連邦の野望   作:rahotu

12 / 40
地球至上主義

U.C.0079七月

 

アフリカ中部における連邦とザフト・北アフリカ共同体との戦争は膠着状態に陥り、状況を何とか打開しようと試みるも、実質的な指揮官であった砂漠の虎ことアンドリュー・バルトフェルドが北アフリカ共同体内でのジオン・連邦のゲリラ戦に悩まされそれを鎮圧する為に後方に下げられてしまう。

 

後任の指揮官も、ただ悪戯に力押しをするばかりで結果として無駄な犠牲が増え続ける状況には何ら代わりがなく、戦線は依然として膠着状態が続いた。

 

連邦軍はジャブローからの補給で戦力を整え、着々と反攻作戦への準備を整えていく。

 

 

 

 

 

 

 

所変わって此処はサイド7

 

戦争がなければ地球連邦七番目のコロニーとして完成していた筈だが、地球連邦政府が宇宙の安全が確保されるまでコロニーの建設を行わないとして、サイド7は既に人が住んでいるのにもかかわらず、未だに完成の日が分からない事で市民の間に少しずつ不安が広がっていた。

 

そんな中、コロニーの内壁と外壁に設けられた巨大な空間に二機のMSが佇んでいる。

 

一機はイエローカラーの装甲をしていて、MSの顔に当たる部分はゴーグル状になっており、もう一機は白と赤と青のトリコルカラーの派手な機体で、顔の所ももう一機と比べ完全な瞳の形になっており、人間臭さを残していた。

 

「ではこれよりRX-78-1、RX-78-2両機による機動実験及び試作粒子砲の射撃実験を行います。両機スタート位置にどうぞ」

 

実験室を望む観測所に詰める科学者達は忙しなく動きながら、各種の機材を操作していく。

 

眼下に広がる空間に佇む二機のMSは両機とも等間隔を保ちつつスタートラインに立ち、カウントダウンの終了と共に一気に駆け出す。

 

舗装された道から段々荒地に変わり、障害物を乗り越え急な坂を駆け上がっていく。

 

「やはり二号機の運動レスポンスは素晴しいですね。テム博士もそう思いますよね?」

 

観測所では双眼鏡を当てて観察していた男が、後ろで実験の様子を見ていたテム・レイ博士に声をかける。

 

「いや、まだまだだよ。三号機で試しているマグネットコーティングのデータさえあればガンダムはもっと強くなれる」

 

テム博士はモニターに表示される各種データを比較しながら実験の様子を伺い、既に頭の中では次の事を考えていた。

 

機動実験も佳境に入り、現在はスラスター出力を最大限まで上げて、上昇の限界点まで高度を上げ続けていく。

 

そして・・・。

 

「燃料がレッドゾーンに突入しました。飛行実験を終え回収地点に戻ってください」

 

機動実験が終わり次は問題の射撃実験に移る。

 

連邦のMS開発は戦前より行われてきたが、しかしそれは人型戦車の枠を出ることはなく、初期には戦車の車体にそのままMSの上半身を乗せたような物まであったが、彼らが今作り出そうとしているのは完全に白兵戦を主眼とした真の意味で連邦初となるMSであった。

 

そして漸く長年の研究の成果の結果こうしてRXシリーズとして外見上は完成されていたが、問題の中身やまたパイロットの問題。それと戦う為の武器が必要になってくる。

 

地球連邦は地球圏のどの国家組織よりもビーム系の技術に長けており、連邦初となる完全な人型MSの主兵装としてビームライフルとビームサーベルの携帯は必須であった。

 

しかし、Iフィールドを用いてミノフスキー粒子を安定させようにも、従来のバッテリー駆動では出力が足りず、単純に威力や収束率を落としては兵器として使い物にならない。

 

その後、ビーム兵器の小型化、実用化には大いに悩まされ、様々なアイディアや工夫を凝らし幾つもの試作機が作られた。

 

