とある異世界の交差物語(クロスオーバー)   作:鉄龍王

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初めての方は初めまして。久しぶりの方はお久しぶりです

前回の話を投稿してから2年・・・少しずつ話を考えて作っていたのですが、この2年で身内の不幸やその他諸々で手はなかなか進まず、それでも暇な時にちょっとずつ進めていたのでやっと出来たので、投稿します

久しぶりの投稿なので、誤字やおかしなところが所があるかもしれません。指摘は構いませんが、どうか酷評は勘弁してください


それではどうぞ!


第45話 集う英雄、動く怪物

 

 

 土方たちが小川と名乗る青年に案内されているちょうど1週間前、“SAO事件に貢献を尽くした『黒の剣士』キリトこと桐ケ谷和人は1人、新宿のあるカフェに向かっていた。

 

 実はそこである人物と待ち合わせ・・・・・・と言うより、呼び出しを受けていたのだ。かなりな高級感の雰囲気を漂わせる入った和人は思わず店の周りを見回してしまったが、ウェイトレスが和人に近寄り、座る席を伺った。

 

 

 

「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」

 

「いや、中で待ち合わせの人が……」

 

 

 

 

 

 

 

「キリト君、こっちこっち!」

 

 

 

 

 

 

 

和人のSAOおよびALOのアバター名を呼び掛ける声が店内に響く。上品なクラシック音楽の流れ、婦人達が楽しく会話する雰囲気を壊す様なその声に、男は客達からの非難の視線を浴びながらも、我関せずの姿勢を貫く。和人も僅かに眉を顰める。

 

周囲の空気を読まない、マナー違反に抵触する行為に呆れる和人だが、この程度のことでこの男に苛立っていては始まらないと溜息を漏らしながら、店員に座る席を指定する。

 

「・・・・・・・・・あそこの席の人です」

 

「ハ、ハァ・・・かしこまりました」

 

 

 

客の視線を無視して和人はウェイトレスに案内を頼み、先程和人を呼んだスーツ姿の男の向かいの席に着いた。

 

 

「・・・・・・コンニチハ、菊岡サン」

 

「ツレないなぁ……僕と君の仲じゃないか?」

 

「アンタとは親しい仲になった覚えがないが?」

 

「まぁまぁ、細かいことは気にしないで。ささ、ここは僕が持つから、好きに頼んで良いよ」

 

「そうですか……じゃ、お言葉に甘えて」

 

 先程の、いきなり大声でアバター名を呼ぶと言う行為に眉間にしわを寄せ、不機嫌そうな表情を浮かべている和人に対し、目の前の男……菊岡誠二郎は、飄々とした態度で接してくる。

 

表情を変えることなくメニューを開き、その一覧を確認する。

 

「・・・・・・・・・」

 

意趣返しに出来るだけ高いものを注文した。

 

「すみません、このデザートをお願いします」

 

「はい、かしこまりました」

 

 注文を聞いたウェイターが店の奥へと向かって行ったのを視界の端に捉えた和人は、改めて目の前の人物へと向き直る。

 

 

 

菊岡誠二郎……国家公務員と言う職業にある彼の所属は、総務省総合通信基盤局高度通信網振興課第二別室、省内での名称は通信ネットワーク内仮想空間管理課。通称『仮想課』と呼ばれるこの部署は、SAO事件発生に伴って組織された対策チームを原形として新たに作られた。SAO事件とその延長線上で起きたALO事件が解決した現在では、それらに続く第三、第四のVRワールド関連の事件が起こらないよう対処することが業務となっていた。

 

 そのような身分にある菊岡が和人と初めて顔を合わせたのは、SAOクリアから間もない頃。場所はSAO事件に巻き込まれた経緯で入院していた病院内の病室。SAO対策チームのメンバーとして名を連ねていた菊岡は、SAO事件解決に至った経緯やゲーム内で起こった出来事などについての詳細な説明を求め、和人もそれに応じたのだ。勿論その中には、クラインやエギル、タカトラ、ソウジといった面子も協力していた。以来、和人は菊岡からの依頼を受け、新規アカウントを作成してALO以外のVRMMOの調査を行うことが多々あった。故に今回も、その手の依頼でこの場所へと呼び出されたのではと和人は考えていた。

 

 

「で、人を呼んだ理由を話してもらいましょうか?聞きたくないけど、またバーチャル犯罪がらみですか?」

 

