デュエル・マスターズ〜カジュアル勢の俺が引きだけでカードゲーム主義の世界を破壊しても良いんすか!?〜   作:社畜ヲタク

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今回使用するデッキは私自身思い入れ...というか復帰るすきっかけになったデッキです
今でもそこそこ戦えて楽しいのでお気に入りです


第19話︰突如脳内に存在しない記憶が流れ込む

決勝トーナメント準決勝を前代未聞の超次元特殊勝利で制し、学園中の度肝を抜いた高咲コウ。

しかし、歓声の渦巻くアリーナから離れ、再び完全な静寂に包まれた選手控え室に戻った彼の表情は、これまでにないほど険しかった。

 

机の上に並べられた、いくつもの自作デッキ。

予選からここまでコウの快進撃を支え、数々のガチ勢を葬り去ってきたカードたちの束を前に、コウは腕を組んだまま、かつてないほどの思考の迷宮へと迷い込んでいた。

 

「ようやくここまで来た……。次が本当の、泣いても笑っても最後の舞台、決勝戦だ」

 

コウはぽつりと、誰もいない室内で呟いた。

 

「だからこそ……どのデッキで戦えばいいのかが、分からない。これまでみたいに、相手の意表を突く多彩なループコンボか? それとも、盤面を一撃で制圧する圧倒的な巨大クリーチャーか? いや、誰も見たことのないような、あまり知られていないマイナーカードで組んだロマンデッキか……?」

 

対戦相手は、この学園の絶対王者にして頂点に君臨する生徒会長・聖龍矢。

 

これまでの相手とは格が違う。どんなガチ戦術を仕掛けてこようとも、生半可なカジュアルコンボでは一瞬で叩き潰されるだろう。強敵と戦える純粋なワクワク感は確かに胸の奥で脈打っている。だが、それと同じくらい「どの相棒とともに、あの頂点に挑むべきか」という迷いが、コウの決断を鈍らせていた。

 

「……ダメだ。一度思考をリセットしよう」

 

煮詰まった脳を冷やすため、パイプ椅子から立ち上がり、部屋の隅にある自動販売機へと向かおうとした。その時、思考に気を取られていた足元が、机の端に置いてあった一つのデッキケースに引っかかってしまう。

 

「あ――」

 

ガシャァン! と鈍い音が響き、ケースの中から何十枚ものカードが床一面へと派手に散らばった。

 

「あ〜、やっちゃった……! 俺の相棒達が!」

 

慌てて床に膝をつき、散乱したカードを一枚一枚、愛おしそうにかき集め始める。多彩な呪文、愛嬌のあるクリーチャー、かつて激闘を共にしたカードたち。その中から、ふと、一枚のカードを手に取った瞬間――コウの指先から、電撃のような衝撃が脳裏へと突き抜けた。

 

(――なんだ、これ……?)

 

視界がぐにゃりと歪み、強烈な目眩と共に、コウの意識は現在の控え室から引き剥がされていく。

それは、彼がこの異世界に転生して以来、一度も触れたことのなかった「この世界の本来の高咲コウ」が持っていた、遥か遠い日の記憶の奔流だった。

 

 

――回想(幼き日の記憶)――

 

どこにでもある、小さな公園のベンチ。

夕暮れ時の優しい光が差し込むその場所で、まだ幼い二人の子供が、おもちゃのデュエル台を広げて熱く向き合っていた。

相手のバトルゾーンには、禍々しくも圧倒的な威圧感を放つ超強力なドラグハート・フォートレスと、それによって強化された凶悪なクリーチャーたちが、ずらりと並んで威嚇している。子供たちのデュエルとは思えないほどの、完璧かつ絶望的な布陣だった。

対戦相手の席にいたのは、幼い頃の天音だった。彼女は短い髪を揺らし、自慢げに小さな胸を張って、勝ち誇ったような声をあげる。

 

「ふっふーん! どう、コウ! この完璧な盤面、絶対に返せないでしょ! あたしの可愛い、完璧なドラグハート達なんだから!」

 

天音の無邪気な、しかし容赦のない勝利宣言。

普通の子供なら泣き出して降伏するような絶体絶命のピンチ。だが、ベンチの反対側に座る幼いコウの瞳には、絶望の色など一微塵もなかった。彼はむしろ、楽しそうに不敵な笑みを浮かべ、小さな声を張り上げた。

 

「諦めないもん! デュエマは、最後まで諦めなければ、絶対に逆転できるんだよ! ――僕のターン、ドロー!!」

 