今回の射撃実験では従来の内部ジェネレーターから共有されるエネルギーでビームライフルを撃つのとは違い、外部に外付けのジェネレーターを設け、MS本体と分離する事により安定した出力を得ようとした結果だったが・・・。

 

射撃実験場に到着した一号機及び二号機はそれぞれ別のタイプのライフルを手に持ち、的である廃車となったガンタンクに照準を合わせる。

 

一号機はライフルその物にジェネレーターをつけた結果、ライフルそのものの重量が増し片手では保持出来ず両手で構えて撃つ。

 

二号機の方は、背負い式のジェネレーターからケーブルで供給されたエネルギーを使い、ライフルを撃つも、ケーブルそのものが邪魔となりこれも大きな課題を残している。

 

実験の結果、一号機が使用したビームライフルは重量及びライフル本体にジェネレーターを搭載した為廃熱が追い付かず照準性能や整備性が悪化し、二号機の方もジェネレーターの供給方式その物が機体の機動の妨げとなり、背負い方式の結果矢張りこちらも費用の上昇と整備との関係で成功とはいえない。

 

「今回の実験では両ライフルともメガ粒子のドライブには成功している。だが肝心の収束力やエネルギーロスの問題。廃熱やMS本体のリンクの誤差なのでまだまだ改善の余地がある」

 

テム博士からのダメだしもくらい、研究者一同再び同じ壁に突き当たる。

 

「テム博士、従来のバッテリー方式を改善したほうが良いのではないですか。現在のジェネレーターの出力ではライフル、ソード共に十分に稼動できません。矢張りMS用の小型熱核融合炉の開発を進めたほうがいいと思います」

 

はあ、まあ結局はそこに行き着くのだが。

 

「軍からの要求はバッテリー駆動でのMSだ。ジェネレーターを入れたことで重量は増したが従来のMSに比べ稼働時間は大幅に延長している。それに今の我々では核融合炉の小型化まで予算が回らん。皆分かっているだろう、あともう一押しなんだ頼む」

 

テム博士はいい人だと思う。

 

地球出身のエリートだと思っていたが科学者としても優秀だしこうして頭を下げている姿を見れば純粋に人物として好感が持てる。

 

でも、人というのは安易な方法が提示されればそれに飛びつきたくなる性だ。

 

まして核融合炉を装備すればそれは現行いや今世紀最強のMSが誕生するだろう。

 

皆その幻想に捕らわれているんだ。

 

私もそうだが、核融合炉とガンダムとが合わされば最強のMSが誕生する。

 

歴史に名を残す兵器の誕生に自分が携わると夢想するだけで、これ程の高揚感はなくそして現実にどんどんと冷めていく。

 

それでも開発を止められないのは私も心底この研究に入れ込んでるからだ。

 

願わくば、このMSが歴史に名を刻まれるようになると切に願う。

 

 

 

 

C.E70八月中旬

 

ザフト潜水艦隊はジブラルタル基地から出撃し大西洋の制海権を確保する為に連合軍大西洋艦隊の基地であるアゾレス諸島に攻撃を仕掛けた。

 

地球連邦参戦から大西洋は地球を支配する二大勢力による制海権争いが勃発すると予想されたが、しかし当初の予想に反し大西洋連邦、ユーラシア連邦、更に地球連邦までもずっと沈黙しているままだ。

 

大まかな理由として上げられるのが、互いに戦力の消耗を嫌ったという点が一つ。

 

NJにより原子力で動く主力艦隊が無力化され連合連邦両勢力とも艦艇の改良に手間取ったという点。

 

更に言えば海戦当初は地球上での戦闘は予想されておらず結果として地球上の戦力が不十分なまま開戦を強いられてしまい、広大な領土を持つが故に常に戦力を前線に貼り付けておかなければいけないという状況が各国の手足を縛っていた。

 

