デュエル・マスターズ〜カジュアル勢の俺が引きだけでカードゲーム主義の世界を破壊しても良いんすか!?〜   作:社畜ヲタク

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第20話︰爆発オチなんてサイテー!

 

運命のカウントダウンがアリーナを震わせ、学園の最高峰を決める【決勝戦】の火蓋が切って落とされた。

スタジアムを埋め尽くす観客たちの地鳴りのような大歓声。その中心、眩いスポットライトに照らされたバトルフィールドで、高咲コウと聖龍矢は、静かに、しかし互いの五感を鋭く研ぎ澄ませながら対峙していた。

 

先ほど控え室で、この世界の自身の「原点」である記憶に触れたコウの胸中には、もはや一微塵の迷いもない。対する聖龍矢もまた、絶対王者の風格を纏いながら、コウの瞳の奥に灯る不敵な闘志を真っ正面から受け止めていた。

 

 

〜1ターン目:先攻(コウ)〜

 

 

「聖先輩」

 

コウは手札から1枚のカードを抜き出し、静かにマナゾーンへと滑らせた。その瞳が、白銀の制服を靡かせる王者を鋭く射抜く。

 

「あの時の屈辱……ここで、きっちり晴らさせてもらいますよ」

 

予選の初期、まだ「底辺」と蔑まれていた頃に突きつけられた、圧倒的な実力差の記憶。それを忘れたわけではない。だが、今のコウには、あの時とは違う相棒たちが、そしてこの世界の自分が遺してくれた熱い魂がある。

 

「マナチャージをして、俺はこれでターンエンドだ」

 

 

〜1ターン目:後攻(龍矢)〜

 

 

「僕のターン、ドロー」

 

聖龍矢は優雅な仕草でデッキのトップからカードを引き抜いた。コウの鋭い視線と宣戦布告を受けても、その美しい顔立ちに浮かぶ微笑みが消えることはない。それどころか、彼の瞳には純粋な歓喜の色がじわりと広がっていく。

 

「いいね、その勢いだ、高咲クン。あの時、僕の前に立った君が魅せてくれた、あの燃え盛るような熱い闘志……もう一度、この最高の舞台で見せておくれ」

 

龍矢は手札からカードを1枚選び、マナゾーンへと置いた。

 

「マナチャージをして、僕もターンエンドだよ」

 

まだ互いに1枚ずつのマナを置いたに過ぎない。クリーチャーの影さえ見えない静かな立ち上がり。しかし、二人の間に流れる空気は、まるで高圧電流が奔るかのようにバチバチと激しい火花を散らし、観客たちに息を呑ませるほどの緊迫感を孕んでいた。

 

 

〜2ターン目:先攻(コウ)〜

 

 

「俺のターン、ドロー。――聖先輩、のんびり構えている暇は与えない!先に動かせてもらいます!」

 

コウは引き込んだカードを澱みなくマナゾーンへとチャージする。これでマナは2枚。コウの右手が、手札の新たな相棒へと伸びた。

 

「2コストを支払い、クリーチャー《ヴェネラック-F5》を召喚! ターンエンドだ!」

 

光の粒子がデュエル台の上に収束し、黄色いボディを持った、近未来的な戦闘マシンのような車型のクリーチャーが姿を現した。駆動音を響かせながら、コウの盤面を固める。

 

 

〜2ターン目:後攻(龍矢)〜

 

 

「ほう……なるほど、〝メカ〟だね。今の環境ではかなり珍しい種族を、君は相棒に選んだんだね」

 

龍矢は少しだけ驚いたように目を細めたが、すぐに絶対王者の冷静さを取り戻してカードを引き抜く。

 

「僕のターン、ドロー。マナチャージ。――では、こちらも次の大仕事に向けて、確実に準備をさせてもらうよ」

 

龍矢が提示したのは、2コストの魔力。

 

「2コストを支払い、《大集合!アカネ&アサギ&コハク》を召喚。登場時効果により、山札の上から2枚を見る。そのうちの1枚をマナゾーンへと追加し、残りのカードは山札の一番下へ置く。――ターンエンドだよ」

 

