連邦の野望   作:rahotu

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ウルフパック

ソロモン要塞

 

ソロモン要塞の固い岩盤を刳り抜いたなかに作られた宇宙港に、停泊していたムサイ級軽巡洋艦三隻が、出航の時を待っていた。

 

最終チェックを済ませ、物資を搭載量限界まで積みこんでいる。

 

この三隻は、開戦初期から前線において活躍し、先月帰還して艦長ら乗員全員に休暇がなされたのち補給と修理の為ドッグ入りをしている。

 

ソロモン要塞からは週一で本国サイド3への便が出ており、乗組員全員がすし詰め状態で本国へと休暇に向かう傍ら、ムサイ級三隻は、修理と同時に今までの戦訓から新たな追加装備を取り付けられていた。

 

そうして、一カ月をかけ補給と修理、並びに改修作業を終わらせたと同時に、本国で命の洗濯をしてきた乗組員が船へと帰って来た。

 

帰って来た彼らは、久しぶりに見る自分たちの第二家の変わりように少しばかり唖然とし、艦長も話には聞いていた為乗組員たちの前では表情を変化させてはいなかったが、内心、自艦の変わりように驚いていた。

 

ムサイ級三隻は艦橋の両舷に二連装の対空砲火二基とMSデッキの裏側に二基、全体的にずんぐりとした船体に抑えられた艦橋と、今までのシャープなデザインからだいぶ違っている。

 

無論それは外見だけではない、中身も最新の索敵電子機器と新型の双方向性レーザー通信機、エネルギー効率の上昇により航続距離も上がり外見以上に中身はかなりの改良が加えられていた。

 

乗組員らはこれから一週間、改修艦になれるための完熟訓練をしたのち、新たな任務に出る事になっている。

 

乗組員全員が新しく生まれ変わった船に早く慣れようと訓練に励み、艦長らもまた、予定通り訓練が終わるように乗組員たちを奮起させた。

 

こうして、ソロモン要塞沖での訓練が終わり、そこで初めて彼らに艦隊司令部からの指示が伝えられた。

 

解読された暗号文が書かれた紙には、

 

『本日12:00をもって貴官らは第三十三哨戒艦隊はL1宙域へと航路をとり、そこで通商破壊任務中の第二十八部隊と交代で任務に当たれたし』

 

暗号文を読み取った艦長は、直ぐにライターで紙を燃やし、航路図を見た後全艦に出撃命令を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

L1航路

 

かつては国際宇宙ステーション通称世界樹があり、ここを起点に宇宙経済は発展を遂げてきた。

 

地球からの新鮮な野菜や果物はここから各コロニーへと送られ、逆にプラントなどで生産された工業機械は世界樹から地球上の国々へと輸出された。

 

だが、L5事変から全てがおかしくなりはじめた。

 

プラントの武装化、連合との対立、世界樹は国際的な宇宙経済の中心地から、連合軍宇宙艦隊の寄港地として最盛期には三個艦隊が駐留していた。

 

そして、ついにプラントが世界樹へと侵攻、MSの威力をもって数に勝る連合を圧倒し、ついに連合軍艦隊は大敗、追撃を防ぐのと世界樹の施設を使わせない為に、連合は世界樹を爆破崩壊させ、結果L1はデブリに埋もれ、両陣営はこの航路を失った。

 

しかし、連邦のサイド5移送や以前から行われていたジャンク屋によるデブリ回収によってL1はデブリ地帯を縫うようにしていくつかの航路が開かれていた。

 

プラント所属の輸送船はその航路をとり、今まで絶えず行われている地球連邦、ジオン共和国の通商破壊作戦の被害を大きく抑える事に成功していた.....この日までは。

 

以前からジオン共和国諜報部では、プラント船がL1航路を通ってジオン連邦の哨戒網をくぐり抜け、プラントへと輸送しているとの情報があった。

 

ジオン諜報部はキシリア機関の手も借り、実際にいくつかの証拠を上げてはいるが、実際の航路は不明であった。

 

その為、従来の通商破壊任務に就いていた何隻かをL1に派遣し、実際に証拠を現場で押さえる事と航路の発見が厳命される。

 