無論、それでも互いに相手の戦力を削ろうと空爆や制空権争いを繰り返すも、ユーラシア連邦は北アフリカでの大敗で戦力に余裕がなく、大西洋連邦も難攻不落と謳われるブリテン島を単独で攻め落とすには戦力に不安があり結果として小競り合いに終始している。

 

また、イベリア半島に上陸しジブラルタルを制したザフトが何時大西洋に進出するか分からない以上、無闇に艦隊を出撃する事も適わずこうして開戦から凡そ半年もの間大西洋は不気味な緊張関係が続いていた。

 

だがそれは水上艦艇に限ったことであり、いち早く復帰した潜水艦隊による通商破壊や破壊工作など大西洋では水中において激しい戦いが行われている。

 

当初ザフトは連合と地球連邦の共倒れを狙っていたが、自分達のあまりの進撃速度の速さで逆に両陣営とも戦力温存に走った為狙ったような機会が訪れず漁夫の利を逃してしまう。

 

しかしそれでも大西洋に進出するという事はオペレーションウロボロスにおいて重要な意味を持つ。

 

大西洋を制する事が出来ればパナマのマスドライバーを望む事が出来、ユーラシア連邦と大西洋連邦の連携を絶つ事にもなる。

 

次いで残る東アジア共和国のカオシュンではあるが、国内情勢が不安定な今大西洋にザフトが現われればまず間違いなくパナマを警戒しアジア近海の警戒は疎かになるはず。

 

そこを突いてカオシュンを攻め落とす手もあるが・・・・・・連邦の裏庭を通るというリスクが常に付きまとう為あくまでもカオシュン攻略は補助的な役割であり第一目標はパナマと定められた。

 

紅海において地球連邦海軍相手に通商破壊作戦を行っていたマルコ・モラシム隊長を本作戦の切札として呼び寄せるも、モラシム自身はジオン軍が開発した新型MSの影がチラつくインド洋にから余り離れたたくはなかったが、命令を受け渋々ジブラルタルへと帰還した。

 

ジブラルタル基地司令は、ボズゴロフ級潜水艦十六隻を投入し予備戦力として更に八隻、アフリカ共同体の艦艇とも協力してまずは大西洋のへそであるアゾレス諸島へと攻撃をかける。

 

アゾレス諸島は小さい島ながらも、他に島が無い大西洋でその中心地に位置し、長らく大西洋連邦艦隊の基地として使用されてきた。

 

その為膨大な物資が備蓄され厚い哨戒ラインが敷かれ更に強力な艦隊が駐留しブリテン島とまでは言わずとも強固な守りを持っていた。

 

そこにザフト潜水艦隊は夜襲をかけた。

 

投入された五十二機のグーンと支援用に三十機のディンが投入され、まず音も無く近づいたグーンが停泊中の連合軍艦隊に襲い掛かり、更に投入されたディンが滑走路を爆撃し突然の奇襲に連合軍はなす術も無く次々と撃沈されアゾレス諸島は僅か一回の夜襲で基地機能の大半と駐留していた艦隊を失う。

 

連合軍も夜が明けるころにはアゾレス諸島救援の為艦隊を出撃させるも、昼過ぎに上陸したザフトMSジンにより既にアゾレス諸島司令部は降伏し、基地はザフトの手に落ちていた。

 

アゾレス諸島陥落の報を聞いてショックを受けた大西洋連合海軍本部は、東海岸防衛の為大西洋から艦隊を集めるも、ザフト潜水艦隊は真正面から戦うようなまねはせず、大西洋連邦とユーラシア連邦のシーレーンを断つ為通商破壊作戦を行い、時に単独で東海岸の哨戒網を潜り抜け姿を見せるなど連合軍を挑発した。

 

海軍のプライドを傷つけられた大西洋連邦は、市民からの突き上げと大統領命令もありアゾレス諸島奪還作戦を発動。

 