コウの珍しいメカデッキの始動に警戒を示しつつも、龍矢は一歩も引くことなく、完璧な手際で自身のマナ基盤を整えていく。

 

 

〜3ターン目:先攻(コウ)〜

 

 

「俺のターン、ドロー! ――マナチャージ!」

 

コウの脳裏には、先ほど見た幼き日の記憶――天音と笑い合いながら、ただ純粋にロマンを追い求めていたあの輝きが鮮明に焼き付いている。その原点の力が、今の彼のプレイングをさらに研ぎ澄ましていた。

 

「3コストを支払い、クリーチャー《獲銀月ペトローバ》を召喚!」

 

バトルゾーンに現れたのは、美しくも強固な装甲を纏ったメカ・クリーチャーだった。そのボディが放つ白銀の輝きが、コウの陣営を包み込んでいく。

 

「ペトローバの効果発動。このクリーチャーは、次の俺のターンの開始時まで、バトルゾーンを『離れない』! 完璧な耐性を持った強固な壁だ。これでターンエンド!」

 

 

〜3ターン目:後攻(龍矢)〜

 

 

「ふむ……純粋なメカデッキというわけだね。本格的にその種族と戦うのは初めてだが、その秘められた力、僕に存分に見せてもらおうか」

 

龍矢は感心したように頷きながら、ドローしたカードをマナゾーンへと置く。これで彼のマナゾーンには、火、光、水、自然とバランスよく蓄積されていく。

 

「マナチャージ。そして、3コストを支払い、G・城――《我竜塔第七層 ハッスル・キャッスル》を展開!」

 

ズズズ……と地響きを立てて、龍矢の背後に古めかしくも巨大な城のホログラムがそびえ立った。

 

「ハッスル・キャッスルの城効果により、山札の上から1枚をマナゾーンへ追加する。これで、僕の準備もまた一歩進んだ。ターンエンドだよ」

 

聖龍矢のシールド(5→6)

 

 

〜4ターン目:先攻(コウ)〜

 

 

龍矢のマナゾーンに並ぶカードの色、そして背後にそびえ立つ《ハッスル・キャッスル》を鋭く睨みつけた。あらゆるカードの特性を網羅している脳内コンピュータが、瞬時に龍矢のデッキの正体を割り出す。

 

(あのマナの色……そして、リソースを稼ぎながらのメタをするあの城。間違いない、聖先輩のデッキは【あのデッキ】か……!)

 

ならば、猶予はない。相手がその圧倒的な統率力で盤面を完全に掌握する前に、メカの圧倒的な展開力で押し潰すしかない。

 

「――だったら、早めに仕掛けさせてもらう! 俺のターン、ドロー! そして、マナチャージ!」

 

コウの瞳に、勝利への冷徹な光と、純粋なエンタメのワクワク感が同時に灯る。

 

「3コストを支払い、クリーチャー《聖沌の鎖 94nm4(ガンマ)》を召喚! ――そして、今出したばかりのガンマをタップすることで、バトルゾーンのペトローバを能力向上――『ハイパー化』させる!!」

 

ガキィン! と重厚なロック音が響き、ガンマのエネルギーを吸収した《獲銀月ペトローバ》の装甲がさらに巨大化し、凄まじいプレッシャーを放ち始めた。

 

「行くぞ! まずは《ヴェネラック-F5》で、聖先輩の要である《ハッスル・キャッスル》をブレイクする!!」

 

ヴェネラックが猛烈な加速で突撃し、龍矢の城の防壁へと激突した。光の盾が激しく砕け散る。

 

聖龍矢のシールド(6枚→5枚)

 

「そして、ハイパー化したペトローバで攻撃! ――だが、この攻撃の瞬間に『革命チェンジ』を発動! 手札の《ドラン・ゴル・ゲルス》とチェンジする!!」

 

「なにっ……!?」龍矢の目が初めて驚愕に揺れた。

 

バトルゾーンからペトローバが手札へと戻り、代わりに黄色と黒の凶猛な電流を纏った、メカ・ドラゴンのような巨躯を持つ《ドラン・ゴル・ゲルス》が咆哮を上げて出現した。

 

