井上順奈にひと目惚れした同級生の話   作:日向陰陽

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斎藤葵さんの部活退部イベントはオリ主の練習熱心さや男性的魅力に惹かれた故に発生しません。

ご了承ください。


第4話 「love me, I love you」

―――中間テストも終わりひと息ついた。

 

順奈「どうだった?中間テスト。」

 

鷲武弥「上々だったんじゃないですかね? 解答欄全部埋めましたし。『あっここ先生の言ってたところだ!』って問題がいくつもありましたし。」

 

順奈「……いつ勉強してるの?」

 

鷲武弥「強いて言うなら授業中です。夢中でノートも取っていますし。」

 

部活に入った。滝先生からコンクールについて説明され、今年のコンクールメンバーはオーディション形式で選出されることとなった。音楽室に衝撃が走った。

 

滝「難しく考えなくても大丈夫ですよ。3年生が1年生より上手ければいいだけのことです。尤も1年生より下手だけど大会には出たいという上級生がいたら話は別ですが。」

 

と皮肉を込めて滝先生は仰った。巷では『粘着イケメン悪魔』『意地悪』などと言われているそうだが俺はそうは思わなかった。生徒ひとりひとりを見てくれている顧問だと思った。早速サックスパートで課題曲と自由曲を聴くことになった。『プロヴァンスの風』と『三日月の舞』だ。どちらもハイテンポで演奏できれば素晴らしいだろうが、そうでなければ無残な結果になるであろう滝先生の本気度が窺えた。譜面をいただいた。サックスパートの吹く場所にマークがついていてオーディション向けのところには二重丸でしっかり印がつけられていた。部長なのか他の先輩方なのか不明だが細やかな配慮に感謝した。早速吹いてみた。当然ながら初めての曲なので吹いては譜面をめくるの繰り返しだ。延々と繰り返す。次第に慣れてきた。『プロヴァンスの風』は大体覚えた。次は『三日月の舞』だ。延々と吹く。気づけば夕方になっていた。居残り練習することにした。延々と『三日月の舞』を吹きまくった。

 

「「鷲武弥くん。」」

 

鷲武弥「あ、順奈さん、麗奈さん。ちょっと待ってて。」

 

急いで帰り支度をした。

 

麗奈「香織先輩から聞いたの。鷲武弥くん鬱病と不眠症だって。」

 

順奈「え⁉ 何でそんな大事なことを黙ってたの⁉」

 

鷲武弥「自分から言い出したら不幸自慢のイタイ奴みたいじゃないですか。だからグラウンド1周して楽器吹く練習した時に『凄まじい脚力と肺活量ですね。全く音が乱れていない。普段から鍛えているのですか?』って聞かれたから『持病というか疾患を抱えておりましてそれを和らげるために昼休みに筋トレして部活が終われば走って帰って頭がフラフラになるまで追い込んでます。』って答えました。『個人的事情に踏み込むようで恐縮ですが疾患とは何ですか?』って聞かれたので『鬱病と不眠症です。薬の副作用で放っておくとどんどん太るのでそれを防ぐためにも運動しまくっています。』って答えました。それで『もしよろしければ相談に乗りますよ。これでも教師の端くれですので。』って流れになりました。知ってるのは滝先生、松本先生、部長、副部長、と中世古先輩ですね。」

 

順奈「……私ってそんなに信用ない⁉」

 

鷲武弥「言うタイミングが見つからなかっただけです。」

 

順奈「それでも言ってほしかったなぁ⁉ 何かショック⁉」

 

麗奈「井上さんの気持ちはわかるよ。私だって鷲武弥くんの口から聞きたかった。」

 

鷲武弥「それは…すみませんでした。でもずっと隠す気持ちはなかったのは信じてほしいです。」

 

麗奈「こうも言ってたらしいわね。『友人を名乗っていた連中もこの一件以来サーっといなくなりました。俺は他人との距離の取り方がわかりません。俺はどうすればいいんですか?』って。そのせい?」

 

順奈「そういえば…入部間もない頃に『俺は人との距離の取り方がわかりません。今こうして順奈さんと会話していますがこれも適正な距離感なのかなって思ってしまいます。』って言ってたよね?」

 

鷲武弥「うーん…正直こういうのって自分から言うものですかね?病気アピールするのもみっともないでしょう?」

 

順奈「それじゃあ鷲武弥くんにとって私たちって何なの⁉ ただの赤の他人⁉」

 

鷲武弥「大切な存在ですよ。刃物振り回してる通り魔が現れたら命懸けて守ります。それくらい大切です。」

 