東海岸中から集められた艦隊を動員し一路アゾレス諸島を目指す。

 

来るべきブリテン島上陸作戦の為に温存していたアイオワ級アイオワ、リシュリュー、リットリオを投入し虎の子のアリゾナ級まで投入した。

 

アイオワ級は連邦軍の圧倒的な航空戦力から艦隊を守る為に、過剰ともいえる対空砲火を備えまた上陸支援用にモスポールされていた旧世紀の戦艦の主砲を流用して装備するなどその砲撃能力は侮れないものがあった。

 

次いでアリゾナ級は大西洋連邦、ユーラシア連邦のみが保有する超弩級戦艦でありその五十口径を越える主砲を九門備え最強という名に相応しい武装を誇っている。

 

これ等のほかにも旧式ながらモスポールされていた戦艦や巡洋艦駆逐艦を復帰させ、空母三隻スペングラー級強襲揚陸艦を六隻と補給艦も含め二十隻を超える大艦隊がアゾレス諸島を目指し大西洋を横断する。

 

まんまと敵を引きずり出すことに成功したザフト潜水艦隊は作戦通りアゾレス諸島を放棄し、ジブラルタルに逃げ帰ったかのようにアゾレスから撤退した。

 

これを好機と見た連合軍はアゾレス諸島に最低限の守りを置きザフト潜水艦隊を追撃。

 

勢いに乗った連合軍はこのまま一挙にジブラルタルをまで奪還しようと艦隊を進め遂にトラファルガー沖まで誘き寄せられてしまう。

 

ここではたと連合軍大西洋艦隊提督は気付いた。

 

自分たちが誘き寄せられた事を。

 

この時提督は一時的にアゾレス諸島まで撤退しようと考えたが、しかしその判断は遅きに失した。

 

ジブラルタルに逃げると見せかけたザフト潜水艦隊はそのまま南下し、カナリア諸島に身を伏せていた。

 

そして連合軍大西洋艦隊がジブラルタルへと向かっていく間に、アゾレス諸島を包囲し僅かな守備兵士か残っていなかった連合軍は降伏。

 

ここに連合軍大西洋艦隊が退路を断たれ包囲される形となった。

 

補給を断たれた大西洋艦隊提督は周囲の反対を押し切り撤退を決意するもそれを逃がすまじと、ジブラルタルから出撃したMSディンが大挙して大西洋艦隊に襲い掛かる。

 

これまでの戦訓から予め周囲に幾重にも索敵機や哨戒機を飛ばしていた大西洋艦隊は攻撃を事前に察知し、三機の空母から出撃した制空戦闘機スピア・ヘッドの艦載機タイプであるスピア・ヘッドMを出撃させMSディンと交戦する。

 

MSディンは既存の航空機よりも装甲、火力、機動性に優れ連合軍の主力航空機であるスピア・ヘッドでは手も足も出なかった。

 

その為、連合軍ではディンとのドッグファイトを禁じ長距離からのミサイル飽和攻撃へと戦法を変えている。

 

今回も出撃した百二十機余りのスピア・ヘッドから長距離ミサイル、ロングランスが発射されジブラルタルから出撃した八十機のディンに牙をむく。

 

MSディンはミサイルが命中する前に手に持つライフルと散弾銃でもって空中で対空砲火を形成しミサイルを迎撃していく。

 

それでも半数以上のミサイルが弾幕を突破しディンに迫るも、MSの驚異的な運動性能によりミサイルの追尾を振り切り或いは追い過ごさせてライフルで次々と迎撃していく。

 

しかしそれでも八十機いた内の十五機ほどがロングランスが命中し戦線を離脱つする。

 

残りのディンが艦隊に迫る前に次は艦隊を守るイージス艦からの対空ミサイルが発射され思うように接近できず、更に第2次攻撃とばかり上空に上がったスピア・ヘッドが残りのミサイルを叩き込む。

 

