デュエル・マスターズ〜カジュアル勢の俺が引きだけでカードゲーム主義の世界を破壊しても良いんすか!?〜 作:社畜ヲタク
東都デュエルマスターズ育成高等専門学校の重厚な校門をくぐった瞬間、全身に突き刺さるような視線を感じた。
すれ違う生徒たちの誰もが、軽蔑、哀れみ、そして娯楽を求めるような歪んだ目を彼に向けている。
しかし、コウは意に介さず、ただ新天地への好奇心に目を輝かせていた。
「おいおいおい、マジで学校に来やがったぜ、あのゴミがww」
目の前から、鼓膜を不快に揺らす濁った声が響いた。よく見てみるとそこに立っていたのは大柄な体躯を制服に包んだ男——轟豪鬼(とどろきごうき)だった。
取り巻きを数人従え、下卑たニヤニヤ笑いを浮かべながらコウタの距離を詰めてくる。その腰には、学内でも上位の勝率を誇る者だけが許される、鈍い銀色に輝くデュエルガントレットが装着されていた。
「また無様な姿を晒すために学校に来てんのか? なぁ、 高咲ぃ?」
豪鬼はコウの目の前でわざとらしく肩をぶつけ、見下ろすように罵倒を吐き捨てた。
「お前みたいな負け組がこの学園に居るせいで、俺たちのエリートまで評価が下がるんだよ。好きなカードだか何だか知らねえが、勝てねえゴミを握りしめて満足してる精神異常者は、さっさとこの学校から消え失せろってんだ。」
元のコウであれば、この時点で恐怖に震え、涙を浮かべて平伏していただろう。だが、今のコウの魂は、数多の修羅場を「愛」と「右手」で潜り抜けてきた猛者。
ふっと口元を緩め、豪鬼の目を真っ向から見据えた。
「おはよう、轟。朝から元気だな。まぁでも、カードの価値を勝率だけでしか測れないなんて、君の退屈な脳みその方がよっぽど心配だがな?」
「……あ?」
想定外の毅然とした反論に、豪鬼の笑みが一瞬で消え失せ、顔が怒りで赤黒く染まっていく。
「てめえ……今、なんて言った?」
「聞こえなかったか? 君の頭がかわいそうだって言ったんだ。テンプレをただ回すだけのマシーンくん」
「調子に乗るなよゴミ虫がッ!」
豪鬼が激昂し、右腕のガントレットをコウタに突き付けた。ガントレットから青白い光が走り、二人の周囲に不可視の結界が展開される。
「いいだろう、いつもの『処刑デュエル』の時間だ! お前が泣き叫んでカードを毟り取られるまで、徹底的に叩き潰してやる!」
処刑デュエル。それは、この世界の強者が弱者を合法的に甚振るためのイジメの儀式。
元の人格の持ち主は、毎日のようにこの理不尽な決闘で叩きのめされ、精神を削られていたのだ。
「おい、また始まったぞ」「高咲の奴、今日こそ退学だな」「やっちまえ!轟〜!」「雑魚がイキがるなよ!」
野次馬がどんどんと形成されていく。
しかし、コウの心臓は高鳴っていた。異世界での初デュエル。
彼は静かに腰のケースへと手を伸ばした。取り出したのは、エッジの擦り切れた一束のデッキ。その正面には、不敵に佇む巨大なロボットの姿がある。
「俺の相棒を見せてあげるさ。……行くぞ、【ガチロボ】」
デッキを現れた台にセットすると、機械がマナの波動を感知して電子音を鳴らした。
対する豪鬼が不敵な笑みとともにデッキを台に叩き込む。
「消し炭にしてやらぁ!いくぞ!【アポロヌス】!!」
豪鬼の背後に、世界を焼き尽くす赤き超神星の幻影が立ち上る。3ターン目、あるいは2ターン目で
の決着をも可能にする、この世界における最高峰の超速攻・ワンショットキルデッキ。容赦なく相手の息の根を止める「処刑」には、これ以上ない最適解のデッキだった。
「デュエマ、スタート!!」
二人の叫びが響き渡り、5枚のシールドがそれぞれの場に展開される。異世界に転生したカジュア
ルの天才と、暴君による、運命のファーストデュエルが幕を開けた。