連邦の野望   作:rahotu

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アフリカ

 

 

ガルマ・ザビと言う人物を指して良く言われるのが「親の七光り」であり、次いで「ジオンの貴公子」が続く。

 

「親の七光り」とは20代にしてジオン共和国軍大佐の地位と、カーペンタリア基地の実質的な司令官と言う立場からであり。

 

もう一つの「貴公子」と言うのは、甘いマスクと身分の上下に囚われない気さくな人柄に誰しもが惹かれ、本人が自然体で放つカリスマ性により常に周囲に人が集まる事からであった。

 

ジオン共和国内においては、国民の人気は兄ギレン・ザビを凌ぐ勢いであり、軍のトップであるドズル・ザビからは厚く可愛がられ、冷血と称されるキシリア・ザビも又弟に対しては甘い所があった。

 

そしてなによりも彼を一番可愛がっているのは父であるデギン・ソドム・ザビであり、その溺愛っぷりは内外でも有名であった。

 

ジオン共和国外に置いても、地球連邦政府各コロニーの首長や高官の子女達にマダム達に大変な人気があり、一種のスターでありジオンの対外イメージ戦略の一翼を担っている人材である。

 

さてそんな彼だが今現在カーペンタリア基地を離れ、遠くアフリカ大陸へと降り立っていた。

 

前線の将兵達を慰撫すると共に、地球連邦議会のあるダカールを表敬訪問する為であった。

 

特にダカール訪問は本人の希望と言うよりもジオン本国の意向が強く、将来のジオンを背負って立つ身であるガルマに、これを機に政治経験を積ませておこうとのあのギレンの配慮と共に、時々パイロットとして自ら戦場に立つガルマを前線から遠ざけ自重を促す事も目的であった。

 

さて前線での慰問を終え、ダカールでの表敬訪問も日程を終了したガルマは少しばかりの休暇を取っていた。

 

そんな彼の元に、シャア・アズナブルより極秘の通信が入って来たのだ。

 

「やあシャアじゃないか。士官学校以来だな」

 

ガルマとシャアは士官学校の同期であり、互いを友人と認め合う仲であった。

 

その友人を温かく出迎えたガルマに、モニターに映るシャアは仮面の下に隠された瞳を光らせつつ、早速本題へと入る。

 

「ガルマ、君も元気そうで何よりだ。お互い積もる話もあるだろうが、今上でちょっとしたトラブルに見舞われてな」

 

「此方でもその話は聞いているよ。何でも連邦軍がサイド7で開発していたMSが襲撃されたらしいな?」

 

無論ダカール訪問中のガルマの元にもその情報は入って来ていたが、それ以後の情報は途絶えていた。

 

ジオン本国からの情報待ちであったガルマにとって、シャアが齎す生の情報はこの時点で天佑とも言えた。

 

「その連邦のMS何だが、今君がいるアフリカのザフト勢力圏下に降下したのだよ」

 

「何だと⁉︎連邦軍のMSがか」

 

驚いたガルマは思わず椅子から立ち上がった。

 

ガルマに取ってそれは正に青天の霹靂であったからだ。

 

連邦のMS開発はジオンでも注目されていたが、その実物が今自分の目と鼻の先にあると言う状況に興奮を隠せずにいた。

 

そんなガルマの内心を見透かしたかの様な声でシャア更に続け。

 

「上手く立ち回ればジオン十字勲章ものだ。私もコムサイで降りる、後で合流しようガルマ」

 

「ああ、楽しみにしているよシャア」

 

通信が終わると同時に、ガルマはシャアを出迎える為ガウの出撃準備をさせた。

 

その瞳は、灼熱のアフリカの熱に浮かされた様にギラつき危なげな光を帯びていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「熱い…それに体が重い…。これが、地球なのか?」

 

ホワイトベースの甲板上で、ガンダムのコクピットで熱い息を漏らすアムロは初めての地球をそう感じた。

 