「革命チェンジの処理の前に、ペトローバの攻撃時効果が連鎖して発動する! 俺のシールドを上から1枚増やし、その後、増えた後のシールドの枚数『以下』のコストを持つメカ・クリーチャーを、手札からコストを支払わずにバトルゾーンへ出す!」

 

コウは山札の上からカードをシールドへと追加した。

 

高咲コウのシールド(5→6)

 

「現在の俺のシールドは6枚! したがって、6コスト以下のクリーチャー――《シェケダン・ドメチアーレ》をコスト0でバトルゾーンに呼び出す!!」

 

ディスコのミラーボールのようなド派手な輝きを放ちながら、黄金の車型クリーチャー《シェケダン・ドメチアーレ》がド派手な重低音と共に爆誕する。

 

「さらに、《ドラン・ゴル・ゲルス》のチェンジ登場時効果発動! 自分のシールドを1枚ブレイクする、その後に手札からコスト3以下のクリーチャーを1体、場に出すことができる! 俺は増えたばかりのシールドを1枚ブレイクし、今手札に戻したばかりの《獲銀月ペトローバ》を、もう一度バトルゾーンへと呼び戻す!!」

 

高咲コウのシールド(6→5)

 

ガシャァン! と自身のシールドを叩き割りながら、コウの場に再びペトローバが舞い降りた。一瞬の間に目まぐるしく入れ替わるクリーチャーたち。だが、コウの怒濤の連鎖はまだ止まらない。

 

「ここで、タップされている《聖沌の鎖 94nm4》の効果が連鎖発動する! 各ターンに1度、自分のシールドが増えた時、俺は『メカ・メクレイド5』を行う! 山札の上から3枚を確認する!」

 

コウは山札の上から3枚のカードを鋭くめくった。

 

「その中から、コスト5以下のメカを1体踏み倒す! 俺が召喚するのは、《アシステッド・アルデッド》! ――さらに、場に出ている《シェケダン・ドメチアーレ》の効果によりカードを4枚ドロー! 続けて《アシステッド・アルデッド》の効果により、山札から1枚ドロー!!」

 

シュパパパパン!! と、コウの手札が瞬く間に膨れ上がっていく。たった1回の攻撃宣言から始まった、文字通りの無限とも思える大展開とリソース確保。観客席からは、何が起きたのかさえ理解できないほどの凄まじい歓声が上がった。

 

「そのまま、革命チェンジで現れた《ドラン・ゴル・ゲルス》で、聖先輩のシールドをさらに1枚ブレイクだ!!」

 

ドランゴルゲルスの容赦のない一撃が、龍矢の防壁をさらに削り取る。

 

聖龍矢のシールド(5枚→4枚)

 

それまで完璧な微笑みを崩さなかった龍矢の顔に、わずかな驚嘆の色が混じる。彼は自分の砕かれたシールドを手札に加えながら、感心したように声を漏らした。

 

「……素晴らしい。なんという圧倒的な展開力だ。カジュアルな種族だと侮っていたわけではないが、ここまで完璧にシナジーを噛み合わせて盤面を埋め尽くしてくるとはね……」

 

「これくらい、俺の相棒たちにとっては朝飯前ですよ! ――俺はこれで、ターンエンド!」

 

コウは並び立つメカの軍勢を前に、不敵に言い放った。

 

 

〜4ターン目:後攻(龍矢)〜

 

 

「いやはや、本当に驚かされたよ。僕もそろそろ、本気で動かなければマズいようだね」

 

龍矢は深く息を吐き、静かに、しかし絶対的な王者の威圧感をアリーナ全体に放射しながら、カードを引き抜いた。

 

「僕のターン、ドロー。そして、マナチャージ。――高咲クン、君の展開は見事だが、王者の聖域を侵すには、まだ少しばかり光が足りない」

 

龍矢のマナゾーンには、美しく光る火と光の魔力が燦然と輝いている。

 

「僕のマナゾーンに、火、または光のカードが合計5枚以上存在するため、このクリーチャーの召喚コストは3軽減される。――俺は4コストを支払い、召喚! 《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》!!」