順奈「私と会う前からそうしてくれたじゃない⁉ 今の話をしてるの⁉」

 

鷲武弥「……正直に言っていいですか?」

 

順奈「いいよ⁉ どんときて⁉」

 

鷲武弥「女性として大好きです。ひと目惚れです。入学式の日からその気持ちは変わっていません。」

 

順奈「な⁉ な⁉ 何で⁉ 高坂さんとか他にいるでしょ⁉」

 

鷲武弥「もう1度言います。大好きです。俺にとっての恋人にしたい女性は順奈さんしかいません。」

 

麗奈「ふふっ、だって。井上さん、感想は?」

 

順奈「いきなりで…何だか…パニックになっちゃって…どうしたらいいのか…。」

 

鷲武弥「大丈夫ですか? おんぶしましょうか?」

 

順奈「い、いや…大丈夫だから…でも気持ちの整理が…。」

 

鷲武弥「俺のことをどう思っているのですか? 赤の他人ですか?」

 

順奈「違う⁉ 大切な恩人で…⁉ 優しくて…⁉ 凄くカッコよくて…⁉ でも私なんかが…⁉」

 

鷲武弥「助けた時は顔も確認しませんでしたが、今は再会できて本当に良かったと思ってますよ。」

 

順奈「それは私もそうよ⁉ 運命って実在するんじゃないかって本気で思った⁉  でも…私なんかでいいの…?」

 

鷲武弥「『なんか』なんて言わないでください。順奈さん『だからこそ』ですよ。失礼します。」

 

そっと抱きしめた。俺の想いが伝わってほしいと祈った。順奈さんの両手が俺を抱きしめる。そして俺を見上げて両手で俺の頭を掴み引き寄せる。その勢いで唇を重ねた。舌を突き出してきた。無意識に俺もそうした。舌を絡めた。順奈さんの荒い息遣い、息が顔に当たる。心地よかった。数分もそうしていただろうか。満足したように彼女が離れる。

 

鷲武弥「ええと…せっかくなので敬語もさん付けも止めるよ。これからよろしく頼む、順奈。」

 

彼女の表情がパッと笑顔になる。

 

順奈「私! 嬉しい! 鷲武弥がやっと心を開いてくれたみたいで‼」

 

鷲武弥「待たせてごめんね。もっと早くに気持ちを伝えておくべきだった。」

 

順奈「本当よ! 突然の告白にはビックリしたけど! 今は心の底から嬉しい!」

 

いつの間にか麗奈さんは姿を消していた。空気を読んでくれたようで彼女には感謝したかった。それから順奈と別れ際まで手を繋いで帰った。そしてもう1度唇を重ねて姿が見えなくなるまで見送った。その勢いのまま走って帰った。着替えて運動しまくって後始末をして薬を飲んで布団に入った。順奈の美しい顔を思い浮かべた。すぐに眠りについた…と思う。

 

翌日、朝練に励んだ。課題曲と自由曲を延々と吹きまくった。その内譜面を暗記して通しで吹けるようになった。それからはノリに乗って今まで以上の勢いで吹きまくった。職員室へ鍵を返しに向かった。

 

滝「もう通しで吹けるようになったんですね。相変わらずいい音と凄い学習能力ですね。オーディション頑張ってください。」

 

鷲武弥「恐縮です。コンクールメンバーに選ばれて、そしていつか滝先生の求めるクオリティに上達したいです。失礼します。」

 

教室へ向かった。

 

鷲武弥「おはよう順奈。」

 

順奈「お、おはよう鷲武弥。いい音出してたね。」

 

鷲武弥「滝先生にもそう言われたよ。オーディション頑張ろうね。」

 

順奈「それは同感。1年生だからって遠慮なんかしないわ。」

 

それから1週間以上もの間、合奏練習が続いた。ある日滝先生に問われた。

 

滝「前にも話したはずですよ。この部分は何を表現しているんですか? 藺上くん。」

 

鷲武弥「……煌めく星々の光をかき消すかのように、より激しく美しく光り輝き夜空に浮かぶ三日月の如し…と言ったところです。」

 

滝「……良い表現ですね。普段の藺上くんの演奏は情熱的といったところですが先ほどの彼の演奏を言語化するならまさに先程彼の言った表現が当てはまるでしょう。皆さんも藺上くんのように自由に軽やかに勇ましく、わかりますね?」

 

「「「「「はい‼」」」」」

 

居残り練習も終わり順奈と手を繋いで帰る。

 

順奈「驚いた。鷲武弥って詩人の才能あるかもね。」

 

