宇宙世紀0079 サイド7を脱出したホワイトベースだが船内にはサイド7の生き残りである避難民達がひしめき合い、とても軍船として活動出来るものでは無かった。
有り体に言って難民船である。
そもそも本来の艦長であるパオロ・カシアス大佐は先の戦闘で負傷し、元いたクルーの大半も戦闘に巻き込まれた結果戦死し、その代替を予備クルーとして乗り込んでいた士官候補生達と現地の民間人達が行う等凄惨たる有様であり、当然彼等は最寄りの連邦軍に救助を求める事となった。
しかし、それが更なる災いを招く結果となった。
参謀本部より密命を受けていたリード中尉が乗るサラミス級巡洋艦マダガスカルは、ホワイトベースからの救難信号をいち早くキャッチし向かって来ていた。
サイド7宙域
負傷したパオロ艦長に代わり、代理として指揮を取っていたブライト・ノア少尉はこの年士官学校を卒業したばかりの士官候補生であった。
その彼は艦橋のモニターに映る連邦宇宙軍中尉リード艦長の顔をマジマジと見た。
今聞いた言葉が聞き間違いで無いのか?そう言う思いでブライトは言った。
「では、我々はこのままルナツーを経由せずにジャブローに直接向かえと?そうおっしゃるのですか」
「そうだ、ブライト少尉私は君に質問を許すとは言っていないぞ」
会話は一方的且つ高圧的に伝えられるその内容に、ブライトは目の前が真っ暗になる思いであった。
しかし、彼は代理とは言え艦長としてホワイトベースの現状を相手に伝えて命令を撤回して貰わなければならない。
「は?は、リード中尉。ですが、今のホワイトベースではとても」
「君は、ジャブローからの、しかも参謀本部からの密…ゲフンゲフン。兎に角、今後ホワイトベースはこのままルナツーを経由せず地球に向かいたまえ」
「待ってくださいリード中尉!サイド7からの避難民は⁉︎彼等はどうなるのです」
「知らん、そもそもそんな話も聞いていない。そんな事は君達でなんとかしたまえ。」
「待ってくださいリード中尉、リード中尉⁉︎」
ブライトの叫びも虚しく一方的に通信を打ち切られ、彼等は途方にくれた。
到底実現できそうも無い無理難題を吹っかけられ、しかもそれ以外の無理難題は艦内で山積し今だに増え続けている。
「どうするの?ブライト艦長…このままあのリード中尉とか言う人に従うの」
ホワイトベースの操舵手を任されているミライ・ヤシマは民間人であったが、非常事態と言う事もあり彼女がホワイトベースの操舵を任されていたが、この他にも全クルーの半数以上は臨時の民間人でそれ以外は士官候補生達である。
そんな寄せ集めの彼等彼女等をまとめ、しかも避難民達との折衝も行わなければならないブランドの責任は、厚く重くのしかかっていた。
「兎に角、兎に角今は命令に従うしか無い」
「今は、何よりもこの宙域を離れる事が先決だ」
一方、サイド7で事件が起こっていた頃、ジオン共和国宇宙軍シャア・アズナブル少佐も又近海のアステロイドベルトに潜んでいた。
彼はこの戦争において「赤い彗星」の異名を持つジオンきってのエースパイロットであり、ジオンの御曹司ことガルマ・ザビの学友であることからザビ家の覚えも目出度い。
そんな彼はドズル・ザビ中将直々に指令が与えられていた。
その内容は連邦軍が開発中のMSの調査と可能ならばデータの収集が求められていた。
勿論、この時既にサイド7近海にザフト宇宙軍の艦艇が潜んでいる事は知らされており、シャアに求められてるのは友軍の危機を見逃しながらも如何に連邦に恩を売り、しかも連邦のMSのデータを入手すると言う困難極まりないものであり。
ドズル・ザビ中将は内心この作戦に反対であったが、自身の長兄であり今やジオン共和国の全権を握る天才ギレン・ザビの命令には逆らい難く、致し方無く軍でも切れ者として有名なシャアにこの任務を託す事となったのだ。
この、ともすれば連邦とジオンの同盟関係にヒビを入れかねない背信行為の汚名を着せられかねない任務に対し、シャアは自身の顔を覆う仮面の奥で笑う。
「どうやら、木馬はサイド7を脱出したようだな。付近にザフト軍は見つからんか」