そうして、実際に民間商船に偽装したプラント籍の船舶や、哨戒ラインから見失った船がL1へと航路をとり、そこで発見されるなど確かな証拠と、いくつかの航路を発見する事に成功する。

 

この成果をもってジオンは本国で休養していた部隊を前線に招集、L1のデブリ地帯での活動を目的とした通商破壊部隊を編成する事になった。

 

その中の一つに、ソロモン要塞から出航した第三十三哨戒艦隊は早速予定航路上に仕掛けを施していた。

 

レーザー通信や索敵、偵察を目的とした装置を手ごろなデブリへと取り付け、即席の哨戒衛星を作り、情報から割り出した比較的デブリの薄い宙域へとばら撒く。

 

この作業には、連邦からレンドリースで共有されたRB-79ボールは、基はコロニー外壁の作業用ロボットスペースポッドを基にして作れれら作業機で、二本のアームは見かけよりも器用で頑丈な装甲をもち、L5移送に当たってもジャンク屋ギルドから本機を売ってくれと打診してくるほどだ。

 

ボールは戦闘力こそ皆無なものの、大量生産のし易さと、作業用ポッドとしては破格の性能は同盟国であるジオン共和国でも高い評価を得ている。

 

今回も、MSに混じって一艦につき二機のボールが作業用としてデブリの中をフワフワと浮きながら作業に従事している。

 

一見微笑ましくとも、彼らは戦争をやっているのだ。

 

実際に人を殺さなくても、その行為で何百人もの人間が死ぬ事を彼らは忘れない。

 

それを忘れたとき、戦争は戦争ではなくなり、ただの殺人と化す。

 

仕掛けを終え、デブリに分散して身を潜めた艦隊は、静かに獲物がかかるのを待っていた。

 

 

 

 

 

PiPiPi

 

偵察に出ていたザクフリッパーからレーザー通信が入り、獲物がL1へと侵入した事を知らせた。

 

彼らは急ぎスクランブルをかけ、出撃していくザクⅡの編隊に、奇妙なものを背負ったザクが続く。

 

通常のザクより燃料搭載量、通信機器を強化されたそれは、MSとしては珍しい二人乗りの機体であった。

 

一人が操縦士、もう一人が航法とガンナーを兼任する。

 

事前の測量からと偵察用ザクからの報告で船団の規模と大きさ、どの位広がっているか、どのくらいの速度で来ているか、あとどの位で視界に捉えるか。

 

操縦士が最良の地点(ポイント)につき、徐に背中の大型ランドセルの上のカバーがスライドし、中から黒い球体が目の前に散布される。

 

放物線上に散布されるそれを、航法士が入念にマーキングし、散布範囲の調整と待機地点の指示を行う。

 

仕事を終えたザクは、周囲に伏せる強襲用のザク達よりも先に母艦に帰還し、周囲は再び静寂が戻る。

 

しばらくして、レーダー衛星が船団を捉え、途中でいくつかの航路に分かれたのか、想定よりも少ない数ではあるが、十分な規模の獲物だ。

 

こうして何も知らないまま先ほど球体を蒔いた回廊に入っていき、そうしてその中腹で先頭を行く船が球体に接触し、次の瞬間爆発を起こした。

 

突然の事態に慌てふためく間もなく、爆発の熱を頼りに殺到する球体。

 

それが触れるたびに爆発が起こり、船団に混乱が広がる。

 

彼らはまんまとジオンが仕掛けた機雷源に入ってしまったのだ。

 

掃海艇や対機雷装備も何もない彼らは、MSを出撃する暇もなく、突入したザクⅡによって次々と火を噴き、

 

逃げ出そうとすれば機雷源に自ら突っ込みデブリと化す。

 

この事態を少しでも多くの仲間に伝えようと、船団の艦長が通信を開くも、妨害され一切の通信が出来ぬまま、ただ船団が火に呑まれていくのを見ているしかなかった。

 

八隻ほどの船団のうち、機雷で三隻が中破しMSによって五隻が撃沈一隻が機雷源に突っ込みエンジン部分で爆発した機雷によって宇宙のチリへと姿を変えた。

 