鷲武弥「ただ思いついたことを言っただけだよ。」

 

順奈「それでも凄いよ。あの時私だったら困惑して何言っていいかわからなくなるよ。」

 

鷲武弥「そうかな?」

 

順奈「そうだよ、あ、そういえばあがた祭りって知ってる?」

 

鷲武弥「名前だけなら知ってる。」

 

順奈「一緒に行かない?」

 

鷲武弥「いいよ。俺も一緒に行きたい。地理に疎いんで待ち合わせ場所は学校の最寄り駅でいい?」

 

順奈「うん、いいよ。楽しみに待ってるね。」

 

そしてあがた祭り当日、一旦部屋に戻って着替えて走って最寄り駅まで来た。これはいわゆるデートと言う奴なのだろうが、俺の姿はノースリーブの運動用のシャツとハーフパンツにスニーカーと非常に簡素なものだ。オシャレに気を遣ったことはないので許してほしいと思った。やがて見知った美女が俺の視界に映った。

 

順奈「ごめん! 待った?」

 

鷲武弥「いや、今来たところ。私服姿も綺麗だね、順奈。」

 

順奈「鷲武弥こそ物凄い体が強調されてて…ナンパされてもついていかないでね。」

 

鷲武弥「こうしてればついていかないよ。」

 

手を繋いだ。

 

順奈「ふふっ、嬉しい!」

 

切符を買って改札を通ってベンチに座る。

 

順奈「改めて見ると…凄い筋肉よね…。昼休みも部活が終わってからも鍛えまくってるんでしょ?それで1日1食で足りるの?」

 

鷲武弥「でも今日はプロが作った焼きそばとかたこ焼き食べたいからウズウズしてるよ。」

 

順奈「学校での話をしてるんだけど…私で良ければおにぎりでも作ってこようか?」

 

鷲武弥「嬉しい話だけど、たぶん昼には食べないで晩御飯まで取っておくことになるよ。全然食欲湧かないし喉が渇いたら水飲んでそれでおしまいって感じだし。」

 

順奈「そうなんだ…滝先生に聞いたけど2日も薬飲まなかったら自殺を考えるって本当?」

 

鷲武弥「うん。文字通りの生き地獄を体験するよ。死にたくなるほど苦しい。」

 

順奈「私を残して死んだら恨むわよ。」

 

鷲武弥「順奈を残して死ねるわけないよ。まだ御両親にも挨拶してないし。」

 

順奈「ご、御両親って…⁉ そこまで考えてくれてるの…⁉」

 

鷲武弥「うん。だって初恋でひと目惚れの相手と結ばれたんだもん。こんなチャンス2度とないよ。」

 

順奈「私は…初めて鷲武弥を見た時は日本語堪能などこかの軍人さんかと思ったけど入学式に来てビックリしたよ。あんなに異常に喧嘩が強くて刃物で刺されても平然としてる人が同級生だなんて思いもしなかった。」

 

鷲武弥「あれは…相手が弱すぎただけだよ。100回やっても全勝出来るね。」

 

順奈「あの時何でわざと刺されたの…って中学3年の時の話も聞いちゃったんだった。お腹も刺されて首まで切られたのに鷲武弥だけ処分されたって酷い話だよね。理不尽すぎるよ。」

 

鷲武弥「初めて人を殺そうって自覚したのは校長かな。次はクソ両親。」

 

順奈「え⁉ 両親も⁉」

 

鷲武弥「だって俺の言うことなんて全然聞かなくって何かっつーと『被害者に謝れ⁉』だの『反省しろ⁉』って家の中で怒鳴りまくるし無視決め込んでたら後頭部を蹴りまくって馬乗りになって殴ってくるから頭に来て起き上がってクソ親父思いっきりブン殴ってクソババアもついでにブン殴った。それで台所にある包丁持ってブッ殺そうと思ったけど、ふと冷静に考えてクソ両親殺した程度で刑務所入るのは割に合わねえなって思って殺すのは止めた。そうしたら静かになったけど『出てけ』って言われたから出ていって今ここにいる。あ、電車来たね。」

 

順奈「……誰かに愛された記憶ってある?」

 

鷲武弥「ないよ。」

 

立ち上がって電車を待つ。

 

鷲武弥「愛情に飢えてるのかな?あ、でも誰でもいいわけじゃないからね。本気で順奈を好きになったしそこは誤解しないでほしい。」

 

順奈「うん、わかってる。じゃあ私の愛情がたくさん伝わるように頑張る!」

 

電車に乗った。

 