小さな手で、渾身の力を込めて引き抜かれた一枚のカード。

そのカードを見た瞬間、幼いコウの顔がパッと輝いた。彼は満面の笑みを浮かべ、そのカードを天に向けて高く掲げる。

 

「……来た! 来たよ、天音! 10コストを支払い、召喚! 行け、僕の最高の切り札!! ――《ーーーーーー》!!」

空間を引き裂き、光の粒子と共にバトルゾーンへ降臨したのは、金色に輝く圧倒的な風格を持った超巨大なクリーチャーだった。その圧倒的な神の力が解き放たれた瞬間、天音が完璧に築き上げていたドラグハートの布陣が、文字通り一撃で、跡形もなく吹き飛ばされていく。

 

「ええええええーーーっ!?」

 

自分の最強の盤面が消滅したのを見た幼い天音は、ショックを受けるどころか、その瞳をこれ以上ないほどキラキラと輝かせ、ベンチから飛び上がった。

 

「何それ! すっごーい! すごい、すごい、すごーい!! あたしの完璧な盤面を一気に崩しちゃうなんて! コウ、君はよくそんな誰も知らない、すごいカードを知ってたね!」

 

「へへん、すごいでしょ! これが僕の、一番大好きな相棒なんだ!」

 

天音に褒められ、顔を真っ赤にして嬉しそうに鼻を擦る幼いコウ。二人はそのまま、夕日が完全に沈むまで、ワイワイと笑い声を響かせながら大好きなデュエルを続けていった。

 

ーー回想終了ーー

 

 

「……っ」

ハッと我に返った時、控え室の冷たい床の上で、一枚のカードを握りしめたまま立ち尽くしていた。

 

目元がなぜか少し熱い。

手元にあるカードを見つめる。それは、先ほどの記憶の中で幼い彼が掲げていた、傷だらけの、けれど美しく輝く《ーーーーー》だった。

 

「そうか……」

 

コウの唇から、自然と温かい笑みがこぼれ落ちる。

 

「これが、この世界の俺の『オリジン(原点)』だったんだな。天音と笑い合いながら、ただ純粋にロマンを追い求めていた、最初の記憶……」

 

迷いは、完全に消え去っていた。多彩なコンボも、効率的な勝利も、今の彼には必要ない。戦うべき相棒は、最初から自分の手の中にいたのだ。

 

「よし。――お前の最高の相棒、この大舞台で使わせてもらうぞ!」

 

コウは力強く頷くと、散らばったカードの中から《ーーー》を軸とした、自身のすべてを懸けるにふさわしいデッキを、魂を込めて作り上げていった。

そして……ついに、運命の時が訪れる。

 

 

「これより、決勝戦を行います! 選手入場!!」

 

重厚なゲートが左右に開き、眩いスポットライトがコウの身体を照らし出す。

一歩、アリーナへと足を踏み入れた瞬間、耳を劈くような歓声と地鳴りのような拍手がコウを包み込んだ。準決勝で見せた奇跡の逆転劇により、今や会場の誰もが、この最底辺から這い上がってきたトリックスターの一挙手一投足に目を奪われている。

 

バトルフィールドの対角線上からは、純白の制服を靡かせた生徒会長・聖龍矢が、絶対王者のオーラを放ちながら静かに入場してくる。

向かい合う、二人の天才デュエリスト。

 

二人がデュエル台を挟んで対峙したその瞬間、アリーナ全体の照明が最高潮に達し、実況の興奮したアナウンスが響き渡った。

 

『――さあ、観客の皆様! 大変、大変長らくお待たせいたしました!! ついに、本日の大目玉! 我が学園リーグの頂点を決める、最高の【決勝戦】を執り行います!!!』

 

その叫びを合図に、会場のボルテージは限界を突破してMAXへと達した。スタジアム全体が物理的に揺れるほどの、凄まじい地鳴りのような大歓声が湧き上がる。

 

『――お二方、準備はよろしいでしょうか!』

 

聖龍矢は優雅に微笑みながら、己のデッキをスロットへと差し込んだ。

コウもまた、自身の原点である相棒が眠るデッキを、確かな誇りと共にデュエル台へとセットする。

ウィン、と重厚な電子音が響き、バトルフィールドに巨大なシールドが展開された。

 

『それでは皆さん、行きますよ! カウントダウン!!』

 

実況の声に合わせ、アリーナ中の観客、そして対峙する二人の声が一つに重なり、天を突くような大音量となって炸裂した。

 

「「「『デュエマ!! スタート!!!』」」」

 

今ここに、学園の歴史に刻まれる、激しく熱い最後の戦いの火蓋が切って落とされた。

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