

 商人が、黒騎士団向けの高級食材を売り込もうとして憲兵に止められている。

 

 ボルサ製冷蔵庫の店は二号店を出している。

 

 銀行の支店には、建築業者が融資相談に並ぶ。

 

 証券取引所の前では、相変わらず怒号が飛んでいる。

 

 ジィッドは視察の途中で、王宮前通りを歩いた。

 

「十五年前は、ここに道もなかった」

 

 ノエルが答える。

 

「今は店があります」

 

「十年前は仮設市場だった」

 

「今は常設店舗です」

 

「そして、今度は王宮勤務補助員の養成課程だ」

 

 ラドが笑った。

 

「復興都市って、何でも学校になりますね」

 

「職人学校、測量学校、看護補助、工兵補助、銀行実務、今度は王宮勤務補助員。人を育てないと足りん」

 

 ニナリスが言う。

 

「人材不足は復興段階が進んだ証でもあります」

 

「便利な言い方だな」

 

「事実です」

 

「事実で殴るな」

 

 通りの向こうで、子供たちが歩いていた。

 

 走り回るほど幼くもなく、まだ大人でもない。

 

 十五年前、ベイジの地下から救い出され、ノウランやオータの孤児院へ送られた子供たち。

 

 あるいは、王都周辺の難民列から戻ってきた家族に連れられていた子供たち。

 

 彼らは今、復興学校の帰りに、教材袋を抱えて王宮前通りを歩いている。

 

 中には、工房見習いの腕章をつけた少年もいた。

 

 煉瓦工房。

 

 配管組合。

 

 測量補助。

 

 読み書き計算を覚えた後、復興の現場へ回る者たち。

 

 彼らは、ベイジ復興後に生まれた子供ではない。

 

 ジョーカー星団の人間にとって、十年や十五年は短い。

 

 この街で新しく生まれた赤子たちは、まだ母親に抱かれ、あるいは保育所にいる。

 

 路地を走り、工房見習いになるには、まだ早すぎる。

 

 今この道を歩いている子供たちは、戦火と瓦礫と避難の記憶を、幼い身体のどこかに残している世代だった。

 

 ラドが、通りの端を見た。

 

 乳母が、抱いた赤子を揺らしている。

 

 その横で、若い母親がボルサ製の小型保冷箱を買うかどうか、店主と値段交渉していた。

 

「復興後に生まれた子は、まだああいう感じですね」

 

 ノエルが頷く。

 

「ええ。だから、街の本当の次世代が自分の足で走り回るのは、もっと後です」

 

 ジィッドは、教材袋を抱えて歩く元保護児童たちを見た。

 

「じゃあ、今歩いているのは」

 

「復興に間に合ってしまった子供たちです」

 

 ノエルが静かに答えた。

 

「地下から出され、孤児院へ送られ、名前を取り戻して、戻ってきた子たちです」

 

 ジィッドは黙った。

 

 王都が瓦礫だった頃を知らない子供は、まだいない。

 

 少なくとも、歩いて自分の足で通りを渡る年齢の子供には。

 

 この街の子供たちは、まだ復興の記憶を持っている。

 

 瓦礫。

 

 登録所。

 

 孤児院。

 

 測量杭。

 

 配給パン。

 

 そして、王宮前通りに戻った街灯。

 

 それでも、彼らは地下ではなく地上を歩いている。

 

 それだけで、十五年前とは違った。

 

「街だな」

 

 ジィッドは低く言った。

 

 ラドが頷く。

 

「街ですね」

 

「まだ歪だ」

 

 ノエルが言う。

 

「歪でも、街です」

 

 ジィッドは王宮を振り返った。

 

 その一角では、黒騎士団区画の窓が静かに光っている。

 

 ファティマたちが内部を管理し、人間の騎士が外部との境界に立ち、審査を通った少数のメイドが緊張しながら働く。

 

 外では、銀行と市場と工事現場が騒ぐ。

 

 証券取引所が怒鳴る。

 

 冷蔵庫が売れる。

 

 下水が伸びる。

 

 そして、十五年前に救われた子供たちが、今は工房見習いや測量補助として、復興の中に立ち始めている。

 

 これが3060年のベイジだった。

 

 綺麗ではない。

 

 完全でもない。

 

 だが、無法地帯ではない。

 

 そして、もう単なる復旧現場でもない。

 

 王都は、軍政の線を骨にして、少しずつ生き物のように動き始めていた。

 

 

 

/*/ 王宮東翼 少将執務室 夜 /*/

 

 

 

 その夜、ジィッドは報告書を書いていた。

 

 

 

 星団暦3060年、旧王都ベイジ復興状況。

 王宮中央棟、軍政中枢として安定。

 黒騎士団区画、ファティマ管理により内部秩序良好。

 ただし、外部折衝は騎士による代行を継続。

 人間メイドは防諜・身元・接触規定審査が厳格であり、慢性的に不足。

 王宮勤務補助員養成課程の設置を提案。

 市街は主要区画の本設化進行。

 金融、市場、復興資材製造、民生品流通は拡大。

 下水および住宅本設化は継続課題。

 復興後出生児はまだ乳幼児段階。

 現在、通学・見習い段階にある児童は、主に帰還民児童、保護児童、ノウランおよびオータ孤児院からの再配置児童である。

 

 

 

 ジィッドは筆を止めた。

 

「こう書くと、十五年じゃ世代は変わらんな」

 

 ニナリスが横で答える。

 

「はい。十年単位の変化は都市制度や産業には大きく、世代交代には短いです」

 

「街は変わるが、人はまだ変わりきらない」

 

「正確です」

 

「それはそれで厄介だな」

 

 ジィッドは椅子に背を預けた。

 

「瓦礫を見ていた子供が、まだ覚えているうちに街だけが戻る。戻った街を、同じ記憶を持ったまま歩く」

 

 ニナリスは静かに言った。

 

「記憶の継続は、統治上の安定要因にも不安定要因にもなります」

 

「また面倒なことを言う」

 

「事実です」

 

「事実で殴るな」

 

 窓の外では、王宮前通りの街灯が点き始めていた。

 

 乳母に抱かれた赤子。

 

 教材袋を抱えた元保護児童。

 

 工房見習いの少年。

 

 王宮勤務補助員養成課程の掲示を見る若い女。

 

 銀行へ急ぐ職人。

 

 冷蔵庫を荷車に積む商人。

 

 彼らは同じ街にいる。

 

 だが、それぞれの時間は違う。

 

 復興後に生まれた者。

 

 瓦礫から戻った者。

 

 地下から救われた者。

 

 戦前の王都を覚えている者。

 

 ジィッドは報告書に判を押した。

 

「王都ってのは、時間まで混ざるんだな」

 

 ニナリスが記録しようとした。

 

「使うな」

 

「記録しました」

 

「記録はいつも残酷だな」

 

 星団暦3060年。

 

 ベイジは、まだ新しい世代が走り回る街ではない。

 

 けれど、かつて救われた子供たちが、自分の足で歩き、工房や学校や市場へ向かう街にはなっていた。

 

 それは、ジョーカー星団の長い時間の中では小さな変化かもしれない。

 

 だが、ジィッド少将の机に積まれた報告書の厚みだけは、十分に重かった。

 

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