アフリカへと降下したホワイトベースとガンダムだが、そこはアフリカ共同体とザフト勢力圏下。

 

つまり敵地の真っ只中であった。

 

サイド7から戦線続きで、しかも大量の難民を乗せたホワイトベースは補給の当てもなく、疲弊した戦力でこれからどうするか。

 

それを巡りクルーは対立していた。

 

「いいから‼︎こんな所さっさと抜け出して前線の味方と合流すべきだ。おちおちして敵に見つかる前に今直ぐにだ」

 

ホワイトベースの艦橋に集まったクルーの中で、ヒステリー気味に喚き散らすリード中尉に、ブライト・ノアはこの幾度と無く繰り返された問答に半ば辟易しつつ前線突破の危険性を説いた。

 

「ですがリード中尉、ここから前線までの距離はかなりあります。途中で敵に見つかった場合を含め、今の戦力では到底独力での突破は不可能です」

 

ブライトの指摘は的を射ていた。

 

実際弾薬や食料も欠乏し、クルーの士気は下がっていた。

 

この上難民を抱えて前線を強行突破するのはリスクが大き過ぎると考えたからだ。

 

しかし尚リード中尉は頑なに考えを改めようとしない。

 

「そうとは限らんじゃないか⁉︎前線までたどり着けば味方の支援も期待出来る筈だ…!」

 

それは最早作戦でもなんでも無く、リード中尉本人の希望的観測のみによって立つものでしか無かった。

 

「ですから、今の状況では途中で敵に見つかって攻撃を受ける可能性も大きく、疲弊したホワイトベースではとても耐えられそうもありません」

 

「なら、貴様はどうすると言うんだ⁉︎」

 

「私は、多少賭けになりますが大西洋に抜けるべきかと思います。海まで出れば敵も追っては来れないでしょうし、ジャブローまでの最短コースです」

 

「その場合難民を途中で降ろさねばなりませんが…」

 

ブライトとしてもそれは苦渋の決断であった。

 

敵地に民間人を置き去りにするなど、軍人としてあるまじき行為だがそれでも彼はホワイトベースの艦長としてこの船とガンダムを無事に送り届ける責任があった。

 

「そんな方法が上手くいく筈⁉︎…イッツツ」

 

リード中尉はブライトを指差して罵倒しようとしたが、突然腹を抑えて苦しみ始めた。

 

「リード中尉⁉︎不味い直ぐに医務室へとお連れしろ」

 

ブライトの指示で医務室へと運ばれるリード中尉は、最後まで頑なに前線への突破を叫びながらの退場ではあったが、結局この日も今後の方針が決まらず終いで終わってしまった。

 

ブライトは自らの不甲斐なさにほぞを噛んだが、それで事態が好転する筈も無く更に追い討ちをかけるように敵襲の知らせが届いた。

 

 

 

 

「この、墜ちろーっ‼︎」

 

ショルダーキャノンを装備することによって、総推力比が150パーセント以上もアップしたガンダムは、地球の空を駆ける。

 

地上にはホワイトベースとガンダムを捕らえんと、アフリカ共同体地上軍の戦車隊が押し寄せ、空中でも同じくアフリカ共同体の空軍機がガンダムとアムロに襲いかかった。

 

「アムロばっかりいい顔させるかよ」

 

「ハヤト、慌てるんじゃないぞ!よく狙って撃て」

 

「はい、リュウさん!」

 

ホワイトベースを守る為、カイ・シデン、リュウ・ホセイ、ハヤト・コバヤシ達が乗るガンキャノン、ガンタンクが出撃し戦車隊と激しい砲火を交える。

 

その中でアムロの活躍は凄まじく、単騎で空軍機を相手取りMSで空中戦を行うスペースノイドならではの戦い方を見せたのだ。

 

この時、アフリカ共同体軍は連邦軍のMSを捕獲すると言う功績を独り占めしようと、ザフト地上軍の手を借りず独力で攻め寄せたのが仇となっていた。

 