MSは接近されてこそ脅威だが、事重力のある地球ではMSの機動力は制限されてしまい、更に地球上で長年戦訓を溜め続けてきた連合軍は地球での戦い方に熟知している。

 

敵が一撃必殺の短刀を持っているならば、こちらは長槍で相手となり敵を寄せ付けない。

 

敵の長所を殺し味方に優位な状況を作り出すことこそ、戦場で最も重要なことの一つである。

 

長距離ミサイルからの波状攻撃だが、ミサイルを撃ちつくした航空機が帰還すると状況は悪化する。

 

今まで上空にいたディンが次々と降下し海上すれすれを高速で飛行しはじめた。

 

レーダーに映る投影面積を小さくし更に空気抵抗を削ったディンの高速飛行形態は瞬く間に大西洋艦隊との距離を詰める。

 

スピア・ヘッドがいた為、上空を押さえられては適わないと不利を承知で遮るものの無い空中での戦いを挑んだが、MSは本来その戦場を選ばない他には無い汎用性こそが売りである。

 

ディンも空こそ飛べるがそれはどちらかといえば制空権の確保よりも地上の支援であり、その為余り航続距離は考えられていない分重武装を誇っている。

 

そして一旦ディンがその楔を外されると共に真の力を発揮した。

 

あっと言う間に艦隊に取り付いたディンは、まず外輪部を守る駆逐艦戦隊を血祭りに上げる。

 

艦隊の盾となろうとした駆逐艦六隻が瞬く間に沈み、ミサイルのロックが間に合わない間に今度はイージス艦が撃沈され見る間に大西洋艦隊は戦力を目減りさせていく。

 

再度航空機を出撃させようとした空母の甲板にディンが乗り込み、艦橋とエレベーターにライフルの砲弾を叩き込む。

 

両肩に備えたミサイルポッドから発射されたマイクロミサイルが命中し、辺りは火の海と化した。

 

大西洋艦隊提督は味方の被害報告に胸が締め付けられる思いをしながら何とか撤退しようと指示を出す。

 

幸い艦隊の中核をなす船は比較的最新鋭の艦隊で固めているので思ったよりも被害が少なく、またアイオワ級がその名に恥じに猛烈な対空砲火を上げディンの攻撃を寄せ付けない。

 

その分、旧式艦艇で構成される艦隊外輪部の被害は正に目を覆いたくなる程だが、それでも目の前の惨状から何とか逃れようと対空砲火に優れるアイオワ級を前面に押したて活路を開こうとあがく。

 

外輪部艦隊を粗方片付けたザフトではあるが、艦隊中央部は正に火の壁が迫る猛烈な対空砲火の嵐が吹き荒れ迂闊に近づくことさえ出来ない。

 

運悪く敵の対空ビーム砲が命中してしまったディンが、唯の一撃で粉々にされた光景を目にすれば誰しもが躊躇ってしまう。

 

その味方に当たってもかまわないという気迫に押されたザフトは、バッテリーの問題もあり撤退を決意し機微を返しジブラルタルへと戻っていく。

 

この隙に大西洋艦隊はディンの包囲網を脱し、ディンの行動範囲から逃れる海域まで来ると今度は針路を北に取る。

 

南に針路と取れば連邦の領海を通ることになり、そうなれば地球連邦海軍南大西洋艦隊とかち合う可能性があり、北の航路を取れば大きく迂回するような形にはなるがそれでもグリーンランドの制空権まで辿り着く事が出来れば何とかなると提督は考えていた。

 

それに従い、多くの損傷艦を抱え思うように船足が進まない中、大西洋艦隊は北へ北へと進んでいく。

 

カナリア諸島から再びアゾレス諸島を奪還したザフト潜水艦隊は、満身創痍の大西洋艦隊を追い嫌がらせのように攻撃をかける。

 

攻撃を受け損傷し弱まった船を真っ先に攻撃し、一旦攻撃をかけたら直さま引くということを繰り返す。

 

