想いの力は星を越えて 〜消えた冒険者と、名もなき少女たちのアクロニア譚〜 作:想いの力のその先へ
結局、あのあと。あたしは飛空庭で一夜を明かすこととなった。
リーンに留まるよう迫られたことと、夜も深かったからだ。
ちなみに、アミス先生には受付嬢が知らせて、詳しいことは翌日。という話になった。
これは翌日、学校が元々休校日だった、というのが大きい。夜に無理矢理話を纏めるよりも、一日使って堅実に纏めた方がいい、という判断からだ。
そして、飛空庭に泊まった訳だが、そこであたしは記憶の主が持っていた記憶との差異をこれでもか、と浴びせられることとなった。
「――つまり、リーン。キミの記憶ではあたしのパートナーは、キミとタイニーちゃんを除いてあと4人いる。ということかな?」
「はいっ、そうですけど……。マスター、覚えてないの?」
不安そうにこちらを覗き込んでくるリーン。
正直、覚えていると言えば覚えているだろうし、覚えていない、といえば覚えていない。
一言で言えば数が合わないんだ。
あたしが持つ記憶では、記憶の主は複数のくじ産パートナーを所持していた。
海賊の物語の記憶を持つロア、九尾の狐の物語の記憶を持つロア。
ブリキの体を持っていたアルマ、殺戮する機械、という物騒な名前ながらその実、天真爛漫だったアルマ。
鞭に自身の魂を宿した少女。片手剣に自身の魂を宿した少女。
そして、地獄の番犬の異名を持った神魔と呼ばれる異界からの来訪者に、自身を愛の守護戦士と名乗る守護魔と呼ばれる女性。
他にも巨大な犬だったり、コウモリだったり、変わり種では大型バイク、なんてものもあった。
……そう。この時点で数えてもらえば分かるが、数が合わない。しかも、リーンとタイニーちゃん。ふたりを除いた上で、さらに二枠埋まっていた。
「マスター、ちゃんとモクジュとクロノスにも会ってよね」
「うん、分かってるよ。先にちょっとアミス先生たちとお話しないとだけど」
そう、通年イベント。タイニー・かんぱにー人材発掘編、そして憑依研究編の報酬だったパートナーたち。モクジュ・アルマ、そして神魔・クロノスのふたりだった。
正直、心配ではある。記憶の主が知っていることを鑑みれば、モクジュは純粋すぎる子だったからこそ、心を傷つけてるかもしれないし、クロノスは表面上は怠惰だったけど、誰よりも身近な人を失うのを恐れていた子だった。
ここが、プレイヤーが消えてからどれ程の月日が経ったのかは分からない。
でも、彼女たちにとって、かつて自身を救った、友誼を結んだ者がこつぜんと消えて傷ついた。それは想像に難くなかった。
「ねぇ、リーン。あたしたち、一部の冒険者が消えてどれくらい経ったの?」
「冒険者たち……? 行方知れずになったのはマスターだけで――」
「……えっ?」
そんなわけがない。エミル・クロニクル・オンラインにおいてサーバーは4つあった。
それぞれのサーバーにそれなり――他のオンラインゲームに比べると少ないだろうけど――のプレイヤーだっていた。
それがまったくいない、ということは考えづらい。と、いうことはもしかして――。
「……この世界は、記憶の主ひとりが冒険者として、世界を救った英雄として活躍した世界?」
そう言う世界があってもおかしくない。なにしろ、ゲーム内のメインストーリーや通年イベントなどはいわゆるお一人様イベントだった。
この世界がその流れを汲んでいるのであれば、早々おかしな話でもない。だとすれば、今度はパートナーの数違い、という矛盾が生まれてくるけど……。
そのとき、あたしのなかにひとつの可能性を閃いた。確証を得るため、リーンへその確認をしてみる。
「ねぇ、リーン。もしかして、残りふたりはフロンとメイリーだったりする?」
「マスター、思い出したのっ!」
あたしの確認に、リーンは抱きつかんばかりの勢いで身を乗り出す。
やっぱり、そうだ。
いままで語ったアルマやロアはサービス終了の年より前の通年イベント。そして、あたしが語ったふたり。
御魂・フロンと守護魔・メイリー。
このふたりはサービス終了当年の通年イベント。星を守る者の登場キャラクターにして、記憶の主が引き当てたり、露店でお迎えしたパートナーキャラクター。
すなわち、おそらくではあるけど。あたしのパートナーは基本、無課金かつ、通年イベントに関わりがあったキャラか、星を守る者に登場した課金パートナー、となるのだろう。
まぁ、それでもタイニーちゃんとリーンがいることがおかしくなるけど。
タイニーちゃんはチュートリアル加入。そして、チュートリアルを行っていたのはアルマたちと絆の樹の面々。すなわち、その通年イベント所属の無課金パートナーと見えなくもない。
そして、リーン。彼女はDEMであり、そのDEMが関わるのはメインストーリー。つまり、メインストーリー所属の無課金パートナーと見ることもできる。
どちらもこじつけではあるけど。
「うん、なんにせよ。色々よく分かったよ。ありがとう、リーン」
「えへへ……」
あたしのお礼の言葉にリーンは嬉しそうにはにかんでいる。本当、機械種族とは思えないほど、表情豊かな子だ。
それはともかく――。
「今日はもう、休もうか」
「うんっ、わかったよ。マスター」
どのみち、明日はまたアミス先生の飛空庭へ行かなくちゃいけない。ちゃんと、体を休めとかないと――。
そんなことを考えていたわけだし、ちゃんと翌日。アミス先生のところへ顔を出したわけだけども……。
「あら、いらっしゃい。ナナシちゃん」
「
「こら、リオちゃん。お口に食べ物を入れたまま喋っちゃいけません」
そこには、テーブルの上狭しと並べられた食べ物をばくばく、ガツガツ、食べている少女。
どのタイミングで目覚めたのか分からないけど、眠り姫だったリオが、想像以上の健啖家であったという姿を見せていた。
そんな目覚めたリオの姿に、まったく似ていないのに、あたしは記憶の主に関わりのあったパートナー。
通年イベント、星を守る者の報酬だった彼女。
――守護神・オリジンの姿を幻視した。
……と、言っても。ただ単に、オリジンがリオと同じように健啖家、かつ食べ物を食べるのが好きだった。というのを思い出したからだけど。