 

ドゴォォォン!! とアリーナの天井を突き破らんばかりの光の柱が立ち昇り、聖なる槍と圧倒的な魔力を宿した巨大な連結クリーチャーがバトルゾーンの降臨した。その圧倒的な姿に観客席が一気に沸き立つ。

 

「ゾージアの登場時効果、 『エクストライフ』発動。山札の上から1枚を、裏向きのままこのクリーチャーの身代わりとしてシールド化する」

 

龍矢のシールドが再び輝きを取り戻す。

 

聖龍矢のシールド(4枚→5枚)

 

「そして、ゾージアの登場時効果――相手のバトルゾーンにある、パワーがこのクリーチャーのパワー以下のクリーチャーを1体、破壊する。僕は君の足元を支える《ヴェネラック-F5》を破壊させてもらうよ」

 

ゾージアの掲げた聖槍から容赦のない光線が放たれ、コウの黄色い車型クリーチャーを直撃した。しかし、ヴェネラックが爆発四散するその瞬間、コウはニヤリと不敵に笑って指を突き出した。

 

「待ってました、その効果! 破壊された《ヴェネラック-F5》効果発動! バトルゾーンにある《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》を強制的にタップする! さらに、こいつは次の相手のターンの開始時までアンタップしない状態になる!!」

 

ガキィン!! と強固なロックがゾージアの巨躯を縛り付け、その動きを完全に封殺した。

それを見た龍矢は、少しだけ意外そうに目を見開いた。

 

「……なるほど。ただの攻撃の起点となる軽量メタクリーチャーかと思ったけれど、破壊された時の保険までこれほど厄介だとはね。上手いプレイングだ。――僕はこれで、ターンエンドだよ」

 

 

〜5ターン目:先攻(コウ)〜

 

 

「ゾージアの効果によって、俺はこのターン、クリーチャーを1体しかバトルゾーンに出すことができない……か。だったら、その貴重な1体を、最高のスパイスにしてやる!」

 

コウは力強くカードを引き抜いた。

 

「俺のターン、ドロー! マナチャージ! ――2コストを支払い、クリーチャー《星姫機 エルナドンナ》を召喚!」

 

コウの場に、愛らしい星の輝きを纏ったメカの少女の様なクリーチャーが現れる。

 

「さらに、場にいる《アシステッド・アルデッド》をタップすることで、再び《獲銀月ペトローバ》を『ハイパー化』させる! 行くぞ、ペトローバで聖先輩のシールドへ攻撃だ!!」

 

巨大な装甲を駆動させ、ペトローバが突撃する。

「ペトローバの攻撃時効果発動! 俺のシールドを1枚増やす!」

 

高咲コウのシールド(5枚→6枚)

 

「 ――ただし、増えた後のコスト以下を踏み倒す効果は、ゾージアの制限があるため今回は『使用しない』! 続けて、シールドが増えたことでガンマの『メカ・メクレイド5』が連鎖発動するが、これもカードを確認するだけで『何も出さない』! ――そのまま、ハイパー化したペトローバの力で、W・ブレイクだ!!」

 

強烈な一撃が龍矢のシールドを2枚同時に叩き割った。

 

聖龍矢のシールド(5枚→3枚)

 

「まだまだ攻撃は終わらない! 続けて、《シェケダン・ドメチアーレ》で攻撃だ! こいつは自分の場にメカが5体以上いることで『シビルカウント5』を完全に達成している! 効果発動――相手のバトルゾーンにある《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》を、シールドゾーンへ送る!!」

 

「なにっ……!?」

 

「だが、ただシールドに送るわけじゃない!ゾージアが離れることによりゾージアの身代わり効果であるエクストライフの盾を、そのまま墓地へ叩き落とす!!」

 

「……っ! 上手いね……! シールドを直接墓地へ送ることで、トリガーの発動すらケアして処理するとは!」

 

龍矢のゾージアの身代わりとなっていた盾が、光を失って墓地へと崩れ落ちる。その崩れ去ったカードのホログラムは、誰もが喉から手が出るほど欲しがる最高峰のパワーカード《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》だった。最強のトリガーが、コウの緻密な戦術によって完全に無力化されたのだ。