「流石だねキリト君、話が早くて助かるよ」

 

そう言うと菊岡はタブレット端末を取り出し、和人に渡した。そこに表示されたデータに目を通した和人は眉間にシワを寄せながら菊岡に尋ねた

 

「最近、ここに来てバーチャルスペース関連犯罪の件数がまた増え気味でねぇ……」

 

「…具体的には?」

 

 

菊岡の話によると、先月の十一月九日に一人の男性が、そして、十一月二十八日にもう一人の男性が死亡。 

その二人はGGOというザスカーが運営してるVRMMOのトッププレイヤーで、二人とも死因が心不全……心臓発作だった。

 

 

 

発作が起きる直前、二人はGGOで死銃(デス・ガン)と名乗るプレイヤーに銃で撃たれたという噂が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死銃(デス・ガン)に撃たれたプレイヤーは現実(リアル)で必ず死ぬという噂が流れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「偶然…………じゃないよな」

 

「やっぱり君もそう思うかい?」

 

「むしろ全部たまたまで済ませる方が無理があるだろ?」

 

「確かに……そして、もう一つ」

 

余程疲れが溜まっているのか、苦笑をこぼした菊岡はタブレットを操作し、別の男性プレイヤーと女性プレイヤーの写真が映し出される。

 

「このプレイヤーは“薄塩たらこ”と“豪腕ウサギ”。彼等もGGOをやっていたが、殺されてる。《死銃(デス・ガン)》と《死牙(デス・ファング)》にね」

 

「です・ふぁんぐ?」

 

キリトは思わず眉を顰めてしまった。

 

 

「なんですかその在り来たり…というか、死銃をパクったようなパチモン臭いネーミングは?」

 

「どうやらその死牙(デス・ファング)は上位(クラス)の女性プレイヤーを中心的にターゲットにしているみたいなんだ。うす塩たらこは、そのオマケとして狙われたみたいなんだ」

 

「……趣味が悪いな。でも、それならなんでその死牙(デス・ファング)にやられたってわかるんだ?」

 

「まだ詳しい方法は分かってないが、確かな事はその死牙は何らかの方法を使って相手プレイヤーの個人情報を入手し、戦った女性プレイヤーを1週間以内に現実(リアル)で遺体として発見されている」

 

「なっ!?」

 

「しかもその遺体には獣に襲われた様な爪痕や噛み千切られた傷跡が残っていたそうだ」

 

「獣って……じゃあ何か?ソイツは猟犬か何かを使って人を襲ってるって言うのかよ!?」

 

「落ち着いてくれ、君が信じたくないのも十分理解しているよ。僕だってそうだ。最初は悪趣味な冗談かと思っていたよ。遺体を確認するまではね」

 

「………」

 

目が全く笑っていない菊岡の姿勢を見て和人はコレが冗談ではないと改めて認識した。

 

「で、だ。こちらとしても何とか手を打ちたいが、この死銃と死牙に関する情報が殆ど無い。ソロなのかコンビとして組んでいるのかすら分からない奴らだ。分かっているのはどちらも上位プレイヤーを狙っていると言う事だけ。だから仮想課(ぼくら)は・・・」

 

「ちょっと待った。まさか俺にそのGGOにログインしてオトリをやれって言うんじゃ…」

 

「・・・・・・」

 

 

半目で睨む和人に対して無言だがニコニコと笑顔。しかし目が笑ってない菊岡

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

1分かあるいは10分か、そんな短いようで長い時間を感じ、警戒心が跳ね上がった和人の行動は早かったが、それは菊岡も同じだった

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・(ガタッ!ダッ!!)」

 

「・・・・・・・・・・・・(ガタッ!ダッ!!)」

 

 

 

 

 

 

即座に席を立ち、背を向ける和人

 

 

 

和人と同じタイミングで席を立ち、スライディングで彼の片足を捕まえる菊岡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここから先は醜い男の戦いが始まります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頼むキリト君!僕のお願いを聞いてくれ!」

 

「ふざけるな!誰がそんなヤバい仕事を引き受けるもんか!むしろアンタが行ってその弾丸に撃たれるか噛まれて行け!!」

 

「今仮想課(ぼくら)の知り合いの中で腕が立って有名で即戦力になって直ぐに連絡が着くプレイヤーって言ったら君位しか居ないんだよ!」

 