更に敵の針路上に予め潜水艦を配置し夜襲を行い、大西洋艦隊は既に出航した時の面影はない。

 

大西洋艦隊全艦が被害を受け、無傷な船は見当たらない。

 

連日の戦いで武器も弾薬も尽きかけ補給の宛てはおろか味方からの援護さえ期待できない日々を、彼等は戦い続けた。

 

そして、グリーンランドの制空権まで入る事が出来たのは僅かに八隻のみ。

 

生き残ったのはアイオワ級二隻にアリゾナ級一隻それと僅かに旧式の駆逐艦が三隻に輸送艦が二隻、それ以外は全て失われまた生き残った全艦が大破認定され長期間のドッグでの修理を要した。

 

そのうちアイオワ級二隻は東海岸まで曳航するまで持つ事が出来ず、そのままグリーンランドにとどめ置かれ、ここに大西洋艦隊は壊滅した。

 

一方的な敗北を喫した大西洋連邦は以後艦隊の行動を東海岸及びカリブ海、パナマ近海に限らざる終えなくなり、地球連邦も大西洋に新たに出現した脅威に対抗するためMSの実用化を急がせることとなる。

 

ザフトはほぼ完勝したとはいえ広大な大西洋の制海権を握るには兵力が少なく、またインド洋において遂にザフトが恐れていた事態が起きその余裕を失っていた。

 

 

 

 

 

世の中には様々な主義主張がある。

 

古代ギリシアにおいては千人に問えば千の答えが返ってくるという。

 

国家でもそうだ。

 

強大な国家であればあるほど意思の統一というのは至上命題となる。

 

それは人類統一を成し遂げた国家でさえも例外ではない。

 

実際その国家は二十年と経たず崩壊し、現在は僅かな土地にしがみ付く様にして存在しているに過ぎない。

 

だが、彼等は今でも胸を張ってこう言う。

 

『自分達は地球連邦の一員』だと。

 

 

 

 

 

地球連邦軍中枢ジャブロー

 

南米にあるとされる地球連邦の拠点ではあるがその詳しい中心地は誰一人として知るものはいない。

 

それもそのはず、広大な南米大陸そのものがジャブローでありまた核の直撃にさえ耐えうる強固な岩盤の穿って作られた司令部は正に鉄壁。

 

ここを正攻法で攻略しようと言うならそれは地球連邦軍全軍を上回る戦力を持つ事になるが地球圏で最大の軍事力を誇るのは連邦自身であり身内の反乱さえ起こらなければ外部からの攻略は不可能といっていい。

 

そのジャブローの中心部から少し離れた地下都市に築かれたビルの一室で何事か秘密の会談が開かれていた。

 

「では、このまま行けば戦争は早期に終結し連合とは講和、プラントは半属国としての占領というわけですか。それはいけませんな」

 

ハバナの吸殻を水晶で作られた灰皿に落とした男は顔を顰めた。

 

これは別にプラントに同情している訳ではない。

 

そもそも今回の騒乱の原因ともなったプラントに対しては地球連邦の誰しもが含むところがあった。

 

では何故彼が地球連邦の勝利に否定的なのか、いやそうではない。

 

早期の終結という所が彼等にとって面白くないのだ。

 

「さようですな。最低でも一年半いや二年はやってくれなくては。それに主戦場は地上のアフリカ、アジア地域に限定して」

 

杖と付いた白髪の老人が男の言葉に肯定の意見をいう。

 

「海運も忘れてもらっては困る。それと戦争で民需は目減りする一方だが地球が戦場となってくれれば地上の経済が回る。軍需は宇宙に任せ地上は民需に専念すべきだと考えるが」

 

彼等は一体全体何を話しているのか?

