中川菜々から優木せつ菜 〜ポケモンの世界であなたと紡ぐ奇跡〜 作:あいライス
沢泉さんが語った、倉田校長による悪魔のような支配と、大切な家族たちの命を脅迫の材料に使われる卑劣なやり方。その惨劇の深さと悲劇の連鎖に、私の胸は押し潰されるような痛みに苛まれていました。
ですが、こんな話を聞けば聞くほど、私には、どうしても拭いきれない大きな矛盾と疑問が、不気味で歪な違和感となって渦巻いていました。
だって考えてみてください。
倉田校長に対し、それほどまでに激しい憎悪と怒りを抱いておきながら、なぜ彼女は、あのスクールの生徒会長という立場になることに、これほどまで固執しているのでしょうか?
仮に生徒会長の座に就いたところで、カリキュラムの変更や、『強制限界突破システム』の全面廃止など、学校の絶対権力者である倉田校長、そして校長に従順な教頭や教師たちが首を縦に振らない限り不可能なはずです。
生徒会の権限など、学校という巨大な組織の前では高が知れています。
前世で生徒会長を務めていた私が言うのですから、間違いありません。
アニメのように、生徒会が好き勝手に何でも学校を動かせるなんて、現実の組織構造においてはあり得ないのです。
学校という組織における最終決定権は、常に校長や理事会、そして教育委員会にあります。
生徒会はどこまで行っても生徒の意見をまとめる代表機関に過ぎず、学校側の承認がなければ、規約一つ変えることすらできません。
結局のところ、どんなに高い理想を掲げたところで、倉田校長の意のままに動く都合の良い駒として利用され、最後は使い捨てられて終わるだけではないでしょうか?
「……一つだけ、聞かせてください」
私は低く澄んだ声で呟くと、顔を上げて目の前に座る沢泉さんの瞳を真っ直ぐに見つめ返しました。
「なぜあなたは、そこまでして『生徒会長』になることにこだわっているのですか? 校長が絶対的な権力を握っている以上、生徒会長になったところで、カリキュラムを変えることなど不可能なはずです。結局すべて倉田校長に阻止され、体裁だけの生徒会長として利用され、捨てられるのがオチなのではないですか?」
私のストレートで一切の遠慮もない問いかけに対し、沢泉さんは動じる素振りすら見せませんでした。
それどころか、氷のように美しい顔立ちに不敵で薄い笑みを浮かべ、ゆっくりと腕を組み直したのです。
「ふふっ。 その懸念はもっともね、優木さん。 普通に考えれば、生徒会長なんて校長の言いなりになるための役職に過ぎないわ。……でもね、倉田校長は私に約束してくれたの」
沢泉さんの瞳に、揺るぎない強く研ぎ澄まされた光が宿りました。
「私が生徒会長になれた暁には、スクール内の情報や生徒の配置、そしてあの強制限界突破システムのデータ管理の権限も、一部私に委託してくれるとね。
……つまりは、当選確実なの」
「……はいぃ?」
はっ…?
今この人、何て言いました…!?
極悪非道で、自らの研究と実績のためなら、生徒やポケモンの命すら平気で投げ出すあの倉田が、そんな約束を素直に守るわけがないでしょう!?
あの男が提示する権限の委託など、彼女をより深く支配し、二度と逃げ出せないように監禁するための罠。あるいはその場しのぎの口先だけの嘘に決まっています!
何より、生徒会長になる前から「当選確実」などと平然と言い放つその姿勢……!
生徒会選挙という、生徒たちが自分たちの代表を真剣に選ぶべき正当なカリキュラムすら、校長との裏取引によって最初から出来レースとして仕組まれているという事実。
その歪みきった前提に何の疑問も抱かず、堂々と誇らしげに口にする彼女の感覚に、私は猛烈な吐き気と激しい憤怒を覚えずにはいられませんでした!
