二番煎じの二次創作オリ主クロスオーバー(?)ものです。
宜しくお願いします。
東京ドーム地下闘技場。
多くの闘士が金銭や名誉のためではなく、ただ一つの事実を手に入れるために闘う場所。
欲しいのはたった一つ。
男であるなら一度は夢見て、いつしか忘れてしまうもの。
だが、ここに来る男たちはそれを捨てられなかった。
地上最強。
最も強い男という夢を手に入れるため、日夜ここで闘い続けている。
武器禁止以外の禁じ手のない、真剣勝負で。
しかし、今宵の東京ドーム地下闘技場は違った。
初めての『武器解禁』。
火器使用禁止以外の禁じ手がない、地下闘技場の禁を破ったルール。
ここで行われている闘いは、尋常のそれではなかった。
狭い六角形の試合場に、多くの地下格闘技者たちの血と汗と、歯と骨が埋まった砂の上で、二人の男が対峙している。
その闘いは終わりに向かっていた。
一人は、中国拳法の達人で海王の名を持つ、烈海王。
もう一人は現代に蘇った最初の最強の剣豪、宮本武蔵。
真剣を携える宮本武蔵が烈海王の片足義足を絶ち斬り、その正中線を浅く切り裂いていた。
額から鼻、顎、鳩尾から腹まで綺麗な縦一文字の切傷。
烈海王は、己の奥義である脱力による回転防御「消力」にて、武蔵の斬撃に対抗しようとしていた。
四つん這いとなり、突っ込む体勢。意図が隠されていない。構えですらない。
相対する武蔵は天井の灯りを見て、烈海王の狙いを悟る。
差し違える。相討ち。己の命ごと武蔵の命を取るつもりなのだ。
しかして武蔵の斬撃を烈海王は拳で止める。驚愕する武蔵であったが、柔に烈海王を投げた。
宙空に浮かぶ烈海王に向け、武蔵は右薙ぎにてその胴体を背骨ごと切り裂くことを狙う。
振るわれんとする武蔵の剣、消力にて躱さんとする烈海王。
武蔵の剣は烈海王の消力を無視し背骨ごと胴体を薙ぎ払う。
――はずだった。
突如として観客席から飛び出した着流し姿の総髪男が闘技場に割り込んできたのだ。
ざぶ、と砂の大地を駆け抜け、一瞬で武蔵の間合いに接近する。
「な」
「は」
この闘いを見守っていた地下格闘技チャンピオンの範馬刃牙と、その隣に立つ海王の中の海王である烈海王の師匠、郭海皇が驚愕の息を漏らす。
それは観客席でこの闘いを見ていた、他の地下格闘技者たちと、地下格闘技の支配者である徳川光成も同様だった。
「止めろやー!!!」
突如として割り込んで来た男は、剣を握る武蔵の右手首を蹴り飛ばす。
それは男の背格好にはどこか似合わぬ、見事な右ハイキック。
手首を蹴られて剣を落とすことはなかったが、武蔵はたたらを踏んで後退した。ほぅ、と武蔵は割り込んだ男に感心を持った。
逆に、無事に着地した烈海王は、突然この場に割り込んで来た男の背中を見ることになる。
だがしかし、覚悟を決めて闘いの場に立った烈海王にとって、横槍で助けられるなど屈辱の極みでしかない。
顔面全体に力が籠もるほど、それによって裂かれた顔の傷から血がさらに溢れんばかりに流れようとも、男の背中を睨んでいた。
下がった武蔵は、己の手首を蹴り飛ばした男を見る。
藍色の着流しに褌、腰に木刀を差した総髪頭の男。
一目でわかった。
――己と似た時代の、剣士だと。
「おい、童よ」
武蔵はだらりと剣先を下げ、己の前に立つ男へ話掛けた。
「これは尋常な勝負。そこに分け入るとは無礼千万、わかっておろうな」
武蔵から発せられる気に、観客席から小さく悲鳴が上がる。それほど、武蔵は殺意を向けているのだとわかるからだ。
しかし男はなんのその、平気な顔をして後ろ頭を掻くではないか。
「なーにが尋常な勝負だ。片方は素手、片方は武器持ち。もう勝負は決まったもんだろ」
「これが見えぬのか? 置かれた武器、散らばる手裏剣。そこの列海王が投げたものだ。双方、共に武器は使っておる」
「だーからさ。もうこっちの人は武器がなくなったんだろ? 止めていいじゃん、降参させなよ」
「『侮るな』。……これはそこの烈海王が発した言葉ぞ。最後までするのが望みだ」
男は気まずそうに烈海王の方に振り向くと、頷く列海王を見て溜め息を吐いた。
「いや……死んでまでやることじゃないよ……死んでみたらわかるけど、嫌なもんだよ……? 残された人たちも、すげぇ悲しむだろうし……」
「私は一向に構わんと言った!! 命を賭けて戦うものへ、いらぬ同情や手助けなど侮辱以外の何者でもない!! 消え失せろ!!」
「だそーだが? 徳川さぁん、まだやる? 烈海王さん、殺されちまうよ? 止めた方が良くない? 試し合いは見たいだろうけど、殺し合いまで見たいわけじゃないでしょ?」
男は光成の方へ呼びかけた。
光成は悩む。確かにここで止めた方が良い。このままでは烈が殺される。しかし、オーナーの贔屓や一存で止めてはいけないのが、地下格闘技でもある。
悩む光成に、男はさらに大きな声を上げて言った。
「じゃああれだ!! この試合、オレが預かろう!! 双方、納得いかないならば、まずオレと闘え!! それからまた二人でやれ!! オレは二人がかりでもいいぞ!! この藤木裕次郎、挑まれた勝負からは逃げないからな! 多分!」
どん、と胸を叩く。
その堂々たる姿に、刃牙は呟いた。
「なんだあの男……烈さんと武蔵を相手に……?」
他の観客も動揺したようにざわめきだす。いきなり現れた男が、勝手に勝負を預かった上に二人がかりでも良いと宣う。
どうするのだ徳川光成、と全員の視線が光成へと向けられた。
しかし、光成の顔は、青ざめていた。
「ふ、ふ、藤木、裕次郎じゃとぉ?」
「おうとも。あんたんとこの研究員が、あんたに黙ってオレを蘇らせたんだよ! 武蔵に行った研究を、一人で終わらすのはもったいないっつってな!! わざわざ墓を掘り返して、オレを蘇らせやがって!! あんたんとこの研究員は叱っといたぞ!!」
「まさか、本物か!?」
「おうとも! 虎眼流藤木裕次郎、ここに蘇ったぞ!」
光成は叫んだ。
「お、お主が『最初に徳川幕府に勝った男』、藤木裕次郎であると言うのか!!」
「え、なにそれ?」
裕次郎と名乗った男は、光成の叫びに首を傾げるばかりだった。