残る二隻のうち一隻は大破し、もう一隻は船団の後方にいた為被害を免れたが、突入してきたムサイに挟まれ、降伏を申し入れた。

 

このほかにも別の航路で大小さまざまな通商破壊作戦が行われ、こうしてL1はジオン共和国通商破壊艦隊の庭と化しプラントでは「群狼の庭」として恐れられた。

 

第三十三哨戒艦隊は通商破壊の初戦果に沸き立ち、鹵獲した輸送船の乗員を拘束したのち本隊へと送って行った。

 

彼らジオン共和国艦隊は、誇りある船乗りであり同時にシーマンシップに則った行動で作戦後の宙域の掃海と救助に当たった。

 

今回の作戦でプラント側は大型輸送船六隻、民間商船二十五隻に護衛のローレシア級四隻を失い、補給艦四隻を拿捕された。

 

ジオン側の被害はムサイ級二隻の中破と、MS四機と極めて軽微であり、久しぶりの大戦果を上げ本国は沸き立った。

 

 

 

 

 

 

こうしてプラントはまた一歩滅亡への階段を上がり、宇宙での小康状態が徐々に崩れ始めてきていた。

 

 

 

嘗て歩兵は陸上の王者であった。

 

甲冑を着込み、兜をつけ、手に槍や剣、或いは盾をを持ち集団において個人の勇が何よりも重視された。

 

次に騎兵の時代が来た。

 

馬に乗り圧倒的な機動力と高所からの一撃は歩兵の縦列を瞬く間に蹂躙した。

 

だが、歩兵は駆逐されなかった。

 

騎兵に対抗する為に、個人の勇よりも集団の結束を信じ、今までよりも長い槍、より遠くへと飛ばせる武器、弓矢を使い彼らは集団の力で騎兵に立ち向かった。

 

次に戦車(チャリオット)が来たが、これはより優秀な騎兵に取って代わられた。

 

こうして長らく歩兵は地上の主であった。

 

時代が進み、人の武器も進化し、甲冑や兜は野戦服とヘルメットに変わり、剣や槍、弓はより強力な銃に変わった。

 

この頃から飛躍的に戦争の方法は進化する。

 

より効率よく敵を殺害する為にどうすればいいか、どうやったら相手を打ち負かせるか。

 

様々な戦術が編出され、歩兵はただ命令どおり突撃すればいい存在では無くなった。

 

こうして質量共に発展した歩兵は、次に大きな脅威を迎えた。

 

戦車(タンク)の登場だ。

 

歩兵の火力では対抗出来ない重装甲を身に纏い、圧倒的な火力と、数十トンもの巨体が四十キロ以上の速度で迫り、轢殺する。

 

次に出た飛行機はもっと彼等を苦しめた。

 

地上ではなく空からの攻撃は、何処に隠れようとも彼等を見つけ殺戮し、大空を舞う相手には如何なる攻撃も届かなかった。

 

歩兵は陸戦の王者ではなくなった。

 

だが、彼らは技術の進歩と戦術の変化、そして何よりも戦友との信頼を信じて戦った。

 

彼らは王者ではなくなっても、地上の真の主だった。

 

その後の進歩で大空を舞う鳥を容易に落せるようになり、世界情勢の変化によりこれ等の兵器が入れない小路を走り、市民という名の敵を見つけ、制圧する。

 

時代は歩兵に厳しくとも味方ではあった。

 

人類が宇宙に住む時代になっても歩兵は未だに存在し地上に君臨していた........その時までは。

 

人類初のMSの出現。

 

宇宙空間での活動を目的としたその兵器は、類まれなる汎用性を持って地上にまで降り立った。

 

本来18mもの巨体は、戦車や飛行機にとっていい的であり、人型故に歩兵でも死角を突けば撃破できると高を括っていた。

 

だがNJの存在が、地上戦を数世紀前に戻し、有視界戦闘におけるMSの威力は、18mという高所からの視点とAMBACを応用した高機動。

 

リニア・タンクの一撃を跳ね返す装甲に、様々な環境に適応できるその汎用性は戦車や歩兵にとって悪夢その物であった。

 

