デュエル・マスターズ〜カジュアル勢の俺が引きだけでカードゲーム主義の世界を破壊しても良いんすか!?〜   作:社畜ヲタク

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こんな小説を読んでくださる方々ありがとうございます

ご都合主義展開も多いと思いますが
今後も是非よろしくお願いいたします!


第6話︰どんな相手でも挨拶は大事

 

デュエル台のホログラム結界が、静かに霧散していく。中央に表示された『WINNER︰高咲』の赤文字が、その場にいる全員の網膜に焼き付いていた。

最強の一角としてのプライドと学園のランキング上位者である轟豪鬼が、文字通り膝から崩れ落ちる。

 

「バカな......あり得ねえ....。俺の【アポロ】が、レッドゾーンが...あんなゴミみたいなあんな博打カードに、一枚の盾すら残せず粉砕されただと...?」

 

豪鬼の額からはダラダラと冷や汗が流れ落ち、床を濡らしていく。彼のアイデンティティ...いやこの世界の常識であった「勝率至上主義」が、ガチロボという絶対のロマン砲の前に完全粉砕された瞬間だった。震える手で自身のデッキを見つめるその姿には、かつての威圧感など微塵も残っていない。

 

そんな彼の横を、高咲は歩調を緩めることなくすれ違う。

 

「対戦ありがとうございました」

 

声のトーンは、まるで日常の些細な挨拶を交わすかのように平穏だった。皮肉でも煽りでもない、純粋な対戦相手への敬意。しかし、その絶対的な余裕こそが、敗北した豪鬼のプライドをさらに深く抉り取っていった。

 

ギャラリーの生徒たちは、誰一人として声を出すことができなかった。水を打ったような静寂がス

タジアムを支配している。

 

「おい、嘘だろ...。あの最弱が勝ったのか?」

「ガチロボって何だよ...。あんな博打で勝ちって、そんなのカードゲームじゃねえだろ!」

「だけど事実、轟の攻撃を受けながら、次のターンのケアもしつつ盤面を全破壊したぞ」

 

驚愕、困惑、そしてかすかな恐怖。底辺が頂点を引きずり降ろしたという事実は、彼らの信じる

「環境の常識」を根底から揺るがしていた。

 

 

ざわめくデュエル台を後にし、コウは自身の所属する校舎、2年D組へと足を進めていた。

 

廊下を歩く間も、周囲の視線が突き刺さる。誰かがリアルタイムでSNSに動画をアップしたのか、あるいは口コミで一瞬にして広がったのか、学園中の連絡網はすでに「最底辺の下克上」というビッグニュースで持ち切りだった。

 

すれ違う生徒たちが、怯えるように距離を取る。あるいは、信じられないものを見るかのような不

躾な目線を向けてくる。

 

(いやあ、それにしても今回のデュエルも最高に楽しかったなぁ...!ギリギリからの逆転。そして最高の捲り)

 

しかし、本人はそんな周囲の目などどこ吹く風だった。頭の中にあるのは、先ほどのバトルの興奮だけだ。

 

ギフトガチロボが決まった瞬間の爽快感、ガチロボからのガチロボ、そしてアアルカイトからのメモッタの連鎖、どれをとってもカジュアル勢としての脳汁が溢れ出る最高の展開だった。

 

ガラガラと音を立てて、2年D組の教室のドアを開ける。

 

その瞬間、それまでガヤガヤと騒がしかったクラス内の声が一斉に消え失せた。張り詰めたよう

な静寂が教室を満たし、全員の視線が入口に立つコウへと集中する。お喋りをしていた者も、スマホをいじっていた者も、一様に動きを止めてコウを見つめていた。

 

コウが自分の席へ向かって歩き出すと、堰を切ったようにヒソヒソという囁き声が始まった。

 

「おい、本当だったみたいだぞ...。轟を博打カードでボコボコにしたって...」

「でも聞いた話じゃ、なんか変な博打カードだけの引きが強かっただけらしいじゃん。運が良かっただけのゴミが調子乗るなよな」

「運だけって言ったって、あの轟を完封したんだぞ?どうなってんだよ...」

 

羨望と、それ以上に強い嫉妬や拒絶の混じった悪口。元の高咲コウが「底辺」として扱われていたからこそ、クラスメイトたちはこの急激な変化を受け入れられず、彼の勝利を「単なる運」として片付けようと必死だった。コウはそれらの雑音を完全に無視し、窓際の席に腰を下ろした。

 

(さて、次はどんなデッキでこの環境を攻略しようかな。やっぱり次はコンボ系のループデッキ

か?それとも白黒メカとかで相手の度肝を抜くか...?)

 

早くも次のアイデアが溢れ出し、コウはワクワクしながらスマホを取り出してカードプールやこの世界の最新環境データを調べ始めた。

まさにカードオタクとしての本領発揮である。世界がどう変わろうと、彼にとってデュエマが楽しいゲームであることに変わりはなかった。

そこへ、鋭い足音がコウタの席へと近づいてくる。コウタの机の前に立ち、影を落とした人物が

いた。

 

「貴方ねぇ...何度も言ってるでしょ? あんな運だけの勝負だなんて意味がないって」

 

冷徹で、どこか棘のある硬い声。コウがスマホから顔を上げると、そこには目を吊り上げ、不

機嫌さを隠そうともしない少女が立っていた。きっちりと着こなされた制服に、周囲を威圧するような凛とした佇まい。そして、その表情は、怒りで硬直している。

 

コウは、目覚めた初日に調べたスマホのROYNのチャット履歴や、脳裏に焼き付いているアルバムの記憶を急速に手繰り寄せた。この世界の「高咲コウ」の過去に深く関わる人物——。

コウは小さく息を吐き、笑みを崩さないままその名を呼んだ。

 

「それでも勝ちは勝ちだ。それが全てだって、この学園のルールでも散々言われてるだろ―――藤堂」

 

彼女の名は藤堂 天音(とうどうあまね)。

この世界の元の人格にとって、かつて最も身近であり、そして今や最も遠い存在となってしまった―――幼馴染の少女だった。

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