 

聖龍矢のシールド(3枚→2枚)

 

 

「そして、ドメチアーレの攻撃はそのままお前の残りのシールドへと向かう! ――残りのシールド2枚を、すべてブレイクだ!!」

 

ドッパーン!! とドメチアーレの強烈な体当たりが、生徒会長・聖龍矢の最後の防壁を完膚なきまでに打ち砕いた。

 

聖龍矢のシールド(2枚→0枚)

 

「……っ!!」

 

アリーナ全体が、言葉を失ったように完全に息を呑んだ。

あの絶対王者である生徒会長のシールドが、わずか5ターン目にして「0枚」にされたのだ。龍矢の額からは、これまでの余裕を吹き飛ばされたかのような、一筋の冷や汗が流れ落ちていた。彼は手元に加わった最後のシールドの束を、鋭い目で見つめる。

 

その瞬間。

 

龍矢のシールドゾーンの虚空から、アリーナ全体を昼間のように照らし出す、あまりにも強烈な白銀の閃光が爆発した。

 

「――僕の相棒たちは、僕を裏切らない。シールドトリガー発動!!」

 

龍矢の声が、いつになく熱く響き渡る。

 

「《閃光の守護者ホーリー》!! ――そして、呪文《ーーーーーー》!!」

 

その龍矢が唱えた、現代の環境では誰も、ただの一人もデッキに投入することのない「呪文」の名前を聞いた瞬間、アリーナ全体の観客、そして実況までもが、ひっくり返るほどの驚愕に包まれた。

それは、あまりにも博打要素が高く、あまりにも敵味方を巻き込む、理外の絶対リセット呪文だった。

 

 

――(聖龍矢の記憶)――

 

白銀に彩られた、格式高い聖家の巨大な邸宅の一室。

 

まだ幼く、あどけなさを残した龍矢は、高級な絨毯の上にカードを広げ、専属の年老いた執事とデュエルマスターズの練習に励んでいた。

 

幼い龍矢の手元にあるのは、彼が「一目惚れ」して小遣いで買い集めた、お気に入りの派手な効果を持つロマンカードたち。しかし、それを見た執事は、深くため息をつきながら、冷徹に苦言を呈した。

 

「……いけません、龍矢おぼっちゃま。このような、互いの盤面をすべて崩壊させるような確実性の無い博作カードなど……聖家の長男としてだけでなく、一流のデュエリストとしての恥でございます。勝負とは、完璧な計算と、圧倒的なアドバンテージによって、美しく統率されるべきものなのです」

 

「えぇー! そんなことないよ!」

 

幼い龍矢は、小さな手でカードを握りしめ、納得がいかないように不満げに駄々をこねた。

 

「これはね、どんなに負けていても、一気にゲームをひっくり返せる、最高の逆転のカードなんだよ! なんで使っちゃダメなの!? カッコいいじゃないか! なんで、なんで!」

 

その時、部屋の重厚な扉が開き、厳格な面持ちをした両親が静歩で入ってきた。父親は龍矢の手元を一瞥すると、容赦のない冷たい声を浴びせる。

 

「龍矢。くだらぬわがままを言うでない。貴様はこの聖家のすべてを背負う長男だ。そのように不確定要素に頼る、下品なカードなど今すぐ捨ておけ! 常に完璧であり続けろ」

 

母親もまた、冷たい微笑みを浮かべながら夫に同調する。

 

「そうよ、龍ちゃん。私たちはすべて、貴方のためを思って言っているのよ。そんな勝てるかどうかもわからないカード、貴方にはふさわしくないわ」

 

周囲の大人たちから浴びせられる、完璧という名の「枷」。

 

幼い龍矢は、悔しそうに唇を噛み締めながら、ただ黙って手元のカードを見つめるしかなかった。

 

 

成長し、学園のトップに君臨し、誰もが羨む「完璧な王者」となった現在の聖龍矢。彼は、まるでテレビの古い映像を見るかのように、その幼き日の自身の記憶を、冷徹な思考の奥底で静かに眺めていた。

 

(完璧な統率。確実な勝利。誰もが僕にそれを求め、僕もそれに応えてきた。……でも、だけどもさ。高咲クン。君を見ていて、僕は思い出したんだ。――僕だって、本当は、自分の大好きなカードを使って、世界をひっくり返して勝ちたかったんだということを!!)