「何を言ってるんですか…!? 沢泉さん、正気ですか!?」
私は思わず身を乗り出し、理解しがたい彼女の言葉に声を荒げました。
「あの倉田校長が、そんな約束を素直に守るはずがありません! 騙されているんです! 権限を与えると言って、あなたを都合よく利用し、限界まで絞り尽くしたら、弟さんの治療権もろとも切り捨てるに決まっています! なぜそんな透けて見えるような嘘を信じるのですか!?」
私の激情に対し、沢泉さんは静かに右手をかざし、優雅な動作で私を制しました。
その表情には、私を嘲笑うかのような冷徹な余裕すら漂っています。
「落ち着きなさい、優木さん。私が倉田の言葉を真に受けて、無条件に信じ込むような愚か者に見えるかしら?」
えっ…?
「校長は私を『家族の命を握られた、扱いやすい完璧な駒』だと高を括っているわ。だからこそ、生徒会長という形だけの権力と引き換えに、煩わしい現場の管理権限の一部を譲り渡し、自分は裏で新装置の研究や、外部組織との交渉に専念しようとしているのよ。 だから管理権限の委託自体は、本当に私に任せる気でいるはずよ」
だとしても今度は別の懸念もありますよ!!
校長が提示したその条件は、裏を返せば、『生徒会長という立場を利用して、お前もあのデバイスとカリキュラムを維持・管理する側に回れ!』と言われてるんです!
自分の弟の命を人質に取られているからと言って、あんな危険極まりない悪魔のシステムを自ら管理・運用する側に回るなど、正気の沙汰とは思えません!
それこそかつて、くれあさんが騙されて、シュシュタンくんを死に追いやられたように、沢泉さん自身が、今度は校長と同罪の加害者へ身を落とすことになってしまうじゃないですかっ!?
しかし、沢泉さんは私の懸念を見透かしたように、冷たい笑みを浮かべました。
「これは私がずっと狙っていた、またとない最大のチャンスを、倉田自らが渡してきたのよ」
「チャンス……ですか?」
隣で涙の残る目を丸くしたしずくさんが、掠れた声で小さく問いかけます。
「そう。デバイスの管理権限とデータアクセス権を正式に手に入れれば、あの首輪の開発ルート、裏で巨額の出資をしている闇の組織、そして倉田が隠し持っている過去の全実験データに、私が直接アクセスできるようになる。……つまり、あの男を完全に社会的に抹殺し、警察やポケモンリーグ機構に告発するための決定的な動かぬ証拠を、内部から手に入れることができるのよ」
彼女の冷徹で計算し尽くされた言葉に、私は思わず息を飲みました。
……そうだったのですね。
彼女は校長に屈服し、甘んじて彼の手先になっていたわけではありませんでした。
大好きな従姉の人生を壊され、従姉のパートナーポケモンを殺され、大切な弟の命を盾に取られ、親友のコリンクまでも犠牲にされかけた激しい屈辱と怒りに耐え抜きながら、校長の懐へと深く潜り込み、致命的な一撃を叩き込むための刃を、たった一人で人知れず研ぎ続けていたのです。
「だからこそ、私には生徒会長の座が絶対に不可欠なの。形式上だけでも生徒会長選挙で圧勝し、校長に私を選ばせなければならない。
そして、そのためには……。
スクール内で浮いた存在でありながら、圧倒的な実力と注目を集めている、あなた――優木せつ菜と……」
沢泉さんはそこで一度言葉を切り、氷のような冷ややかな視線を、私の隣で小さくなっているしずくさんへ向けました。
「今年度4年生のバトル成績最下位の弱い、あなた――桜坂しずくの存在が、必要なのよ」
「っ……!」
しずくさんの身体が、ビクッと大きく跳ね上がりました。
彼女の瞳から、すっと血の気が引いていくのが分かりました。
抱きしめられているヨーテリーも、主人のショックに反応して、低く唸り声を上げます。
「実力至上主義のあのスクールにおいて、『最強の異端児』である優木さんと、『落ちこぼれの象徴』である桜坂さんが、私を支持して、生徒会長陣営の配下に加わる。
そうなれば、スクール内の上位層も下位層も、まとめて私を支持せざるを得なくなるわ。
当選確実でも、やっぱりみんなからの票があって、みんなに選ばれたという形があったほうが、都合がいいでしょ?
