中川菜々から優木せつ菜 〜ポケモンの世界であなたと紡ぐ奇跡〜   作:あいライス

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54章「幕が開く復讐劇」

◆沢泉side

 

 

翌朝、ニジガサキシティ ポケモントレーナーズスクールの廊下を、私は寸分の狂いもない足取りで、校長室の前へたどり着いた。

 

胸に輝く、金色の生徒会のバッジ。その重みを感じながら、ドアを静かにノックする。

 

 

「沢泉です」

 

『入りたまえ』

 

 

扉の向こうから、聞き慣れたあの低く粘つくような声が響いた。

 

 

「失礼します」

 

 

扉を開けて、足を踏み入れると、デスクの奥から立ち上がった倉田が、これ見よがしにパチパチと拍手を送りながら、私に歩み寄ってきた。

 

 

 

「やあやあ、おめでとう! 沢泉君! 見事な勝利だったね!」

 

 

 

満面の笑みを浮かべた倉田は、私の返答を待たずに、その分厚い手で私の手を強く握りしめてきた。

 

 

 

「ありがとうございます、校長先生。 生徒たちの期待に応えるべく、精進いたします!」

 

 

 

笑顔の仮面を貼り付けたまま、私は心の中で静かに舌を打ち、不快感を殺した。

 

この男の手に触れられているだけで、手が腐り落ちそうなほどの嫌悪感が込み上げてくる。

 

だけど今の私が気になるのは、校長室のソファーに座ってる、もう一人の人物。

 

 

 

現生徒会長である6年生、伊集院先輩。

 

 

 

 

倉田の方針に忠実で、異論を唱える生徒たちをこれまで切り捨ててきた、まさに倉田の忠実なポチエナとも言うべき男だ。

 

伊集院はソファーから立ち上がると、気取った仕草で、私の前へと歩み寄り、何の躊躇いもなく、私の手を倉田同様に、両手で握り込んできた。

 

 

「おめでとう、沢泉。君なら次のニジガサキを任せるのにふさわしいと思っていたよ」

 

「お褒めいただき光栄です、伊集院先輩」

 

 

女子としての素直な感覚を言わせてもらうなら、生理的に受け付けない、実に気持ちの悪い男だわ。

 

 

ただ倉田校長のお気に入りというだけで、威張り散らし、下級生をゴミのように見下してきた男の手の感触が、私の肌に触れられるだけでも悪寒が走るわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

本当は出来ることなら、正攻法の面倒な選挙なんて挟まずに、とっとと、この男を裏から引きずり下ろして、退かせたかったのが本音だけど、まあ、いいわ。

 

 

 

 

 

 

 

来月このスクールを卒業していく、こいつのことなんてどうでもいい。

 

今は、私の計画を完遂するために、私に大人しく利用されていればいいのよ。

 

これから約1か月間、彼から生徒会の業務引き継ぎを受けるのが、私の建前上の仕事となる。

 

しかし、都合の良いことに伊集院もまた、私の掲げた「強制限界突破システムの全校配布」という公約には、大賛成してくれていた。

 

 

「君の掲げた公約は素晴らしい。 全校生徒のポケモンバトル戦闘力を底上げする、我がスクールの『正義』を証明に相応しい絶好の機会だ。  引き継ぎ期間中ではあるが、その件に関しては、もう準備を始めてもらって構わないよ」

 

 

「ありがとうございます。では、遠慮なく進めさせていただきますね」

 

 

伊集院の言葉を受け、倉田校長は満足そうに目を細めると、デスクの引き出しから、一通の厳重に封かんされた書面を取り出し、私に手渡してきた。

 

倉田校長から、例のデバイスの管理権限を私へと委ねる、正式な委託書だ。

 

 

「頼んだよ、沢泉生徒会長。 君の手で、このスクールに、圧倒的な強さと秩序をもたらしてくれたまえ」

 

「はい。お任せください、校長先生」

 

 

私は委託書を受け取り、胸元に抱えながら、完璧なお辞儀をして、伊集院と今後の業務について話してから、生徒会室の鍵も受け取り、私だけ先に校長室を後にした。

 

 

* * *

 

 

カチャン、と背後で重々しい校長室の扉が閉まる。

 

 

 

その瞬間、私は貼り付けていた笑みを瞬時に消し去り、手に残る不快な感触をスカートで拭い、深く息を吐き出した。

 

冷たい空気が漂う長廊下には、私の刻む規則正しい靴音だけが虚しく響いている。

 

朝の会前の静まり返った校舎内で、すれ違う教師たちからの祝いの言葉をいなしながら、私は迷いなく、生徒会室へ足を進める。

 

 

 

生徒会室の扉の前に立つと、私は鍵を開けて、取っ手に手をかけ、静かに扉を押し開けた。

 

 

 

 

 

誰もいない部屋。冷ややかな空間へと足を踏み入れ、私は鍵を内側から閉めた。

 

 

 

中央に鎮座する、生徒会長だけに許された革張りの椅子。

 

 

 

私は迷わずそこへ歩み寄り、深々と腰を下ろした。

 

 

手元の委託書を見つめると、押し殺していた感情が爆発し、私の唇からは自然と笑みがこぼれ落ちた。

 

 

 

「ふふっ……あははっ……!」

 

 

 

 

 

誰も見ていない室内で、私は声を出して笑った。

 

 

 

 

倉田も、伊集院も、倉田の腰巾着の教師たちも、私に票を投じた愚かな生徒たちも、全員が私の敷いたレールの上で、疑いもなく踊っている。

 

 

倉田は私を『家族の命を握られた、扱いやすい完璧な駒』だと完全に高を括り、浮かれている。

 

煩わしい現場の管理権限を私に投げ与え、自分は裏で新装置の研究や闇の組織との交渉に没頭できると思い込んでいる。

 

 

 

 

 

滑稽だわ、本当に。

 

 

 

 

 

この書面を手に入れたことで、私はついにあの首輪の開発ルート、裏で巨額の出資をしている闇の組織、そして倉田が隠し持っている過去の全実験データ。

 

 

 

 

くれあのシュシュタンを死に追いやった初期デバイスの全記録!

 

六花のコリンクを苦しめた一つ前のデバイス!

 

そしてこの間、浜野に使わせた失敗作のデバイス!

 

 

 

全部のデータに直接アクセスできるカードを手に入れたのだから!

 

 

 

 

じっくり、ゆっくり調べさせてもらうわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ!

 

 

レディース&ジェントルメン♪

 

 

 

 

 

 

 

 

私が倉田を地獄へ引きずり下ろす、最高な復讐劇第1章が、いよいよ始まるわ!

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