この木馬とはジオン内で名付けられたホワイトベースに対する暗号名である。
「まだ発見できておりません。こうアステロイドベルトが多いとミノフスキー粒子を散布していなくても発見は困難です」
「シャア少佐、本当にこのままでよろしいので?」
シャア少佐の副官にしてムサイ級軽巡洋艦ファルメルの艦長を任されているドレン少尉は、この不敵に笑う若者に対して言った。
「既に戦闘は終わり、我々は些か気を逸した様に見えますが…」
「ドレン、私はそうは思わん。このままザフトが引くとは思えんし、何より先ほどキャッチしたあのレーザー通信もある」
シャアが言うレーザー通信とは、リード中尉とジャブローとの間で交わされた暗号通信の事なのだがそれを運良くキャッチした彼等はそれを解析し、大まかな内容を掴んでいた。
この暗号化された情報を解析出来たのには、女傑キシリア・ザビがグラナダに拠点を置くキシリア機関の存在が大きい。
彼等は戦時中、例え相手が同盟国であろうとも貪欲に情報を収集しそれをジオンの国益に還元していた。
その目的がキシリア・ザビの個人的な野心であろうとも、その成果が今シャアの判断に大きな影響を及ぼしていた。
「今は様子を見るほか無い。何時でも出られる様私のザクを準備しておけ」
そして、彼等の目の前でリード中尉と合流を果たしたホワイトベースがルナツーに向かわず地球へと進路を取ると、彼等も又その後を追跡して行くのである。
ジオンに追跡されているとは知らないザフト軍ローラシア級イーゴリの艦長アーノルドはある決断を下した。
「敵はどうやら直接地球に降りる様だ。よって私は決断した」
艦内の作戦室に集まったMS隊の隊員と各部署の班長達が固唾を飲んで彼等の隊長の次の言葉を待つ。
「敵が大気圏に降下する前に攻撃を仕掛ける」
そこで言葉を切りアーノルドは彼の部下達の反応を待った。
意外に驚きの声は上がらなかった。
寧ろ、当然だとばかりに意気込んでさえいた。
この任務で既に貴重なパイロットを2名も失い、艦内の士気は落ちていたがしかし彼等はまだ任務を遂行できる力を持っていた。
その意を汲み取り、アーノルドは作戦内容を伝える。
「作戦は至ってシンプルだ。まず敵が大気圏降下軌道に入る前に残りのMSを全てぶつけこれを叩く間本艦は敵の頭を押さえ退路を塞ぐ」
「敵戦力は途中サラミス級一隻増えたがこれは問題にならん。寧ろ本命はコイツだ」
モニターに一機のMSの姿が映し出された。
白と赤と青のトリコロールカラーのMSがそこにはいた。
その姿を見て、流石にMS隊の隊員達は騒つく。
このMSに味方が二人もヤられたのだ、心が騒がない筈が無い。
「持ち帰った情報からこのMSにはビーム兵器が搭載されている可能性が強い」
ビーム兵器のMS搭載技術の実用化。
それは戦局を左右しかねない程の重要な技術であり、ザフト、連合、連邦、ジオンその他の勢力も国力を注ぎ開発を行っている。
ザフトは一応ビーム兵器の実用化を果たしていたが、取り回しも悪く前線の兵達からは不評であった。
「交戦に当たっては各員十分に注意するように。なに、対MS戦の教本通りやれば問題無い、もし撃破出来なくとも大気圏が後は処理してくれる」
言外に敵MSと正面から当たらず大気圏に落とす様指示を出すアーノルド隊長。
「作戦は以上だ。質問は…なければこのまま解散。出撃準備にかかれ」
作戦室を後にする隊員達、そして最後に部屋を後にしたアーノルドは心の中で。
(万が一に備え、最悪船ごと体当たりしてでも落とさなければ)
覚悟を固めたアーノルドは、自身の最後となるかもしれない任務に挑むのである。
「この⁉︎堕ちろー」
両手で保持されたライフルからメガ粒子のビームが放たれ、哀れなMSジンを一撃で火の玉に変える。
なし崩し的にはガンダムのパイロットになったアムロ・レイがこの戦闘で撃墜したMSは2機。
コロニーでの戦闘も含めると既に4機ものMSを落としたことになる。
これは、それ程にガンダムの性能が優れているからであろうか?