既にMSに対する通常兵器の劣勢は証明されている中で、唯いたずらに力押しの戦術では、いかに素人集団のホワイトベースとは言え善戦することが出来たのだ。

 

「次から次へと、このー⁉︎」

 

「ヤバイ、敵が多すぎる。助けてくれー‼︎」

 

「泣き言を言うなカイ‼︎ハヤトもしっかりするんだ!」

 

「はい、リュウさん。男だったら、グズッ、こんな所で、ウッ、泣かない、です」

 

しかし物量に勝るアフリカ共同体軍を前に、次第に追い詰められて行くホワイトベース。

 

だがそんな彼らの前にシャアと合流を果たしたガルマ率いるガウが救援として訪れたのだ。

 

「私自らの手で連邦のMSを助けたとなれば今後の連邦にも大きく貸しを作れる。ここで男を見せれば兄上や姉上達も私を一人前と認めて下さる筈だ」

 

そう一人意気込むガルマは、シャアをガウで待たせ、自ら専用機であるドップを駆り戦場へと飛来する。

 

一方ホワイトベースの方もこの予期せぬ救援に歓喜の余りクルーは狂喜乱舞していた。

 

敵中に孤立していた彼らにとって、ガルマ率いるガウの存在は何よりの希望と映ったのだ。

 

「この機を逃すな!ドップと共同して敵戦闘機を追い払うんだ」

 

ブライトはクルーに檄を飛ばし、敵の囲みを突破せんと激しい抵抗を見せる。

 

アフリカ共同体軍は思わぬ形でホワイトベースとガウ双方から挟み討ちを受ける形となり、次第に劣勢となっていく。

 

実はこの時、アフリカ共同体軍の不穏な動きを察知したザフト地上軍は様子を探る為偵察部隊を派遣していたのだ。

 

しかも直ぐ近くまで来ていたのだが、独力での捕獲に拘泥していたアフリカ共同体軍は無線封鎖によってこの事実を知らず、結局この後直ぐに撤退する羽目となる。

 

この時、もし仮にアフリカ共同体軍がもう少し粘りを見せていれば歴史はまた違った物になっていたかもしれない。

 

しかし事実としてアフリカ共同体軍は後退し、ホワイトベースクルーとガルマら双方は敵を退けたと安堵し、気を抜いてしまった。

 

だがこれが致命的な隙となってしまった。

 

突如として、ガルマが乗るドップを何者かの銃撃が襲ったのだ。

 

「⁉︎」

 

反射的にガルマは操縦桿を倒し致命傷を避けるも、翼をやられ黒煙を吐くドップ。

 

それは、ザフトが偵察部隊として派遣していた大気圏内飛行を可能とするディンによるものであった。

 

ディンは史上初の大気圏内を自由に飛行する事が可能なMSであり、その火力装甲機動性共に並みの戦闘機を遥かに凌駕していた。

 

連合軍のパイロット達はディンと遭遇したならば迷わず逃げろと厳命されている程であり、到底ドップなどでは相手に出来るものでは無かった。

 

この時、ガンダムもまた推進剤を使い果たしており、補給を受けなければ対応が出来ない状況であった。

 

しかし現れた2機のディンは、ガルマのドップを攻撃した以上の事は行わず直ぐに背を向けてその場を飛び去って行く。

 

長距離の飛行で燃料が心細かった事もあり、それ以上の攻撃が出来なかったのだ。

 

ガウも又ガルマのドップを回収した後撤退を開始する。

 

ディンが出てきた事もあり、この空域にとどまる事が危険であったからだ。

 

この日、ホワイトベースは辛くも敵の攻撃を退けたが、これによりザフト地上軍は自軍の勢力圏下に連邦軍のMSが降り立った事を知る。

 

それはホワイトベースとガンダムに、新たな試練を与えようとしていた。

 

 

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