「どんだけコネが無いんだよ!アンタの所の部署は!!」

 

「こっちだって冗談抜きでヤバいんだよ!死銃だけでもヤバいのに、海鳴市でキナ臭さすぎる事件が起きてるって言って上層部(お上)から『今海鳴で厄介な事件で、回せる人材がいないから仮想課(お前ら)だけで頼むわ』って無理難題押し付けられるし、警察は警察で協力を要請しようとメッセージを送ったら、『GGO?死銃?アンタら寝惚けてるの?(笑)』って笑われてまともに相手にされない始末!お陰で僕らはここ数日まともな情報が集まらない戦力が集まらない。集まるのは部署の仲間からの不満と苦情のみ!!だからSAO最強、知名度最高、顔はまぁ・・・・・・・・・・カワイイ?と、ある男性プレイヤーからの推奨が凄かったけど・・・って!そうじゃなくてオマケに人気も高いキリト君にお願いしてるんだよぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

「おい待て!今の間とその疑問は何だ!あとその男性プレイヤーって一体誰のことだ!?クラインか!?クラインの奴が変な事を言ったのか!?」

 

 

 

ギャアギャアと騒ぐ和人と菊岡(バカ2人)に対して周囲の女性客から冷たい視線を送られるが、それに気付く余裕がないのか何時までも騒ぎ続けるが、即座に店員に説教さ(怒ら)れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・」」

 

 

阿呆なやり取りが終わり、和人と菊岡もようやく落ち着きを取り戻し、話の続きを再開する

 

 

 

「・・・で?アンタさっき妙な事を言ってたな?」

 

「妙な事?」

 

「惚けるな。『警察に相手にもされない』って言っただろ?」

 

「あぁ。全然相手にされなかったよ。それの何処が妙なんだい?」

 

「その言い方だと“他にも頼る当て”がいるって言ってるみたいだぞ?」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

和人の問いに菊岡は否定も肯定もせず、ただ沈黙を貫いた

 

「・・・・・流石だねキリト君。ま、僕自身も警察の方は最初から当てにはしてなかったからね」

 

「当てにしてなかった?」

 

「あぁ、今回の事件……特に死牙は不審な所が多すぎる。被害者が殺された時間帯やその場所はバラバラだが、一つだけ共通してるのは東京都内ぐらいだってこと」

 

「てことは、死牙は東京にいる人間ってことか?」

 

「うん。僕もそう考えてる。そしてもう一つ気になる点があってね」

 

「?」

 

「現場に手掛かりとして、獣の毛や足跡が残ってたけど、その数が尋常じゃなくてね。調べてみたら軽く30頭以上の足跡が発見されたんだ」

 

「さ、30!?」

 

「それだじゃない。その足跡の中にはグレートデンやドーベルマン並みの大型犬が複数あった。そんな群れの情報なんてどの記録にも載ってないし、報告もされてない」

 

「それっておかしくないか?だったら何でそんな話がニュースに流れてないんだ?」

 

「簡単な事さ。仮想課(ぼくら)とは別の部署が隠蔽してるんだろうね」

 

「じゃあ、それって・・・」

 

「これ以上は情報が無いし、何も言えないからここまでだ。ここからは()()()()にお話聞こう」

 

「あのお方って・・・?」

 

眉間にしわを寄せた和人の質問に口元をニヤリと歪ませた菊岡が答えた

 

「400年以上前からこの国の裏を支配してた組織のご隠居さ」

 

「は?裏?」

 

「そ、“表”はダメだったから“裏”の勢力に助力を要請したら二つ返事で応じてくれたよ」

 

嫌な予感を感じたのかその“裏”とやらを聞いた

 

「それってまさか、ヤク…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこは任侠一家と呼んでほしいのう」

 

 

「「!?」」

 

 

 

今この席には和人と菊岡のみのはずが、突然知らない老人の声に2人は驚く。そこに居たのは上品な着物を着こなす後頭部が異様に長い老人だった。

容姿は当然だが、和人は老人の雰囲気に呑まれようとしていた。見た目は小柄なのに圧倒する存在感にかつてSAOで相対したヒースクリフ(萱場晶彦)を連想させた。

そんな和人に対し、老人は何食わぬ顔で和人と菊岡が食べているケーキよりも高い菓子をいつの間にか注文し、優雅に紅茶を飲んでいた。

 