戦車は装甲の薄い上部を狙われてはどんなに優れた装甲も意味を成さず、歩兵は巨大による威圧感と恐怖により、連携も間々ならぬまま蹂躙される。

 

頼みの綱の航空攻撃も、最新の電子機器に頼った攻撃をNJによって無力化され著しく攻撃効率が落ち、空にまで進出したMSによって航空機も翼を捥がれていった。

 

歩兵は地上の主でだった、だが今はMSこそが戦場の支配者だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

U.C.0079 六月

 

ザフトアフリカ共同体連合軍によるアフリカ中部東部における同時進行は、早くもその意図を頓挫し始めていた。

 

事前に準備した連邦軍とジオン軍の強固な防衛線の前に苦戦を余儀なくされ、平野でこそ地上用MSバクゥの力もあり何とか前線を推し進めることに成功する。

 

だが、他のジンやザウートといったMSはバクゥの進撃スピードに付いて来れず、結局前線は膠着、地球連邦は敵の攻勢を受け流しつつ幾つかの突出部分を作り出し、ザフト軍を拘束することに成功していた。

 

更に前線から部隊を抽出し、中央部の右翼から丁度ザフト軍進出地点の脇を突くようにしてザフトアフリカ共同体の物資集積所となっている街ペセタを狙う動きを見せた。

 

この地点を押さえれば、ザフト軍の侵攻は鈍化し、アフリカ共同体領地に侵入したゲリラ部隊の援護にもなる。

 

作戦は極めて短い準備期間の中行われ、朝焼けの中陽動として前線域での準備砲撃が行われる。

 

地面を耕す砲撃は、連日の戦いで疲弊したザフトアフリカ共同体兵士を襲い、多くが対応に追われることになった。

 

砲撃は三十分間行われ、その切れ目を狙い、地球連邦軍第三十三装甲師団及び第五十六機械化師団、隷下の重野砲連隊を伴っての進撃は、連日の戦いで消耗率が激しく満足な機動も出来ないザフト軍MS隊の現状を狙い、部隊間の層の薄い部分を切り裂くようにして進撃した。

 

戦車師団が、今までの鬱憤を晴らすように塹壕を蹂躙し機械化され進撃速度が上がった歩兵が戦果を拡大する。

 

MSが出てくれば、重野砲連隊の砲撃とヘリボーンによる強襲からなる陸と空からの攻撃の前に、碌な稼動も出来ないMSは次々と各坐されていく。

 

進行部隊は三日目にしてペセタ市を視界に収め、その五キロの地点にまで迫った。

 

しかし、此処で思わぬ反撃を受ける。

 

ペセタ市に展開していた部隊は比較的容易に補給や整備を受けられ、前線に出ずっぱりのMSとは違い本来の性能を発揮したMSの前に部隊は思わぬ苦戦を強いられた。

 

しかし、MSの数の少なさと、地形の複雑さからザフト軍MS隊はペセタでの篭城戦を決定、此処にペセタを巡る壮絶な歩兵とMSの市街戦が繰り広げられた。

 

市街地に向けての準備砲撃によって煙を上げて崩されていくビル群。

 

装甲車を戦闘に歩兵を伴った戦車が市街地へと突入し、入った直後から彼らは激しい抵抗を受ける。

 

物資集積地という事もあり、豊富な物資と装備とを使い、防衛線を構築したザフトアフリカ共同体軍は、彼方此方にトラップを仕掛け連邦軍を待ち受けていた。

 

瓦礫の隅から銃撃を受け、ビルの壊れた窓から対戦車ミサイルが放たれる。

 

圧倒的な火力を持つ61式戦車も、取り回しのし難い市街戦では分が悪く、戦線は泥沼化し、ビル一つを争う血で血を洗う戦いへと否応なく陥ってしまう。

 

攻勢から五日、時間をかければ前線から増援が呼び寄せられ進行部隊は市街地と野外とで挟み撃ちになってしまう。

 

此処に来て連邦軍は市街地の被害を考えず、ペセタの攻略だけを念頭に砲撃による活路を見出すことになる。

 