 

地球圏規模での未曾有をの災害と戦争が同時に起こった今次大戦でいったい何を成したいのか。

 

「今の連邦はまったくなっていない。そもそも連邦は地球の守護者でありスペースノイドの保護者ではない。アースノイドなくして地球はありえんというのに」

 

比較的彼等の中で若い人物が語気を強め今の政権を批判する。

 

別に彼等は反スペースノイドではなく過激なブルーコスモスのように絶滅など考えてはいない。

 

だが彼等が一番気にしているのは地球上での経済規模の縮小を問題視していた。

 

「ですがスペースノイド、ルナリアンの経済規模を侮る事は出来ません。悔しいですが我連邦でも地球で生産されるよりも圧倒的にコロニー産が多いのです」

 

実際ここ二十年間で火星への移民も含め地球圏全体で経済規模は拡大している。

 

だがそれと反比例して地球上での企業が月やコロニーに工場や本社を移し、各国でもそれに習う動きが活発化していた。

 

ここに集まっている彼等はそれらの行動に懸念を示していた。

 

何故ならば地球の経済規模が縮小すればまず間違いなく地球から離れられない中小企業がつぶれるか宇宙に基盤を置く会社に併合されてしまう。

 

そうなると初期から宇宙に拠点をおく企業にとってこれはまたとないチャンスになる。

 

いち早く宇宙に出たと言うアドバンテージを生かし少数の大企業による地球を含めた地球圏経済の支配、並びに地球が逆にコロニーの植民地にされる事に危機感を覚えているのだ。

 

「地球圏の経済を月に独占されて堪るものか。戦争を少しでも長引かせて地球上の企業を保護し戦後然るべき時に資本を注入し再度地球上の経済を活発化させる。その為に今回の戦争連邦は勝ちすぎてはいけない」

 

仮に戦争を長引かせることなら出来るが、最終的に地球上に敵がいなくなっては困る。

 

今次大戦では長らく連邦と冷戦状態であった連合国が軒並み国力を低下させこのままでは戦後国家は残るかもしれないが連邦の敵となる存在が地球上ではなくなってしまう。

 

逆に宇宙はジオン共和国にプラントという潜在的な脅威が常にある。

 

まず間違いなくジオン共和国は今次大戦の勝利者として宇宙において強い力を持つようになる。

 

そうなれば中世期の世界大戦の様にジオン共和国が覇権を握る可能性がある故に彼等はジオン共和国も今回の大戦では何かしらのそう国家中枢に打撃を受けて欲しかった。

 

少なくとも戦後の復興経済においてジオンと言う強力なライバルを未然に蹴落とすことで地球上の復興経済資金を地球上の企業に回す事が出来る。

 

「故にこのV作戦。これは使えると思いますよ」

 

「うんそうだ。MSの早期量産体制が整えば戦争が終結してしまう。だが今この計画は我等の手の中にある」

 

彼等は机の上におかれた極秘の烙印が押された書類に目をやる。

 

「戦後の連邦に英雄は不要だ。レビル君にはさっさと引退してもらおう。その為に抜かりは無いな」

 

「ええ、既に情報は幾つかリークし恐らくザフトが食いついてくるはず。全く自分たちが利用されているとも知らず」

 

「ははは、無知なものには我々エリートが導いていく義務がある。新人類なんぞ妄想でしかない」

 

彼等はみな地球で生まれ地球で過ごしてきた。

 

宇宙に一度ならず上がった事はあっても彼らは宇宙には馴染もうとはしない。

 

其れゆえの傲慢さか、彼らの食事衣類にいたるまで全てが地球産でありコロニー製品を毛嫌いしているものもいる。

 

「だが、よくこんな情報が入りましたね」

 

「いえ全くですよ。彼には感謝しないといけませんね」

 

「そうだな、エルラン君には今後とも我々の良きパートナーとなって欲しいものだ。はははははは」

 

部屋の中に笑い声がこだまする中、宇宙では隕石に偽装したザフトの軍艦がサイド7へと忍び寄っていた。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。