そうなったら、校長にとっても『反対派や弱者まで完全に抑え込んだ完璧なリーダー』として、より私に権限を委託しやすくなるわ」
沢泉さんは、真っ直ぐ私としずくさんを見つめ、洗練された綺麗な動作で静かに両手を差し出しました。
その表情には、自らの完璧なシナリオに対する絶対的な自信が満ち溢れていました。
「私と組みなさい。 あなたたちが力を私に貸してくれれば、スクールをとっとと終わらせることができる。 みんなで倉田を葬りましょ!」
その言葉が耳にした瞬間、私の中で、重く張り詰めていた何かがぶちりと音を立てて弾け飛びました。
さっきまで、彼女の復讐の熱意や、従姉の凄惨な過去に対して、抱いていたわずかな同情や理解すら、一瞬にして吹き飛んで消え去っていきました。
「……撤回してください」
私の低く押し殺した声に、沢泉さんは差し出した手を止めて眉をひそめました。
「……はっ?」
「せつ菜ちゃん……?」
隣のしずくさんも、急激に冷え切った私の雰囲気に驚いたように目を見開いて、私を見つめます。
「沢泉さん。あなたの弟さんや親友さんを想う気持ち、そしてくれあさんの無念を晴らしたいという復讐心は、痛いほど伝わりました。
ですが……
しずくさんのことを、『落ちこぼれ』、『弱い』という言葉で切り捨てたことだけは、今すぐ撤回してください!」
沢泉さんは私の指摘に対し、悪びれる様子もなく、むしろ合理的な正論を振りかざすように堂々と言い放ちました。
「何を言い出すかと思えば、桜坂さんが、4年生の中でバトル成績は最下位で、弱者として扱われているのは客観的な事実でしょ? このまま黙って受け入れるなんて悔しくないの? だったらその事実、利用したほうがいいでしょ? 彼が彼女を、どれだけ恥晒しとして見せしめにしてるか、世間にわからせてあげましょ!」
「しずくさんは弱くなんてありません!」
……味方かと思った私が、バカでした。
結局この人も、使う言葉や正義の形を変えてるだけで、根底にある思想や、人を都合の良い駒として扱う本質は、倉田校長と何一つ変わりません!
自分の目的のためなら、傷ついている他人の尊厳を踏みにじっても平気でいられる。
そんなやり方が、どうして正しい改革だと言えるのでしょうか!?
「彼女は誰よりも真面目で優しく、自分のパートナーであるヨーテリーのことを一番に考え、傷つきながらも、しっかり守ろうとしている、立派なポケモントレーナーです!たかがあのスクールが作った歪んだ評価基準や数値だけで、彼女の強さや価値を、あなたに勝手に決めつけられる筋合いはありませんよ!!」
「せつ菜ちゃん……」
しずくさんが瞳に涙を溜めながら、私の横顔を感極まったように見上げました。
沢泉さんは立ち上がった私を冷ややかな目で見上げると、ふっと呆れたようなため息を漏らしました。
「感情的になるなと言ったはずよ、優木さん。 評価基準が歪んでいようと何だろうと、今のスクールを支配しているルールはそれなの。私たちが勝つためには、そのルールと評価も利用するしかないのよ。あなたのその理想論で、弟の命や、くれあが失った時間が戻るとでも思っているの?」
「理想論ではありません! 誰かを踏み台にして、誰かの尊厳を犠牲にして手に入れた勝利や改革に、一体何の意味があるのですか!? あなたのやろうとしていることは、形を変えた倉田校長の支配でしかありません! そんなやり方に、私たちは絶対に協力できません!」
沢泉さんの瞳から、それまでの余裕が消え去り、刃物のように鋭い殺気が宿りました。
彼女は優雅に組んでいた腕を解くと、静かに椅子から立ち上がりました。
「……愚かね、優木せつ菜。そんなことで私の差し出した手を跳ね返すなんて。
あなたたちが私に協力しないというのなら、もう結構よ。
けど覚えておきなさい。
私の計画の邪魔をするようなら……、あなたたちもまとめて排除するわよ」
「構いません。 私たちも、あなたのやり方に加担するつもりは一切ありません!」