 

 

いつの間にか自分の隣の席に居た老人に警戒する和人だが、菊岡は違った

 

 

 

 

「お待ちしていました、ご隠居」

 

「え!?」

 

「おう坊主。久しぶりじゃの」

 

「き、菊岡さん!この人は!?」

 

「キリト君、このお方は……」

 

「あぁ坊主、自己紹介ぐらい儂がやる」

 

そう言いながら老人はまるでイタズラ小僧の様な笑みでこう名乗った

 

「儂は関東大妖怪任侠一家“奴良組”初代総大将……ぬらりひょん様じゃ!」

 

「・・・・・・・・は?」

 

余りにも有名だが、彼にとってはオカルト染みた(ありえない)話のため、目の前の老人の額に手を当てて、熱を確認するのは仕方ないかもしれない

 

「お爺さん、いくら見た目がぬらりひょんソックリだからってそんな自己紹介は痛々しいですよ?」

 

「ちょっ!キリト君!?」

 

和人の奇行に焦る菊岡だが、老人(ぬらりひょん)は気にする事なく笑いながら自身の経歴を説明しようとしたら、彼の物らしい買い物袋から小さい何かが出て来た

 

 

 

 

「うぉいコラこのガキンチョーっ!!ご隠居に嘗めた態度取るたぁ、俺たち奴良組に宣戦布告って解釈していいんだなこの野郎ぉぉっ!!」

 

 

 

 

そう叫んでいるのは人間の胴体、頭が納豆の藁苞になってる小人。

このあり得ない存在に流石の和人も思考を停止し、そして・・・・・・・・・・・・・

 

 

「は・・・・・・はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!????」

 

 

 

 

 

店内は和人の絶叫がしばらく響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょうどその頃、関東のある場所に建つ廃ビルがあった。そのビルは周りに人は無く、一般的に見れば既に世間から忘れられ、風化した廃ビルにしか見えないが、ある術式が施され、異形の群れが根城にし、砦としての機能が搭載されたビルが存在していた。

 

そしてそのビルにある犬の獣人が率いる犬の部隊が佇んでいた。

 

 

 

 

「ぬぅ………!」

 

「………」

 

「あわわわわ………」

 

 

 

 

唸り声をあげながら誰かを待つ牛の様な白と黒の模様の(グレートデン)の獣人の法玄(ほうげん)と沈黙を貫く頭に熊の毛皮を被る青年のクマだった。その後に控えるのは法玄直属の兵隊。しかし、法玄から発せられる殺気に充てられ、兵達は怯えているだけだったが、法玄(当の本人)はお構いなく声を荒げる

 

「遅い!一体いつまで待たせるつもりだアイツ等はっ!!」

 

「法玄殿、そうピリピリなさるな。唯でさえ今の我々の戦力はガタ落ちの状況から何とか武器と兵隊の調達に成功し、ようやく部隊としての形が整った段階です。その将たる貴方が乱れれば、そのまま兵の士気に関わります。どうか、ご理解のほどを……」

 

「ちっ……!」

 

「それに、この作戦は我々の今後がかかっています。前回の作戦が失敗したおかげで我々の評価はガタ落ち、武器や食料の貯蓄は微々たるもの。オマケに脱走する兵隊が出てくる始末。まぁソイツ等は即刻消し、何とか兵の流出を抑えてますが、今の我々の立場は瀬戸際状態。その為私があらゆる勢力に助っ人として声をかけてきました。そしてその助っ人連中を束ねる今の貴方の立場は云わば連合…いや、同盟軍の総大将というべき立場だ。そんな貴方が取り乱せば、助っ人連中に舐められます。どうか、不動の心構えをお忘れずに」

 

「わかっとるわいっ!!」

 

もうこの話は終わりだと言わんばかりに方言は声を荒げ、それを受けるクマはヤレヤレと肩をすくめて助っ人達の到着を待っていると……

 

 

 

 

 

 

「来たぁーっ!来ましたぞぉぉっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「「っ!!」」

 

 ビルの高所から見張りを続ける兵の声が響く

 

「第二部隊、第三部隊、第四部隊が大軍を連れてこっちに向かってますーーっ!!」

 

「「「「おおっ……!」」」」

 