市街とを瓦礫の山と化し、撤去の暇も惜しんで戦車の主砲で無理やり吹き飛ばし、道を作る。

 

市街地中央、ペセタ市官庁前を目指し進む歩兵部隊の前にザフト軍のMSが姿を現す。

 

MSは三機、どれもジンの改良型でマニュピレーターには武器を持たず、代わりに人間で言う手の甲の部分に二対のクローが両手についていた。

 

肩にはマシンガンやレールガンを装備し、胸の部分には足元を狙えるように機銃が取り付けてあった。

 

今まで温存されていたザフト市街地戦の切り札が連邦軍歩兵部隊に襲い掛かる。

 

 

 

 

 

 

「クソっ、話が違うぞ!!あんな奴見た事がない。」

 

「愚痴を言ってないで頭を下げろ。来るぞ!!」

 

ビルの陰に隠れ頭を伏せた直後に、ビルにレールガンが当たり、周辺に破片を撒き散らしながら大穴を開ける。

 

ベン・ミラー軍曹はヘルメットに当たる破片の音を聞きながら今までのことを思い出していた。

 

 

俺達第689歩兵小隊は、ペセタ市攻略戦に駆り出されこうして部隊全員が地獄の市街地戦を潜り抜けてきたが、戦いそのものは凄惨を極めた。

 

ビル一つを制圧する為に半日を費やし、野外で寝ているところをスナイパーに襲撃されたことさえあった。

 

逃げ遅れた市民の遺体が敵味方関係なくそこら中に転がり、回収されないまま酷い臭いを出していた。

 

俺達を率いるベン・バーバーリー中尉殿は、地上での歩兵による対MS戦術の確立の為にこの戦線に送り込まれた。

 

中尉自身はいい人だと思うが、何分歩兵でMSをやれ、てのが可笑しい。

 

だが、中尉はそんなことに耳を貸さず、ただただ俺達は命じるられるままになっていた。

 

「やべ、機銃掃射だ。早くビルに隠れろ!!」

 

新型のジンの肩から放たれるマシンガンの掃射がコンクリートの地面を穴だらけにして、ついでに残っていた戦車を蜂の巣にしていく。

 

「最後の戦車がやられたぞ!!一体どうすりゃいいんだ。」

 

「本部に救援は、ヘリボーンは何時来るんだ。」

 

俺達の目の前に現れたあいつ等は、狭い道なのに戦車の一撃を全てかわし、あっと言う間にオレ達を蹂躙した。

 

ビルに近かったオレ達小隊はすぐにビルに退避し、敵の攻撃をやり過ごしたが、そのまま道に残っていた奴らは皆踏み潰されるかミンチになるかだった。

 

「いいか、お前達、ここが踏ん張りどころだ。全員対MS戦用意、武器を掻き集めろ!!奴の背後に回って背中を攻撃するんだ。」

 

このままじゃやられる。そう感じた俺達は中尉の指示を理由に行動を開始した。

 

小隊は丁度、お互い両側のビルに隠れ、向こうの小隊は中尉の右腕パパ・シドニー・ルイス特技曹長が率いることになった。

 

瓦礫に隠れるようにM-101A3リジーナなんて大層な名前のついている実際は対戦車ロケット弾を構え、MSの膝の部分を狙うようにして照準を合わせる。

 

と、突然MSが振り向きこっちに目の部分を向けた。

 

気付かれたか!!

 

だが、その一瞬の停止が命取りになった、背後に回りこんでいたルイス特技曹長の部隊が構えた対戦車ロケットが奴の背後を直撃し、コンクリートの剥げた地面に倒れる。

 

「やったぜ!!これでおれたちゃ勲章もんだ!!」

 

が、残っていき二機が両側のビルに向けてマシンガンやレールガンを乱射しビルを倒壊させていく。

 

俺達は装備を引っさげ倒壊するビルから逃げ出さなくてはならなかった、だがその目の前には奴等が居た。

 

咄嗟に隠れた俺を除いた奴等全員が、奴等の両膝から飛び出した新型の対人地雷によって体を破片が貫き、あたりは一瞬で血の海と化した。

 