鷲武弥「お祭りなんて初めてだからワクワクするよ。それに…順奈って両脚が綺麗だよね。後、胸も大きくない? 私服姿だからわかりやすいよ。」

 

順奈「もう…えっち。」

 

鷲武弥「こんなに美人でスタイルの良い彼女を持てて幸せって思ってるよ。」

 

順奈「……それはどうも。鷲武弥だって凄いよ。本当に日本の自衛隊員さんみたい。それかプロスポーツ選手。よく言われない?」

 

鷲武弥「たまに言われる。」

 

順奈「鍛えたきっかけって覚えてる?」

 

鷲武弥「うーん…小学生の時に通っていた学校の教師が悉く暴力で黙らせるタイプだったんで『こいつら暴力が通用しなくなったらどうするんだろう?』って好奇心と暴力に対抗したかったからかな。クソ両親も同じタイプだったし。」

 

順奈「それでどうなったの?」

 

鷲武弥「同じクラスの粋がってる男子がロクに歯を磨かないから『臭ぇ』って言ったら担任の教師に思いっきりビンタされたけど顔面に正拳突きをブチ込んで鼻の骨折ったら大人しくなった。他の教師も同じだった。何かガッカリしちゃったね。やってることイジメっ子と変わんねえじゃんって思った。」

 

順奈「まあ…鷲武弥みたいなのがいたら誰だって大人しくなると思うけどね。」

 

鷲武弥「大人しくしなかった馬鹿が15人程いたせいでこのザマだけどね。こっちは毎日眠れるかどうか不安で怯えてるのにあいつらは何もしないでグッスリ眠ってるかと思うと殺意が湧いてくるよ。」

 

順奈「わかった! 聞いたのは私だけどこの話はやめよう! 鷲武弥の精神衛生的にも良くない!せっかくのお祭りなのにこんな雰囲気にしてごめん!」

 

鷲武弥「順奈が謝ることじゃないよ。話したのは俺なんだし。」

 

順奈「鷲武弥の過去を知った上でこんなこと聞いた私が悪いよ。」

 

鷲武弥「順奈は悪くないよ。こんな湿気た話した俺が悪いよ。」

 

順奈「いいや⁉ 私の方が…⁉ って止めよう…。不毛だよ。」

 

鷲武弥「彼氏想いの彼女を持てて幸せだって思ってるよ。」

 

順奈「本当にそう思ってる?」

 

鷲武弥「うん。」

 

順奈「それはどうも…。あ、駅に着いたね。」

 

同時に立ち上がりドアの左右に分かれる。乗る人がいないのを確認して並んで立つ。手を繋ぐ。駅を出る。屋台通りが視界に広がる。

 

順奈「焼きそばとたこ焼きだったよね! 買ってくる!」

 

鷲武弥「あ、うん…。」

 

順奈は行ってしまった。

 

「見~ちゃった♪ ふたりとも付き合ってるの?」

 

鷲武弥「田中先輩に部長に中世古先輩、こんばんわ。はい、付き合ってます。告白したのは俺からです。良い返事をもらえて今こうしていられます。」

 

あすか「鷲武弥くんってここぞって時に熱い男だよね♪ 井上さんもイチコロだったか~♪」

 

順奈「鷲武弥! 買ってきたよ! って先輩! こんばんわ!」

 

晴香「鷲武弥くんから告白されたんだって⁉ どう返事したの⁉」

 

順奈「うっ⁉ 先に告白したのは鷲武弥ですけど入学前に京都駅周辺でナイフ持った不良6人から助けてもらった衝撃が凄くて好きになったのは私の方が先です!」

 

香織「え⁉ そうなの⁉ 衝撃的な出会いね⁉」

 

あすか「アクション映画か漫画かアニメの主人公みたいなことやってたのね…相変わらずだわ…。」

 

鷲武弥「でも俺が先に告白したのは変わらないよね?」

 

順奈「あれは高坂さんがいたからよ⁉ 普通は他の人がいない時にするもんでしょ⁉ そういう状況になったら私の方が先に告白するつもりだったわよ⁉」

 

鷲武弥「でも抱きしめたのも俺が先だよね?」

 

順奈「キスしたのは私からですぅー! それは絶対に変わらない事実ですぅー!」

 

晴香「……仲が良いのは間違いないみたいね。」

 

あすか「青春だね♪」

 

香織「井上さんが羨ましいな…。」

 

鷲武弥「あ、先輩方。お見苦しい所をお見せして申し訳ございません。」

 

晴香「ふたりともお幸せにね!」

 

あすか「お幸せに♪」

 

香織「じゃあね! バイバイ!」

 