 待ち侘びたと言わんばかりに歓喜の声を上げる兵たちの視線の先には、数百m先から300以上の凄まじい数の軍団が土煙を上げながら法玄の砦に向かって来た。

 

「第二戦闘部隊、只今到着しました!」

 

 まず砦に入城したのは法玄の傘下の部隊であり、顔に傷を持つ(レトリバー)の獣人の隊長……

 

「おぉ…っ!」

 

「ブルゲ隊長!」

 

「お待ちしてました!」

 

 顔に深い傷跡を持つ(レトリバー)の獣人……ブルゲが率いる犬の部隊が到着すると同時に砦の守護を任されていた兵達から歓迎の言葉を受ける。しかしブルゲはそんな兵達の歓迎の言葉を受けながらも、こう叫んだ

 

「静かにしろ!今回の戦いに我々に助力して下さる方々をお連れした!全員、並列してお出迎えしろ!!」

 

ブルゲの後ろには犬とは別の様々な種族の3部隊が控えていた。始めに現れた部隊は銀髪の青年が率いる人と人外の混合部隊。その部隊の隊長らしき人物が視界に入ったのかクマは直ぐに前に出た。

 

「“ライゼル殿”!よくぞ来て下さった。我ら一同、心から貴殿らを歓迎いたします故、何卒、我らにお力添えを……!」

 

「そう謙遜することはあるまい。クマよ、一時的だが、貴公らの指揮下としてこの刃を振るおう」

 

「なんと言う勿体ないお言葉。貴殿のようなお方にその様なお言葉を頂けると、我々も苦労した甲斐がありました!」

 

「だが、こちらも都合があってな……本部の守り、他の任務に出ている者も居たから、連れて来れた部下たちは70人だけだ。」

 

「それでも十分な戦力です!!」

 

 クマとライゼルの言葉と握手を交わし、良き関係を築いているにも拘らず、法玄はまるで面白くないモノを見せられたかのような不機嫌な表情だった。そこへ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたな!野郎共!!第三戦闘部隊、たった今到着したぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に現れた案内役はクセ毛がある黒い洋犬(アイリッシュ・ウルフハウンド)の獣人の男が率いる犬の部隊の後方にはライゼルの部隊を超える、凄まじい数を見せる鬼の部隊だった

 

 

 

 

「カマキリ隊長!!」

 

「よくぞご無事で!」

 

「応よ!待たせたな法玄!連れてきたぜ!頼もしい助っ人共だ!」

 

 

そして………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フン!一時とはいえ、まさか精鋭たる“鬼の眷属”が犬の配下として働く日が来るとわな!」

 

「…………」

 

 

その後方の部隊のリーダーらしき人物は白髪の老剣士と、沈黙を貫く顔の半分を卒塔婆で覆われた黒髪の青年だった。しかしそんな鬼たちを余所に、ライゼルと挨拶が終わったクマが熊の毛皮を被った顔を隠しながらも、口元は笑顔のまま老剣士に近づいた。

 

 

「“鬼童丸殿”!それに“茨木童子殿”まで!!あなた方もよくぞ我らの呼び声に答えてくださった!本当に、感謝してもしきれま……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるせえ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひっ!」

 

 クマの感謝の言葉を遮ったのは顔の半分を卒塔婆で覆われた黒髪の青年…茨木童子だった。そんな彼の視界に入るモノ全てを斬ると云わんばかりの凄まじい殺気に()てられ、下級兵たちは小さく悲鳴を上げ、中には失禁する者もいた。そんな下級兵たち(かれら)など視界に入れてないのか茨木童子は鬼の眷属(どうぞく)たちを除くこの場にいる者たちを見下す様な冷たい視線をクマと法玄に向けた

 

「俺たちはテメェ等と馴れ合う為に来たわけじゃねぇ。この海鳴(まち)にある魔導書ってヤツは、()()()を復活させる手掛かりがあるんだろな?」

 

 虚偽は許さんと云わんばかりの眼光で睨まれた犬の兵隊たちは動けずにいたが、大将の法玄と熊の毛皮で顔を隠しているクマは涼しげな態度で茨木童子に説明する

 

「申し訳ないが、コチラも全てを把握してる訳ではない。我々が入手出来た情報は“転生先がランダム”、“魔力を本に与える事で(ページ)に文字が現れる”、“666ページ全て揃うと持ち主(マスター)に凄まじい力を与える”。そして、“あらゆる魔術の知識が記録されている”という情報のみ」