ふと俺の目に中尉が瓦礫に向かって走っていくのが見えた。

 

「あの野郎、オレ達を見捨てて自分だけ逃げるつもりか。」

 

何時でも撃てるように拳銃のホルスターに手をかけ、中尉を追うと、瓦礫の向こう側は丁度MSの背後に出ていた。

 

「何やってる、付いて来い。そこにあるランチャーを拾え!!」

 

中尉の指示で我に帰った俺は、落ちていたランチャーが装填積みなのを確認し中尉についていく。

 

「いいか、奴の足の関節を狙え、俺はこいつをお前は向こうをやれ。」

 

二機のMSは気がついていないのか、目の前の瓦礫に集中する、と瓦礫の中からジープが飛び出し荷台で銃を乱射するルイス特技曹長の姿があった。

 

「曹長!!無茶です逃げてください。」

 

が、俺の悲鳴もむなしく、次の瞬間曹長が乗るジープは蹴り飛ばされ、容赦なくそこのマシンガンを叩き込まれた。

 

あれでは生きては居まい、俺は曹長の敵を取る為照準を背後にあわせ、

 

「今だ撃て!!」

 

中尉と同時のロケット弾を発射し、中尉のロケットは見事MSの関節に当たってMSを倒したが、俺のロケットはそれてビルに当たってしまった。

 

「クソっ外れた!!」

 

が、次の瞬間には物凄い速度で振り返ったMSの機銃を浴び、俺と曹長は瓦礫の山から叩き落された。

 

......俺も年貢の納め時か......。

 

足に銃撃を受け、動けない俺は隣を見ると、血達磨になっていた中尉が目に入った。

 

ああ、俺もこうなるのか。

 

MSが俺にマシンガンの銃口を合わせ、その瞬間に横から対戦車ミサイルが肩に命中し、MSと俺の間を通り過ぎるようにヘリボーンが現われた。

 

ヘリに銃口を向けようとヘリの方ばかりに注目した結果、もう一機のヘリに気付かず、背後から必殺の一撃を受け、あんなに苦労したMSはその巨体を崩れさせた。

 

俺はこのとき、漸く要請したヘリボーンが来たのだと悟った、そして何故もっと早く来てくれなかったんだと後悔した。

 

その後、後続の部隊に無事救助された俺は野戦病院に送られ、担架の中でペセタ市の陥落を伝えられた。

 

ヘリボーンが遅れたのは、本部から送られた降下部隊の援護の為だそうだ。

 

残っていたMSはあの三機だけで、俺達はまんまと囮にされ、その間に敵司令部を攻略、引き返してきたヘリボーンによって俺は救われたのだ。

 

全くふざけやがって。

 

何でもっと早くにそれを教えてくれなかったんだ。

 

そうすればあんなに死ぬことはなかったのに.......。

 

その後、瓦礫の山の上で俺は支えられながら勲章を授与された。

 

寡兵の中MSを二機も仕留めたその功績に報いる為だ。

 

中尉は奇跡的に一命を取り留めた、運よく臓器を外れていたらしい。

 

だが、俺の方はもう除隊だろう。

 

打ち抜かれた足の神経が傷つき、歩兵としては致命的だ。

 

後方に送られる為に、ヘリに乗せられた俺は、廃墟となった街を見て、かつての戦友たちのことを思い出していた......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新星

 

もともとは東アジア共和国の資源衛星であり、産出される鉱物資源はL4のメンデルコロニー群の建築資材として重宝されてきた。

 

開戦と共に、連合軍の重要な資源拠点として新星には艦隊が駐留し、世界樹防衛戦の後は、地球と月とを結ぶ重要な航路として要塞化が進められてきた。

 

C.E.70六月

 

宇宙での拠点確保と資源確保を兼ねザフトはL4に侵攻。コロニーメンデルを巻き込んでの攻防は既に三週間を過ぎようとしていた。

 

ザフト指揮官であるラウ・ル・クルーゼは、旗艦ヴェサリウスで指揮を取りながら、敵の消耗が思った以上に早いのを感じ取ってた。

 

