連邦の野望   作:rahotu

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この話は嘗てPixivに投稿していたものと同じです。

古い作品ですが、よろしければ暇つぶしにご覧ください。



新しい世紀

西暦2046年 12月31日  低軌道ステーション-ラプラス-

 

この日、地球連邦政府主催の改暦セレモニーが行われた。

 

旧暦から新暦へ。本来なら宇宙世紀の時代の幕開けとなる輝かしい日であり、人類の偉業の第一歩が今ここで宣言されるはずであった。

 

連邦大統領リカルド・マーセナスの演説の途中でそれは起こった。

 

巨大構造物であるラプラスが突然の爆発を起こし、連邦政府官僚や各国政府要人、報道カメラマンを含む多くの人々の命が一瞬で失われた。

 

 

 

 

 

 

後にラプラス事件と呼ばれ、死者千人以上を超す人類史上最悪の宇宙テロにより宇宙世紀はその産声を上げたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

低軌道首相官邸ラプラスがテロにより崩壊し世界は騒然となった。

 

報道局は連日事件の事について報道し、連邦政府による報道規制も一度流れ出した情報を止める事は難しく、遠くコロニーまで報道が伝わるようになった。

 

 

 

しかしそれ以上に世界を揺るがす事が中東で起こった。

爆発後まるで図ったが如く、中東全体で連邦離脱と再度独立を叫び彼らは徹底抗戦の構えを見せあまつさえラプラス事件を起こした首謀者を民族の英雄として保護した。

 

 

連邦政府はこれに激怒しすぐさま鎮圧軍を派遣しこれを機に一気に地球連邦の支配権確立をしようとした。

 

 

これは、歴史的パラダイム・シフトになる筈であった。そう最初圧倒的な軍事力を誇る連邦によって中東は直ぐに平定され愚かな分離主義者共は一掃され首謀者はその組織そのもろとも壊滅されるはずであった。

 

しかし、彼らが歌うナショナリズム、民族高揚、民族自決、自由と独立、連邦政府成立から長年の間押さえつけられてきたこれ等旧世紀の異物が鎌首をもたげ、戦乱は中東からインド、アフリカ、東南アジア、東アジア、ロシア、バルカン半島、まで広がり、又本来これ等を鎮圧すべき軍隊も軍内部の分離主義者達が反乱を起こし酷い所では部隊を伴って投降する者が各戦線で見られた。

 

戦乱は地球全域に広がり以後U.C0022の「地球上の全ての紛争消滅」宣言まで続いた一連の世界規模での紛争は後に「再構築戦争」と記憶されることになる。

 

 

 

 

 

注釈*この世界の連邦軍は併合した国家の軍をそのままスライドさせる形で連邦軍に編入し駐留軍として各国に展開していましたので連邦に対してかなりの不満が強かったのです。

 

ジョルジュ・マーセナスは暗い部屋で一人呻いていた。

時々小さく「どうして...何故....いったい何処で情報が漏れた。」と呟く以外は執務室の机に両肘を着いて身動ぎもせず俯いていた。

 

 

本来なら実の父をテロと思わせて殺し、その後首謀者と組織、及び其れを支援していた旧世紀の遺物を引きずる分離主義者共々壊滅させ、一挙に連邦による覇権の確立と連邦が真の意味で地球上で唯一の国家組織であり其れに反する者はどの様な高邁な思想があろうと全て反逆者として直ちに粛清されるべきものという人類共通の思想を体現するつもりであった。

 

そしてその後の移民政策で各コロニーを連邦の完全な支配管理下において漸く連邦という人類史上最大の統治機構が成立する。確かな未来がそこにはあった筈だった。

 

 

だが現実は違った。何処からか情報が漏れたのか万全の監視体制を築き何時でも検挙できる手はずを整えていたはずなのに首謀者は逃げ果せ、あまつさえテロ行為自体が連邦政府による自作自演と声高に唱え、反連邦を謳い自身を連邦に一矢報いた英雄だと言う始末だ。

 

 

あまつさえ本来分離主義者を鎮圧すべき軍内部でも離反者や命令に従わない者が続出し、又議会でも誰がテロの真犯人かと犯人探しに躍起になり互いに疑心暗鬼に陥る始末。

 

そういった中で自分が「リメンバー・ラプラス」を謳い第三代連邦大統領に就任したとしても一向に収まる気配は見せない。

 

自分以下真相を知る者達は硬く口を閉ざし現在の状況になんら打開策を示せずに居た。

 

カーテンを閉め切った暗い執務室で唯一人自身の筋書きと違う未来に唯呻き声しか上げることが出来ずにいた。

 

 

まるで本来あった未来を奪われたラプラスの亡霊が父親殺しの自分に見せている悪夢のように思われた。

 

 

しかしこれは現実で現在自分は地球連邦大統領で人類史上最大最高の権力を有する男であり、又父親殺しの大罪人でもあり現在の世界状況を引き起こした根本の原因の一つでもある。

 

 

そんな失意の中の彼に最悪のどん底に落とし込む報告が届けられた。

 

中央アジアカシミール地方で核兵器の使用を確認。展開中の軍にも被害あり。

 

ジョルジュ・マーセナスは何度も報告を確認したがいずれも核の使用が真実であるという補強にしかならず、彼を慰めるものは何一つ無かった。

 

 

 

U.C.0009 中央アジア、カシミール地方で核兵器が使用される「最後の核」事件が起こった。誰がどの組織が核兵器を使用したのか0079現在を以ってして尚真相は闇の中だ。

 

連邦構成国の間では終わる気配の無い戦争、テロの恐怖、そして若者を戦争に取られ社会不安が増大し連日連邦政府に対する抗議デモや非難の声が出された。

 

 

U.C.0018  連邦を構成する主要国家、特に北半球に属する国家は連邦政府に最早戦乱を止める力無しと判断しこのままでは連邦共々心中することになる事を嫌った各国はこの日、連邦政府からの離脱を宣言し新たな国家群の形成及び新暦C.Eの制定を表明した。

 

これは明らかに連邦に対する反乱であったが連邦政府はこれを黙認。

その理由は明らかになっていないが有力な説として、このとき既に連邦政府内でも分離独立を叫ぶ勢力があり、これ等構成国に対し制裁行動を起こすことは、より一層の混乱を招きいたずらに国力を疲弊させることにも繋がり、又そもそも連邦政府には新たにこれ等国家群を敵に回す余力は無く結局のところこれ等離脱した元構成国を黙認するしかなかったのである。

 

 

離脱した元構成国は新暦の制定と共に新国家群を形成した。

大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国、スカンジナビア王国、アフリカ共同体、オーブ連邦首長国、新たに形成された新国家群は連邦政府とは紛争中は協力を約束するも連邦とは一定の距離を保ちあくまで連邦構成国の枠外だという姿勢を見せた。

 

 

U.C.0022 C.E.13 紛争終結後連邦政府と新国家群とで連邦加盟についての会議が催されたが結局議会は平行線を辿り、結局議会は何ら成果を挙げないまま閉幕した。

 

その後世界は新国家群と地球連邦とに二分され地球圏及び月面、宇宙開発をめぐり対立、冷戦状態にまで陥ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

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