 

「フム、その“知識”とやらが真実(まこと)なら、我が主を復活させる手掛かりがある。という事か……」

 

「正確に言えば、ある()()…ですがね」

 

「チッ!要するに曖昧ってことかよ……」

 

 手を顎に当て、確認を取る鬼童丸の言葉に対して曖昧な答えしか出さないクマに茨木童子を筆頭に鬼の眷属(かれら)から凄まじい怒気と殺気を向けられてもクマは一切怯まなかった。そこへ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッフッフッフッ……どうやら我々が最後のようですね」

 

 

 

「そうみたいだね、オジサン」

 

 

そして最後に姿を晒すのは赤紫色の着物を纏う坊主頭の老人と、紫色の着物、闇色のマントを纏い、狐の面を着けるう一人の剣士。そしてその背後に沈黙を保ったまま控える100以上の兵隊達だった。

 

そして彼らの案内役であろう黒犬の獣人だが、この獣人は他の兵隊や幹部とは明らかに異様な雰囲気を晒していた。顔を見れば犬種はドーベルマンだと分かるが、異様な原因は顔の右半分が鋼鉄の面で覆われてる事だ。それだけでなく、カチャカチャと生き物らしくない無機質な足音を立てているこの異様な獣人に周囲の兵たちは距離を置いているが、法玄だけは彼を迎え入れた

 

「おおっ!戻ったかマーダー!」

 

マーダーと呼ばれた黒犬の獣人は法玄の前で即座に膝をつき、(こうべ)を垂れながらこう告げた

 

「法玄様…このマーダー含め第四部隊共々、ようやく任務を全うしました……」

 

「おおそうか!よくやった!でかした!!」

 

余程の信頼を寄せているのか豪快に笑う法玄と沈黙の姿勢を貫くマーダーに同盟として参加している兵隊や各隊長たちは勿論、自軍の兵や纏め役のクマすら呆れた視線を送っていた。

ブルゲから順に続々と強力な助っ人を連れて来ているにも拘らず、労いの言葉は最後に到着したマーダーのみ。顔には出していないが助っ人として参加している者達から明らかな怒りの視線を法玄に向けられているにも関わらず、当の本人は無視を貫いている。

 

 

「ほ、法玄殿。マーダー殿も大事なのは分かりますが、その前に客人たちが……」

 

「黙れブルゲ!誰が貴様に発言を許したっ!!!」

 

「が……っ」

 

「ブルゲ隊長!!」

 

これは流石にマズイと察したブルゲは何とか声をかけるが法玄に文字通り一蹴され、場の空気は更に剣呑となってしまい、特に血の気が多い鬼たちが今にも斬り掛りそうな雰囲気になりつつあった。そんな中、溜息を漏らしながらクマは法玄にこう告げる。

 

 

「ハァ…法玄殿、こうして多くの(つわもの)たちが揃ったのです。どうでしょう?ここは一つ親睦を兼ねて宴を開くのは?」

 

「そ、そうですな!折角のお客人方に何の持て成しをしない訳にはいきませんからな!!」

 

「おい、急げ!」

 

これは少しでもこの空気を変えるためと察した犬の兵たちは急いで宴の仕度を始めた。そこへ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、それじゃぁ私もご一緒させて貰おうかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「!!!?」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

聞き覚えの無い声に犬の兵隊たちは声がした方向に目を向けるとそこに居たのは、一人の美女。腰まで届く長い黒髪。ヘソを出している白い肌。黒い革ジャン。

何より一番目を引いたのは右目が機械仕掛けの義眼になっている事だった。

 

その女に警戒した犬の兵隊たちは即座に銃を抜き、女に向けるが、先にクマが片手で部下たちを制し、目の前の女に尋ねた。

 

「一体何方ですかな?この砦は我々の部下を除けば、今回の同盟の呼び掛けに応じた組織(モノ)(かしら)とその側近のみ伝えたのですが、貴女は一体どうやってこの場所を突き止めたのですかな?」

 

クマからの凄まじい凄みが利いた睨みを受けながらも、片眼が義眼の女はクスリと笑みを浮かべながらこう答えた

 

「私はカミラ。貴方方と同盟を結びたく、此処に参上した次第でございます」

 

「ほう……?」

 

カミラの言葉に感心したような反応を見せるクマだが、突然現れた女に信用する者など誰も居らず、クマは質問をぶつけた

 

「では貴女は何が目的で我々と同盟を結ぼうと?それと貴女の実力、同盟を結ぶための価値(たいか)は?最低限この3つの質問に答えていただけなければ……」

 

質問を終えたクマが片手を上げ、合図を出した瞬間…

 

 

 

 

 

 

ーーーガチャッ!