既に攻防も三週間を過ぎ、駐留艦隊の凡そ半数を撃沈したが、こちらの被害といえば軽微に留まっている。

 

このまま行けば最終的にはザフトの勝利だろうが、ただ単に要塞を落としに来たのではなく、攻略した後、要塞をL5のプラントと月との間まで輸送しなければならない。

 

その為に、無駄に戦力を消耗したくはなく、今までも直接決戦するようなことはせず、後方のコロニーメンデルとの連絡を絶つような動きをして、それに釣られて出てきた艦艇を落とし、また引きこもっても補給のあてもなく結局はコロニーとの補給線を確保する為にも何度か艦隊を派遣せざる終えなかった。

 

その、事如くを退け、幾らか時間がかかってはしまったが、こちらの消耗を少なく収める事が出来た。

 

そろそろ本格的に攻勢に出てもいい頃だと、ラウ・ル・クルーゼは判断し、ザフト全部隊に総攻撃に指示を下す。

 

 

 

 

漆黒の宇宙を切り裂くビームとミサイルの応酬。

 

連合軍は、艦隊の半数と共に機動戦力の実に六十パーセントを失い、残った機体も旧式機や満足な補給も修理も受けられなかった機体ばかりだ。

 

対するザフトも消耗はしていたが、連邦軍がL1のコロニー移送の隙を突き、本国からの補給と、地球から直接打ち上げられた物資で比較的戦力の維持に成功していた。

 

ザフトは真っ直ぐ力押しをするようなことをせず、多角方向から要塞に迫り、応戦の為に出撃した駐留艦隊を襲う。

 

機動戦力で劣る連合は、要塞の火力に縋るしかなかったが、そもそも未完成の要塞では満足な火線も維持できず、期待したほどの効果は挙げる事がなく、ザフトMS隊は容易に連合艦隊に取り付く。

 

駐留艦隊が壊滅するまでそれ程の時間はかからなかった。

 

艦隊を失った要塞は脆く、MSと艦砲射撃により対空砲火を無力化され、あっさりと要塞は陥落する。

 

基地司令は撤退のタイミングを誤り、最悪要塞を自爆する手はずが、撤退が遅れた為自爆が不十分になってしまう。この思わぬ幸運に恵まれたザフトは、要塞を攻略して直に移送準備へと入り、簡単な補修と施設の復旧に努め、こうして新星攻防戦は幕を閉じる。

 

だが、今回の戦いで一番の被害を受けたのは連合でもザフトでもなく、L4のコロニーメンデルだ。

 

新星は元々東アジア共和国の管轄ではあったが、L4に建造するコロニーメンデルの建設資材の調達衛星でもあった。

 

故に比較的両者は近く、その為今回の戦闘でコロニーとの連絡を巡り互いに幾度となく戦い、そして・・・・・・メンデルは幾つもの流れ弾で壊滅した。

 

この事件は連合とプラントの非道として世界中に報道され、中立国を中心に反戦運動が盛り上がるが、しかし、それらの声も直にエイプリルフールクライシスの犠牲者の怨嗟の声とブルーコスモスの暗躍によって飲み込まれていく。これ等も全ては、たった一人の男の舞台劇の一部だとも知らず・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

要塞の補修は一週間で済ませ、曳航船に引かれてL5へと移動を開始する要塞を守るように周囲に展開したザフトは、途中でさして妨害も受けず無事に要塞を移送する事が出来た。

 

これは連邦はコロニー移送ということで三個艦隊を出動させ、また強固に守りを固める要塞を相手にするよりも、連邦・ジオンともに脆弱な輸送航路を狙った通商破壊の方が成果をあげ易く、何度か威力偵察部隊を派遣はしたが、本気で要塞を奪取しようという事は余り熱心ではなかった。

 

ザフトは新星をボワズと命名、L5と月とL1との丁度中間地点に置き、ここをザフト防衛線と定め以後要塞としての形を整えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、宇宙でのバランスが徐々に地球連邦、ジオン共和国に傾いて来つつあるのは覆しがたく、地上での苦戦が、ザフトの庭である宇宙でも影を刺し始めてきた・・・・・・・。

 

 

 

 

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