私はそう言い放つと、ポケットから財布を取り出し、千円札を二枚、テーブルの上に静かに置きました。
「……エクレアと紅茶、ごちそうさまでした。とても美味しかったです。ですが、自分たちのお代はきちんとお支払いします」
それを見た沢泉さんは、眉間に深いしわを寄せて不快感を露わにしました。
「……受け取るつもりはないわ。私が奢ると言ったはずよ」
「いいえ。あなたに貸しを作るつもりはありません」
私は一歩も引かずに言い放つと、足元で不安そうに見上げていたイワンコとピチューに優しく視線を送り、ヨーテリーを抱っこしていたしずくさんの手を取って立ち上がらせました。
「行きましょう、しずくさん」
「う、うん……!」
私たちは一度も振り返ることなく、冷ややかな視線を背中に送る沢泉さんを置き去りにして、パティスリーチュチュの扉を押し開けました。
チリン、と可愛らしいドアベルの音が寂しげに響き渡ります。
外に出ると、ニジガサキシティの冷たい冬の夜風が、火照った私たちの頬を鋭く撫で上げました。街灯の光が薄暗い道を照らす中、私は深く息を吐き出し、夕暮れの空を見上げました。
校長という巨大な悪意。
そして、それに抗うために自らも冷酷な計算の中に身を投じた沢泉ちゆ。
スクールの闇は、私が想像していた以上に深く歪んでいました。
けれど、私は絶対に大切なポケモンの尊厳を売り渡すような真似だけはしないと、強く心に誓いました。
◆沢泉side
「はぁ……。まったく……」
本当に、どこまでも純粋すぎるのよ、あの2人は。
現実の残酷さも、巨大な権力という組織を叩き潰すために必要な計算も何一つ理解していない。
ただの感情と甘い理想論だけで叫び、私の差し出した手を握らず去っていく。
あんな正義感で、あのスクールの闇に挑もうなんて、自殺行為以外の何物でもないというのに。
私はテーブルの上に静かに残された二枚の千円札を拾い上げ、レジへと収めた。
そして、一部始終を見ていたお客様たちに向き直り、いつもの隙のない完璧な笑みを貼り直し、美しく優雅に深々とお辞儀をした。
「皆様、店内でお見苦しいところをお見せしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。 騒がしい時間はもう終わりましたので、ゆっくりとお茶とお菓子をお楽しみください」
お客様たちが「いえいえ」「大変だね」と安堵したように頷き合い、再び雑談へ戻っていくのを確認して、私は2人が使っていたティーカップとエクレアのお皿をトレイに乗せ、きちんと洗って片づけてから、奥の居住スペースへと通じるドアノブに手をかけた。
ドアを静かに押し開けた瞬間、繊細なオルゴールの優しい音色が流れてきた。
「…っ! この曲……!」
忘れるはずもない。
かつて、くれあがまだあのアカデミーの生徒として、輝かしい未来を夢見ていた頃…。
あのジグザグマのシュシュタンが、くれあと一緒にいつも嬉しそうに聴いていた、シュシュタンの大好きな曲だ。
そっと部屋のドアを隙間から覗き込むと、横たわるくれあのそばに伯母さんが腰掛け、眠る彼女の髪を優しく撫でながら、その小型のオルゴールを鳴らしていた。
くれあの頭元では、2匹のマホイップたちが小さな身体を寄せて、彼女の頬を心配そうに撫でている。
「ポチャ……」
ペギタンも、くれあの手にそっと自分の短い手を重ね合わせた。
彼もまた、覚えているのだ。
まだシュシュタンが生きていた頃、私の家の庭を2匹で無邪気に駆け回り、くれあが心を込めて作ってくれたポフィンを分け合って嬉しそうに頬張っていた、あの温かな日々の記憶を。
「伯母さん、くれあはどう?」
私は静かに部屋に入り、声を落として尋ねた。
伯母さんは振り返ると、優しく微笑んで、小さく頷いた。
「薬が効いてきて、呼吸も落ち着いて、ぐっすり眠ったわ…。 ごめんね、ちゆ。 せっかくお友達を連れてきてくれたのに、こんなことになってしまって…」
「ううん、気にしないで。彼女たちは、友達というわけではないから…」