 

 

 

 

 

 

 

カミラに銃を向ける100の兵士たちが待機していた。そしてその銃を向けられながらも、カミラは余裕の表情を全く崩さなかった

 

 

 

 

 

「私の目的は……」

 

 

 

 

 

カミラの目的を聞いたクマたちは納得した後、その場に居た者全てがカミラの同盟参加を認め、後に彼女はこう呼ばれるようになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

邪眼の錬金術師カミラ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」

 

 

 

「ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ」

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……アグッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある女性は後ろから追ってくるナニカに怯えながら必死に走り続けるが、それでも振り切ることが出来ず、蓄積された疲労は足に来ているのか棒のようになってるのか、片足を引きずりながら逃げようとするが、ついに捕まってしまった。

初めは右足、倒れた瞬間に右手、左手、左足を押さえつけられ、女性の視界に写るのは口元からダラダラと涎を垂らす獣たちの姿だった

 

 

 

 

 

 

「グルルルルル…………」

 

 

「い、イヤ…だれか……たすけ……」

 

 

 

その獣たちの姿が女性が見た最後の光景だった

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガァァァァァァァッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---バキッゴキッ

 

 

 

---パキッポキッ

 

 

 

---ボリッボリッボリッ

 

 

 

 

 

 

 

獣たちが女性の体の一部を貪る中、リーダーらしき獣が号令をかけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようしヤロウ共!引き上げだぁぁぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」」」」」」」」」

 

 

凄まじい地響きを鳴らしながら、獣の群れは散り散りになりビル街の影に消えていった。そんな群れの様子を眺めていた別の集団が姿を現した

 

 

 

 

 

 

 

「アイツ等…我々の土地で何て事を……!」

 

「やりたい放題しやがって!」

 

 

彼らは元々この土地に住み着いていた犬の妖怪たち。自分の縄張りを荒らされ、怒り心頭だが獣たちの数は軽く見積もっても30~40は超えていた。対する地元の妖怪たちは5人。勝敗は明らかだったため、先程の殺戮は止める事は出来ず、ただ様子を監視する事しかできなかった。

 

 

 

 

「人間に手を出せば、テメェの首を絞めるだけだぞ」

 

「いや、困るのは我々だ。このままだとこの街どころか、この土地の妖怪全てはここに住めなくなる」

 

 

指摘した妖怪の言葉は正しかった。

 

 

数年前にある大妖怪が起こした“清浄(しょうじょう)”と呼ばれる妖怪の大量粛清の事件があった。

詳しくは割合するがその事件は奴良リクオ率いる奴良組を中心に全国の妖怪たちの活躍によって見事解決して見せた。

 

だがそれでもならず者はいる。組織という後ろ盾は無くとも、自分たちの縄張り(シマ)を守る犬の妖怪たちは地元の仲間たちと団結し、侵略者に立ち向かう気概を見せるが、今回は相手が悪かった。総出で集まっても数は30ギリギリしか居ないのに対し、先程の獣たちはその数を明らかに超えていた。

 

敵方の様子を監視するしかない状況に苦渋に満ちた犬の妖怪が愚痴を零した

 

 

 

「ここは俺たちの先祖が代々守り続けた土地なのに・・・!」

 

「お前の言いたい事は分かる。いつまでもヤツ等を放っとく訳にはいかないからな」

 

「だがどうする?今の俺たちじゃ、“奴ら”に太刀打ちできないぞ」

 

「とにかくこの惨劇(こと)を“ロケット”さんに伝えよう」

 

「ああ、急ごう!」

 

 

 

方針が決まったのか、5人の妖怪たちは森の木々に隠れながら姿を消した

 

 

 

 

 

 




如何だったでしょうか。出来るだけ自分が納得できるキリがいい様にと出来るだけネタをつぎ込んだら、五千前後の文字数で出してたのに出来た時には一万越えでした

次回の投稿日は現時点では全くの未定です。

出来れば今年の夏頃に出したいですね

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