それとも、このアムロ・レイと言う少年が何か特別なのか。
それは後の歴史を紐解かなければならないが、この時のアムロの活躍は間違いなくガンダムの性能のお陰であった。
大気圏降下まじかのタイミングでの攻撃で、突入コースに入っていたホワイトベースとサラミス級マダガスカルから発艦した突入カプセルは身動きが出来ず、ガンダム一機での迎撃に頼らざるおえなかった。
しかも運が悪い事にリード中尉がのるカプセルが戦闘の流れ弾で被弾し、ホワイトベースに収容しなければならず、その間全くホワイトベースからの支援も期待できない中、アムロとガンダムは戦い続ける。
コロニーでの戦闘とは違い、曲がりなりにも装備を整えたガンダムに対し、ジンの性能は圧倒的に劣っていた。
ジンから放たれる重突撃銃の弾丸はガンダムの装甲の前に全く無力であり、逆にガンダムから放たれるビームライフルの威力は戦艦の主砲と何ら遜色無く一撃でジンを撃ち落す。
MSの操縦においても、コーディネイターである彼等に対し連邦軍が開発した学習型コンピュータはその力を存分に発揮し逆に彼等を翻弄していた。
これは、連邦軍が収集したジオン共和国のMSパイロットのデータが既に組み込まれており、後に連邦軍MSのスタンダードとなる操縦システムの母体となる。
ガンダムの驚異的な戦闘力に恐怖を覚えたのはザフトのMSパイロット達ばかりで無く、イーゴリ艦長アーノルドも同じであった。
「な、れ、連邦軍のMSは化け物か⁉︎こうなれば、本艦ごと体当たりしてでも…」
任務を遂行するため、非情な決断を下そうとする彼の前に新たな脅威が襲いかかった。
「艦長、頂上よりMSです⁉︎」
「何⁉︎」
「早い、これは…通常の三倍のスピードです⁉︎」
「赤いMSです」
赤いMS、まさかと言う思いがアーノルドの心中を占める。
「赤い彗星だ。赤い彗星のシャアだ‼︎」
「三つ!」
ガンダムのビームライフルに撃ち抜かれたのはこれで3機。
最初4機いたジンは既に一機だけになっており、まさにガンダムの圧勝であった。
しかし、アムロも決して余裕であったと言う訳では無い。
既に機体は地球の重力に捕まりつつあり、危険高度に下がりつつあった。
さしものガンダムでも、大気圏との摩擦ではひとたまりも無い。
アムロはこの時点でホワイトベースベースに帰還するかどうか迷った。
敵は既に逃げ腰であり、敢えて追わなくとも脅威では無いと思ったからだ。
しかし、この時一瞬でも敵から目を離したのが歴史のターニングポイントとなった。
味方を全て撃ち落とされ、及び腰になったジンのパイロットだが意を決すると破れかぶれの特攻を試みた。
バーニアを全開にしガンダムに体当たりするジン。
「わああ、こ、こいつやったな⁉︎」
ジンに体当たりされ、二機のMSは縺れ合いながら大気圏へと落ちて行く。
何とか敵を振りほどこうとガンダムからビームサーベルの軌跡が煌き、ジンを溶断するが時既に遅し。
既に自力ではどうにもならない程ガンダムは重力の井戸に落ちていたのだ。
手に持つシールドを大気圏の盾にして何とか機体を保とうとするガンダム。
しかしその運命は、今まさに焼き尽くされ様としているジンの残骸と同じ運命を辿るかに見えた時。
巨大な影がガンダムの下から浮かび上がる。
ホワイトベースが、ガンダムを救う為突入コースを変更する危険を冒してまでアムロを助けたのだ。
無事、ホワイトベースに降り立つガンダムは艦内に収容されホワイトベースはジャブローでは無く遥か遠く、別の大陸に降り立つ。
そこは灼熱の太陽とゲリラと戦乱が渦巻き連邦とジオン、ザフトの三勢力が凌ぎを削る大陸。
アフリカの地に降り立ったのである
今回はここで終わりです。
次は…半年後に投稿できたらいいなぁ(爆
誰かにプロットだけ放り投げて完結させて…ダメですねこれ。