私は淡々と答え、眠るくれあの顔を見つめた。
あんなに美しく、誰よりも優しく、私にとって憧れの存在だった従姉。
それが今や、倉田の狂気によって心身を破壊され、命の砂時計を削られながら生きることを余儀なくされている。
あの男を……、倉田を絶対に許すわけにはいかない。
そのためなら、私はどんな悪魔に身を落とそうと構わないわ。
「ふふっ…。ねぇ、ちゆ。 さっきのお客さんの2人。チラッと裏から見てたけど、なんか昔のくれあとちゆちゃんみたいって思っちゃった」
「え……? あの子たちが、私とくれあに……?」
思いもよらない伯母さんの言葉に、私は思わず眉をひそめた。
「正義感が強くて真っ直ぐで突っ走っていたくれあと、その横で少し不安そうに、でも一生懸命くれあの後をついていくちゆ」
「いつの話をしてるの…。私がまだ5歳くらいの話でしょ!」
昔の私なら、確かにそうだったかもしれない。
桜坂しずくのように、優しくて強いくれあの後ろにただ隠れて、その服の裾を掴んでいるだけの弱虫な子供だった。
でも、今の私は、もうそんな甘っちょろい子供じゃない。
守られるだけの存在から、自ら刃を手に取り、大切な家族と過去の無念を晴らすために戦う支配者に生まれ変わったの。あの2人と一緒にされては困る。
「じゃ伯母さん。用も済んだし、私はそろそろ帰るわ。 くれあによろしく」
「ありがとう、ちゆ。気をつけて帰るのよ」
私は鞄を持ち直し、姿勢を正してドアの方へと向き直った。
「行くわよ、ペギタン」
「ポチャ」
私はペギタンを促すと、パティスリーチュチュの裏口から冷たい風が吹き抜ける静かな街路へと踏み出した。
街灯の明かりがパラパラと道に影を落とす中、ポケットからスマートフォンを取り出し、画面を操作してボタンを押す。
数回のコールで、相手は電話に出た。
『……ちゆ? どうだったの、例の件は』
スピーカーから聞こえてきたのは、私の親友であり、あのスクールでの数少ない理解者。
そしてあの首輪からコリンクを間一髪で救い出した過去を持つ、菱川六花の声。
「もしもし、六花。……ごめん、優木せつ菜と桜坂しずくの取り込みは失敗した。 想像以上に頑固だったわ、優木せつ菜」
電話の向こうで、六花が苦々しく息を吐き出す気配が伝わってくる。
『やっぱり駄目だったのね。どうするの? 桜坂しずくも含めて、反対派として徹底的に潰す?』
「いいえ。作戦自体に変更はしないから」
私は足を止め、夜空に浮かぶ冷ややかな月を見上げた。
「あの子たちが乗ってこなかったのは計算外だったけど、生徒会長の座を手に入れるためのプロセスは、すでに完璧に組み上げてある。 あの2人を味方に引き込めなかったところで、倉田との取引と私自身の票があれば、選挙結果は何一つ揺らがないわ」
『相変わらず完璧主義ね。 まあいいわ。あなたがそう決めたなら私はそれに従うだけよ。 明日からの選挙期間、邪魔が入らないように私が周りを見張っておくわ』
「頼むわね、六花。……いよいよ明日から、生徒会長選挙が正式に始まる。あのスクールの闇を内部から引き裂くための、最初のカウントダウンよ」
『えぇ。あんなスクール、私たちでさっさと終わらせてやりましょ』
通話を切ると、私はスマホをポケットにしまい、深く息を吐いた。
優木せつ菜、桜坂しずく。
あなたたちの純粋な正義感や仲間想いの強さは、きっと人として正しいのでしょう。
けれど、何度も言うけど、綺麗事だけでは誰も救えないの!
明日から始まる生徒会長選挙。
私は自分だけのやり方で、あの悪魔の居城を内側から崩壊させてみせる。
たとえその果てに、誰からも理解されない悪者として蔑まれることになろうともね――。
オルゴールのイメージBGMは、おジャ魔女どれみの「遠い想い出」を使わせてもらおうかな!w
興味ある方は、こちらから。これはピアノだけど、本家ではオルゴールが流れてたのw
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