順奈「はい! さようなら!」

 

鷲武弥「あ、順奈。お代は?」

 

順奈「いいよいいよ。アルバイトする暇もない独り暮らしの男子に払わせられないよ! ここは私に任せて!」

 

鷲武弥「ありがとうね。それでは…いただきます。」

 

焼きそばをひと口食べた。美味しい。

 

鷲武弥「おお…⁉ 凄く美味しい…⁉」

 

順奈「ふふっ、良かった!」

 

鷲武弥「順奈も食べる? たこやきどうぞ。」

 

順奈「いただきます! うん! 美味しい!」

 

焼きそばを完食した。

 

鷲武弥「あー! 美味しかった! ありがとう!」

 

順奈「どういたしまして! はい! たこ焼き!」

 

鷲武弥「いただきます! 美味しい!」

 

パクパクと食が進む。あっという間にたこ焼きも食べ尽くしてしまった。

 

鷲武弥「行きたいところある?」

 

順奈「鷲武弥にやってもらいたいのがあるんだよねー!」

 

連れていかれた。ここは射的屋だ。順奈がお代を払う。おもちゃの銃を俺が受け取る。

 

おやじ「兄さんいいガタイしてるねぇー! マジモンの軍人さんかい?」

 

鷲武弥「ただの高校生ですよ。」

 

ポカーンと口を開くおやじさんを置いといて狙いを定める。

 

順奈「おお⁉ 凄くサマになってるよ⁉ 待ってて⁉ 今写真撮るから⁉」

 

カシャリと音が鳴ったのを確認して人形にの上部に当てた。グラグラとバランスを崩して落ちる。

 

順奈「おお⁉」

 

次も人形を狙った。上部に当たり落ちる。

 

順奈「おおお⁉」

 

おもちゃを狙った。上側に当てて落とす。

 

順奈「おおおお⁉」

 

おもちゃを狙った。上部に当てて落とした。

 

順奈「おおおおお⁉」

 

最後の1発、おもちゃを狙った。落とした。

 

順奈「おおおおおお⁉」

 

おやじ「兄さん凄い腕だねぇー! スポーツ系の部活でモテモテなんじゃないの?」

 

鷲武弥「ただの吹奏楽部員ですよ。」

 

景品をビニール袋に入れてもらった後に答えた。またポカーンと口を開けて動きが止まる。彼を置いといてビニール袋を順奈に渡す。

 

鷲武弥「焼きそばとたこ焼きのお代料と楽しませてもらったお礼として受け取ってほしい。」

 

順奈「え⁉ いいの⁉ せっかく手に入れた景品なのに…⁉」

 

鷲武弥「部屋には必要最低限のものしか置かない主義なのできっと飾らないまま放置しっ放しになっちゃうと思うからどうか…プレゼントとしてはちょっとショボいけど受け取って。」

 

順奈「嬉しい! 大事に飾っておくね! 他に食べたいものある?」

 

鷲武弥「じゃありんご飴ってやつを…。」

 

順奈「わかった! 買ってくる!」

 

凄い勢いで行ってしまった。待つこと数分。

 

順奈「お待たせ! はいこっち!」

 

鷲武弥「へぇー…こんな感じなんだ…。そっちのオレンジ色のは?」

 

順奈「こっちはみかん味。食べてみる?」

 

鷲武弥「いただきます。ん…美味しいね。お礼にどうぞ。」

 

差し出したりんご飴を順奈が齧る。唇がとてもセクシーだった。黙々とりんご飴を食べる。言葉はないが幸せな時間を共有している気がした。

 

順奈「ねぇ…。」

 

鷲武弥「ん?」

 

順奈「進路って決まってる?」

 

鷲武弥「具体的には決まってないけどプロスポーツ選手になりたい。『じゃあ何で今吹奏楽部やってんだよ』って聞かれたら返答に困るけど。順奈は?」

 

順奈「私は…やっぱり大学進学かな。無難だけどしっかり勉強していい会社に入って立派な社会人になりたい。」

 

鷲武弥「順奈ならなれるよ。しっかり者だし。」

 

順奈「鷲武弥もどんなスポーツかはわからないけどきっと成功するよ。努力家で練習熱心で今の時点で物凄い体してるし。」

 

鷲武弥「順奈の御両親に認められるような立派な選手になりたい。それだけだよ。」

 

順奈「無理しないでね。」

 

鷲武弥「出来るだけしないつもりではいるよ。」

 

その後、おかず用の焼きそばとたこ焼きを買って帰った。これと炊き立てご飯の組み合わせは最高に美味しかった。

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