 

ーーーーーーー

 

 

「――僕の原点を見せてあげるよ、高咲クン!!」

 

龍矢は叫んだ。その顔には、完璧な王者の仮面などどこにもない。ただ純粋にデュエマを狂おしいほどに楽しむ、一人の少年の熱い笑顔があった。

 

「シールドトリガー発動!! 《閃光の守護者ホーリー》、そして呪文――《アポカリプス・デイ》!!!」

 

「な、何だとぉぉぉーーーっ!?」

 

コウは驚愕のあまり、目玉が飛び出さんばかりに声を上げた。

アリーナ全体からも、割れんばかりの絶叫とどよめきが巻き起こる。

 

「アポカリプス・デイだと!?」「すべてのクリーチャーを破壊するあの呪文か!?」「まさか生徒会長が、そんな敵味方を巻き込む大博打カードをデッキに入れていただなんて!!」

 

「《アポカリプス・デイ》の効果発動! バトルゾーンにある、お互いのすべてのクリーチャーを破壊し尽くす!!」

 

龍矢の叫びと共に、天から世界を滅ぼすほどの圧倒的な白銀の審判の光が降り注ぎ、バトルフィールド全体を完全に飲み込んだ。コウが丹精込めて築き上げたメカの要塞が、一瞬にして光の中に消え去ろうとする。

 

「くっ……! そう簡単に、俺の相棒たちを全滅させてたまるか!! 《アシステッド・アルデッド》の効果発動! こいつを代わりに破壊することで、俺の《ドラン・ゴル・ゲルス》を場に留める! さらに、《星姫機 エルナドンナ》の効果発動! シールドを1枚を代わりに手札にもどすことで、俺の最大火力である《シェケダン・ドメチアーレ》をこの場に守り抜く!!」

 

「ガシャァン! 」と、コウタのシールドが身代わりとしてさらに削られる

 

高咲コウのシールド(6枚→5枚)

 

コウの場には辛うじて2体の強力なメカが生き残った。

しかし、聖龍矢の怒濤のトリガー連鎖は、これだけでは終わらなかった。

 

「素晴らしい対応力だ! だが、まだホーリーの能力が残っているよ! トリガーで出た《閃光の守護者ホーリー》の登場時効果発動!! ――相手のバトルゾーンにあるすべてのクリーチャーを、強制的に【タップ】する!!」

 

ピカァァァッ!! と、ホーリーが放つ眩い聖なる後光が、生き残ったばかりの《ドラン・ゴル・ゲルス》と《シェケダン・ドメチアーレ》を跪かせる。

 

「しまっ……!?」

 

コウのクリーチャーたちの駆動音が完全に停止し、その巨躯がガクリと膝をつくようにして、一斉に横(タップ)へと向けられた。攻撃可能なクリーチャーは、これで一匹もいなくなった。

 

「まじかよ……お見事。聖先輩……っ」

 

コウは冷や汗を拭いながら、自分の盤面の動きが完全に止められたことを認めざるを得なかった。この圧倒的なピンチから一転しての完璧な防御。

 

「――俺はこれで、無念のターンエンドだ……!」

 

龍矢は自分の墓地にあるアポカリプスデイを愛おしそうに見つめ、不敵に、そして最高に楽しそうに笑ってみせた。

 

「さあ、ここからだよ、高咲クン。僕の本当のデュエルで、ここから最高に逆転させてもらうよ!!」

 

絶対王者が隠し持っていた、まさかの「ロマンの光」。

 

すべてを失った更地から、運命の最終決戦は、さらに予測不能な熱狂の渦へと突入していくのだった。




ちなみにアポカリプスデイの下りは
よく友人とデュエルする際に
デッキに入ってもいないアポカリプスデイがシールドから出てくるのを祈っているのでそこをネタにしました。
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